ループワールド・勇者ケイン編 67
「ママ、お醤油取ってだぞ」
「アリス、余りかけすぎますと、成人病になりますわよ」
「マオさん、ヒマワリの種って美味しい?」
「最高だよね~これより美味しいものはないよね~」
食事中の他愛もない会話。だが、ピー経由で頭の中は、別の会話をしていた。
「まずは、ドワーフに説明だ。魔都へ行って来る。たぶん居るはずだ」
「でも、捜査員を着けられるぞ。下手な会話はできないぞ」
「パパ、上手くやらないとダメだよ」
「難しそうですわ」
「大丈夫だ。考えがある。任せろ」
「ケインなら~大丈夫だよね~だぶん~」
ピーは、みんなの頭の中で考えたことを読み取って伝える。大忙しだ。
「チーフは居るか?魔都の王に会いに行く約束がある。ゲートを使うがいいか?」
「聞いて来ます。お待ちください」
捜査員は、チーフに許可を求めに出ていく。
当然、捜査員は一人残っている。俺たちは厳重な監視下に置かれていた。
「魔都?大事な用事ですか?」
チーフが来た。
「ああ俺達は、動きが取れないからな。色々予定したことが出来なくなるので、調整しないと」
「分かりました。捜査員を着けます。ケインさんだけ許可します。ララ!付いていけ。ケインさん1時間以内でお願いします」
「連れて行ってくれるのか?」
天空のカギを持っている事は、知られていないようだから、とぼけてみよう。
「ララがゲートを開きます。ゲート反応が出ると警報が鳴りますが、気にしないでください。ゲート反応イチ!許可済みだ」
捜査員のララがゲートを開く。王宮内に警報が鳴り響く。
『これは許可のあるゲート解放です。繰り返します。許可のあるゲート解放です』
アナウンスが流れた。下手に天空のカギも使えないと言う事だ。
「ではどうぞ。ご指定の座標に繋げました」
ララが開いたゲートをくぐる。ララも後に続いた。
「ケインさん」
アズサだ。ドワーフも居る。
「あら、ケイン。いらっしゃい」
言葉と同時に頭の中にテレパシーが来た。
「ティナから聞いてる。貴方は考えればいいわ。私が読み取るから」
助かった。これで話が出来る。
「今後の予定についての話だ。俺たちは当分動けそうにない」
「分かっています。このアズサ、ご協力できることは、労を惜しみません」
予想通り、ティナと会っていたドワーフが、アズサに説明済みだ。
俺はアズサと会話しながら、ドワーフと意思疎通をしていた。
「ケイン、預かるのは良いけど、長くは無理なのよ。南の神殿がある、始まりの地は、私たち守護者以外が長くは居られないようになってるの。
セキュリティーが働いて、5日以内に出ないと、例え女神でもクリスタルで固められてしまうわ。後4日以内に、ティナを他の場所に移さないと」
アズサとの会話に意味はない。ララが聞いても問題ない。
俺は、アズサとの話を終りにした。
「アズサ、今の話を持ち帰って、アリス達と相談してから、もう一度来るよ」
「分かりました。いいお返事をお待ちしています」
アズサも俺に合わせてくれた。
「ララ、一度戻る」
ララは頷くと、ゲートを開いた。
「只今。アズサとの話だが、相談して決めたいから、アリス、後で相談に乗ってくれ」
暗にもう一度行くことを、含ませた。
「なぁ、チーフ、名前はなんだぞ?名前で呼ぶ方がいいぞ」
「ヴぇ?いや、チーフで結構」
何で顔を赤らめる?
「憧れのケインちゃまに名前で呼ばれたら、昇天してしまうではないか。このバカ嫁が!」
と、心の中で言うチーフであった。
「じゃチーフと呼ぶぞ。このティナ探査装置って、役に立つのかだぞ?」
各部屋と通路に複数あるな。
「これは、天界の科学力を結集した、最新の機器です。ティナの匂いに反応して警報が鳴る仕組みです」
ほ~それは凄いが、基本女神はメカ音痴だ。
「試してみていいかだぞ?ちゃんと作動するか見てみたいぞ」
試す?試せるのか?
「とっておきがあるぞ」
アリスは部屋を出て行った。
「ティナ探査装置のテストを行う。これはテストだ!」
チーフが王宮内にマイクで伝えた。
「プリンセスアリス、どうぞ。試してみてください。天界の科学の粋を」
アリスが黒い袋から取り出したのは、血の付いたパンツとブラだった。
って、お前それ、まだとってあったのか?
