羽田の巨人
夜の空港ターミナルビル。国内線のフライトはもう終了している。
ビル内にはそれなりの人数の客がまだ残っているが敷地があまりにも広大な為ひっそりとした印象を受ける。
構内であるが羽田空港ターミナルビルのもう一つの顔であるモノレールと京急線のホームの脇に大手ハンバーガーチェーン店がある。立地の関係からかテイクアウト専用の店舗だ。
ジュリアとマキはそこで2人そろって特大のセットを買うと備え付けのベンチに腰を落とした。
それらを貪るように食べる2人の女性。ひとだんだく着くとマキがある事に気付いた。
「ジュリアさん。もう飛行機飛ばないのに出勤姿っぽい人いっぱいますね」
口の中に残っているハンバーガーをコーラで流し込みながらジュリアはマキの問いかけに答える。
「あぁ。飛行機の運行に関係ある人やターミナルビルのメンテナンス関係者とかじゃねーのか?客の少ない夜しかそういうの出来る時間ねーからな」
「ほー。電車みたいッスね」
付け添えのフライドポテトをぱくつきながらマキが反応する。
「朝一番のフライトがあるパイロットやキャビンアテンダントは前の日の夜に来て空港で仮眠とったりするらしいぞ。」
「ほぇー大変ッスね」
そう声をあげるとターミナルビルの吹き抜けを見ながらマキが思い出したかのようにジュリアに問いかける。
「ところでジュリアさん。なんでこんなに空港の事詳しいんすか?昔働いていたとか?」
「ちげーよ。羽田空港も昔、軍隊で使われていたから。それで興味もって来て見たら色々あってオモレーから」
「なーるほど」
「しかもほとんどタダで入れるしな」
「それ魅力!」
会話の区切れを突いてジュリアはすっくと立ち上がると
「さーてハラも膨れたし次いくか!」
と言いながらゴミ箱にハンバーガーの包み紙を放り込んだ。その様子を見てマキはジュースを慌て飲み干す。
2人は先程訪れたバスターミナルの所まで戻ってきた。ターミナルの脇には羽田空港の派出所がありそこの脇にジュリアはこっそりバイクを停めていたのだ。
さすがにここでエンジンをかけるとマズイのである程度離れた所でエンジンを始動した。
2人共バイクに跨るとバイクは爆音を巻き散らかしながらターミナルビルを後にした。
夜というには深過ぎ、深夜というには浅い時間。
羽田空港周辺の道路はトレーラー位しか走ってなかった。
しばらく進むと《整備棟》とかかれた看板がありジュリアはそちらにハンドルを向けた。
緩やかなカーブを過ぎると直線だけの道になり、窓の異様に少ない工場のような巨大な建物が建ち並ぶ風景が広がった。
古代遺跡のようにそれらの建物に人の気配は感じられないもの何かしらの為に建てられた施設という事だけは雰囲気だけで解る。
それら間を抜けると行き止まりになってしまった。
そこにバイクを停めるとジュリアはエンジンを停止させた。
ヒラリとマキはバイクから降りると
「ずいぶん殺風景な所にきましたねぇ~」
といった次の瞬間、今まで経験した事の無い轟音に襲われた。その凄まじい音で肩をすくませる程驚いたマキは、慌てその音の出どころを探そうとしたがあまりにも大きすぎるその音はマキの全身を包み込むように鳴っていて正体は解らなかった。
あたりをキョロキョロしながら伺っていると轟音の正体は行き止まりの奥にあるゴツイ、コンクリートウォールと高い頑丈そうな金網の壁の向こうにいた。
自分の目の前を大型のジェット旅客機がゆっくりと通り過ぎてるのだ。
真近で見るジェット旅客機。その巨大さと吐き出される轟音は異次元以外の何物でもない。
しかもそれが次々とやってくるのだ。マキは内心、人間にこんなものが作れるのか?と疑いたくなるような気さえした。まるで自分が「巨人の国」にでも迷い込んだのかと錯覚するほど凄まじい光景を目の当たりにしてほとんど放心状態だった。




