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残念世界の残念勇者   作者: XT
62/96

ループワールド・勇者ケイン編 62

爺さんとアリスの、ぬか話が終わった。

「坊主、ポカリを頼む。ワシが必要な時は、遠慮なく呼ぶのじゃぞ」

ああ、ぬかが上手く漬からなかったら呼ぶよ。

「でな、一つだけ伝えてなかったことがあるのじゃが、気を悪くせんで聞いてくれ」

ん?

「お主が、仲間を大事に思っておることは知っておる。じゃがな、あの鳥には気を付けろ」

ピーの事か?

「わしらの能力は知っておろう。あの鳥の心は読めなかった。その上、逆にわしらの心を読みおったのじゃ。お主たちに害のある者か否かとな」

まぁ、ピーなら、そのぐらいは出来そうだな。

「ピーなら大丈夫だぞ。ピーはマオを裏切らないぞ。マオは私たちを裏切らないぞ」

「その通りだ。が、忠告は聞いておくよ。確かにピーは、只ものではないからな」

「うんうん。人の話をちゃんと聞けるのは、お主の良い所じゃ。わしらは側におる。何時でも呼ぶがよい」

ああ、話せてよかった。

「爺さん、まただぞ」

「皆にもよろしくな。がんばれ坊主」

カッパ像の輝きが消える。そして声は聞こえなくなった。

「次からアヤメさんに来てもらうぞ」

アリスがボソッと本音を漏らした。


「ケインさん、セイレーンさんから、出撃の準備が整ったとのことです」

ティナが、準備の完了を知らせに来てくれた。

魔王退治の時間だ。



「ここがセイレーンの中かだぞ」

深海での戦闘用に、セイレーンの内部を改造して、乗り込めるようになった。

「良いね~広くてさ~」

ワンルームだが、広い。中央には調理台や冷蔵庫。壁際には複数のソファーとベット。

「戦いは長期戦に成る場合もあるでござる。快適な居住空間にしてあるでござるよ」

お?カラオケもあるのか?

「私歌う。マジンガーの歌」

後でな。

「あの‥余り色々見ないでください」

真っ赤な顔で、セイレーンはモジモジしていた。

「本体は私も同然です。中に入られると、恥ずかしいです」

機械って分からん。


「ふぅ~んだぞ。じゃ、この壁をナデナデしたら、感じるのかだぞ?」

手がやらしい。アリスは壁をナデナデして見せた。

「感じません!そこの壁は後付けです!」

後付けじゃないと?

「ねぇ様、発進準備できました」

「ねぇ様、制御室まで、お越しください」

ルピとルカから呼び出しが来た。

「分かりました。すぐ行きます。マスターお願いですから、変なところを触らないでくださいね」

結構マジな顔でアリスに言うと、部屋を出て行った。

「変な所って、どんな所かだぞ?」

うぁ、目がやらしい。


「嫌らしい意味ではないでござる。アリス殿の横にあるスィッチ、自爆用でござる。触ってはダメでござるよ」

ござるじゃねぇ!

「ハウル!アリスを確保だ!ティナ!ターナ!スイッチを守れ!アリッサとアイリスは、アリスを壁から引き離せ!マオ!アズサ!ターナの支援だ!」

指示通りに全員が素早く動く。危なく、終わるところだった。


「なんだぞ?みんなどうしたぞ?なにが起こったぞ?」

アリスは押すなと言うスイッチを、確実に押す女だ。

「ママはデフォで押すからね」

「婿殿正解ですわ。あの子なら押しますわ」

「押すよね~」

「押す」

「みんな酷いぞ、私がいつそんなことをしたかだぞ?」

自分が見えていない。

「トーレフ、とりあえず位置を変えてくれ。ここ以外のどこかで頼む」

とりあえず危機は回避した。

  

 『ケインは、適切な指示を出し、経験値を獲得した。レベルが上がった』

忘れていた天の声。

   『ケインのレベルはマイナス380からマイナス450になった』

おーーーーい。マイナスの方も忘れかけていた。

「勇者よ。見事な采配だった。このハウル感銘したぞ」

「またレベル上げた。やるなケイン」

「だね~傷が深くなるよね~」

「パパ!よくわからないけど凄いよ」

くそ、俺のプラス復帰が、また遠のいた。


「皆さん?」

魔王の居城まで案内して貰う為に乗り合わせた、女神ノア。

俺達のバタバタを見て、驚きを隠せなかった。

「もう大丈夫だ。最大の危機は去った」

「はい。ご安心ください。私たちの危機は、勇者ケインの手によって回避されました。これで魔王を討伐へ行けます」

「は・・はぁ」

よその子は、俺たちの流れにはついてこれない。



「みなさん、発進します。揺れますので、席に座ってください」

セイレーンの声だ。

「良し発進だぞ。魔王を退治するぞ」

今回は俺が作戦を立てた。魔王は体に纏うぬめりで魔法を無効化する。海の中では無類の強さだ。

が、それは海の中での話。陸に引きずり上げて倒す。



魔王の城へ向けて深海を進む。

「もうすぐです。魔王の城、竜宮城が見えるはずです」

ノアは、暗い海に先を指さす。

「マスター前方に建造物を確認しました」

「ねぇ様、攻撃照準を受けています」

「ねぇ様、距離3500m。射程圏内です」

お?攻撃できるのか?

