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残念世界の残念勇者   作者: XT
36/96

魔王編 ㊱

「ケイン様、これが聖剣エロ牙です」

マリーは、まるで汚いものに触る様に、指先で剣を摘まんでよこした。

エロ牙は短剣だ。


俺は、剣を鞘から抜こうとしたが抜けない。

「私も抜けないぞ」

「ダメだね~抜けないよね~」

「私も無理」

アリス、マオ、ターナも抜くことはできない。

「エロ牙は、エロレベルが「神」の方にしか、抜けない剣だと聞いています」

マリー、そのエロレベルってなんだ?神って?

「あら、抜けましたわ」

アイリスが鞘から剣を抜く。エロレベルが神なのか?


「だれ?私を眠りから覚ましたエロは?」

「あら、この剣、女の子ですわ」

「貴女?私が抜けるとは、とんでもないエロなのね」

「サキュバス属性ですわ。途方もないエロですわ」

「いい感じ。貴方をマスターエロと認めるわ」

「末永く宜しくですわ。エロ牙ちゃん」

「末永くエロエロね」

意気投合したようだ。が、なんて会話だ。


「この人が勇者?エロいの?」

エロくない。

「勇者なのにエロくないなんて、あなた大丈夫?」

「英雄色を好む」

「男の子はエロエロだよね~」

なぜ俺が浮く?

「聖剣と言うからには、それなりの力があるかだぞ?エロいだけの剣なら、宝物庫で永眠させるぞ」

「私の力?主のエロレベル次第だけど、主は相当なビックエロね。私の持つエロスキルは全て使えるわ」

エロスキルだと?今更アイリスのエロに、突っ込むつもりは無いが、ビックエロって・・・

「衣類消滅斬、敵の女性が、身に纏う衣類を全て切り刻むわ」

「凄いぞ!それ凄い技だぞ!」

「おおおおすごい」

なのか?それ凄いのか?

「昇天風神斬、敵の女性の感じちゃう所に風神アタックよ」

「いいね~使えそうだよね~」

「素晴らしいです!私も敵に成りたいです」

なのか?素晴らしいのか?

「後は大した技ではないけど、私に触れた敵から魔力を吸い取るの」

「エロくないぞ。普通だぞ」

「だね~期待したほどではないよね~」

いやいや、それが凄いだろ。それ使えるって。

「さっそく試してみたいですわ」

「分かりました!マリー、ナナ!アイリス様のお相手をしてください」

「ちょ!なんで私が!エロは嫌いと言ったはずですよ」

「OKです~私はお相手させていただくデス」

お堅いマリーが拒むのは当然だ。

「マリーよく考えてください。魔都で勇者チームの皆さんを、辱めるような真似は出来ません!」

「あ・・・・そ、そうですね」

マリー陥落。真面目さが仇となった。



マリーとナナが、アイリスの前に立つ。

「待ってください!女神として、剣の効果は知っておく必要があります!」

ティナも加わった。


アイリスはエロ牙を抜く。

「行きますわよ!衣類破滅斬!ですわ!」

目に見える衝撃波が剣から放たれる。3人の衣類は紙吹雪のごとく四散した。

隠すことなく仁王立ちのナナ。

胸と股間に手をあてがい、しゃがみ込むマリー。

一応は、隠しながらもポーズを決めるティナ。

「おお!」

河童王が、その光景に思わず声を上げた。


「凄いですわ!衣類だけを見事に消し去りましたわ」

使いどころがな・・・。

「これは凄い技だぞ」

凄いけどな・・・・

「使えるよね~」

宴会芸でな。


「続いて、昇天風神斬ですわ」

まて、マリーがべそをかいている。流石に可哀そうだ。

「人前で肌を晒すなんて・・・」

この子は世界観が違う。一番真面な人だ。

「これ以上見るのなら、有料です!」

え?

「只見は許しません!見られ損です」

そう来たか。やはりこの世界の住人だな。


「ターナ。金はあるか?」

正気か!?河童王!なぜ死に急ぐ!

「勇者よ。男には死ぬと分かっていても・・ぐはぁぁぁぁ」

死ぬと分かっているなら、やるな。

ターナの必殺技。股間握りが豪快に炸裂した。


アリスが着ていた服を1枚脱ぐと、マリーに被せた。

「乙女の肌は、金をとって見せるものではないぞ。男を喜ばすために見せるものだぞ」

なんか、かっこいいけど、違う気がする。


マリーリタイアで、ナナとティナが昇天風神斬のモルモットに成る。

「主。風神を召還して、二人を昇天させるのよ!」

「ええ!分かりましたわ!昇天!風神斬ですわ!」

アイリスは短剣のエロ牙を高々と突き上げると、一気に振り下ろした。

剣の軌跡が輝き、中から・・・・サンタクロースだと!?

