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AKIRA  作者: 千路文也
プロ1年目  -友情-
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045  総合リラクゼーション施設


 石井軍団、山室、東川の五人は無事に愛知の総合リラクゼーション施設に辿り着いた。その間はずっとバスに居たので暇つぶしとばかりにゲームばかりをしていたAKIRAと石井は目にクマを浮かべて疲れた表情を見せていた。まるでゾンビの抜け殻のようだ。それだけ熱中してゲームをプレイ出来たという事なのだが、やはり疲労を失くすためにここまで来たのに、その途中で疲労するというプロらしからぬコンディションの取り方をしてしまった。


 両者共に力の抜けた状態でフラフラとよろめきながら、バスから降りた。するとだ。


「!」


 両者の顔が急に引き締まっていく。眼前に広がる光景はゲームの疲労感など吹き飛ばすものだったのだ。周りは山に囲まれている田舎なのだが、目の前にあるのは大企業のビルのように高く聳えつ建物。ここが目的地の総合リラクゼーション施設なのだろう。あまりの迫力に二人は少年のように目をキラキラと輝かせながら、小躍りを始めた。手を取り合って、タップダンスをしているのだ。


「素晴らしいな。こいつは!」


「ああ、何回来ても驚かされるぞ!」


 初対面のAKIRAがここまで悦ぶのは分かるが、何故だか石井も嬉しそうにはしゃいでいた。もう50歳が近い年齢だというのにここまで悦べるのはある意味才能だ。


「おい、二人共。テンション高すぎないか?」


 光太朗は目を細めてこちらを見ていた。確かに、良い歳をした大人と老け顔の筋肉ダルマが踊っているのだ。疑い深い目で見るのも分かる。


「おい光太朗君。寝ぼけてるのかい」


「そうだ。こんな巨大な建物、地元にはないぞ」


 阪海ワイルドダックスの拠点は都会に比べると見劣りしてしまう。なぜなら高層ビルの類が一切ないからだ。良くも悪くも田舎と都会を掛け合わせたような場所なので、当然このような施設もない。


「ったくよ。どうかしてるぜ」


 光太朗に言われればお終いだ。しかし、そんな事はお構いなしにと踊りを披露している。そんな二人を見ながら、今度は東川が話しかけてきた。


「そろそろ行きませんか?」


「おう、そうだな」


「すまん。つい舞い上がってしまった」


 二人は踊りを止めて、玄関口から施設内に入った。施設は赤いカーペットを敷き詰めていて高級感溢れる場所だった。きっと普段は会社の重鎮などが社会人特有の終わりの無いストレスを解放するために利用している筈だとAKIRAは想像した。


「着いたぞ。いやあ……一年は早いな」


 歳をとると時間の経過が早くなる。それはいつも同じ事を繰り返す仕事という一連に問題がある。新鮮感がないので記憶に残る事はなく、結果的に時間の経過が早いと錯覚してしまうのだ。


「本当だな。もう一年経ったのか」


「懐かしいですね」


 石井、光太朗、東川の三人は施設内を見て懐かしがっている。あれだけナンセンスだと小馬鹿にしていた光太朗も少年の目になっているではないか。これにはAKIRAも思わず笑みを浮かべてしまう。それは光太朗が日頃のモンスターのような挙動とは一変して、良心的な顔をしているからだ。


「受付に行くぞ」


 AKIRAがそう言って受付の場所まで歩いていくと、後ろから三人もついて来ていた。これが学生ならば自分の私利私欲を優先して勝手にトイレに行こうとするが、この三人はこれでも大人だ。トイレぐらい我慢できる。


「いらっしゃいませ、こんにちは」


 受付のお姉さんはAKIRAの驚異的な肉体を見ても驚く素振りを見せずに接客をこなしていた。これが並の店員ならば、目の前にスーパースターがいる事で取り乱してしまい、良からぬミスを連発してしまうだろう。ところが、目の前の女性はそんな素振りを一切見せずに微笑みかけていた。


「今日予約していた阪海ワイルドダックスの五人だが」


「お待ちしておりました。部屋にご案内しますので……」


 そう言おうとした瞬間だ。石井が片手を挙げてストップと言い始めた。これには受付のお姉さんもたじろんでしまう。


「自分達で各々好きに使わせてもらう。案内は不要だ」


 石井はもう30年間もこの施設でオーバーホールしてきた。故に、大体の場所は分かると言うのだ。


「そうですか、かしこまりました。それでは宿泊施設のお部屋のキーを渡しておきます。ごゆっくりどうぞ」


 そう言うと、彼女は部屋の鍵を石井に渡した。


「よし、それじゃあ行くぞ」


「行くって何処にだ?」


 純粋に気になったので、AKIRAは尋ねた。


「温泉だよ。疲れを取るのには丁度いい」


「なんだ、もう温泉に入るのか」


 まだお昼の14時を周ったところだ。普段から深夜近くまで練習しているAKIRAにとってはこの時間に風呂を入ったことなど一度もない。人生でだ。


「露天風呂だからな。明るいうちに入った方がいいぞ」


「露天風呂!」


 AKRAの目に輝きが取り戻った。そしてそれにともなって、自然に肩でリズムを取り始めるAKIRAだ。嬉しくなるとつい踊ってしまうのは小学校までアメリカの学校に在籍していたからだ。それ以来、悦びを感じてしまうとつい踊りそうになってしまう。


「まあ、落ち着け。まだ時間はタップリとあるし」


「露天風呂は逃げないぞ」


 石井と光太朗が言葉を発してきた。


「そうだな、今日はゆっくり休むのが仕事だったな」


 こうして、五人は温泉施設を目指して、建物内を歩くのだった。しかし、まずは荷物を宿泊施設に持っていかないといけない。それが終わり次第、行動開始だ。



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