表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残念世界の残念勇者   作者: XT
71/96

ループワールド・勇者ケイン編 71

獣都、魔獣たちの都。

「魔獣王ハウル様、トカゲの軍勢、約7万。間もなく獣都に達します」

グリス。ハウルの右腕の魔獣。鷹の顔にクマの体を持つ、見掛け倒し男。

「2時間前、東の海の海岸線より現れましてな。右往左往しておりましたが、小1時間前に、こちらに進路を向けよりました」

ミネルバは、魔獣軍の作戦参謀だ。


「凄い数だぞ。地べたが見えないぞ」

「あれは魔界のトカゲ族だ」

パルム、知っているのか?

「ええ、たいして強くはないけど、魔法耐性と数で押し切る、厄介な連中よ」

パルム達もついてきてくれた。心強さは半端ない。


「どうするぞ?陸の上ではセイレーンは使えないぞ」

ミドルレンジからの攻撃に成るな。獣都があるから、ハドロンは使えない。

「あの数だと~押し切られるかもね~」

「はい。今見たら、魔法耐性により、効果は約半減してしまいます」

迫りくるトカゲ軍団。もうあまり時間はない。


「壁を築き、進行を遮断。持てる火力で一斉攻撃だ」

パルムの案だ。王道の策だ。

たぶんそれで止められる。が、相手が7万だけならの話だ。

「ターナ、マオだけ集中パフだ。マオ!地面に毒を撒け!地べたを、広範囲に溶かすんだ」

「坊主?なにを?」

俺の戦い方を見せてやる。

「姑息勇者の戦い方だぞ」


マオが激激激パフされた。

「いくよぉ~毒水だよだよだよだよだよ~~~だよだよだよ~」

マオの放つ強毒水が、トカゲ軍の進路に撒かれた。

大地は煙と共に溶け出す。穴は広がり、次第に深くなる。

トカゲ軍は、それでも進行を止めない。穴の中に突っ込んできた。

「マオ!毒霧だ!敵に毒の霧を放て!」

「あいよ~~~毒霧だよだよだよだよだよ~」

マオの毒霧で、視界は遮られる。穴に向かい止まることはない。

足元は大地が溶け、底なし沼のようにぬかるんでいる。しかもそこは全て毒、足元は毒の中だ。

いくら耐性が強くても、マオの毒の中で、長くは生きられない。

足から溶け出すはずだ。奴らが、穴から抜け出ることはない。


「なるほど。これは楽だ」

「凄い毒ね。食らうとこうなるのね。骨まで溶けているわ」

2人にも放ったことはあるが、パルムの絶対防壁や、セシルの紫炎防壁に阻まれ、食らわせたことはない。

「ケイン、次の準備だぞ」

「ああ、敵の出鼻を挫く。ゲートが現れたら、アリッサの爆裂斬だ」

「次って?」

「あんたが言ったぞ。敵は数で押し切るって。7万が終わりとは限らないぞ」

「だから、魔法温存なの?そこまで考えていたの?」

「考え抜いた策を武器に戦う。これが俺たちの戦い方だ」

「ケインさん、ゲートです」

ティナがいち早く、反応を捕らえた。


「行けアリッサ!ゲートの中だ、向こう側ごと、ぶち壊せ」

アリッサは頷くと剣を抜いた。

「荒ぶる神々よ!全てを焼き尽くせ!魔法剣!爆裂斬!よ」

ゲートの中で爆裂斬がさく裂。向こう側も無事では済まない。

「これで迂闊にゲートは開けないぞ」

「これでは私たちの出番は無い様だな」

「そのようね」

近接戦闘には、ならないだろう。レナとセレスは出番なしだ。

「私も出番なさそうだぞ。これでも来たら、バカの集まりだぞ」

だな。


「ケインさん!ゲート反応です!3か所!穴の手前です」

馬鹿どもだな。

「パルム、力を貸してくれ」

「任せろ!永久凍土!氷河壁!」

「アイリス、氷河の上に氷壁展開だ」

「任せてですわ!氷魔法氷壁!」

壁が大分高くなった。これで時間が稼げる。

