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ASASHIN  作者: 真鵬 澄也
9/11

第8章-決闘と正体-

 午前一時三十五分。

 指定した場所に行く。

「………」

 失敗するわけにはいかない。北村を殺るまでは死ねない。

 奴の実力はだいたいわかっている、実戦しているところを見たことはないから、ハッキリとしたことはわからないが

 多少の怪我は覚悟しておこう。

「ずいぶん待ったぞ、カーリー」

 頭上から声が響いた。

 振り仰ぐと、屋上にシリュウが立っていた。

「待たせたねっ。始めようかっ」

 ダッ!

 懐から銃を取り出しながら走り出す。

 銃を消音にする。

 中は真っ暗だ。サングラスをはずす。

 夜目が効くのは私だけではない。

 周りを見渡す。

 何もない‥。柱だけ‥。

「……隠れる場所は無しか……」

 耳を澄ます。

 …ジャリ……

 小さい…砂利を踏む音がする。

 そう、あちこちに砂利があるのだ。

「………」

 ダッ。

 二階に向かって一気に走り出す。

 ザッ。タンタンタンッ。

 階段を駆け上がったとき、

 パーンッ! ビシッ

「……!」

 サッ…。

 …アイツ、音消してないのかっ。

 …しかし同じ階にいるのなら、微量の気配で探せる。

 バッ。

 パスッパスッバスッ。

 発砲しながら距離を縮めて行く。

 ザザッ。

 柱の陰に隠れる。

「……」

 少し長引くな…。

 アイツは本気を出していない。

 …フッ。私もだが、上等じゃないか。



 裕希の家にいる東条院は黒木に連絡している。

「シリュウのコードの中に何か入ってないか。外部からのメッセージだ」

『わかりました。お待ちください』

 カタカタカタ。

 データを引き出している。

『…ありました。五丁目の廃屋ビルにて待つ、と』

「それだけか」

『はい』

「時間は」

『一時六分です』

「わかった」

 プツ…。

 黒木から連絡があったのが午前一時過ぎ、今午前二時。約一時間前か‥。

 五丁目廃屋。

 向かおうとして、玄関を出たとき、

「校長先生?」

「……!」

 門のところにあや子が立っていた。

「…君は?」

「名倉あや子です。裕希さんとは部が一緒でした」

「どうしたんだね。こんな真夜中に女の子が一人危ないではないか」

「裕希さんの様子が変なので、それで、部活もいきなりやめると、それで気になって、あの、裕希さんは」

「実は、帰ってきていないんだ。私も今まで待っていたんだが」

「そう‥ですか。…校長先生は裕希さんとは」

「父親と友人なんだ」

「…わかりました。こんな時間にすいませんでした。それであの、もし帰ってきたら伝えてください、みんな心配してると」

「…分かった。伝えておく」

 ぺこり‥。

 あや子は、お辞儀をして帰っていった。

 東条院は急いで廃屋ビルに向かった。



 ハァ…。

 あちこち傷だらけだ。

 …カーリー。さすがだな、噂以上だ。

 足音がしなければ危なかったかもしれない。

 しかし、これ以上の持久戦は危険だ。

「………」

 シリュウ、なかなかやるじゃないか。

 裕希も傷だらけだ。

 ここまで手こずるなんて初めてだ。

 しかし…チャラ…、

 残りの弾を取り出す。

 ‥残り三発か…。

 これで決めなければ。

 ス…、

 ダッ!

 シリュウに向かって走り出す。

「……!」

 真っ正面から来るとは、…もらった。

 パーンッ。

 スッ。

 寸前のところで避ける。

 パーンッ

 二発。

 バッ!

 パスッ。

 横に飛びながら撃つ。

 ビシッ。

「くっ……」

 シリュウの足にあたった。

 パーンッ。

 三発。

 もう片方の足ももらうっ。

 バスッ。

「ウッ」

 ガクリ…。

 シリュウが座り込む。

 とどめをさそうとと、立ち上がったとき、

「カーリーッ!」

「…っ!」

 その声に一瞬隙ができたとき、

 パンッ!

