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ASASHIN  作者: 真鵬 澄也
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第7章-復讐かそれとも-

 榊と裕希が話している頃、東条院は黒木と話していた。

「そっちに、裕希は行っていないか」

「いきなりどうしたんです? 総頭」

「お前、裕希に父親のことは言っていないか?」

「言うわけありません…何か、あったんですね」

 裕希さんの身に。

「実はな…」

 そう言つて東条院はすべてを話した。

「……じゃあ、裕希さんは…」

「ああ、多分そうだろう、なんらかの形で父親のことを知ったんだ。多分裕希は、榊のところに行って原因を聞き出すだろう。銃で脅してな」

「でも……」

「おそらく、北村のところに行く前に、お前のところに行くと思ううから、私が行くまで引き止めておけ」

「‥わかりました」



 保健室。

 榊はまだ混乱していた。

 コンコン。

 ガチャ。

 入ってきたのは、

「総頭」

「その様子だと、やはり来たな」

「はい。あの‥江藤様がカーリーの父親というのは」

 …話したのか…。

「そのことは後で話す。黒木の所へ行く、車を用意しろ」

「はい」



 いったん家に戻った裕希。

 午後三時。

「……」

 北村の家は、ここからだいぶ遠い‥。

 途中までバイクで行くか。

 念のため、予備の弾を持っていくか。

 黒木のところに行ってから行くか。

 仕事の前にお酒を一口飲んでいくのが、唯一の癖だった。

 それが仇となることなど、このときの裕希には想像もつかない。


 ヘルプに着くと、客はいない。

 まだこの時間だと、いつもなら客はいるのに。変だな。

 カウンターには、ちゃんと黒木がいた。

 裕希に気付いた黒木。

「…こんにちは、今日はどうしたんですか。仕事は入っていませんよ」

「…ちょっとね。それより、客がいないじゃないか」

「はい。今日はもう閉めたんです」

 閉めた? 珍しいな。

「なぜ?」

 と、聞く。

「ちょっと、用事ができたんです」

「そう、でもちょうどいい、話があるんだ」

「…シリュウのことですか?」

「…っ」

 ハッとする裕希。

 黒木の目をじっと見て‥

「…誰に聞いた…」

 と聞く。

 しかし、黒木は応えない。

「………東条院から電話があったのだな。それで店を閉めたのか、まぁ、いずれ話す気だったから別に構わないが、…用というのは東条院に会いに行くのだろう?」

 そう言って、裕希は去ろうとする。

「いいえ、貴女を引き止めておくよう、言われました」

 裕希の足が止まる。

「………」

 図られた!

 裕希はそう思った。

 東条院は調べたのだ。シリュウの雇い主を。

 北村のことを知った。

 私が北村を殺すと思ったのだ。

 私が黒木のところに寄っていくことを知っていた。だから黒木に連絡して私を北村のところに行かせないために…。

 ダッ。

 裕希は入口に走り出した。

「裕希さんっ!」

 黒木が追う。

 カンカンカンッ。

 階段を駆け上がり、外に出たとき、

 ハッ!

 東条院の車が見えた。

「ちっ…」

 バイクに乗っている時間はない。

 裕希はそのまま走り出した。

「総頭っ! カーリーが」

 榊が叫ぶ。

「わかっている。榊、お前は学校に戻れ。連絡があるまで動くな」

「わかりました」

 ガチヤッ。

 車から出て、榊は学校へ戻っていった。

 車は、黒木の前で止まる。

「乗れ」

 車は黒木を乗せ走り出した。

「‥総頭、すいません」

 黒木が言った。

「……洋一に、もう一つ頼まれたことがある」

「江藤様に? 何です」

「仇を取らせないでくれ、とな」

「…自分のために、手を汚させたくなかったんですね」

「……」


『本当なのか、嘘じゃないのか? 秀之』

『残念だが、本当だ』

『裕希が…アサシンなんて。俺は、どうしたらいいんだ。一体、どうして、アサシンなんて』

『理由は、本人に聞くしかないだろうな。何か深い事情があるのだろう』

『…もし、私が裏国の人間だと知ったら…、あの子は…どんな顔をするだろう』

『洋一‥』


 ハァハァ。

 東条院達を撒くために、路地裏や狭い道を走っていく。

「…総頭、申し訳ありません。見失ってしまいました」

「……仕方ない。黒木、お前は店に戻れ」

「わかりました。総頭はいかがいたします?」

「裕希の家に行く」


 東条院達を撒いた裕希は、ビルの屋上にいた。

 学校にも店にも、家にもいられない…。そして、北村のところにも行けない。

 東条院は北村の暗殺を阻止するだろう。既に手をまわしているはずだ。

「……」

 これからどうするか…。行くところがないとなると‥新しい隠れ家を探すとしても、裏のルートでは買えないだろうから、表‥か、買えるだろうかこの歳で、だが奴のことだ調べあげるかもしれない。

