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残念世界の残念勇者   作者: XT
38/96

魔王編 ㊳

100年ごとに行われてきた、将棋の最高峰の大会、ご町内名人戦。

暇だった俺は、ティナの誘いでマオ、セイレーンと共に参戦することになった。

第1局。セイレーンの奇策で勝利。

第2局。俺の打ち出した策を、敵が打ち破る。惜しくも俺は負けてしまった。

勝負の行方は、マオの第3局に委ねられた。

「なんかちょっと~違う気もするんだよね~」

大丈夫だ。この辺に突っ込むのは。アリスとターナだけだ。

「私は、ケインさんの嘘など気にしません」

口にしたら駄目。思ってるだけにしような。


「1勝1敗で向かえた第3局。日本将棋協会からは、大ボスパフ8冠です。パフ睨みの前に敵は居ません。対する、カモミール勇者チーム代表は、マオさん。好きなものは、ヒマワリの種とケイン。将棋は全く経験なし・・だそうです」

「アリと象の戦いです。やる前から結果は見えています」

「解説のタニカワ会長の、身内びいき予想でした」

さて、マオの勝利は間違いない。俺は大事な祝勝会でのスピーチでも考えるとするか。


「先手はパフ9段です。第3局を始めてください」

パフ「よろしくお願いします」

マオ「よろしくだよね~」

「先手、パフ9段。7・6歩」

「パフ9段の先手で始まりました。角道を開けましたね」

「将棋の初手は、角道を開けるか、飛車の先を伸ばすかですね。たまに5・6歩や、端を付く人もいますが、まぁ、無難な手ですね」

「おや?マオさん、何か書き込んでいますが?あれは!小切手です!丸が・・・9個‼10億の小切手を盤面に出しました!」

「買収だ!堂々とした買収だ!運営!」

「会長から、審議の申し立てです。これは審議です」

小切手を盤面の出してはいけない、というルールは無い。

今は、マオの持ち時間中だから、特に問題にはならん。


「運営のティナです。

 マオさんの出した小切手が、買収目的と指摘された件ですが。

 マオさんは何も言っていません。持ち時間の中での行動なので、特に問題なしと判断します」

だな。


「問題なしです!運営は問題なしと判断しました!」

「・・・くそ!私が参戦すればよかった」

「会長オンエア中です」

「あ!ここでマオさん、2枚目の小切手を出しました!50億です!!!」

ほぉ。まだ表情を変えないのか?流石はプロだ。だが、マオの恐ろしさはこれからだ。

「マオさん、立て続けに2枚!え?えええええ!100億と500億です!!!!」

流石に表情が変わった。

「この~「歩」って書いてあるの~この辺に置いても良いのかな~」

マオは自分の「歩」を手にすると、相手の王の前に置こうとした。

「まてまて!!!まて!」

パフが慌てて声を上げる。

パフ「まぁ、ルールを教える位は良いだろう」

実はこれも反則負けとなる行為だ。が、俺は審議を申し立てたりしない。

好意でした、で済まされるからだ。


「マオさん、歩を元の位置に戻します」

「敵の反則負けでは、小切手は手にできないと判断したのか?」

「そのようです。パフ9段、既に陥落寸前です」

が、パフはまだ沈黙していた。

欲を出し、更なる小切手を求めたのか?プライドと戦っているのか?

だが、それらは許されない。マオの前では、人は無力だ。


マオが、盤上の10億の小切手を手にする。ニコやかに、目の前で破いた。

パフ「!!!!!」

続いて50億の小切手を破く。

100億の小切手を手に持った瞬間・・・・

「ま、参りました!!!」

パフ投了。マオの勝ちだ。


マオはパフに、小切手を手渡す。

「いい勝負だったよね~」

ああ、名勝負だ。歴史に残るな。

「ケインさん!祝勝会は中止です!」

ティナが控室に駆け込んできた。

「世界中から批判が来て、炎上状態です。速やかに避難をする必要があります」

ああ、だろうな。だが祝勝会でのスピーチはやるよ。放送されるんだろ?

「でも・・・危険です。暴動が起きちゃいます」

スピーチまでが俺の策だ。俺に任せろ。



『あ~あ~。優勝チームの勇者ケインだ』

祝賀会でのスピーチをしてる。会場からは、ブーイングの嵐が巻き起こっている。

「俺たちは、カモミールの勇者チームだ」

物まで飛んでくる。嫌われたようだな・・・

「俺達の世界、カモミールは今、魔王の襲撃で絶滅の危機に瀕している」

少し会場が静かになる。

「800年前から、カモミールは魔王と戦って来た。今回倒せなければ、カモミールは絶滅するだろう」

完全に静かになった。

「俺は、そんな状態のカモミールに、最後の勇者として呼ばれた。勝つために手段など選ばない!負ければ未来のない戦をする俺に、勝ち方など選んでいる余裕はない!」

一部から拍手が起こる。

「世界を守るためには、一つの負けも許されない!それが今の俺達だ。潔く負けるより、醜くても勝てればいい!俺は勝つために、生き延びるために戦う!」

拍手が広がる。

「これが俺の戦い方だ!文句あるか!」

会場の敵は、完全に俺になびいた。

俺達の勝ちだ!


