魔王編 ㊱
「ケイン様、これが聖剣エロ牙です」
マリーは、まるで汚いものに触る様に、指先で剣を摘まんでよこした。
エロ牙は短剣だ。
俺は、剣を鞘から抜こうとしたが抜けない。
「私も抜けないぞ」
「ダメだね~抜けないよね~」
「私も無理」
アリス、マオ、ターナも抜くことはできない。
「エロ牙は、エロレベルが「神」の方にしか、抜けない剣だと聞いています」
マリー、そのエロレベルってなんだ?神って?
「あら、抜けましたわ」
アイリスが鞘から剣を抜く。エロレベルが神なのか?
「だれ?私を眠りから覚ましたエロは?」
「あら、この剣、女の子ですわ」
「貴女?私が抜けるとは、とんでもないエロなのね」
「サキュバス属性ですわ。途方もないエロですわ」
「いい感じ。貴方をマスターエロと認めるわ」
「末永く宜しくですわ。エロ牙ちゃん」
「末永くエロエロね」
意気投合したようだ。が、なんて会話だ。
「この人が勇者?エロいの?」
エロくない。
「勇者なのにエロくないなんて、あなた大丈夫?」
「英雄色を好む」
「男の子はエロエロだよね~」
なぜ俺が浮く?
「聖剣と言うからには、それなりの力があるかだぞ?エロいだけの剣なら、宝物庫で永眠させるぞ」
「私の力?主のエロレベル次第だけど、主は相当なビックエロね。私の持つエロスキルは全て使えるわ」
エロスキルだと?今更アイリスのエロに、突っ込むつもりは無いが、ビックエロって・・・
「衣類消滅斬、敵の女性が、身に纏う衣類を全て切り刻むわ」
「凄いぞ!それ凄い技だぞ!」
「おおおおすごい」
なのか?それ凄いのか?
「昇天風神斬、敵の女性の感じちゃう所に風神アタックよ」
「いいね~使えそうだよね~」
「素晴らしいです!私も敵に成りたいです」
なのか?素晴らしいのか?
「後は大した技ではないけど、私に触れた敵から魔力を吸い取るの」
「エロくないぞ。普通だぞ」
「だね~期待したほどではないよね~」
いやいや、それが凄いだろ。それ使えるって。
「さっそく試してみたいですわ」
「分かりました!マリー、ナナ!アイリス様のお相手をしてください」
「ちょ!なんで私が!エロは嫌いと言ったはずですよ」
「OKです~私はお相手させていただくデス」
お堅いマリーが拒むのは当然だ。
「マリーよく考えてください。魔都で勇者チームの皆さんを、辱めるような真似は出来ません!」
「あ・・・・そ、そうですね」
マリー陥落。真面目さが仇となった。
マリーとナナが、アイリスの前に立つ。
「待ってください!女神として、剣の効果は知っておく必要があります!」
ティナも加わった。
アイリスはエロ牙を抜く。
「行きますわよ!衣類破滅斬!ですわ!」
目に見える衝撃波が剣から放たれる。3人の衣類は紙吹雪のごとく四散した。
隠すことなく仁王立ちのナナ。
胸と股間に手をあてがい、しゃがみ込むマリー。
一応は、隠しながらもポーズを決めるティナ。
「おお!」
河童王が、その光景に思わず声を上げた。
「凄いですわ!衣類だけを見事に消し去りましたわ」
使いどころがな・・・。
「これは凄い技だぞ」
凄いけどな・・・・
「使えるよね~」
宴会芸でな。
「続いて、昇天風神斬ですわ」
まて、マリーがべそをかいている。流石に可哀そうだ。
「人前で肌を晒すなんて・・・」
この子は世界観が違う。一番真面な人だ。
「これ以上見るのなら、有料です!」
え?
「只見は許しません!見られ損です」
そう来たか。やはりこの世界の住人だな。
「ターナ。金はあるか?」
正気か!?河童王!なぜ死に急ぐ!
「勇者よ。男には死ぬと分かっていても・・ぐはぁぁぁぁ」
死ぬと分かっているなら、やるな。
ターナの必殺技。股間握りが豪快に炸裂した。
アリスが着ていた服を1枚脱ぐと、マリーに被せた。
「乙女の肌は、金をとって見せるものではないぞ。男を喜ばすために見せるものだぞ」
なんか、かっこいいけど、違う気がする。
マリーリタイアで、ナナとティナが昇天風神斬のモルモットに成る。
「主。風神を召還して、二人を昇天させるのよ!」
「ええ!分かりましたわ!昇天!風神斬ですわ!」
アイリスは短剣のエロ牙を高々と突き上げると、一気に振り下ろした。
剣の軌跡が輝き、中から・・・・サンタクロースだと!?