「前にパクった奴だぞ。あり得ない値が付いたぞ。忘れた頃に売りさばくつもりだったぞ」
「ティナノニオイ!ティナハッケン!ティナハッケン!」
王宮内にデジタル音声でが鳴り響く。正常に作動しているようだ。
「どうです?凄いでしょう」
まぁ、そうだな。
「凄いぞ。これならティナが王宮に入ったら、直ぐにわかるぞ」
興味本位ではない。確かめたいことが有ったからの行動だ。
俺はピーに経由して貰い、ドワーフの言っていた事を、みんなに伝える。
ティナを4日以内に、移動させなくてはならない。
余り頼りたくはなかったが、言ってられなくなった。
「チーフ、今度は通信がしたいぞ。取引相手に、会う約束の断りの連絡を入れるぞ」
「分かりました。通話内容は確認させていただきます。連絡はケインさんにお願いします」
どうやら俺以外は、動くのも連絡もダメなようだが、あっさり許可が出る。
俺はノスフェラトゥに連絡した。
「やぁ、ケイン君。君から連絡が来るのは珍しいね」
助かった。ノスフェラトゥが出てくれた。
「天界の特捜が来てる。約束を見直しを伝えて欲しい」
側にいるチーフが、俺とノスフェラトゥ、双方の話を聞いていた。
「特捜?警察のかね?何があったんだね?」
「手短に」
チーフが制限を付けた。
「ティナが指名手配中だ。俺達も監視されている。部屋にマイクはつけられるし、天井にはカメラだ。生活するのにも困っている」
「君たちにも監視が?仲がいいと言うのも、考え物だね」
「全くだ。この連絡も許可を取ってる。それでだ、ゲートを使うと警報が鳴るので、そっちに行くことができない。先方の連絡先が分からないから、約束は延期にして欲しいと、伝えてもらいたい」
「それは困ったね。先方には、私から伝えておこう」
「済まない。よろしく頼む」
「分かったよ。早く解決する事を願っているよ」
通話は終わった。
ノスフェラトゥなら、今ので、俺の言いたいことは分かるはずだ。
ーーーノスフェラトゥ社長室ーーーー
「今のは坊主だな?」
「やっぱり、私たちが本気出したこと、怒っていたの?」
前回の戦いで、傭兵として戦ったことが、気になって仕方のないパルム達だ。
「いや、ティナが指名手配されたようだ。今情報を集めさせる」
ノスフェラトゥは、電話で情報収集の指示を出した。
「ノス、なんで坊主が、お前にそんなことを伝える?」
「おかしいわ。ティナでしょ?指名手配は?」
「これはケイン君から、君たちに頼みごとの連絡だよ」
「俺たちに?」
「何を頼まれたの?」
ノスフェラトゥは、録音した会話を再生して、パルムたちに聞かせた。
「延期の事か?」
「坊や、私たちとは戦いたくないのね」
パルム達は、まるで分っていなかった。
「はぁ・・・私が出てよかったよ。それではケイン君が可哀そうだ」
呆れたようにノスヘラトゥは言う。
「いいかね?恐らくティナは、ケイン君が匿っているはずだ。でなければ、こんな連絡は来ないよ。彼は無駄なことはしないからね」
「匿っているなら、後は何を手伝うんだ?」
「私たちで、脱出させればいいの?」
「違うよ。たぶんエクセレントだよ。連絡を取りたがっているんだ。先方の連絡先が分からない、と言うのは、エクセレントの事だと思うな。君たちなら連絡法を知っている。私たちとケイン君の共通の人物・・と考えれば簡単さ」
「なるほどな。確かに」
「と、なると、あの方法ね」
「必要なものは用意しよう。ケイン君を失望させないように、しっかり動かないとね」
ーーーーーーーーーーーーーーー
ケインの考えは、ノスフェラトゥに伝わっていた。
「なぁチーフ、さっきアルテミスから、パソコンの事を聞いたんだが、ティナのパソコンの解析はやってるのか?」
「必要ありません。パソコンから出た証拠で十分です」
「十分じゃないぞ。パソコンは遠隔操作されるぞ。他人に使われることもあるぞ」
「遠隔?パソコンがですか?聞いたことありません」
やはり女神はメカ音痴だ。
「技術者を呼んでくれ、聞きたいことが有る」
「捜査は天界で遣ります。下界の皆さんは関与しないように」
そうか、なら仕方ない。
「ケインの17号と28号のパンツが、行方不明だぞ」
番号付けてあるのか?
