表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロエ・リベラ暗殺計画  作者: 大木戸いずみ
24/58

24 父の呼び出し

 コンコンッと誰かが扉を叩く音が部屋に響く。

 私とナターシャはその音に過剰に反応してしまい、思わず体をビクッと震わせる。秘密の話をしている時に、いきなり誰か現れると心臓が縮む。

「お嬢様、レオナルド様がお呼びです」

 柔らかい侍女の声が部屋の外から聞こえた。

 どうして父が? と思いつつも「すぐ行くわ」と短く返した。

「お父様が私に一体なんの用かしら」

「謝罪? かもしれませんね。とにかく、旦那様はお嬢様と仲直りしたいはずです」

「それもそうね。私、溺愛されてるもの」

 満面の笑みをナターシャに向けた。彼女は私の表情を見て、顔を引きつる。

「……何を企んでいるんですか?」

「あらやだ、何も考えていないわよ」

 私はナターシャに疑いの目を向けられる。

「そんなことよりも、王子の協力してよね。まだ死にたくないもの」

「分かりました」

 ナターシャはどこか頼りない声でそう言った。

「お嬢様が殺されたら、幽霊になって出てきそうですし」と、彼女は付け足す。

「もちろんよ。王家を呪ってやるんだから」

「不細工の呪いをかけるのはやめて下さい。目の保養を失いたくないので」

 ノアの本性を知ってもなお、彼のことを目の保養だと思えるナターシャを凄いと思った。

 私はナターシャにこのことは絶対口外しないようにと約束してから、部屋を出て父のところへ向かった。

 さっきまでメイド服を着ていた私がいつも通りの姿になって、使用人達はどこかホッとしているようだった。

 大丈夫、私の頭は正常よ。ただ、変な計画に巻き込まれているだけなの。

 ジェームズが上手く説明してくれているはずだから、誤解が解けたと信じたい。

 父の部屋の前に立ち、ノックをする。

「クロエです」と言うと「ああ、入りなさい」と落ち着いた父の声が中から聞こえてきた。

「クロエ、お前は女優志望だったのか?」

 部屋に入るなり、父から出た言葉は拍子抜けするものだった。

 え? 呼び出された理由ってそれ?

 昨日あんなことがあって、よくそんな気楽に私を呼び出せたわね。

「だから、メイド姿で屋敷の中をうろうろしていたのか?」

 私が何も答えないから、更に父が質問をしてくる。

「それを聞く為に私を呼んだんですか?」

 私は怪訝な表情を浮かべ、父を見つめる。私はあまり父に反抗的な態度を見せたことがないからか、彼は少しおどおどとしながら声を出した。

「い、いや……。ただ昨日のことについて謝りたくて」

 この父が本当にこの国の宰相だと疑ってしまう。

「ああ、謝罪は結構です。ただ、お願いを聞いてくれますか? そしたら全て許します」

「ね、願い? なんだ、言ってみなさい」

「私を魔法学園に入学させて下さい」

 私の言葉に父は固まった。目を見開いたまま私をじっと見つめる。私は彼が言葉を発するのを待った。

「だ、だが、今更入学なんて」

「お父様に奪われた私の人生を取り戻させて下さい」

 父にわざと罪悪感を与える。

「お嬢様、容赦ない」と、後ろから小声が聞こえた。

 聞こえてるわよ、ナターシャ。

 父は私と縁を切るなんてことは出来ない。私は父に遠慮なく我儘を言える。それに、私は今まで私が父の我儘を受け入れてきたんだもの。今度は父が受け入れる番だ。

 ここで食い下がるわけにはいかない。

「本当にそれでいいのか? その魔力とその髪色は白い目で見られることがあるぞ」

 急に父は真剣になる。さっきまでとは違う雰囲気を醸し出す。

「自分の人生ぐらい自分で決めるわ。たとえ、学校で私がゴミを投げつけられようと自分で決めた人生だもの。戦ってみせるわよ」

「流石私の子だ」とフッと父は笑みを浮かべた。

 それから、父は机の中から何か書類を取り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