「できます。私は改造される羽目になりました。辱めを受けました。あいつらは敵です」

逆恨みっぽい。

「なんでもいいぞ。ハドロンが打てるなら問題ないぞ。発射準備だぞ。目標竜宮城。魔王を煮つけにしてやるぞ」

俺の華麗な作戦、必要なさそうだな。


「ハドロンブラスター充電完了です。発射10秒前」

「ねぇ様、目標固定。照準微調整。機体固定完了。オールグリーン」

「ねぇ様、竜宮城から魔王です。魔王、攻撃軸線上に入りました」

良い感じだ。魔王が出てきやがった。巨大なサメ型のようだが、直ぐ煮つけに成る。造形の説明不要だ。

「よし、発射だぞ!サメの煮つけを作るぞ!」

「ハドロンブラスターEX発射します!」


深海の暗闇に閃光が走る。

ハドロンブラスターは魔王に直撃した。

「楽勝だったぞ」

ああ、思いの他、楽だったな。

「マスター!敵影確認!魔王・・・健在です!」

なんだと!?

「ねぇ様、ブラスターキャンセルされました」

「ねぇ様、魔王ノーダメです」

ぬめりは、魔道兵器にも有効なのか?

「ケインの策に移行するぞ。各自持ち場につくぞ。セイレーン、敵の攻撃を躱しつつ、水深100mまで逃げるぞ」

魔王を先頭に、うじゃうじゃ出て来た。魚人共だ。


撃ってくる撃ってくる。

「どうだぞセイレーン、回避は出来そうかだぞ?」

「大丈夫です。シールドを後方に展開しています。魔王の攻撃はシールドで対応可能です」

「ねぇ様、後方700mまで接近」

「ねぇ様、水深130mです」

水深300mの竜宮城から、俺たちは、敵を引きつけつつ、水深100mを目指していた。

後方から魔王とその軍勢が迫る。


「ケインさん!大きな魔力を感じます!魔王の本気攻撃が来ます」

「シールド最大だ!ティナ、防御加護を頼む!」

「はい。神の加護!防壁展開」

機体が大きく揺れた。魔王の本気攻撃だ。

「攻撃を受けました。シールド消失。次弾には耐えられません」

「ねぇ様、浸水箇所多数。ダメージコントロール。隔壁閉鎖」

「ねぇ様、機関出力低下。76%です」

ダメージがでかい。逃げ回る余裕はなさそうだ。

「ここで迎え撃つ。作戦開始だ!」

俺が指示を出すと、仲間たちが動く。


「精霊魔法、この貧弱な者たちに力を!」

「ターナさん貰ったよ!魔法剣!爆裂斬!×3だよ!」

アリッサの爆裂斬が3発、魔王の直下に放たれた。

魔王には無効でも、周りの海水は別だ。海水は、爆裂斬の威力で、魔王を中心に外へと弾かれる。

「時間停止魔法!海よ止まれ!」

弾かれた海水の時間をアズサが止め、アリスが絶対零度を放つ。魔王の周りの海水は、全て凍り付いた。

魔王は海の底、しかし、爆裂斬の威力で、周りには海水はない。

魔王を中心とした海底は、地面を露わにしていた。


手足の生えた巨大なサメは、水を求めてビチビチと跳ねまわる。

「陸に上がったサラ族だぞ」

間違いではないが、カッパで良いだろ。

「パクパクしてるよね~」

ああ、周りの海水は凍らせたからな。海の中に穴が開いてる状態だ。

「ケインさん、程よく温めます。神の加護!灼熱の太陽です!」

魔王の直上に神の加護で出来た火球。ぬめりも乾いた。

とどめはアイリスだ。

「初めての止め番ですわ!気合いで撃ちますわよ!氷魔法!雹弾ですわ!」

アイリスの雹弾が魔王を襲う。

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁ」

穴だらけになった魔王の、断末魔の悲鳴。

俺達の勝ちだ!


楽勝だった。やはり俺たちつおい。

魔王を失った魚人たちは、魔界へ逃げて行った。

深海でも活動の可能な人魚たちが、セイレーンと共に、竜宮城の探査をする。


「ケインさん、宝の箱が3つ見つかりました。後は大したものはありませんでした」

セイレーンが持ち帰った宝の箱、中からは黒い羽。

いったい、この黒い羽は…?

引き続き探査は行われるが、俺たちはカモミールへ戻ることにした。

サラ族の族長、ヒデキさんは、お礼にと河童の像をくれた。



「只今だぞ」

「おかえり。どうだ魔王は倒せたか?」

「ああ、みんな頑張ったから、早く済んだ」

「魔王を3つも倒すなんて、ケインも立派な勇者様ね」

「はいデス。あのヘタレ勇者は、立派に成長したデス」

レナとセレス、ナナは、王都が平和だったことも告げて来た。


ターナとハウルは獣都へ、アズサとナナは魔都へ、シータは黒い羽を持ってエクセレンの所へ、マオは自宅へ、それぞれ戻って行った。

「ケイン、お昼にするぞ。なにがいいかだぞ?」

そうだな・・きゅうりのぬか漬けの話が出たから、食いたくなったんだが・・。

「塩漬けならありますわ。先日漬かったキュウリとナスが、程よい感じになっていますわ」

それ、使ったのか?漬かったのか?