「特捜が来る日の朝はあったぞ」
「!?」
「俺たちの部屋は、チーフしか入らなかったよな?」
アリスは直ぐに気が付いていた。
俺の部屋から出てきたチーフが、ポケットにしまった、ティッシュとパンツの匂いに。
「これは警察に届けるべきですわね」
「パパ!パンツ誘拐事件だよ。防犯カメラが動いているはずだよ」
ああ、ゆゆしき事態だ。
「ケイン、防犯カメラも良いが、全員の身体検査をやったほうが良くないか?」
「私は持ってないわよ。ほら」
セレスが脱いだ。
「あ!技術者でしたか?すぐに連れてきます」
チーフは、慌てて天界へと戻る。
アリスのクソ微笑む顔。そろそろ反撃と行くか?
「まず、パソの解析だぞ。一応トーレフを呼ぶぞ」
女神の技術力だと不安だ。科学班に協力してもらおう。
ゲートが使えないので、衛兵をセイレーンのドック迄、走らせた。
「ケインさん、連れてきました。天界技術班のメモリです」
白衣姿の女神。
「こっちからも科学班を出すぞ。共同で解析に当って欲しいぞ」
「ダメです。捜査内容は基本極秘です」
チーフに止められるが無視。
「メモリさん、解析は出来ますか?」
「できますが、時間がかかります。天界のパソコンは、5000年ほど使います。膨大なデーターが入っているので、300年ぐらいかかります」
ダメだ。俺達なら1回は転生してる。やはりトーレフに頼む方がいい。
「チーフ、ちょっと話があるぞ。二人だけで話すぞ」
アリスがクソ微笑みながら、チーフと部屋を出た。
「ゲート反応!!・・・あれ?」
捜査員の一人が叫んだが、警報は成らなかった。
「一瞬反応が出たのですが、誤作動でしょうか?」
メモリが捜査員に近寄ると、ゲート反応感応装置を叩いた。
「機械の不具合は、概ね叩けば直ります。精密機器ほど、頻繁に誤作動するので、まめに叩いてください」
女神の技術力のほどが良く分かる。
「司法取引が済んだぞ。ケインのパンツ3枚で、こちらから捜査に3人派遣させられるぞ」
それを司法取引とは言うのか?って3人?
「トーレフとマリー、セレスだぞ。セレスは役に立つぞ」
奥さんの微笑は、悪だくみの証だ。
「ケインちゃまのご希望に添えるように、配慮しました。なので、この書類にサインをください」
チーフ、ちゃま付けで、デレているのだが、顔つきは変わらない。
また結婚届を出してきたが、サインはしない。
「俺たちはもう休むが、進展があったら教えてくれ」
ティナは見つからない。分かってはいるがポーズだけは取っておく。
「トーレフ達が来たら、セレスと一緒に、メモリのラボへ行くぞ。後は、ママたちに任せたぞ」
「分かりましたわ。ゆっくりお休みですわ」
「パパ!ママ!録画されてるからね。布団の中でやるんだよ」
「私は~レナとお茶してるからね~用が有ったら呼んでよね~」
俺とアリスは、俺に部屋へと行く。
さっきのゲート反応、たぶん俺の求めるものが届いた証拠だ。
俺に部屋だ。ベットの上に小さな包みがある。
中には指輪が入っていた。
俺は無言で指輪を指にはめる。
「ケインさん!」
思った通りだ。エクセレントの声が、頭の中で聞こえた。
ノスフェラトゥが、上手くやってくれたようだな。
「ティナは俺達が囲まっているから安心してくれ」
「やはりケインさんが・・ありがとうございます。こちらは監視の目が強く、動きが取れない状態です」
やはりそうか。
「ティナをそっちには、行かせられないか?」
「無理です。妹たちにも捜査員が付けられています」
「分かった。こっちで何とかしよう。この指輪はパルムに渡せるか?」
「渡せます。すぐ手配します」
意思疎通の出来るアイテム。アイテムコレクターなら持っていると思ったかが、さすがはノスフェラトゥだ。誰に渡すかもわかっていた。
しかも手早い。
その後、俺はパルムたちと話、ティナ脱出作戦の準備が出来た。




