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「さあ、早く行きましょう。

 出ないと迷宮が崩れてしまいますので」


 エルリーデが腕を引っ張る。

 どこかコンビニに行くかのような軽い足取り。

 穴から出、森を歩いている。


 小一時間ほど歩くと、小さめの洞窟が見えてきた。

 エルリーデは迷いも無く洞窟へ入る。まだ腕を持たれたままなのでなす術も無く、洞窟へ引きずりこまれた。


「この魔石の上に手を置いてください」


 魔石とは最初に手を触れた者に力を与える不思議な石である。

 いい事ばかりではない。

 力を得る代わりに、別の力を奪われる事もある。


「なんなんだ?

 突然話しかけてきたと思ったら、ここに連れてきて希少価値の高い魔石に手を触れろって?

 どう考えても怪しすぎるだろ」

「そう……ですね。

 怪しいですよね……」


 見るからに落ち込んでしまう。


「いや……。ただ理由を知りたいだけだよ。

 行動の意味が分からないから」

「ごめんなさい。

 説明している時間が残されて居ないんです」


 四肢の自由がきかなくなる。

 俺の意思に関係なく、魔石へ手が伸びる。

 必死の抵抗もむなしく、魔石に触れてしまった。


「あぁ。あがぁぁぁぁぁっ!」


 痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


 意識が痛みに塗りつぶされる。

 またもや抵抗するが、意識は黒く塗りつぶされてしまった。


◇◆


 意識が覚醒する。

 頭が重い。


 耳には獣たちの鳴き声が聞こえてくる。

 まるで獲物を目の前にしているような。

 ……あぁ。眠い。

 もう少しだけ……。


 何かが割れる音と共に意識が急激に覚醒する。


 この森特有のブラックハウンドだ。

 通常の個体よりも二周り以上大きく成長した個体。


 俺は手馴れた動作である事をする。

 体からMPが抜ける感覚と共に、目の前に魔法陣が四つ現れる。

 魔法陣の中からそれぞれゴブリンが出てくる。


「全員攻撃」


 まるでそうするのが当たり前のような声。それは自分の口から発せられていた。

 ゴブリンは統率の取れた動きでブラックハウンドを囲み、素手で殴り殺した。

 こちらの被害はゴブリンが一体噛み殺されただけ。


「お早う御座います、魔王様。

 初めまして。エルリーデで御座います。

 これから宜しく御願いいたします」


 意識を失う前に聞いた声。確かにエルリーデの声だ。


「今の状況を説明してくれないか?」


「はい。

 魔石に手を触れた事は憶えてますか?」


「なんで体の自由を奪ってまで手を触れさせようとしたんだ?」


「前の私に残されていた時間が無かったからです。

 私という存在は魔王様の魔力によって支えられています。

 魔王様の消滅と同時に、私という存在は消えてしまうのです」


「俺が魔王。というのはどういう事なんだ?」


「そのままの意味で御座います」


「じゃあ、どうして俺が魔王なんだ?」


「魔王たる器をもった貴方が、魔石に触ったからです」


「さっきの俺が使った魔法はなんだ?」


 俺が最も聞きたかったことだ。

 なぜ、今まで不可能とされてきた、生物が魔法によってでてきたのか?


「正確には魔法ではありません。

 魔王特有のスキルです。

 MPを消費して使うものです。

 最初はゴブリン。

 スキルのLvが上がれば、より強い魔物や魔獣を召喚する事ができます。

 召喚したものはLvが上がるとランクアップします。

 ランクアップすると大きく姿が変化したり、人語を理解するようになります。

 だんだんと人型になっていく者もいるようです」


「それで、どうしたらいいんだ?」


「魔王様の自由で御座います」


 つまりは、魔物で軍隊を組織できる。ってことだ。

 新たに十七体のゴブリンを呼び出す。


「行くぞ」


 ゴブリンを引き連れて森にでた。

 すぐに獲物を発見する。

 ブラックハウンドの群れ。

 さっきのはたまたま逸れていただけだ。大抵は群れで行動している。

 数は七体。たまたまだが風下に立っているので気づかれて居ない。


「全員突撃。

 一匹に対して五体以上で当たり、速やかに各個撃破しろ」


 忍び寄るように近づくと、一斉に飛びかかる。

 二体を瞬く間に倒し、程なくしてもう二体倒す。

 二十対三。勝ちは決まっているだろう。

 予想に反する事無く、全員無傷であいては全滅した。


 奇襲で半分程度を倒してから、残りを……。という方法で一匹も失う事無く、計三十二匹のブラックウルフを倒した。

 魔法は……予想どうり使えなかった。

 初歩的な魔法のファイアボールでさえも発動しなかったから間違いない。

 まぁ、この『力』の代償だったら安いものだ。



 俺は……この力で王都に……あいつらに復讐する。


 勇者たちを解放し、元の世界へ帰る手立てを見つける!

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