「風神です」

いや、どう見てもサンタのおじさんだ。

「大きな袋を持った風神です」

エロ牙は食い下がる。

確かに大きな袋を持っているが、赤い服にお鬚。間違いなくサンタさんだ。

「主、風神で二人を昇天させなさい!」

エロ牙はアイリスに命じる。

「風神さん!お願いしますわ!」

サンタが二人に襲い掛かる!

「メリークリスマス!良い子には昇天をプレゼントだ」

やっぱサンタさんだ!

「私良い子デス」

「女神なので、いい子以外有りえません」

見事なテクニックで、二人は無事昇天した。


「凄いぞ。風神のテクはプロ級だぞ」

なにのプロだ?

「ハウルしっかり見て覚える」

意識不明中だ。

「あんなことされたら~天に昇っちゃうよね~」

よく見ておけばよかった。


「これで、私の雹牙と、アリッサの炎牙、ママのエロ牙が揃ったぞ。勇者チームは更なる高みに登ったぞ」

台所の包丁と、服を刻む剣。頼りはアリッサだけだ。

「パパ!期待していいよ!私は変な使い方はしないよ!」

アリッサはいい子に育っている。将来の目標は「まともな女の子」パパの自慢の娘になるんだ。

「アリッサ、炎牙はカマの種火に使わしてもらってるぞ」

ママが教育方針を間違えなければだ。


が、俺はマリーを見てわかった。

この世界の4つ目の呪いは「ネジが緩む」呪いだ。

みんなどこか変だ。これが呪いに違いない。

アリスは出来る子だが、空気を読まない発言や、相手かまわずの発言が多い。

マオは、あんな顔してとんでもない金持ちだ。

ターナは河童と結婚。

アズサは魔王なのにイボ痔。

ティナは女神でキレ痔だ。

みんな、おかしなところを持っている。

これが4つ目の、この世界の呪いだと見た。


「ケインさん・・・それは・・」

ティナ、言いたいことは分かる。だが、間違いないだろう。

女神が地べたに這いつくばって昇天など、俺の知る世界ではありえない!

ティナもこの世界の呪いの影響を受けているんだ。

「なるほどだぞ。私の前世は淑女だぞ。この世界の呪いが私を『だぞ』キャラに変えたんだぞ」

「おかしいと思いましたわ。わたしもエロ過ぎなのは、呪いのせいですわ」

「私のお金持ちなのも~呪いが掛かってるんだね~納得だよね~」

「私のイボ痔は、呪いの!なるほどです!」

みんな納得だ。


良し!河童のじいさんに会いに行こう。

答えを見つけたことを、知らせるんだ。

「でも、どうやって帰るぞ?アリス号は直ってないぞ」

任せろ。

俺はドワーフから貰った笛を取り出した。

「これを2回吹けば、ポセイドンが来てくれる」

「なるほどだぞ。間違えて3回吹くと世界が終わるぞ。気を付けるぞ」

・・・・2回と3回の差が激しすぎだ。


「私とナナは魔都に残りますが、マリーはお預けします」

???