 どうする…。

「………」

 …あのマンションに行ってみるか。

 以前まで、隠れ家として使っていたマンションに。

 もう、奴の手がまわっていたら諦めよう。

 −と、その前に、変装していかないと。

 裕希は、美容院とブティックに行く。

 だが、不運は重なるもの、行った美容院に斎北がいたのだ。

「いらっしゃいませー」

 店員の息の揃った声。

 女性店員が裕希に近づいて、

「初めての方ですか?」

 と、聞いた。

「はい」

「どういった髪型にしたいか、お決まりですか?」

「特には、ただ、今と全然違う髪型にしていんですが」

 そう言ったら、店員はニッコリして、

「かしこまりました、今、担当の者を付けますのでこちらの席でお待ち下さい」

 と言って、奥に行った。

 ちゃんとした店だな。

 そう広くはないが、だからこそキチっとしているのか。

 別に、担当者を付けてくれなくてもいいんだけど、ここに来るのは最初で最後だから。

 あれこれ考えていると、担当らしき人が来た。

 その人の顔を見たとき、裕希の顔が恐張った。

「よう、いらっしゃい裕希ちゃん」

「…せん、ぱい‥」

「びっくりした? ここのバイトしてるんだ。けど、裕希ちゃん家ってここから遠いよな」

「…たまには」

「そうか、確か今と違う髪だよな、具体的には?」

「…肩まで切って、前髪からサイドにかけてシャギーを、そのあとストレートパーマをかけて下さい」

「シャギーが目立たなくなるけどいいのか?」

「ええ、かまいません」

「わかった。でももったいないな、伸ばしてたんだろ」

「そういうわけじゃないです、ただ、切る暇がなかっただけです」

 本当は…、仕事に行くため変装するのに便利だったから。

 髪は武器の一つだ。

 ジャキッ、ジャキッ。

 肩より少し下めで、一気に切る。

 それからシャキシャキと、軽やかに切られていく。

 出来上がるまで、裕希は目をつぶっていることにした。

 …なんで、こんなときに先輩と逢うんだろうか、一人になりたいと思っているときに。

 まるで誰かに仕組まれたみたいだよ。いや、仕組まれたんじゃないむしろ、そう、誰かに踊らされている、そんな感じだ。ここまで思い通りにならないとそう考えてしまう。

 …こんな状況がずっと続くと、きっと私はどうにかなってしまう。気持ちが不安定になってしまう。だが、今動くわけにはいかない、日本を発つわけにはいかない、父さんの仇を取らなければ。シリュウもいる……。

 ……クソッ! 今にもどうにかなりそうだよっ!

 裕希は思わず、髪を切っていることも忘れて、下を向いてしまった。

「ぉわっ。いきなりどうしたんだ」

 斎北のびっくりした声が飛んできた。

 ハッ!

 裕希は我に返った。

「ア…すいません」

「いや、大丈夫だよ。カットは終わってるから」

「そうですか、良かった」

「じゃ、タイマーが終わるまで、ちょっと我慢してな」

「はい」

 斎北は、他の人のところに行った。

「………」

 …ハァ…。

 まずった、すっかり忘れて考えこんでしまった。

 やっぱり、父さんのことは禁句だな。

 私が私でなくなってしまう。

 別なことを考えよう。

 私が映画に出ないことは、先輩たちはアイツから聞いただろうか。斎北先輩は何も言ってはこない。こんな、無責任なことをしたんだ、いくら人の良い先輩たちでも、許すはずがない。

