3話 千年に一人だけ現れる“魔生成"
北東の魔法の塔に到着したタミィとディナール。
ディナールはユルスを払い、魔法を受け取る。
すべては、魔法・経済格差平等改革のために。
魔法の塔を出た瞬間、空気の重さが変わった気がした。
灰色の塔は、相変わらず無機質に空へ突き刺さっている。
だが、俺の内側だけが違っていた。
掌を開く。
魔力を流す。
目に見えない何かが、空間の“法則”を撫でる感覚。
「……本当に、得たんだな」
「はい。殿下の魔法は“魔生成”。極めて特殊です」
タミィの声は冷静だが、ほんの僅かに警戒が混じっている。
「属性ではない、と」
「はい。既存の火・水・風・土といった枠組みに属しません」
つまり、型がない。
それは自由で――危険だ。
俺は小さな火球を生成する。
定義:低出力。対象なし。持続三秒。
炎が浮かび、消える。
問題ない。
「基礎属性の再現は可能……」
「ですが殿下。魔生成は“条件記述”を誤れば、術者に跳ね返ります」
「塔で言ってたな」
俺はもう一度魔力を流す。
今度は条件を増やす。
対象:敵意保持者。
追尾:対象中心。
出力:中。
空間がわずかに軋む。
――やめた。
「今はまだだな」
平野で暴発したら洒落にならない。
タミィが静かに頷く。
「魔法は武器です。ですが殿下のそれは、“法則改変”に近い」
「……世界に喧嘩売ってるみたいだな」
「はい」
即答かよ。
歩き出す。
塔を背に、王都へ戻る道。
草原を渡る風が冷たい。
「殿下は、なぜ魔法を望まれたのですか」
不意の問い。
「決まってるだろ。改革のためだ」
「それは手段です。理由ではありません」
……面倒なメイドだ。
だが、誤魔化せない。
「理不尽が気に食わない」
言葉が、自然と出た。
「金で命が決まる国なんて、クソだ」
魔法は五百万ユルス。
平民は一生届かない。
貴族は生まれた瞬間に持つ。
「俺が王子である以上、知らないふりはできない」
タミィは少しだけ目を伏せた。
「……だからこそ危険なのです」
「わかってる」
魔生成。
こんな力を持つ王子は、歓迎されない。
だが。
「やる」
短い宣言。
やらなければ、塔に払った五百万が無駄だ。
いや。
金の問題じゃない。
覚悟の問題だ。
王都が見えてくる。
石壁。
煙突。
人の生活の匂い。
平和に見える。
だがそれは、上から見ればの話だ。
門をくぐると、露店の商人が頭を下げる。
子供が走り回る。
笑い声。
――守りたい、と思ってしまう。
「まず何から始めますか」
「経済改革は時間がかかる」
税制、流通、貴族圧力。
一気には無理だ。
「なら、治安だ」
「治安、でございますか」
「暴力が横行してる街で平等なんて語れない」
最低限の安全。
それが土台だ。
「魔法・経済格差平等改革」
言葉にすると、少し恥ずかしい。
だが続ける。
「フェーズ1――治安維持」
タミィが小さく頷く。
「妥当です。民衆の支持も得やすい」
「支持?」
「殿下は王子です。味方は多い方が良い」
……本当にメイドか?
「まずは巡回だな」
俺は腰の剣に触れる。
そして、魔力をわずかに巡らせた。
身体強化。
基礎的なものだが、確実に違う。
世界が遅く見える。
音が鮮明だ。
「制御は安定しています」
「三日間訓練したからな」
塔から戻ってすぐ、俺は平野で魔生成の基礎練習をしていた。
暴発もした。
自爆しかけた。
だが今は違う。
最低限の制御はできる。
「殿下」
「ん?」
「治安維持は、敵を作ります」
「貴族か」
「はい。特権を脅かす存在になります」
構わない。
むしろ、望むところだ。
街の中心へ足を踏み入れる。
人混み。
喧騒。
その裏に、きっとある。
理不尽。
「行くぞ」
「はい」
その瞬間だった。
遠くで、何かが割れる音。
怒鳴り声。
かすかな悲鳴。
俺は足を止めた。
タミィと視線が合う。
言葉はいらない。
これが――
フェーズ1の始まりだ。
はいどうも!Maronです!
そろそろ気づいている人も多いかもしれませんが、タミィはヒロインでしょうか。この答えはまだ出しません。いずれわかります。
ブックマーク、コメントが私のモチベーションに繋がります!
わからないことがある場合、コメントに気軽にお書きください!
ということで!Maronでした。