「使いながら漬かりましたわ」

「ママエキス100%だぞ」

いらね。


「ママ、王都の街で、美味しいって噂の漬物屋さんを聞いたよ」

「悔しいけど、ぬか漬けは買いに行くぞ。ケインには、私が使ったキュウリで漬けた、ぬか漬けを食べさせたかったぞ」

使うな。って、奥さん欲求不満か?

「私も行きます。5年後のために、ケインさんの好みの味を覚えます。」

よし、3人で買い物だ。


アリスとティナ、俺で王都の街に来た。

噂の漬物屋の前だ。流石は人気の店、人だかりができていた。

「スミマセンだぞ。ぬか漬けが欲しいぞ」

「ぎ」

!?

「何でこいつが店員だぞ!」

魔王軍のロボだ。また潜入していたのか?

「ケインさん下がってください!」

ティナとアリスが俺に前に出た。

「ぎぎぎぎぎ!」

手を前に出して左右に振る。あれは、待て意味だ。

「問答無用だぞ!行くぞ絶対・・・」

待てアリス。様子が変だ。俺はアリスを止めた。


ロボはパンツを脱ぐ。ロボはブリーフだった。

脱いだブリーフを、棒に結わえて振り出した。

「よし攻撃OKだぞ。今度こそ絶対零・・・」

待て待て、あれは降参の印だ。

「違いますケインさん。男が女の子の前でパンツを脱いで振り回すのは、戦闘態勢が整っていることの証か、変態行為です」

「どっちにしても攻撃していいぞ」

まぁ、そうだが、あれは降参してる。攻撃は待つんだ。

「ぎぎぎ」

両膝を付いて、手の平を合わせティナを拝むロボ。

「私を拝むとなると、女神として攻撃は出来ません」

「私が話を聞いてみるぞ」

アリスが両膝を付くロボの横へ行く。


「ぎぎぎ!ぎーーぎーーー」

「フムフムだぞ」

「ぎーぎーぎぎぎぎぎ」

「マジかだぞ?それは可哀そうだぞ」

おい、分かるのか?凄いなお前。


「聞けば可哀そうな奴だぞ。私たちが魔王を倒して、存在理由がなくなったぞ。マザーコンピューターも無いから、指示をもらえないぞ。金庫がなくなって、収入もないから、電池が買えなくて、出稼ぎに来てるらしいぞ」

確か魔王軍は、200年ごとに魔王を呼び出すのが役目だったよな。

「はい。本来は魔王を呼ぶのが役目だったはずですが、いつの頃からか、人類を攻撃するようになっていました」

「こいつも、帰りを待ってる妻と子がいるそうだぞ。お腹を空かしてるそうだぞ」

「奥さんとお子さんが・・ケインさん、魔王軍とは言え、討ち取る訳にはいきません」

ああ、戦闘の意思がないなら、脅威にはならない。

が、いくつか質問してからだ。


「残党は何人居るんだ?」

「ぎぎ」

「35体だそうだぞ」

「本当に攻撃の意思はないんだな?」

「ぎぎぎ!」

「ないそうだぞ。そもそも、武器も無いし、数も居ないし、増やすことができないぞ」

その辺は後で、科学班に裏を取らせば分かるな。


「最後の質問だ。なんで魔道兵器なんか作ったんだ?お前らの仕事は、魔王を呼び出すことのはずだ」

「ぎーぎー!ぎぎぎぎぎ!ぎー」

「驚いたぞ。こいつからギルバの名前が出たぞ」

なんだと!?

「ギルバがマザーコンピューターをハッキングしたらしいぞ。ロボたちはマザーには逆らえないぞ。事実上、ギルバが魔王軍を操っていたぞ」

「ぎぎぎ!」

「マザーが破壊される寸前に、パソコンにデーターを移してるらしいぞ。解析すれば、ギルバがハックした証拠に成るかもだぞ」

まじか?

「そのパソコンは提出してもらえるのですか?」

「ぎぎ」

「OKだぞ。既にマザーの意思はないらしいぞ。メモリが一杯に成って、人格は移動できなかったらしいぞ」

エクセレントに報告だ。


「ロボは王都で保護するぞ。ママに言って亡命を認めてもらうぞ」

「ぎ~~~」

「平和に暮らせるなら、昨日の敵は今日の友だぞ。馬車馬の如く、こき使うぞ」

「はい。では私は天界に戻ります。姉に伝えてきます」

やはり800年前にカモミールを狙っていた女神は、ギルバとリリスだったんだ。

証拠が出れば、奴らを逮捕してもらえる。

不安要素が無くなれば、俺たちは平和だ。

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