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吊り橋を揺らしてくるクラスメイト

午前1:30頃 あたりは暗闇に染まり唯一存在する電灯は点滅しており、今にも途切れそうな淡い光の中で私こ

影村千夏は金網のベンチに腰をかけていた。今にもおうちに帰りたい気持ちをぐっと抑え座ること20分、後ろの茂みが静かな雰囲気をかき消すようにわしゃわしゃと揺れだした。それに共鳴するかのように四方八方の草が、木が一斉に揺れる。全身に冷や汗を流しながらもう無理だと感じて立ち上がり、走る寸前、何かに足を掴まれる

「!?」

思わず下を向くと、なにか毛むくじゃらのような何かが足に絡みついていた。よく見ると犬の尻尾のようなもの、ただし途中で何かに切られたように先がなく、赤く染まっていた。そして金網の隙間から透けて見える犬の姿は私の顔を歪ませる。体は正面を向いているのに顔がありえないくらい上に反っているのだ。目と目が合い犬らしきものが何かをふっと吐き出す。それは血だ。私のスカートに赤黒く付着し、地面に落ちないほどに粘性がある。

「ヴァン!!!」

その音を合図に四方八方の草むらが激しく揺れる。 カラスが 蛇が 犬が 猫が そして、ヒト が視界を埋め尽くす。気が狂ったようにグネグネと関節が曲がっている。翼が 足が、指が、 腕が よく見るとみなどこかの部位が欠損している。

「ーーーッッッ!?」

声にならない声を発した私は今ならきっとイルカとでも話せるような超高音を出していた。

じわじわと距離を詰めていき、ついには視界全てを生き物で埋め尽くされた時視界の中心にある人を見つけた。こんな状況にもかかわらず首からカメラをかけ真剣な、それでいてだらしない顔をしてメモしている美少女クラスメイト もとい変態だ

「あ、あの!猫葉さん!も、もうムリです!早く助けっ ひぃっ、来ないで!!」

「あと5秒耐えてくれ!あともう少し 、、、 よし、目を瞑っていてくれ」

言われた通りに目を瞑る私

「凪」

シッッと風が吹き抜け、 キン! 金切り音が響く。目を開けるとそこには銀髪美少女と黒装束を纏う女が立っていた。 そのうちの銀髪の変態こと猫葉 汐音がこっちへ近づいてくる。猫葉さんが口を開く。

「いやー!素晴らしい景色だった!あのような血肉を求めさまよう亡霊の姿! 死してなお人へ食らいつく執念! そして何より、大勢の雄雌に求められ涙を浮かべながら必死に抵抗する千夏の顔! 全てがそそられる!! 詳しく話すと長くなるが一言で言うと 最高だった」