「セシル、攻撃は任せた。アリッサとマオを回復。ターナ急いでくれ」

俺が出す指示に、各自が的確に行動する。

アリスの絶対零度を温存のまま、戦いは終わった。

トカゲ族が、これ以上来ることはなかった。


「25万ほど倒したか?俺の策では、持ちこたえられなかったな」

「ええ、7万と思い込んだ時点で、私たちの作戦負けね」

パルムが俺に近寄り、右手を出した。

「勇者ケイン。やはりお前たちは強い。俺達の力任せの戦いとは違う」

「あなたは立派に成長している。嬉しい限りよ」

俺はパルムの出した手を握る。

「援助、感謝する」

「いいチームだぞ。パルム達が居れば、私たちはもっと強くなれるぞ」

アリスの言葉・・・そうだ!

「パルム、俺を誘っていたな?」

「来るのか?来てくれるのか?」

「坊や、大歓迎よ」

「いや違う。俺を誘ってくれたことは、評価の高さと思ってる。実際嬉しいよ。だけど、行くのではない。俺が誘ってるんだ。パルムチームが勇者チームに来いと」

「!?」

「・・・!」

2人が来れば、チームは強くなる。

「傭兵など止めて、もう一度勇者に成れ!勇者パルムとして、俺たちと共に戦おう」

「ははは・・・流石に心に響いたが、ダメだ。俺たちはノスに借りがある」

「人して、彼を裏切れないわ」

「・・・そうか」

パルム達は、戻って行った。俺たちも王都へと帰る。



 『アリスの魔砲は、超進化した』

 『アリッサの爆裂斬は、爆砕火炎斬へと進化した』

 『マオは猛毒を覚えた』

カモミールへ戻ると天の声が、みんなのレベルアップを知らせた。

アトランの魔王軍や、トカゲ族との闘いで、さらなる強さを手に入れた。

 『ターナは攻撃魔法を覚えた。その他大勢はみんな強くなった』

主要メンバー以外は手抜きされた。

 『ケインは傷が広がった』

うるさい。

俺のレベルが、マイナス666まで下がっていた。


「ケインさん!大変です!」

ティナが来た。

「調べてきました。過去に一人だけ、マイナスレベルの勇者が居ました」

前にも聞いた気がする。

「これが、集めてもらった資料です。マイナスレベルが1007に成ると、その勇者は、死んでしまいました」

「!!なんだと!」

「ケイン666だぞ。後375下がると死んじゃうぞ」

動揺して計算が出来てない。

「パパ!何とかしないと」

「ですわ。ティナ様、何か手はないのですか?」

そうだ、いつものように、物知りのキャラが出てきて、ナンタラとか言うアイテムがあればの展開だ。

「はい。物知りキャラは、この後に登場予定があります。が、今は内緒です」

甘い。甘すぎる情報管理能力だ。


「資料よるとマイナス800位で、歩行障害。900を超えると記憶障害などが出て。950からは、寝たきりになります。ついには1007で死亡したとあります」

マイナスレベルは、老化を速めるのか?

「ケイン…よく読んでみたぞ。その勇者、103歳だぞ。これって単なる老衰だぞ」

なに?

「この勇者、チーム登録から外れてないぞ。だからいつまでもレベルが上がりっぱなしだぞ。1007で死んだのは偶然だぞ」

言われてみれば、老化の典型的な症状だ。


「はい。でも、このままでは、ケインさんは基本スキルしか使えません。

物知り老人を探して、ナンタラとか言うアイテムを手に入れなくてはなりません」

「確かにそうだ。だが今は、トカゲ族が襲ってきたわけを知る方が先だ」

「そうだぞ。なんで奴らが来たか、理由を探るだぞ」

「姉が魔界の閻魔様なら、どちらも知っているかもと、言っていました。アポを取ってあります。行ってみますか?因みに、物知りキャラは閻魔様のことです」

閻魔だと?

