太陽と月のない時期(ヘリアカル・アポクリファ)・Ⅵ
「メイザース、あいつの命令か?」
ローゼンクロイツの質問に青年は、にっこりと微笑む。
「ああ。でも、お前たちが来たときは渡していいと言われていたから、渡しておく」
ソロモンをアーヴィガイヌに向かって投げ渡す。
「……どうせ、〝持ってる〟からいらないって言ってるんでしょ、あいつ」
投げ渡されたソロモンを受け取ったアーヴィガイヌは、メイザースを睨みながら言う。
「必ず我が君の所に来るとわかっているというのも理由のひとつだ」
「我が君……ねえ。じゃあ伝えなさい。絶対に扉は開かせないし、鍵もソロモンも返してもらうってね」
「伝えておこう」
薄く笑い、メイザースは消えた。
メイザース・マクレガーは「妖術師」に属する錬金術師だ。
「……レヴィの所に行くか?」
「そうね。ここで解除するわけにもいかないし」
メイザースがそこから消えたあと、ローゼンクロイツがアーヴィガイヌに問いかけると、彼女は頷いた。
「……あの男より能力は上なのに、あの男に従って、なにを考えているんだ」
誰もいない部屋で呟いたレヴィの耳に、かつんという靴の音が届く。
「お前には関係ないことだ。──お前は傍観者なんだから」
靴の音の主はメイザース・マクレガー。アーヴィガイヌとローゼンクロイツの前から消えた彼は、レヴィの許へやってきた。