「風神です」
いや、どう見てもサンタのおじさんだ。
「大きな袋を持った風神です」
エロ牙は食い下がる。
確かに大きな袋を持っているが、赤い服にお鬚。間違いなくサンタさんだ。
「主、風神で二人を昇天させなさい!」
エロ牙はアイリスに命じる。
「風神さん!お願いしますわ!」
サンタが二人に襲い掛かる!
「メリークリスマス!良い子には昇天をプレゼントだ」
やっぱサンタさんだ!
「私良い子デス」
「女神なので、いい子以外有りえません」
見事なテクニックで、二人は無事昇天した。
「凄いぞ。風神のテクはプロ級だぞ」
なにのプロだ?
「ハウルしっかり見て覚える」
意識不明中だ。
「あんなことされたら~天に昇っちゃうよね~」
よく見ておけばよかった。
「これで、私の雹牙と、アリッサの炎牙、ママのエロ牙が揃ったぞ。勇者チームは更なる高みに登ったぞ」
台所の包丁と、服を刻む剣。頼りはアリッサだけだ。
「パパ!期待していいよ!私は変な使い方はしないよ!」
アリッサはいい子に育っている。将来の目標は「まともな女の子」パパの自慢の娘になるんだ。
「アリッサ、炎牙はカマの種火に使わしてもらってるぞ」
ママが教育方針を間違えなければだ。
が、俺はマリーを見てわかった。
この世界の4つ目の呪いは「ネジが緩む」呪いだ。
みんなどこか変だ。これが呪いに違いない。
アリスは出来る子だが、空気を読まない発言や、相手かまわずの発言が多い。
マオは、あんな顔してとんでもない金持ちだ。
ターナは河童と結婚。
アズサは魔王なのにイボ痔。
ティナは女神でキレ痔だ。
みんな、おかしなところを持っている。
これが4つ目の、この世界の呪いだと見た。
「ケインさん・・・それは・・」
ティナ、言いたいことは分かる。だが、間違いないだろう。
女神が地べたに這いつくばって昇天など、俺の知る世界ではありえない!
ティナもこの世界の呪いの影響を受けているんだ。
「なるほどだぞ。私の前世は淑女だぞ。この世界の呪いが私を『だぞ』キャラに変えたんだぞ」
「おかしいと思いましたわ。わたしもエロ過ぎなのは、呪いのせいですわ」
「私のお金持ちなのも~呪いが掛かってるんだね~納得だよね~」
「私のイボ痔は、呪いの!なるほどです!」
みんな納得だ。
良し!河童のじいさんに会いに行こう。
答えを見つけたことを、知らせるんだ。
「でも、どうやって帰るぞ?アリス号は直ってないぞ」
任せろ。
俺はドワーフから貰った笛を取り出した。
「これを2回吹けば、ポセイドンが来てくれる」
「なるほどだぞ。間違えて3回吹くと世界が終わるぞ。気を付けるぞ」
・・・・2回と3回の差が激しすぎだ。
「私とナナは魔都に残りますが、マリーはお預けします」
???