「生きて会いたくない奴だぞ。地獄行きを言い渡されそうだぞ」

兎に角、知りたい事が沢山ある。

折角、リリスの方が片付きそうなのに、新しい敵が現れたのでは、たまらんからな。閻魔とやらに聞きに行くか。


ーーーー魔界ーーーーー

「なんだ奴らは?あの強さはなんだ?」

「若、アレが本当に下界民なのでしょうか?」

「若、ゲート内攻撃とか、ありえないぜ」

「相当な被害が出ましたな。これは由々しき事態ですぞ」

トカゲ族反省会。


「このままでは、親父殿に食い殺されてしまう。大手と組んで、奴らにリベンジだ」

「流石は若!あれだけやられて、懲りないとは、トカゲ頭ですぜ」

「で?何処と組みますか?」

爺さんトカゲの問いに、若はニヤリとした。

「これから考える!」

トカゲ頭、炸裂だった。

ーーーーーーーーーーーー


「ケインさん、閻魔様は、とても難しい方です。言葉使いと対応には、毛が抜けるほど神経を使ってください」

気難しいのか?

「分かってるぞ。今回の魔界遠征メンバーは、気遣いメンバーで構成したぞ」

アリスとターナ、アリッサとハウル?何処が気遣いメンバーだ?

火薬庫抱いて行くような気がするが?

「仕方ないぞ。マオは商業的理由で、閻魔と合うのは良くないと、ピーに言われたぞ。ママには、逞しい男を合わせたくないぞ」

魔界で商業展開しているマオ商会のトップ、マオ。

ピーが言うなら理由があるのだろう。

アイリスに関しては、どうでも良い理由だ。


「レナとセレスは、トーレフが連れてっちゃったぞ。なんでもパワーアップさせるらしいぞ」

機械族のスペックアップは無理だと聞いたがな。

「それを何とかするのが科学班だぞ」

厳選メンバーではなく、残り物メンバーと言う事か。

「パパ!任せてよ!おもてなし精神はあるよ」

「任せろ」

「この魔獣王の前に立ちはだかる者は、何人たりと許さん!」

戦いに行くわけではない。教えてもらう立場だと忘れないでくれ。

最近よく当たってる、嫌な予感しかしない。

「では、ゲートを開きます。閻魔様のご自宅前に繋げます」

俺達はゲートをくぐる。



「着きました。ここが閻魔様のご自宅です」

立派な門を構えた、武家屋敷のような平屋の家。そうとう広そうだ。

「では、くれぐれも会話には、気を付けてください」

ティナは、インターフォンを押す。

「天界の女神、ティナです。閻魔様との謁見をお願いします」

「はーーーい。伺っております。少しお待ちください」

予想と反して、可愛い女の子の声が聞こえた。


「お待たせしました」

門が開き、中から現れたのは、ティナと似た美女。だが女神ではないのは一目でわかる。後光はないし、黒髪だ。

「本日はお忙しい中、お時間を割いて頂き、閻魔様には感謝の言葉もありません」

ティナの緊張が、俺達にも伝わる。

「気難しいと言うのは、相当のようだぞ」

ああ、これは迂闊な言葉は使えないな。

「どうぞ、中へ。ご案内します」

案内され、中へと入る。が、建屋には向かわない。

直接庭に案内された。


「ワシが閻魔だ」

小太りに、いかつい顔、ぼうぼうの髭。体は閻魔と言うイメージ通り。

ザ・エンマの横書きTシャツに、短パン。足にはすね毛が生えまくり。

スタイルは、住所不定の不審者だ。

「何で閻魔が、Tシャツ、短パンだぞ?」

アリスの一言に、ティナが震え上がった。

「ふん!今は公務中ではない。休日に自宅でラフな格好をして何が悪い?」

ごもっとも。

アリスが一言で、次の句を失った。


「お前がエクレアとか言う女神の妹か?確かテラミスだったか?」

わざとだろ?

