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残念世界の残念勇者   作者: XT
34/96

魔王編 ㉞

「俺達の3勝だ。2勝分の要求を言う」

「まさか私たちが、ぼろ負けとは・・・」

「だな…初めてか?チーム結成以来だな」

「2が・・2が・・・」

「相手が悪かっただけだ。俺は運は無いが、勝ち方は知ってる」

「まず一つ目の質問だぞ。お前たちが来た目的を言うぞ」

「・・・・まぁ、仕方ないわね。敬意を表して、本当のことを言うわ」

「発掘調査だ」

嘘つけ、こら!!!!


「依頼主は、この星の歴史を調べろと言ってきた。特に、この星で最古のものを探せとな」

「なんでだぞ?」

「最古って~古いものだよね~」

「なんで、彼方達なのですか?そんな事なら、学術団に依頼したほうが・・」

「分からん。俺たちも不思議だったが事実だ」

「で、聖剣を探したと・・言う事か?」

「聖剣?そんなものは探してはいない。元から知ってるからな」

「なに?」

「この世界には3本の聖剣があるわ。4本目は伝説のようだけどね」

「なら、あの穴は、お前達ではないのか?」

「私たちよ、古いものは穴の底から出て来るでしょ、だから掘りまくったの」

「なにも出てこないから、お前たちに聞こうと思ってな・・」

パルムは、嘘は言っていない気がした。


「私達に?何をだぞ?」

「女神と繋がるお前たちに、この星の歴史を聞こうと思ったんだ」

「私?ですか?私は1200年前に、この星の担当に成って、それ以前の事は存じません」

「なんだ‥無駄足だったか?負け損か」

「でも不思議な世界ね。1200年前以前のものが出てこないのよ」

「どういう事だ?」

「ここまでだ。俺達への質問の答えはしたぞ」

3つ目は・・どうするべきかな?更に情報を聞くか、追い出すかだな。

「3つ目は私です。パルム、この地から立ち去りなさい。そして2度とこの地へ足を踏み入れてはなりません」

ティナ・・まぁ、それがいいか。

3つ目はティナが決めた。

ティナはゲートを開き、パルムたちを追放する。


「1200年前以前のものが無いって、どういう事だぞ?」

俺にも分からん。ティナ?分かるか?

「はい。私が来た時には文明がありました。前の担当が引き継ぎで、何も残してくださらないので、手元には資料はありません。ですが、この星の担当に成る話は、母が持って来たものです。母に尋ねれば、何かわかるかもしれません」

