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09. 呪われた魔法使い

ずっと生命いのちの循環の外側にいた。


花が散って種を残し、その種が落ちてまた芽吹くように。

人も一人一人の命を終えながら次の世代を残して行った。


脈々と繋がり流れて行く生命いのちの河。


その流れに拒まれたわたしは河の外側に独りで立っていた。



「ごめんなさい……」



二月前にやっと求婚した時と同じ木の下で、その女性ひとは泣いていた。


今となっては血筋も意味を成さないが、かつては血筋が魔力の量に大きく影響していて、更には家系の魔力の量はほぼ身分や地位と正比例していた。

わたしの体に呪いが掛かっていると分かったのは、長年反対されていた魔力の弱い彼女との結婚が、ようやく許された矢先のことだった。


正式に婚姻を申し込んでからほんの二月。二カ月前には満開だった大きな白い花は、その時にはもう一輪も残っていなかった。



「何度も、何度も考えたの………わたしが老いて、子供やその子供があなたの年齢としを追い越して行くのに、あなたの姿が今のまま変わらない―――――――――――耐え、られる気が、しない――――………」



泣き崩れる彼女の前から無言で去った。

口を開いたらすがってしまいそうだったから。



それから六百年近い月日の間、伴侶を得ようとしたことはない。


相手を苦しめると分かっていたし、それ以上に、わたしはこの呪いが子供に引き継がれないと言う確信が持てないのだ。



そのすぐあとに国を脱出して、世界中を彷徨さまよった。


わたしの魔力が問題になると気付いたのは、国を出てしばらく経ってからだ。


帝国魔法使いの中でも最高位を持っていたわたしは、五百年以上前の時代でも世界有数の魔法の使い手だった。


「強大な魔力を持つ不老不死の魔法使い」は、わたしに罪を犯すつもりはなくても世界にとって脅威なのだと、母国以外の国にも追われて気が付いた。



実際、やろうと思えばどんなことでも出来ただろう。誘惑がなかった訳じゃない。


ただわたしは、それ以上人間から遠い存在になりたくなかったのだ。

世界のことわりから切り離されてしまった存在なのだとしても、せめて人間らしさを失いたくなかったから踏みとどまった。


正体を隠して世界を転々としながら生きた。



独りだった。


ずっと。




果てしのない孤独を、わたしは終わらせたいのだ。




数百年願い続けた「終わり」は今目の前にある。



それなのに。



リスタが引いた線の前で立ち止まり、そこから立ち去る決意も出来ず、どの道も選べないまままた数年が過ぎた。




ʄʄʄ


八角形の塔へと渡る五つの橋の上を、今日も大勢の人達が渡っていた。その大半が観光客であるのは相変わらずで、物珍しげに景色を見回しては感嘆の声を上げる彼らを巨大迷宮は無限に飲み込み続けていた。


彼らに混ざってエントランスホールに辿り着いた時、人混みの中に見覚えのある人物を見付けた。


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