「拙者がお願いしたでござるよ。マリー殿の知識は、拙者たち科学班に必要でござる」
「科学班?だと?」
「ルピとルカ、トーレフだぞ」
「拙者たちの魔道技術と、マリー殿のサラ族の技術。これを合わせれば、科学の進歩は確実でござる」
なるほど、それでマリーを。
「みなさん、よろしくですよ。魔都から出るのは初めてですよ」
「大丈夫だぞ。国賓扱いでお迎えするぞ」
「魔王様、私が居なくても物は無駄にせず、大事にお願いしますね」
「分かっています。マリーの教えは、このアズサが守らせます」
「では、王都に向けて出発だぞ!ポセイドン任せたぞ!」
帰りはポセイドンだ。
アリス号は、後日セイレーンが、牽引して持ち帰える。
ーーーーーーー某所ーーーーーーーー
「まさか君たちの、こんな姿が見られるとはね」
ティーカップを口に運びながら、ノスフェラトゥは、笑みを浮かべながら言った。
「笑い事よ。完敗なのよ。何をされたかも分からないまま撤退なんて、初めてよ」
肩にザイクを抱えたパルムが続けた。
「天界公認カードだった。すり替え以外のいかさまは無い状態だ」
「2・・・2・・・・2・2・2・」
ザイクは、譫言の様に呟く。
「完全に心が折られたわ。あの子、簡単に勝てたのを、手にした勝ちを捨ててまで、ザイクをつぶしに来たの。戦い方を知っているわ」
「戦いが始まる前から、描いた絵の通りに、事を運ばれた感があるな」
今度は嬉しそうにノスフェラトゥは言った。
「まるで手の平の上で、コロコロされた様な言い方だね」
「事実よ。コロコロされたのよ」
「末恐ろしい奴だ」
「はははは。カエルの子は、カエルという奴だね。いい機会だ。君たちも、少し休暇を取ると良い」
「ええ、そうさせてもらうわ。ザイクが重度のPTSDよ。これ治さないと」
ノスフェラトゥの顔から笑顔が消える。
「ただ、気になる情報があってね。女神がカモミールを狙っているらしい」
「狙う?聖剣をか?女神がか?」
「ああ。詳しくはまだ分からないが、おそらく狙いは聖剣九重だろう」
「女神が狙うほどの価値、あるの?」
「それ程の物・・と言う事かな?800年ほど前からの狙いのようだからね」
「坊やはそれを?」
「おそらくは知らないだろう。教えてあげるのかい?」
「いや、情報の提供は無い。雇い主からの情報には、守秘義務がある」
「君たちはプロだ。信用しているさ。だが、休暇中の君たちの行動には、注文は付けないよ。親子の対面を楽しんで来るのも自由だ」
「あら、寛大なのね」
「私としては、優秀な人材とは友好的でありたいからね。報告書は、なるべく詳しく頼むよ。こちらでも、何をされたか精査しよう」
「ああ、わかった。数日以内に提出する」
ノスフェラトゥが部屋から出ていく。
「親子の対面・・か。言うほど簡単では無さそうね」
「ああ、あいつには、あいつの世界があるようだからな」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー天界某所ーーーーーーーー
「ギルバ!ギルバいるか?」
リリスが、慌てた様子で部屋に入ってくる。
「どうしたのさ?部長、慌ててるよ」
「不味い事態だ。カモミールにパルムのチームが入ったらしい」
「あれま。こっちでは確認してないけどね。まぁ、僕もあまり見てはいなかったからな」
「奴らの狙いは、聖杯だろう。表立って動けない私たちは不利になる」
「ならば、こちらも誰かを雇うしかないね。僕の知り合い、当ってみようか?」
「相手は、あのパルムチームだぞ。後ろに居る奴が分からない以上、下手に動くのは得策ではない」
「だね~。どうする部長?」
「・・・・・ケインたちに相手をさせるか?」
「情報を出すの?危なくない?」
「まるで関係ないアイテムをでっち上げれば・・・」
「無理あるよ。それってさ。パルムって、確かエクセレントの担当だったよね」
「ああ、決別したがな」
「ならティナは、大嫌いだ。その辺を突いて、相手させた方がいいかもね」
「なるほどな・・・確かにそれは良さそうだな。ティナを煽るとするか」
「ティナの方は、僕に任せていいよ」
「分かった。私は情報収集に専念する。カモミールの監視の強化も頼む」
「了解」
慌ただしくリリスは退室する。
「パルムか・・面白くなってきたよ。僕の流れにしないとね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー天界ティナの実家ーーーーーーーー
「リリスはまだ動きませんか?」
ティナの母、ヴィーナスだ。
「はい。表立って動いては居ませんが、新たにカモミールにパルムのチームが入りました」
長女のエクセレントと話していた。
「とうとう、外の世界からも来てしまいましたね。ループワールドの恐ろしさは、関係を持った人たちを巻き込んでいくこと」
「バックは、ノスフェラトゥです。今回は、多くの人を巻き込んでしまいます」
「狙いは、九重ですか?」
「はい。今のところ九重以外には興味は無いという事です」
椅子に腰を掛け、ヴィーナスは深いため息をした。
「九重の存在も漏れてしまうとは、情報管理は徹底していましたが、人の口に、戸は立てられない・・と言う事ですね」
「もう、ティナだけでは、荷が重いのでは?ビュティーを派遣しては?」
「・・・いざと言う時に、動ける手配をお願いします」
「分かりました」
「今回の周回は、すでに私たちの知る歴史とは違います。慎重な対応と、見守りを、お願いします」
「分かりました」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それぞれの思惑が重なり合う。ケインたちは、まるで知る由もなかった。




