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何故みんな俺をほめない?

女はいい。

従順で、使い勝手がいい。


俺は王太子、マルクス・ファン・ブリセトだ。

まだ王太子と決まったわけではないが、まあ俺が王太子だろう?

正妃の子だし、何よりこの俺の美貌を持ってして、敵うものなどいるはずがない。


まぁ、それはいいとして。

先ほども言ったとおり、女はいい。そう思わないか?

俺は王太子だからなにをしても―――令嬢を傷物にしても許される。

女のほうから寄ってくるから、こっちは待っているだけでいい。


だが女の中でも面倒くさいのもいる。

わがままな女とか、香水くさい女とか、ケバイ女とか、特に、俺に指図する女。

―――ガントブ侯爵令嬢、アクトリア・ガントブ・ダルク。

こいつが特に面倒くさい。

王が勝手に決めた婚約者で、いちいち俺に指図してくる。


「殿下。御令嬢方を御汚しになられるのはおやめください。何度言ったら分かるのですか?第一王子としての意識をしっかり...」


とか言ってくる。

俺の婚約者ってだけでも光栄なことなのに、ぐちぐちうるさいし、俺が特別に誘ってやったのに拒否してきた。まったく、何様のつもりだ。


消そうにも、婚約者と言う立場があって消せない。


「マル様ぁ~」


向こうから目立つピンク色の髪を揺らし、駆け寄ってくる影がある。

クローディアだ。


「マル様ぁ...聞いてください...ぐすんっ実は...先ほど、アクトリア様にぃ......

―――ということが...あってぇ...あぁ!でもぉ、アクトリア様は悪くないんですぅ!私がぁ...最近マル様のお近くにいるからぁ...分かってるんですぅ...クローディアが悪いことはぁ...でもぉ...私ぃ...つらくってぇ...」

「そうか。だがもうちょっと待ってくれ。あと少しなんだ。クローディア。つらいと思うが...」

「はぁい...マル様ぁ...格好いいですぅ...」


目をうるうるとさせ、アクトリアにされたことを告げてくる。ああ、思い出すだけでもつらいだろうに。

最近はクローディアとしか逢瀬を重ねていない。

ほかの令嬢とは違ったほめ方をしてくるクローディアに少しだけ興味を持ったからだ。

そうだ。もっとほめるがいい。

もっとだ。もっと。

だって俺をほめるのは当たり前のことだろう?

王太子なのだから。ああ、ナイトになるのもいいな。そうしたらアクトリアも何も言うまい。



*****



アクトリアにクローディアがいじめられている場面によく登場し、アクトリアを怒鳴る。

クローディアは助けるたびに褒め称えるし、俺は日ごろの鬱憤をアクトリアに対して晴らすことができる。

なんと夢心地なのだろう。

ああでも、そろそろ卒業パーティーだ。

これもなくなってしまう。

正当な理由がないとアクトリアを怒鳴れないじゃないか。

これからもああやってぐちぐち言われるのはたまったもんじゃない。

そうだ、婚約破棄して、クローディアを婚約者にしよう。

アクトリアよりもクローディアのほうが王妃に向いているし、実は最近クローディアのことをまんざらでもなくなってきた。


いい機会だ。婚約を破棄してやろう。

この俺の婚約者だったのだから光栄なことだろう。


悪人を断罪する俺...はたから見たらどんなに格好がいい俺なのだろう。

これで俺の評判はうなぎのぼりだな。


***


『お前はナイト。王太子でありナイトでもあるもの。』


はっとおきる。

今のは?

俺が...ナイト...?

魔力が覚醒したのか!

ふ...ふははは!

俺がナイトで、王太子!

いいな、いいな!それはぁ!

これでアクトリアも何もいえないだろうな!ふはははは!



そういえば、魔力が目覚めてからなんだかもやもやするぞ!

ナイトの特質なのか?


*****


昨日の夢から、俺はずっとニヤニヤしていた。当たり前だろう?

卒業パーティーは、悪人の断罪の場でもあり、俺が頂点――つまり、王になる道のパーティーとなるのだ!

もう俺が王で決まりだろう。

第二、三王子より優秀な、俺に、ナイトの魔力が宿ったのだ。

誰も俺に頭を上げられない。


......ああ、こんなに喜ばしいことがおきたのに、昨日のもやもやがとれない。

イラッと来る。



「マル様ぁ!」


遠くからクローディア(いとしの婚約者)の声が。

......?クローディアの姿を見てからもやもやがなくなった気がする。


「おお、クローディア。どうした?」

「私...私っ!光の巫女の魔力に目覚めましたぁ!」

「おおっ!クローディア!なんということだ!やはり君が巫女だったのか!実は僕の魔力も目覚めたのだ。」

「え?マル様もっ!?」


これは...まさか!魔力同士が惹かれあったのか!


「ああ。先ほどまでクローディアがいなかったことで不安で仕方がなかったのだ。だが、クローディアがここにかけてきたとき、とても安堵したのだ。」

「そ、それって!」

「私は本能的にクローディアを求めているようだ!!」

「まぁ!うれしいですわぁ!マル様ぁ!」

「クローディア、ちなみにどのようなことが読めたのだ?」


どんな未来が見えたのだろうか。


「ああ!それはですね!マル様がアクトリア様と婚約破棄する夢を見ましたわぁ!」


あっている!

確かに婚約破棄をしようと思っていたが...成功か!成功していたのだな、ふはは!


「おお!なんと!実はもう少し後に話そうと思っていたのだが、明日、アクトリアと婚約破棄するつもりだったのだ!」

「まぁ!では、私の予言はあたっていると!」

「ああ!」


残念だったな、アクトリア。

光の巫女、最有力候補、だったか?

心が穢れていたからな!


俺に指図をするし、俺をほめたことが一度もないし、なんと言ってもあの目!腐った汚物でも見るような目で見てきたのだ、当然の報いだ!






――――--なぜだ?

何故あの場面で、クルスト王国、アレクサンドが出てくるんだ?

しかも、ナイトだと?

ありえない。ただの妄言じゃあないか。

なぜ...こんなことに...


俺は...王太子なのに...ナイト、なのに...なぜこんなあつかいなのだ...





――――今俺は捕虜として牢屋に入っていた。



クローディアの思っていたこととはちょっとずれている(自称)王太子、マルクス王子でした。

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