将来の夢(カケル視点)
パパは最近ずーっと、家に居ない。
この間、またちょっとだけ帰って来た時に、
「おじいちゃんの家に行ってくるけど、何か伝えておきたいことある?」
と聞かれた。
『次に遊びに行ったら、おじいちゃんのゲームの事を教えて』
と伝えてほしい。
それをパパに伝えた。
里中さんが「尊敬する」って言っていたけれど、おじいちゃんはどんな事をやっているんだろう?
「わかった」
と言って、パパはまた出かけて行った。
小学校でこの前、冬休みの宿題が出された。
『将来の夢を、みんなに発表できるように書く』
というもので、プレゼン? って言うみたいだ。
3学期に入ってから、クラスのみんなの前で順番に発表するそうだ。
作文だけではダメで、
絵、写真、音……『そざい』っていうやつ?
二種類は入れなければいけない。
『パワーポイントと、Canvaのどちらを使ってもいい』とも、先生は言っていた。
どちらも使ったことがないので、パパに聞きたかったんだけどな。
――
「めんどくさ。これこそ、AIさんに作ってもらおう」
と、ハルは休み時間に言っていた。
「先生にバレるんじゃない?」
と、ミホが言っていた。
「AIさんが作ってくれたものを、僕が直して、『自分でやった』ように見せればいいんだよ。それならバレない」と、ハル。
ぼくの場合は、パパのパソコンを、パパが仕事で持って行っちゃっているし。
でも、発表の日はまだまだ先だから、またパパが帰ってきた時にお願いしてみようかな。
「僕は将来、ユーチューバーが良いな。ムカキンみたいな」
と、ハルが言っていた。
「わたしは、声優さんかなぁ」
と、ミホが言っていた。
「カケルはなんかあるの?」
ハルに聞かれたから、「わかんない」と返事した。
だって、先のことなんてわかんないし。
下校の時間。
前を歩いているクラスの子たちがさわいでいた。
「今日はどこに集まる?」
「スーパー公園でしょ!」
「遠いなぁ!」
「森崎の自転車、こわれてるんだっけ」
「じゃ、かっちゃんの家にする?」
「部屋を片付けないと、家の中で遊んじゃだめだってママが……」
「ドアの”外”で遊べばいいじゃん」
「えー」
「家の『中』がだめなんでしょ?」
「そうなるのかな……」
「外、さむくない?」
「さむくなったら走ればいいし」
「ミンテンドーフイッチ持って、かっちゃん家な!」
「アクライやろうぜ」
「まだ買ってもらってないよ!」
「”おすそわけ”機能で、ソフト1つあれば4人できるから。いけるいける!」
クラスの子たちは、新しく出たばかりのゲーム『アクアライダー』に集まり始めている。
『CCOが終わる!』って知った十月の頃には、みんな学校で大騒ぎしてた。
今ではみんなあっさり、新しい別のゲームに行っている。
それでいいのかもしれない。
CCOに、こだわらなくていいのかもしれない。
ハルはそういえば、最初から言っていた。
「写真とったり、できることをやればいい」
って。
ぼくのパパも言っていた。
「サービス終了は避けられなさそうだね。あきらめなさい」
「別のゲームに切り替えた方が早い」
「それでもサービスは終了するんだよ」
って。
パパが前に言ってた通り、クラスの子たちはもう切り替えている。
ミホにも聞いてみた。そうしたら、
「寂しいけど、他のゲームでも同じように、みんなで遊べるなら、私はそれでもいいよ」
って言ってた。
だったら……CCOをなんとかして残そうだなんて、
ぼくはもう、考えなくてもいいよね。
ゲーム会社のタナベさんも
「ゲーム会社にまかせてもらえませんか」
って言ってた。
里中さんも、
「ムリしないでね」
って言ってた。
ハルが言ってたみたいに、ぼくは小学生だ。
ムリせずに、もう何もしなくていいんじゃないかな?
だって、どうしようもないもの。
CCOっていう「いばしょ」を守るための戦いはもう終わり。
それしかない。
だからぼくは、そういうことにしたんだ。
この時は……。