「も、もう少し早くたすけて下さいよ! 死んぢゃうかと、、、きいてますか!?」

「ああっ!その表情もいい!目に焼きつけるためにももう少しその表情をしてくれないか!」

「い、嫌です! 私の絵も消してくださいよぉ」

猫葉さんのスケッチブックには動物に囲まれて涙を流して怯える情けない顔が描かれている。

「いやーすまないね。妥協ができないたちでね。そんなことよりも、だ。ここは昔不当な処置をしていた動物病だ。祓ったとはいえ、あまり長居するものではないよ」

は、話をそらされた、、、はぁ


「どうだろう?少しは私にドキドキしてくれたかな?」

家に送ってくれると着いてきた猫葉さんがこんなことを聞いてきた。

「……あともう少し早く助けてくれたらカッコイイって思えたんですがね……」

「なるほど、次回からはもう少し恐怖に落としてから助けた方がいい、と。」

「ち、違います!早く助けてくださいと言ってるんです!」

「わかっているさ、千夏の照れ隠しだろう?」

「……ダメだコイツ 早く、何とかしないと」

「ふむ、たしかそれはこの間教えてくれた漫画のセリフだったな」

漫画のセリフを実際に使えたという小さい感動と、話をそらされた怒りを内に秘め、トボトボとした足取りの私と、妙にワクワクした顔の猫葉さんは私の家へと向かう。

「……では明日」

気づけば私のマンションのエントランスに着いていた。このままさっさとしれーっと帰ろうとし、挨拶の返事を聞く間もなく扉に手をかける。

「おや?千夏、何か忘れてないかい?」

……やっぱり逃げきれなかった。

「……やっぱりアレやらないとダメですか?」

「勿論さ、千夏にとっても 私にとってもね。」

「……目は閉じてくださいね。」

分かった。 とは猫葉さんは言わなかった。

これから起こる恥ずかしさに思わず目を瞑り、恐る恐るゆびを猫葉さんに向ける。ピタッ、そんな音が聞こえてきそうな感触が指先に広がる。僅かに目を開けると、指には鮮やかな紅色が指先を這っている。その元には先程の美しい銀髪が広がる。違うのは凛々しく、自信に満ちた顔ではなく、犬のような大切な物を眺めるような、そんな甘いお顔だった。

「……」

やがて指先から手の甲、二の腕と上がってくる感触にくすぐったさを感じ、反対の手で口を覆う

思わず変な声を防ぐために。

10分は経っただろうか、されるがまま思考を止めていた中、気づけば反対の手もくすぐったさでいっぱいだった。

「よし、とりあえず今の分は溶かした。本当は口からならもっと行けるのだが。」

揶揄うように唇にゆびを滑らせる猫葉さん

「い、いや!大丈夫です!結構です!」

「まぁいい、気が向いたらいつでも、な。」

私の腕を舐め尽くし、満足気に肌がツヤツヤしている猫葉さんの顔は先のように自身のあるまるで女帝のような顔だった。

「……お、おやすみなさい!」

これ以上は言いたいことを言う力もなく私は扉を開け、エレベーターに乗り、やっとの思いで玄関にたどり着いた体を緊張から解かし、廊下でゆっくりと畳んだ。廊下の時計は午前3:00を示していた。クラスメイトの猫葉さんとどういう経緯でこんな大変な思いをしているのか、いや、させられているのか。それはざっと1ヶ月前に遡る。


入学してから2ヶ月、私は友達もおらず傍から見れば寂しい学校生活を送っていた。 だがこれは私自ら望んだことでもあった。 私は昔から幽霊やこの世ならざるものを引き寄せるような体質だった。 常に視界には人っぽいものが飛んでいたり、動物が地面から覗いていたりするなかなか奇妙な人生を送っていた。それだけなら害はないのだがこの集まるものは当然悪霊なども含まれていた。 悪霊が私や私の周りを傷つけるのだ。 関わらなければそんなに害はないのだが、見えないのに気をつけろとは酷な話だろう。

そういうわけで私は敢えてひとりを選んでいる。

「あ!影村さんだぁ!今度一緒に委員会の報告書を書かないといけないからさ、空いてる日にち教えてよ!」

「あ、え、、したならいつでも」

「?えした?」

「あ、あしたでしゅ(小声)」

「? とりあえずあとでLINE送っとくから見てねー!」

「あ、 ハイ(.. `)」

まぁもともと社交性なんてものは前前々前世に置いてきたんだけど。 多分……

そんな高校生活、ある日の放課後 あめがポツポツと降り出した光景を教室の窓から眺めていた時だった。クラスの超人 猫葉 汐音が校舎裏に向かっていくのを見た。猫葉汐音 彼女はとんでもない自信家であり、事実として勉学、コミュニケーション能力に秀でており、容姿は煌びやか という言葉は彼女のためにあるのではないかと言うほどだ。そんな彼女が校舎裏に、、、これがいわゆる陽キャの告白イベントですか、とも思ったが雨の中告白するおバカはいるとは考えづらい(陽キャのことがまるで分からないためもしかしたらいるかもしれないが) 好奇心から少し見に行ってみようとも少し考えたが、直後猫葉さんの後ろには何か嫌な気配を感じた。3階の距離でも感じるのだ。あれは私にどうこうできるものではない。見に行くなんて考えは塵芥よりも軽く消え去った。少し心苦しいとはいえ無視して帰ろう、そう思って靴箱に直行した。猫葉さんのことを頭で反芻している間にいつの間にか階段を下り、靴箱に着いていた。靴を履き替えいざ帰ろうと門を出ると嫌な気配が強まった気がする。気になる気持ちもある、しかしあれは無理という気持ちには勝ることはなくトボトボと帰ろうとした。だが溢れるのはとてつもない罪悪感。明日もし猫葉さんが来ないなら私はどう思うだろう。きっと出来もしなかったくせに後悔したり、でもあれは無理だったし、と言い訳したりという考えがぐるぐると回った。

