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ジュリア-改-  作者: リノキ ユキガヒ
一夜あけて
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24/28

キッチンはUボート

 ジュリアはアパートに着くと駐輪場にバイクを停めて部屋に戻ると、部屋の中でメットを脱ぎ「ふうっ」っと一息付いて、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してそのままラッパ飲みをした。

 部屋の中央にある小さい机の傍らに先程買い物して来たものを置きながら自分もすわると、ミネラルウォーターをもう一口飲んだ。冷蔵庫にそれをしまうついでに立ち上がりると、お世辞にも広いとは言えないキッチンを横目で見た。

 ワンルームのアパートでは極一般的な形式でシンクと一口の電磁調理器しか無いものだ。

「いままで気が付かなかったけどアレだな。このキッチンも潜水艦の炊事場と思えば料理する時少しは楽しいかも。船は火ィ使えねーから昔から電磁調理器だしな。ウン!」

 ジュリアはおもむろにそう呟くと材料を取りに回れ右したかと思うと四つん這いになりテレビの脇に積み上げられたDVDの山をナゼか漁り始じめた。そして「あった!」と叫ぶとそのDVDをプレイヤーにセットする。日本人には馴染みの薄いドイツ語が流れてきた。それをニヤニヤしながら聞き流すジュリア。

「何か雰囲気でてきたな。私は日本人だから本来は伊号潜水艦のDVDじゃねーといけねーけど、持ってねーからUボートだな」

 ジュリアは潜水艦映画の最高傑作と誉れ高い「das Boot」をBGM替わりにして今からシチューを作ろうと思いついたらしい。マニアらしい妙なコダワリに我ながら少し呆れつつも「さてと始めますか」と呟くと手を洗い材料をダンボール箱から取り出した。

 野菜の類をワシワシと水で洗っていく。特にジャガイモについたドロ汚れは中々の手強さだ。

「チッ。バイクならパーツクリーナー使えンのに」

 ブツブツと文句をいいながらも何とかドロ汚れを落としていく。

 洗い終わった野菜類はいったんボウルの中に入れておく。

 それらが終了すると野菜と牛肉を一口大に切っていった。そしてあらかじめ用意していたナベにサラダ油を引き牛肉を簡単に炒めて野菜類を投入してゆく。

 映画Uボートは丁度、潜行テストをしているシーンで少し緊張感のある感じだ。

 それを聞きながらナベを水で満たすとひと煮立ちするまで時間があるのでボンヤリ、テレビを眺めて時間を潰した。

「この映画って不思議とメシが旨そうに見えるんだよな」

 ナベからグツグツと煮立つ音が聴こえてきたのでアクを取りながら乱暴にフォークでジャガイモの煮え具合を確認する。少々硬い気がしたがジュリアは別段気にする気配はなかった。と、いうか煮込み料理自体の経験が乏しいので頃合いが良く解らないのが正直なところだ。

「よくわかんねーけどこんな感じか?ま、いっか」

 そう言うとビーフシチューのルウを乱暴に鍋に放り込んでいった。

 そして何気に箱のウラを見ると今更ながら分量というものが有るのに気がついた。

「げぇっ!!量とか決まってるの!?オイル交換とかじゃねーんだから!つーかフロントフォークや2ストみたいにシビアな規定量とかじゃねーだろーな!?」

 相変わらずの例えのレパートリーの無さに落胆しながらも、おっかなびっくりに鍋を掻き回しシチューのルウを馴染ませていく。テレビではお調子者の次席士官が「Uボートカクテル」なる怪しい飲み物を自慢気に飲んでいた。

 そしてビーフシチューらしきものの形が出来たところで恐る恐る味見をジュリアはしてみが、以外にも悪い感じはしなかった。

 元々人一倍味覚に関しては自信がないのでこれでいいのか解らないのでなんとも言えないが、人に食べさせる訳ではないので、まぁヨシと思える範疇だろう。



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