「!…っ」

 シリュウの放った凶弾が裕希に命中した。

「カーリーッ!」

「…くっ…」

 パスッ。

 銃弾は肩に命中していたが、何とか打つ力はあった

 弾はシリュウの眉間に命中した。シリュウは死んだ。

「……つっ」

 ガクンッ。

 裕希が倒れる。

「カーリーッ」

 東条院が駆け寄る。

 裕希を抱き起こす。

「しっかりしろっ」

 …しっかり…しろだと、いったい誰のせいで…、

 東条院の言葉に、怒りが込み上げてくる。そのせいで意識がハッキリした。

「…なぜ…キサマがここにいる」

「喋るな。…運がいいな、あんな至近距離で急所ははずれている」

 そう言いながら、止血をする。

 ギュッ。

「つっ…。運‥だって、そんなもの、あれが奴の実力なのだ」

 ‥いてて、やっぱり、しばらく撃たれてないから免疫がなくなってるな。気ィ失ったほうが楽なんだが、どこに連れていかれるかわかったもんじゃない。

 しかし…

「喋るなと言っている。今、車を……カーリー?」

「……」

 不本意だが、東条院の腕の中で気を失った。

 次に目を覚ましたときは、自分の家のベッドの上だった。


「総頭、裕希さんの様子は」

「まだ、目覚めていない」

 午前十時三十分。

 裕希の家には黒木と東条院が話をしている。あのあと、東条院は黒木に連絡をし、榊たちを解散させた。

「なぜ裕希さんは、いきなりこんなことをしたのでしょう」

「‥仇、だな。父親を殺した」

「仇? フン。そんなんじゃないよ」

 二人の会話に、突然裕希の声が割り込んだ。

「裕希さんっ」

「目が覚めたのか。気分はどうだ」

「いいと思うか?」

 そう言いながら、キッチンへ向かう。コーヒーを煎れる。

 それを見た黒木が、

「傷が塞がっていないんです。そんな濃いものを飲んでは」

 と言った。

 だが、裕希は気にしない。

 コーヒーを手に、椅子に座ると言った。

「言っておくが、父親の仇だからといってアイツを殺したんじゃないよ。私は売られた喧嘩は買う主義なんでね」

 コーヒーを一口飲む。

「では、仇は討たないというんだな」

 ‥シン…。

 コーヒーを置く。

「……なぜ私にかまう。頼まれたほかに何かあるのか? 必要以上に関わる何かが。言ってもらおうか」

 そう言って向けた目は、裕希ではなく、カーリーの目そのものだった。

 その目を見た東条院は、

「…わかった、実は、君の父親から自分の仇を取らせないでくれと頼まれたんだ」

「それでずっと、黒木に見張らせていたわけか」

「そうだ」

「…お前たちが私にかまう理由はわかった。だが、さっき言った通りだ、私は喧嘩を買ったんだ、お前たちにとやかく言われるいわれはない。たまたま父親を殺した奴と重なっただけだ」

 ぐぃ‥。

 コーヒーを一気に飲み干す。

「では…、どうしても北村を殺すと?」

「愚問だな」

「……わかった」

 カタリ…。

 席を立つ。

「黒木、帰るぞ」

 そう言って、東条院は出ていった。

「はい…」

 黒木は、裕希のほうを見て言った。

 そんな黒木に裕希は、

「何だ、わからないのか? この時点で私とお前たちは切れたのだ。わかったらさっさと帰るんだね」

「………」

 キィ…、パタン‥。

 バタン。ブロロロロ…

 走り去る車の音。

「…つ…」

 ガタンッ。

 ギュッ。

 いっ…つ…。

 左胸を押さえうずくまる。

「……けほ…」

 ケホケホ…。

 熱…、出てきたかな。

 …弾は、急所すれすれのところではずれていた。

「足を撃ってて正解だった…」

 けほっ。

 …寝よ…。

「ソファーでいいか」

 ‥ドサリ。

 居間に行って、ソファーに横たわる。

「………」

 ースゥ。

 眠りに落ちた。


 午後二時過ぎ

 あや子・宮内・斎北・水野の四人は、裕希の家に向かっていた。

「裕希ちゃん、帰ってきてるかしら」

「どうかな。昨日、貢が裕希ちゃんに会ったのが、夜の七時半位なんだろ?」

「ああ」

「その時、変わった様子はなかったのかい?」

 聖が聞いた。聖も、私服で来ていたことが気になっている。

「いや‥、何か考え込んではいたけどな」

「そう‥何か思い詰めていなければいいのだけれど」

 話していると、裕希の家に着いた。

 ピンポーン、ピンポーン。

 インターホンを鳴らす。

 ピンポーン…。

「…ん…」

 …誰…だ…。

 ピンポーン。

 はいはい。人がせっかく寝ているのに…。

 イヤイヤ起き上がり、インターホンを取る。

「…はい。どちら様…」

「裕希ちゃん? 良かった。あや子よ」

「……!」

 あや子、さん…?