「拙者がお願いしたでござるよ。マリー殿の知識は、拙者たち科学班に必要でござる」

「科学班?だと?」

「ルピとルカ、トーレフだぞ」

「拙者たちの魔道技術と、マリー殿のサラ族の技術。これを合わせれば、科学の進歩は確実でござる」

なるほど、それでマリーを。

「みなさん、よろしくですよ。魔都から出るのは初めてですよ」

「大丈夫だぞ。国賓扱いでお迎えするぞ」

「魔王様、私が居なくても物は無駄にせず、大事にお願いしますね」

「分かっています。マリーの教えは、このアズサが守らせます」

「では、王都に向けて出発だぞ!ポセイドン任せたぞ!」

帰りはポセイドンだ。

アリス号は、後日セイレーンが、牽引して持ち帰える。



ーーーーーーー某所ーーーーーーーー


「まさか君たちの、こんな姿が見られるとはね」

ティーカップを口に運びながら、ノスフェラトゥは、笑みを浮かべながら言った。

「笑い事よ。完敗なのよ。何をされたかも分からないまま撤退なんて、初めてよ」

肩にザイクを抱えたパルムが続けた。

「天界公認カードだった。すり替え以外のいかさまは無い状態だ」

「2・・・2・・・・2・2・2・」

ザイクは、譫言の様に呟く。

「完全に心が折られたわ。あの子、簡単に勝てたのを、手にした勝ちを捨ててまで、ザイクをつぶしに来たの。戦い方を知っているわ」

「戦いが始まる前から、描いた絵の通りに、事を運ばれた感があるな」

今度は嬉しそうにノスフェラトゥは言った。

「まるで手の平の上で、コロコロされた様な言い方だね」

「事実よ。コロコロされたのよ」

「末恐ろしい奴だ」

「はははは。カエルの子は、カエルという奴だね。いい機会だ。君たちも、少し休暇を取ると良い」

「ええ、そうさせてもらうわ。ザイクが重度のPTSDよ。これ治さないと」

ノスフェラトゥの顔から笑顔が消える。

「ただ、気になる情報があってね。女神がカモミールを狙っているらしい」

「狙う?聖剣をか?女神がか?」

「ああ。詳しくはまだ分からないが、おそらく狙いは聖剣九重だろう」

「女神が狙うほどの価値、あるの?」

「それ程の物・・と言う事かな?800年ほど前からの狙いのようだからね」

「坊やはそれを?」

「おそらくは知らないだろう。教えてあげるのかい?」

「いや、情報の提供は無い。雇い主からの情報には、守秘義務がある」

「君たちはプロだ。信用しているさ。だが、休暇中の君たちの行動には、注文は付けないよ。親子の対面を楽しんで来るのも自由だ」

「あら、寛大なのね」

「私としては、優秀な人材とは友好的でありたいからね。報告書は、なるべく詳しく頼むよ。こちらでも、何をされたか精査しよう」

「ああ、わかった。数日以内に提出する」

ノスフェラトゥが部屋から出ていく。

「親子の対面・・か。言うほど簡単では無さそうね」

「ああ、あいつには、あいつの世界があるようだからな」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーーーーー天界某所ーーーーーーーー


「ギルバ!ギルバいるか?」

リリスが、慌てた様子で部屋に入ってくる。

「どうしたのさ?部長、慌ててるよ」

「不味い事態だ。カモミールにパルムのチームが入ったらしい」

「あれま。こっちでは確認してないけどね。まぁ、僕もあまり見てはいなかったからな」

「奴らの狙いは、聖杯だろう。表立って動けない私たちは不利になる」

「ならば、こちらも誰かを雇うしかないね。僕の知り合い、当ってみようか?」

「相手は、あのパルムチームだぞ。後ろに居る奴が分からない以上、下手に動くのは得策ではない」

「だね~。どうする部長?」

「・・・・・ケインたちに相手をさせるか?」

「情報を出すの?危なくない?」

「まるで関係ないアイテムをでっち上げれば・・・」

「無理あるよ。それってさ。パルムって、確かエクセレントの担当だったよね」

「ああ、決別したがな」

「ならティナは、大嫌いだ。その辺を突いて、相手させた方がいいかもね」

「なるほどな・・・確かにそれは良さそうだな。ティナを煽るとするか」

「ティナの方は、僕に任せていいよ」

「分かった。私は情報収集に専念する。カモミールの監視の強化も頼む」

「了解」

慌ただしくリリスは退室する。

「パルムか・・面白くなってきたよ。僕の流れにしないとね」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーー天界ティナの実家ーーーーーーーー

「リリスはまだ動きませんか?」

ティナの母、ヴィーナスだ。

「はい。表立って動いては居ませんが、新たにカモミールにパルムのチームが入りました」

長女のエクセレントと話していた。

「とうとう、外の世界からも来てしまいましたね。ループワールドの恐ろしさは、関係を持った人たちを巻き込んでいくこと」

「バックは、ノスフェラトゥです。今回は、多くの人を巻き込んでしまいます」

「狙いは、九重ですか?」

「はい。今のところ九重以外には興味は無いという事です」

椅子に腰を掛け、ヴィーナスは深いため息をした。

「九重の存在も漏れてしまうとは、情報管理は徹底していましたが、人の口に、戸は立てられない・・と言う事ですね」

「もう、ティナだけでは、荷が重いのでは?ビュティーを派遣しては?」

「・・・いざと言う時に、動ける手配をお願いします」

「分かりました」


「今回の周回は、すでに私たちの知る歴史とは違います。慎重な対応と、見守りを、お願いします」

「分かりました」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それぞれの思惑が重なり合う。ケインたちは、まるで知る由もなかった。

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