「は、はい。エクレアの妹のテラミスです。今日はありがとうございました」

ティナの緊張度が、半端ない。

「全く下界民は、困るとすぐに神頼みだ。賽銭払えば、いう事を聞いてもらえると勘違いしているようだな?」

閻魔は俺の前に立つ。大した迫力だ。

「貴様が勇者か?」

アリスとターナが割って入る。俺の前に立った。

「勇者ケインだぞ。まだ信用してないぞ。気安く近づくなだぞ」

「勇者と話がしたければ、私たち通せ」

導火線の短い二人だ。閻魔の横柄な態度が気に入らないのだろう。

だが、ティナが泣き出しそうな顔に成っている。

俺は二人の間から、前に出た。


「教えて頂きたい事が有り来ました。2人は俺を守ろうとしただけです。どうか、ご無礼をお許しください」

「ふん。まるで礼儀知らずのサルではないようだな。だが、女に守られる勇者とは情けない」

短い導火線に激しい炎が付いた。

「誰が情けない・・だとだぞ?旦那を馬鹿にされて、黙っているほど淑やかな嫁ではないぞ。絶対零度だぞ!」

「初めてを捧げた男を馬鹿にされた!ハウル行け!」

「私はパパの種から生まれたんだよ!パパを馬鹿にされて黙ってないよ!」

もう、ナウシカでも止められない。なら行け!力でねじ伏せろ!


「この技は!?物理限界だと!?」

アリスの絶対零度炸裂だ。

「だが、大魔王クラスには効かん!」

腕だけ凍っただけだ。

「ハウルウルトラキーーーーック!」

「ぐは!」

ナイス急所。弁慶の泣き所、脛に直撃だ。

「爆砕火炎斬!」

「ぐはぁ!」

股間にアリッサの爆砕火炎斬だ。

「き、き、貴様ら!何処狙って撃ってやがる!」

敵の嫌がるところを責める。当然の攻撃だ。

「もう一発撃てるぞ。私も股間を凍らせるぞ」

「はい。援護します」

ティナ?

「お、お前、いいのか?お前の振る舞いが、天界と魔界の未来を変えるぞ」

ビーナスとの友好を考えろと言う事か?

「構いません!知ったことではありません!私の婚約者を馬鹿にすることは、ぜったに許しません!」

「良く言ったぞ。ケインの嫁の資格あるぞ」

閻魔が黙り込んだ。

「お前、こいつに初めてを捧げたと言ったな?」

「言った。ケインは初めての男」

「お前、こいつの嫁と言ったな?」

「言ったぞ。私の旦那様だぞ」

「女神、こいつの婚約者と言ったな?」

「はい。言いました。4年と11か月後に挙式です」

「・・・お前悪魔だな」

五月蠅い!余計なお世話だ!



「myターンだ!黙ってやられると思うな!閻魔魔法‼地獄の業火・・・」

閻魔の魔力!!クソとんでもない魔力だ!

「お父様!!!!!」

え?

「さっきの、美人かわいい子ちゃんだぞ」

門を開けてくれた黒髪の子だ。

「お父さんとか聞こえたぞ」

これから、アレは生まれんだろう。聞き間違いだ。

「お父様!お客様に、何をしようと為さっていますか?」

「あ・・いや・・これはだな」

炎を纏い、振り上げた拳をフリフリしながら下ろす。


「魔界用語で、お父さんって、赤の他人の事を言うのかだぞ?」

「文字通りだ。俺の娘の愛美だ」

「どこで拾って来たぞ!?」

「お前、本当に失礼な奴だな。血を分けた親子だ」

まじか?

「閻魔愛美です。父は無作法で、申し訳ありません。お部屋にご案内します。どうぞこちらへ」

俺達は、愛美さんの後に続いた。

あのまま戦っていたら、無事では済まなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