表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジュリア-改-  作者: リノキ ユキガヒ
羽田は遊園地
PR
21/28

幸せですか?

 巨人達の行進が落ち着くとジュリアはマキに近づき

「どうだ凄いだろ?ここがとっておきの場所。今から整備を受ける飛行機がここには集まって来んだよ」

 と自慢気に話しかけた。

 マキは呆然としたまま旅客機の通り過ぎたコンクリートウォールと金網を見ていた。

 羽田空港は海に近い。心地よい海風が2人の肌を撫でる…。マキのツインテールもフワフワと風になびいている。

 ジュリアは問いかけに反応がなかったので少し心配になりマキの顔をそっと覗き込んだ。それに気付いたマキもゆっくりとジュリアの方に顔を向ける。そして落ち着いた口調で質問をした。

「ジュリアさん。飛行機ってできてからどれ位経つんですかね…」

 思いもよらない質問にジュリアはいささか困惑したが

「大体100年位だな。」

「100年かぁ…その間にいろいろあったんだろうな…」

「あぁ、初めは1人の人間を60m飛ばすのがやっとだったんだぜ。それが今や300人近い人をのせて何千キロも飛んでいくんだ。技術の進歩ってのはスゲーな」

 マキは視線を夜空に向けると再び話し始めた。

「やっぱり飛行機も戦争に使われてたりしたんですよね」

 マキと一緒に夜空を見上げるジュリア

「はじめの頃はむしろ戦争にしか使われなかったんだ」

「なんだか可哀想」

「そうだな。機械とはいえそれはわかるわ」

「この子達は幸せなのかなぁ?辛かったり虚しくなる時とか無いのかなぁ?」

 ジュリアはチラとマキの横顔を伺った。目線の先に何を捉えてるかは解らないが少しもの悲しい目をしているような気がした。分厚いコンクリートウォールと金網の中で飼われている巨人達。常に厳重な管理の元で運航される航空機。

 自分の生い立ちと何か被るものがあるのだろうか?

 ジュリアの頭の中にそんな考えがよぎる。そして視線をマキと同じ方に向けると問いかけに応じた。

「さぁな、でもいろんな人が一生懸命になって飛行機ってのは初めて飛ばせるからな。それは昔から変わらねーんだよ。ベテランのパイロットや整備士なんかやっぱり自分が手をかけた機体は可愛いって言うもんな」

 ジュリアのその言葉を聞くとマキは勢いよく振り向いた。

「そうなんですか!?それならよかった!このコ達は幸せですね!」

 先程の物悲しい横顔は消えパァっと明るい表情になる。

 その表情に合わせるかの如くまた巨人達の行進は再開した。それはまるで彼らの意思のようにも思えた。

 一時の静寂を打ち破る轟音。しかしマキはその音の大きさに不快な感じはしなかった。

 彼女はコンクリートウォールまで走って近づくと巨人達の行進を背にしてジュリアに向かって何か叫んでいるように見えた。もちろんジェットエンジンの轟音で声は聞き取れない。

「なんだってマキィ!聞こえねーよ!!」

 ジュリアはマキが何を叫んでいるかを聞き取ろうとコンクリートウォールまで歩いて近づいて行ったが聞き取れそうな所でそれは終わってしまった。

 何を言ってたのかジュリアはマキに問いかけたがマキはケラケラと笑ってるだけで答えようとはしなかった。

 その事が別段気になる訳でもなかったがジュリアはアゴを人差し指でポリポリかくと

「ま、いいか。さて次はドコに行くかな?」

 と言って回れ右をしてバイクの方に向かっていった。その後をマキが着いていく。

 羽田空港の巨人達は2人を見守るかのようにジェットエンジンの轟音を吐き出しその雄叫びを夜空に刻み続けていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