(み、見るだけなら)

結果解決せずとも行動だけするという今思えば最悪の中間択を選んだのだ。

(た、たしかこの辺だったはず。)

体育館と校舎の狭間 体育館からは部活活動だろうか、バスケットボールが弾む音が聞こえ雰囲気的には暗くはなかったが空気の嫌な雰囲気は強まるばかりだった。 探すこと2分程で猫葉さんはすぐに見つかった。角のはしらから覗き込むと猫葉さんは体育館側に座り込みなにか話しているようだ。なんだ何か電話かなと思ったのは一瞬、猫葉さんの目の前には全身黒装束のメイド?がいた。スカートの丈は地面に着きそうなほど長く、手には黒い長手袋、両の手のひらにはなんと日本刀が握られていた。遠目からはなかなか見えづらい、しかしこれだけはわかった。あれはそこらの悪霊とは比べ物にならないということだ。霊は本来何がしたいのか明確に体に表れる。

生きたい 好意を伝えたい 呪いたい ビビらせたい

その思いの強弱はあれど本心は必ず表れるものだ。しかしあのメイド?にはそれがない。ただそこに存在するだけだ。

(つまり、あのメイド?は何重にも思いを押しとどめている?)

メイド霊の異常性に戸惑っていると突然霊が刀を振り上げ今まさに猫葉さんに向けていた。

(ッッッ!? え、ヤバいヤバいヤバい!さ、殺気はない、と思う、けどあの霊は何するかわからない!)

そんなことを考えるのもつかの間、メイド霊は刀をジリジリと猫葉さんに近づける。

刹那私の体は飛び出していた!

「ん?君は確かーそう、影村さん? 何をしtー!? な、何を!?」

「と、とにかく走ってくださいっ!!」

気がつけば私は猫葉さんの手を引いて走っていた! 普段運動なんかしないけどこの時だけは地球でトップ10に入るくらいには速く走ったと思う。顔は冷や汗とガチの汗、雨のトリプルコンボ。いや多分泣いてもいたから涙とのクワトロコンボ?かもしれない。 手の震えは止まらず、心臓は鼓動が早すぎてぎゃくに止まっているかもしれない。しかしそんな状態もすぐに収まり変に冷静になる。

…… そういえば後ろはどうなったのだろう。

これが間違いだった。後ろには無表情な鬼の形相という矛盾した顔をしたメイド霊が日本刀を掲げながら前傾姿勢で走ってくる。

その姿を見た瞬間考える暇もなく私は猫葉さんを突き飛ばした。刹那メイド霊が刀を振るう。

「ヒィ!?」

情けなくも後ろにコケるような形で飛び、刀から少し逃げる、が倒れてしまい目の前にはメイド霊

視界に捉えた瞬間刀が振り下ろされる。

「待った!!」

声が聞こえるとメイド霊は刀のスピードを緩める。その切っ先が私の前髪に触れる、痛みはない。 助かった。私の顔は涙か雨のせいか分からないほどにぐちゃぐちゃになっているだろう。「フサッ」。

髪の毛のようなものが手のひらに落ちる。

(!?ー メ、メイド冷静の髪の毛? で、でも、いくら長いとはいえ地面までは長くなかったはず!?)

無意識に前を向くとメイド霊は直立しており髪の毛は届いていない。 では誰の?

前髪を触る。ーー無い

これは私の髪の毛だった。 あの一瞬にも満たない時間に触れただけで切りずらい髪の毛を切断したと言うのだ。もしこれが頭に当たっていたら?

「えぅ」

この事実は考えをまとめるより先に私の意識を狩るのに十分だった。情けない声をあげ意識を手放す。

「影村さん!?」意識が飛ぶコンマ数秒猫葉さんは口に手を抑え、驚愕の表情を浮かべていた。その影に少しのニヤケがあったことを私は知ることはなくーこれが 影村千夏と猫葉汐音の初めての最悪な出会いだった。


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