太陽と月のない時期(ヘリアカル・アポクリファ)・Ⅴ
「アーヴィー」
「わかってるわよ」
ローゼンクロイツも何かに気付いたのだろう、アーヴィガイヌの名を呼ぶ。小さく舌打ちして、アーヴィガイヌは館主を見た。
「屋敷にいるのは誰か聞いても?」
「誰もいませんが」
しらをきるように首を傾げて言う館主にローゼンクロイツが、
「いいえ、いらっしゃるでしょう、館主。〝彼〟がどうしているんです?」と問う。雰囲気の変わった彼に怪訝な表情をする館主。
「レネリア様……?」
「彼がいるのなら、隠す必要もないので、正直に言いますが、レネリアは偽名で本名はローゼンクロイツ・クリスチャンです」
「!? アクワ・ペルマネンスの……!」
名乗られた名前に館主は驚く。
錬金術師でなくても、ローゼンクロイツの名前は有名だ。
千年以上という月日を生き、錬金術師を束ねる地位にいる人物として。
「いいから早く出てきなさいよっ、メイザースッ!!」
声を荒げてアーヴィガイヌは中にいる人物の名前を叫ぶ。
「──そんな大声で呼ばなくても出てくるさ……アーヴィガイヌ」
くっくっと笑いながら、金髪の青年が屋敷から出てくる。
「あの……」
「ああ、館主。用事はすみましたので、失礼しますよ。それから、今日のことは忘れなさい。よろしいですね?」
冷えた眼で見られた館主は震える声で返事をし、屋敷に戻っていった。
「さて……場所を移動しようか?」
「必要ないわよ。アンタが持ってるモノを渡せばいいだけなんだから」
青年の右手を見つめ、アーヴィガイヌは言う。
「……館主が持っていたのを買い取らせてもらったよ」
そう言って、右手に持っていたモノを見せる。持っていたのはソロモン。