「裕希ちゃん? みんなも来てるのよ」

 み・ん・な…?

「…ちょっと待っててください」

 がちゃ。

 インターホンを置くと、二階にあがった。

 まったく。

「ホンットにタイミング悪いなっ」

 いいかげん腹が立ってきた。

 黒のシャツに着替えて降りる。

 カチャリ‥。

 玄関の扉を開ける。

「散らかってますけど。どうぞ入って下さい」

 あや子たちを中に入れる。

「今お茶煎れますね。座っててください」

「ああ」


 カチャ。

 コーヒーをおく。

 裕希は、椅子をもってきて座ると、話を切り出した。

「どうしたんです四人そろって、珍しいですね」

「裕希ちゃん、何か…悩み事でもあるの?」

 あや子が言った。

「いいえ、無いですけど」

「本当に?」

「はい」

「ならいいのだけど。実は私、裕希ちゃんが心配で昨日の夜来たの。でも、裕希ちゃんはいないって言われて」

 っ! 言われて?

「誰かいたんですか?」

「ええ、校長先生がいたわ。なんでも先生も裕希ちゃんを待ってたって、裕希ちゃんのお父さんの親友なんですって?」

「はい」

 東条院が家に、中に入っていたな‥何もいじってないだろうな。あとで確かめよう。

「…裕希ちゃん」

 今度は、宮内がしゃべり出した。

 まっ、予想はつく。

「はい」

「映画のことだけど、どうしていきなりやめるなんて言ったんだい。しかも、自分ではなく榊先生に頼むなんて。理由を聞かせてくれないか」

「俺も聞きたい」

 斎北が言った。

 …理由‥、どう言おうか

 この際、本当のことを言った方が、スッキリするかな。本当はまずいんだが、まっ、どのみち言わなかったとしても、ここを離れるんだ、かまわんか。

「榊先生とは、ちょっとした知り合いなんで頼んだんですよ、実はちょっと今手を放せない仕事がありまして、それに、あの映画はまずいんです」

「仕事? バイトかなにか」

「いえ。学生は副業で、そっちが本業なんです」

 怪訝な顔をする四人。

「どんな仕事?」

 水野が言った。

「…アサシン」

「え?」

「アサシンなんて聞こえはいいけど、簡単に言えば、ようは殺し屋なんです私」

 プっ。

 あははははは。

「………」

 いきなり笑いだす四人。

 フゥ‥。

 信じてないな。

 裕希は溜息をつく。

 まぁ、いいけどね。べつに。

「わかったよ、そこまで言いたくない理由なら、無理に聞かない」

 宮内が言った。

「…はぁ…」

「でも、思ったより元気そうなんでよかったよ」

 そう言って、席を立った。

「帰るんですか」

「ああ、例の如く、依頼が待ってるんでね」

「そうですか、頑張ってください」

 四人を、玄関まで送る。

「それじゃあ」

「はい」

 三人出て行って、斎北が振り向いた。

「なにか」

「本当なのか」

「…信じてくれるんですか?」

「…どっちが、本当の君なんだ。あの時泣いた涙は、本当だよな」

「………、ああそうだ、西岡さんに言っといてください、あのとき私に渡したパスワード、偶然とはいえ、あれは危険ですからと」

 裕希は、笑って言った。

「…わかった。じゃあな」

 斎北たちは帰って行った。

「………」

 クラッ。

 ーッ!

 ガタンッ。

「…っ…」

 いて、肘ぶつけた。

 だいぶきてるな。今までの疲れが一気に出たか。熱もだいぶ上がってるみたいだ。

 しかし、今ここで寝込むわけにはいかない。

 解熱剤飲んどくか。

 ふらつく体を支えながら、キッチンに行き飲む。

 コクコクコク。

 ハァー。

 これで熱はひくだろう。

 カタ…。

 椅子に腰かける。

「………」

 言ったら楽になった‥。

 笑い飛ばされてしまったけど、斎北さんは、信じてくれたみたいだけど、べつに、信じてもらわなくてもいいけど。

 ……どっちが本当の、か……

「どっちも、私なんだけどな………」

 目をつぶると、眠りに落ちていった。

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