 …クス。

 それとも、呆れられてしまったかな。

 もしそうなら、…ちょっと悲しいな。

 まぁ、自分でまいた種だから、仕方ないけど。

 ピコンピコンピコン…。

 タイマーが切れた音だ。

 カチッ、

「はい、お疲れさん。シャンプーするから」

「はい」

 シャンプー台に移動する。

 シヤー…。

「熱くない?」

「大丈夫です」

 ブワァー

 髪を乾かしながら整える。

 仕上げはムース。

「…こんなんで、どう? 前髪少し軽くしてみたけど」

「…バッチリです」

「だいぶというより、全然イメージ変わったな」

 そうじゃなければ意味がないんですよ。

 よし。

「ありがとうございました」

「いや。また来てな」

 お金を払い店を出る。

 途中、化粧と着替えをするのにディスコに入る。目立たなくて済むからね。

 服装は、チャイナ風のロングドレスに、丈の短いジャケット。

 化粧もプロ並みに。

 …さて…、行きますか。



「……」

 見張りは‥、いない…。

 正面からではなくて、裏から入る。

 壁があるがそんなもの飛び越えればいい。

 最上階に行き、部屋に入る。それでも気は抜けない。

 ‥ドサリッ。

 ベッドに腰を下ろす。

 フウ…。

「…どうするか…」

 ここも長くいられない。

 …早く済まさなければ。二、三日中に…。

「………」

 パソコンの前に座る。

 しばし考える。

 ‥カチッ。

 パソコンのスィッチを入れる。

「……北村は後回しだ。まずはシリュウをかたずける」

 信号弾はあげられないが、奴の組織コードにメッセージを入れることはできる。

 メッセージは。

『五丁目、廃屋のビルにて待つ』

 名は出さない。奴ならわかるはず。

「さて…、一眠りするか」


 ピロロロロ、ピロロロロ。

 裕希の家にいる東条院の携帯電話が鳴った。

「…私だ」

『黒木です。その後、裕希さんからは…』

「いや。ここには来ていない。榊に学校を張らせているが来ていないようだ」

『そうですか、私のところにも来ていません』

「……あそこはどうだ」

『あそこ?』

「隠れ家に使っていた部屋だ。あそこは誰も張らせていない」

『…総頭…』

「勘違いするなよ。私がそこまで良い人だと思うか?」

『…そう、でしたね。行きますか?』

「ああ、頼む」


 午前一時。

「……」

 約二時間くらい寝たな。

 それじゃ、行くかな。

 ‥服装は…

「……いっか、これで。…念のためズボン穿いてくか、やっぱり」

 脇に銃をしまい、足にはナイフを。

 サングラスを掛けて。

「行きますか」

 バイクで行きたかったけど、黒木の店に置きっぱなしだから仕方ない、そう遠くないから歩いて行くか。

 新しいバイク買わなくちゃな。

 裕希が出ていった数分後、黒木が来た。

 ガチャガチャ…。

 鍵が掛かっている。

 いったん一階に戻り、鍵を借りる。

「すいません。712号室の鍵を貸して下さい」

「あなたは?」

「兄です」

 鍵を借りて、部屋に入る。

 人の気配は、もちろんない。

 ベッドを触る。これは、裕希が来たかを確かめるためだ。

「……」

 微かだが、暖かい…。

 総頭の言う通り、裕希さんはここに来た。

 しかし、いったい何処へ…私が来ることなど知らないは。ここに長くいられないことはわかってるだろうけど。

 …何か、手掛かりはないだろうか。

 …パソコン…。

『なんらかの形で、父親のことを…』

 ここのパソコンには、フロッピーは入っていない。とすると、

 黒木は受話器を取り、総頭にかけた。

 プルルルル、プルルルル。ガチャ。

「黒木です。総頭のおっしゃった通り来てたようです。それから裕希さんのパソコンに入ってるフロッピーに、おそらくそこに父親のことが、…はい、私の感ですが。…わかりました、こことどまります」

 東条院は二階にあるパソコンの部屋に行く。

「…これか」

 起動させ、中身を見る。

 データが出てきた。それを黙ってみている東条院。

 そして、パスワード。

「パスワード、裕希はわかったようだな」

 さて、どうしたものか。と、考えるが、悩む必要はない、それようの機械がある。

 懐からその機械をだすと、パソコンにつなげ、作動させる。

 ピー、カタ、カタカタカタ。

 ピピッ。

 パスワードが解け、死因のデータ出てきた。

 それを見た東条院は、

「ふざけたまねを」

 と、言った。

 誰れがこのフロッピーを…。

 ……!

『…台本が盗まれた』

 アイツ、シリュウか。


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