四
ゴブリンは森の中を迷う事無く、村まで辿り着くことができた。
今は村が一望できる丘の上にいる。
村は家が三十軒ほどの村だった。
男手は多くても十五から二十五だろう。
今の戦力でも十分に殲滅できる規模だ。
今夜決行しよう。
一度洞窟へ戻って、作戦を練ろう。
下手にゴブリンを分けて、各個撃破されてもこまる。
まとまって正面から行こう。
「魔王様。失礼ですが、そこまでお悩みになるならゴブリンの数を増やしたらどうでしょうか?」
「少し増やすのは賛成だが、あまり多く増やしてはだめだ。
生態系が崩れる可能性がある。
調査のために国が調査に動く事もありえる。
先の魔王もそれが原因で見つかったんだ。
できるだけ隠密に動こうと思う」
「そうでしたか。
過ぎた事を言いました。申し訳御座いません」
「いいよいいよ。
それより、村はどれくらいの規模だと思う?
こちらの被害予測もできる?」
「村に畑はありましたか?」
「ああ。小さい畑が少しな」
「でしたら、畑のみで生計を立てているとは考えにくいですね。
おそらくは、狩りで生計を立てているのでしょう。
ですから弓矢の扱いに長けている可能性が高いです。
正面切って戦おうとしたら、現状では厳しいと思われます。
はっきり言ってしまえば……勝てないと思います」
「わかった。
みんな! 村を襲撃するためにさっきの丘に移動するぞ!
作戦はそこで説明する!
以上! 着いて来い!!」
「「「ワカッタダ!」」」
さっきの丘に来ている。
俺も戦闘に参加し、ゴブリンを四部隊に分けた。
俺の部隊は三体しかいない。いくらでも増やせるからだ。
夕日が山に隠れて、村は陰に包みこまれる。
俺はあらかじめ決めておいた場所に移動し、最後に配置に着いたゴブリンが合図の音を立てるのを待つ。
何か違和感がある。
何かが割れる音が響いた。作戦開始だ。
最も近くにいた見張りを、ナイフで一突きに殺す。
近くにある家に入る。
ゴブリン達には、男のみだったら殺せ。
女、子供。老人のみだったら脅しておけ。
男もいたら、その場で待機。
と、言ってある。
女、子供を殺すのは、自分には出来ないと思った判断からだ。
ゴブリンと協力して、全ての家を回りきった。
作戦どうりに、家の中にいる人を全て集めて、村の中心へ向かう事にする。
既に人が集まっていた。
ホブゴブリンの効果は絶大のようで、反抗しなかった男がかなりいた。
今回は殺しが目的では無いので岩を掘るための道具。
あれば剣を盗りたいと思う。
「あの……」
話しかけてきた者は、俺が連れてきていた老人だった。
「なんだ?」
「貴方様はもしかすると、魔王様ではありませんか?」
「そうだが?」
「では先代の魔王様はやはり殺されてしまったのですね」
「お前は誰だ?」
「失礼致しました。
私はこの村の村長のノイスと申します。
先代の魔王様に貢物を納めていました。
これからも納めさせていただきます。
住居はもう決まっておられますか?」
「いや。まだだが?」
「でしたら、この村にお住みください。
あ、さっき殺された者達には、村の者では御座いませんのでご安心ください」
「では、何者だったんだ?」
「盗賊で御座います」
「盗賊? なんで今の今まで襲われなかったんだ?」
「先代の魔王様がお倒れになったとき、村にいらっしゃったゴーレムが崩れ去りました。
このとき、私たちは魔王様がやられてしまったと実感したのです。
そして、このタイミングを見計らったように盗賊どもが攻めてきました。
実際見計らっていたのでしょう。
私たちは抵抗をせず、新しい魔王様がいらっしゃるのを待っていたのです」
「他にはこのような村はあるのか?」
「ええ。村のものなら案内できますが」
明日と明後日でこの辺りの村を統一。拠点化しよう。
「ではよろしく頼む。
ゴブリン全員分と、俺とエルリーデの分。
ゴブリンは詰め込めるだけつめてもいい。
俺とエルリーデで一軒貸してくれ」
「分かりました、魔王様。
私たちはもう自由に動いてよろしいでしょうか?」
「構わない」
さてと。明日は忙しくなりそうだ。