「流石です!流石は姑息勇者ケインさんです。先ほど迄の批判炎上は、嘘のようにエールに変わりました」

まぁ、ここまでが俺の策だ。

「流石だよね~スピーチまで考えていたんだね~」

「凄いです。流石はマスターの旦那様です」

もっと褒めていいぞ。

俺達は優勝した。カモミールに凱旋だ。



戻るとすっかり日が暮れていた。

アリッサ迎えに行かないと・・・俺は急いで幼稚園へと向かった。

先生が怒っていた。

「パパ!遅いよ!もう他のママ達は着て、私だけだったよ!」

すまない。ティナと他の世界で戦いをしていた。

「遅いから寂しくて、爆炎斬を撃っちゃったよ」

それで先生が怒っていたのか?

俺は頭を下げ捲って、アリッサと先生に許してもらい、帰路に就いた。


「パパ、私思うんだ。私に幼稚園は無駄だよ」

ああ。俺もそう思う。

「だが、アリスの教育方針で、最終学歴なしはダメだと言うからな」

「私は勇者チームだよ。学歴は必要ないよ。前世の記憶もあるし」

「ああ、俺もそう言ったんだが・・・『ダメだぞ。王家が没落してアルバイトする時に、履歴書に学歴なしだと採用されないぞ』と、言うんだ」

「せめて、飛び級を作って貰いたいの」

ああ。俺からも頼んでみよう。

「うん!パパ大好きだよ」

アリッサはいい子だ。


「と、いう事だ。アリスなんとかして欲しい」

「ん~~~だぞ。ママは、飛び級否定派だぞ」

「理由でもあるのか?」

「あるぞ。1年生には1年生の行事。3年生には3年生の行事だぞ。全てが、先の人生で思い出となるぞ。飛んでしまったら、その時々の思い出が無くなるぞ」

「なるほど、確かに学生は思い出を作る期間だ。言い分は分かる。だが、アリッサに幼稚園からは、無理がある」

「ママは、頑固なところは頑固だぞ。便秘も頑固だぞ」

「よし、ならば俺に策がある。俺が説得してみる」


「と、言う訳だ。飛び級ではないし、どうだろう?」

「婿殿!素晴らしいですわ!そんなアイデアはありませんでしたわ。早速準備に掛かりますわ」

「資金は、マオが引き受けてくれたぞ」

「王都全学年学校の開校ですわ」


俺のアイデアの王都全学年学校。

幼稚園から大学までの区切りは無く、すべて同じ教室で学ぶことが出来る混合学校だ。

教師は各方面のスペシャリストたちを用意する。

「私は女子高生だぞ」

「私は設定どおりに、エッチな美人大学生ね」

「私は~理事長だよね~」

「美しすぎる中学生やる」

「はい。私は美人教師です」

「ママ!同級生やろう!高校2年生がいい」

「私は腐った大学生だな」

「わたくしもアリッサちゃんと同じ、JKですわ!」

「私は、飼育されている鳥ね」

初登校は次回だ。

天界からティナの姉が来たのだ。



「初めまして、皆さん。私はティナの姉、エクセレントと申します」

大女神エクセレント。ティナの姉にして、ヴィーナスの長女。

天界四天王のトップだ。

「エクねぇ様、どうしたのですが急に?」

普通に話せるのはティナぐらいだ。流石の俺も、目を合わすことすらできない。

「アポぐらい取るぞ。急に来られても歓迎の準備が出来てないぞ」

って!こいつは!!!

「すみません。カモミールに、パルムが入ったとの情報が来たので、取り急ぎ降臨しました」

大女神に謝らせた。こいつビューティーで、大女神に慣れたんだ。

「姉は、パルムが勇者チーム時代の担当でした」

前にチラッと聞いたな。

「パルムの情報を持ってきました」

・・・・情報?

「パルムの狙いは何だぞ?何がしたいんだぞ?」

「パルムチームは、現在ノスフェラトゥ株式会社の専属傭兵です」

のす・・ふぇら?

「マオと同じ大金持ち。大企業よ」

ピーは知ってるのか?

「ええ、よく市場でやり合うから」

「ノスヘラトゥは、この世界にある聖剣を狙っています。パルムたちは、そのために雇われたようです」

4本目の聖剣か?

「聖剣九重。この世界の理を変える力を持つと言われる、伝説級の聖剣です」

カモミールに、それがあるのか?

「あります。しかし知らなければ、人では辿り着くことはできない場所です」

・・・変な言い方だ。知っていれば辿り着ける?と言う事か?

「私の判断で、ケインさんには、その場所をお教えしても良いと考えています。ケインさんが、パルムから、九重を守り切る自信があるなら・・ですが」

試されているのか?言い回しが明らかに変だ。

・・・・何を試す?


