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ユグドラシル  作者: Re:
春の章
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XV.城壁の町

XV.城壁の町

 重い足を引きずりながら、ツルバラのアーチまで辿り着き、エルメスに声をかける。


「着いたのですか?」


「そうです」。

エルメスは事も無げに答え、少しこちらに顔を向ける。

そして、

「どうぞ、こちらへ」と言って、アーチをくぐるように促す。


 促されるままにアーチをくぐる。近くで見ると、古木と言っていいバラのツルが絡まり合い、一つの大きな幹をなし、その上をさらにツルが縦横に絡まり合っている。その両脇には、バラの生垣が続いていて鋭い棘が外から来るものを威嚇している。

 アーチを抜けたところには、小さな椅子座った老人がこちらを見つめている。

 エルメスが老人にもったいぶった会釈をし、自分もそれに倣う。老人は無言で立ち上がり、手招きをして歩き出した。

 エルメスに促され、後について歩いて行く。アーチを抜けてしばらくは柔らかな草が芝生のように地面を覆う広場だったが、奥へと進むと簡素な石畳の道が現れ、両脇に素朴な、これも石を積んだ家が並びだした。中世の村の様でもあり、魔法使いの住み家のようでもあるが、人の気配はあまり感じられない。

 歩いたのは数分だったろうか。家々に囲まれた広場に到着し、老人は、その奥にあるひと際大きな建物へと歩いて行く。その建物は、他の家と同じく石積みの質素なものではあるが、群を抜いて大きく、しかも一部が塔のように高くなって偉容を誇っていた。

 更に、この大きな建物の背後には巨大な石の壁がそそり立っている。壁面は長方形の石を積み上げてあるようで、明らかに人工物だ。しかし、それはあまりにも巨大で、見上げても上端が果たしてどこにあるのかすら、霞の中で見えない。左右を見ると遠くに大きな城門のようになっている部分が見え、この巨大な壁が実は一種の城壁のようなものだと判った。

 圧倒されていると、先を行く老人が先ほどの大きな建物の前でこちらに手招きしている。我に返って、うながされるままに建物に入ると、分厚い石の壁の中はかなりヒンヤリとしていた。老人に続いて暗い廊下を進んでいくと、木製の大きな扉に行き当たった。


「中へ、どうぞ」


扉の向こうから声がして、先導していた老人が扉を開き、室内に入るようにすすめる。

 眩しい。室内には大きな蠟燭が林立し、暗い廊下から入ってすぐは目がくらむ。目が慣れると重々しい金銀の燭台が視界に浮かび上がり、人影が照らし出された。


「ようこそ。水無月悠士さん。」


仏像を思わせるような巨躯の老人が、しわがれた声で重々しく語り始める。その両脇には更に二人の老人が座しており、悠士を見つめていた。

「辛い道のりをご苦労でした。まずは、お座りください」

そう言われて視線を動かすと、三老人の前に肘掛け椅子が置かれており、勧められるままに悠士は腰をおろした。ヘルメスはその斜め後ろに静かにたたずんでいる。

 蝋燭の明かりの中で、先ほどの老人が言葉を続ける。

「あなたは、この世界がどの様なものだと考えておられるかな?」


その先に語られたのは、驚くべき内容だった。



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