「ひとつ質問いいかな?」

「はい。どうぞ」

「知らないと、たどり着けないのは間違いないのかな?辿り着けない、と言う事を、知ってるだけでも辿り着けたりするのかな?」

エクセレントが言う、たどり着けない場所とは、おそらく意識の問題だ。

意識しないと見えない場所。九重は異空間にある。

その異空間への入り口が、カモミールにある、と言う事だろう。

「・・・・どこまで、ご理解していますか?」

「たぶん全部だ。パルムたちが来たら、俺たちが向かう。それでいいよな?」

「・・・ありがとうございます」

「エクねぇ様。私には何の事だか?」

「魔王と聖剣は関係なんだよな?」

「はい。聖剣では魔王は倒せません」

「なら俺たちは、魔王の相手を考えればいい。パルムが邪魔しに来たら、ついでに倒すだけだ」

敢えて色々言わないエクセレントに配慮した。

言えない事情があるはずだ。


「ケインさん、将王の称号を手に入れたようですね」

「ああ、インチキしてな」

「母が大笑いしていました。あんなに笑った母を見たのは、久しぶりです」

「はい。ケインさんの姑息な手段は、高く評価されました。20近い世界からオファーが来ています」

「凄いな。断るの大変だろう」

「はい。ケインさんのカモミールでの収入の話をすると、蜘蛛の子を蹴散らすように、オファーは取り下げられました」

「マオのおかげだぞ。マオのおかげで、ケインをカモミールから流失するのを防いでるぞ」

「役に立ててよかったよね~ピーちゃんのおかげだよ~」

マオの凄い所だ。決して天狗にならない。

「後は私の愛の力だぞ。私の愛がケインを引き留めているぞ」

こっちは天狗だ。


「母から、お祝いの品を預かっています。受け取って頂けますか?」

「喜んでだぞ。ママ、羊羹とお茶の用意だぞ」

現金な奴だ。

「天空の鍵です」

「天空?だぞ?」

「はい。パルムが持っている物と同じです。女神が使うゲートとして使えます」

これがゲートの代わりに成るのか?

「私が担当の時代に、パルムに渡してしまいました。彼らが裏切るとは・・・軽率でした」

「これで、あいつらに対抗できるぞ」

ああ、そうだな。ゲートを使えるか使えないかでは、大きな差に成る。

「ではケインさん、もしもの時は、宜しくお願いします」

エクセレントは戻って行った。


「なぁティナ。エクセレントから、パルムの事は聞いてなかったのか?聖剣を狙ってる話だ」

「はい。今聞きました。流石は姉です。そんな情報まで持っていたなんて」

大女神だからな。

「はい。私も早く大女神に成りたいです」

そうか、ティナは知らなかったのか。。と、いう事は、アレだな。



俺達の寝室だ。アリスは鏡の前で髪をとかしていた。

「ねぇケインだぞ。エクセレントは信用しない方がいいと思うぞ」

ベットで横に成っている俺は、アリスの言う意味が分かっていた。

「ああ、嘘が多いな」

「鍵を渡したことを、軽率だったと言ったぞ。あれは嘘だぞ」

「だよな。軽率だと思っているなら、同じ轍は踏まないさ。俺に渡したりはしないはずだ」

「他にも嘘が有ったかだぞ?私は鍵の事しか分からなかったぞ」

「沢山あるよ。パルムの事。『カモミールに入ったから取り急ぎ降臨しました』は大嘘だ。既に目的までわかってる。大分前から追いかけていたはずだ。

それに、この世界は800年前、女神が狙っていた。女神が狙うモノがあったんだよ。そのことに触れていない」

「ケイン、エクセレントは何が狙いだぞ?女神が私たちを騙すって・・私なんか怖いぞ」

アリスは寝ている俺の横に座る。

「もう一つ、大きな謎がある。エクセレントは暗に、俺に聖剣を守るように言った。だが、明らかにおかしい。『九重はある。場所も知っている』ならなんで自分で取りに行かない?』

「だぞ。そうだぞ。守ってもらうより、自分で取りに行って、天界に持ち帰ればいいぞ」

「だろ?なぜそうしない?出来ない理由があるのか?まぁ、ここから先は、今の情報だけでは決めつけられないけどな」

「私には分からないぞ。ティナにも聞けないぞ」

「隠したがってるのは分かる。下手にティナに聞くと、俺たちが気が付いたことがバレるからな。様子を見て判断しないと」

「だぞ。まさか、800年前の女神って・・・」

「可能性はあるな。ある程度の警戒はしたほうがいい。ティナにバレないように」

「ケイン、よく冷静だぞ。私マジで怖いぞ。女神が・・ティナの姉がだぞ」

「この渡された鍵が、文字通り謎を解く鍵だと思う。俺たちの敵は、エクセレントなのか、パルムなのか。それとも両方が敵なのか?または味方なのか?今悩んでも答えは出ないさ。今は・・・久々の夫婦の時間だ」

「だぞ。良いぞ、今は悩まないぞ。目の前のことに集中するぞ」

俺達は、夫婦の時間に突入した。


明日は入学式だ。


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