そっちは任せたよ。俺たちは1200年前に構ってる暇は無いからな。


「でも、ケイン凄いぞ。ケインの不運汁の効果、呪いの域だぞ」

な、訳あるかよ。

「え?だぞ?」

イカサマだ。2枚とも都合よく「2」のはずないさ。


俺は箱に手を入れると、掻きまわす振りをして、袖に隠してあったカード52枚を、元からあったカードの上に広げた。

広げたカードから、汗で2枚一組にしたやつを何組か作る。

2枚1組のカードは、上に乗せて置いた。

後は、奴が掻きまわすことなく、上からカードを取る様に仕向けてやれば、完成だ。

袖に隠してあったカードは、アリッサが俺のために作ってくれた、52枚の「2」のデッキだ。同じ天界公認カードだから、バレはしない。

いろいろ注文を付けたのは、箱の中に気が行かなようにするためだ。


「パパ!あれまだ持っていたの?」

「当たり前だ。アリッサが俺のために作った52枚だ。肌身離さず持っていた」

「流石だぞ・・イカサマさせたら天才だぞ」

「姑息勇者だよね~」

「うん。ケイン好き」

「あれだけ敵のイカサマを警戒してて、自分でやっていたんですか?」

アズサ、騙すというのは、見えるところを、見えなくするのが一番だからな。

「驚いた勇者様ですよ」

これが俺の戦い方なんだよ。

「魔獣王も驚きだ」

河童王だろ?今は。


だが何故だ?奴らからは、余り敵意と言うのが感じられなかった。

遊ばれている感もあるが、何か違う気が・・・。



「マリー、聖剣だが・・もう一度、場所を教えてもらえないか?」

「ええ、いいですよ。同じ窓からが良いですね」

マリーは前回と同じ窓から、同じように杉林を指さした。

「ナナ、望遠機能はあるか?」

「有りますデス。ミトコンドリアから、銀河の果てまで見えますデス」

「マリーの指さす先を、拡大して見てくれ」

マリーは微笑む。正解のようだ。

「杉林がありますデス」

「その先は?」

「スーーームINデス。おお、大分先ですが、杉の木がありますデス」

「どうしてお分かりになりました?」

「『あの山の杉林、わかりますか?』なら普通だが

 『あの山に有る、杉の木。見えますか?』だった。

 すぐ先に見える杉林を『見えますか?』は、おかしくないか?それに林なのに『杉の木』とも言ってた」

「ティナ様が、期待されるわけですね。正解ですよ。聖剣は、先に有る杉の木の下です。私が掘りだしてきますよ」

「私も、行くデス。穴掘りは任せてくださいデス」

よし、今日は3連勝だ。


「ケイン、ティナが来たから正式な、3国間会議をするぞ」

マリーとナナは、穴掘りだが良いのか?

「大丈夫です。私が参加すれば問題ありません」

両手両足が無い状態の王様だ。大丈夫か?


「では、ここにカモミール初の、3国間会議の開催を宣言します。各国の代表の方は、宣誓をしてください」

「宣誓だぞ。王都を代表して、3国間会議に参加するぞ」

「宣誓だ。魔獣王として、会議に参加する」

「宣誓です。魔王として、3国間会議に参加します」

「結構です。これで皆さんは各国の代表です。ここでの発言は記録されます。後は皆さんにお任せします。私は少し用事があるので、これで失礼します」

また、切れたか?


初の3国間会議が開かれた。

「では私から提案だぞ。王都と魔都を結ぶ、大陸間横断鉄道を作りたいぞ」

なるほど、物資の移動が楽になるし、行き来も出来るな。

いいアイディアだ。

「魔獣からは、人手と食い物を提供しよう」

「なんと!ありがたい。魔都の人々も、これで暮らしが楽になります」

「では、これが大陸横断鉄道の計画書でござる」

「資金は~任せるよね~いくらでも出すよ~」

流石はアリスだ。もうそこまで計画を進めているとは。

「ルピ、ルカ、計画が通ったぞ」

アリスが、セイレーンに通信機で伝えた。

おい。またルピ、ルカか?魔道か?

「最高時速6000Kの、魔道リニアモーターカーだぞ。王都と魔都を、最短45分で結ぶぞ。通勤圏内だぞ」

音速の5倍だと!?マッハ5だぞ?

「どこかの国が開発した、空対艦ミサイル並みだぞ」

それって人が乗れるのか?

「今セイレーンが試験走行で乗ってるぞ」

試験走行って、もう出来てるのか?

「GOサインが出るの待ちだぞ。アリス号の改造と同時に作っていたぞ」

科学力がぶっ飛んできた。末恐ろしい・・・


「マスター、マスター応答願います。こちらルピ。今、ねぇ様を乗せた超高速ミサイル『プリアリ1号』を発射しました」

おい。ミサイルとか言ってるぞ。

「発射?発車?」

「マスター、マスター応答願います。こちらルカ。ねぇ様を乗せたミサイル、赤道付近で爆散を確認です」

「・・・・実験は失敗だぞ。鉄道計画は見直しだぞ」

普通ので考え直せ。



「婿殿、今アズサ様から聞いたのですが、魔都の海には、海王成る狂暴生物がいて、海での漁ができないらしいですわ」

前に、チラッとティナが言っていたな。

「海王のおかげで、私たちは魚が食べられません。ケインさん!海王の退治をお願いします」

アズサのお願いだ。断れない。

「よし、鉄道計画は保留で、海王退治だぞ」

「やっと実践か。私の出番のようだな」

ハウルは指を鳴らすが、その着ぐるみを着ているうちは、どんなに凄んでも迫力は無い。


「船で出れば、海王は必ず現れます」

「今セイレーン本体は、使えないか?」

「ルピとルカは、セイレーンの回収に行ってるぞ」

お前が爆散するミサイルに搭載するからだ。

「なので戦力は、私とママ、アリッサとマオ、ターナ、ハウルだぞ」

充分だな。

「パパごめん。私、聖剣を持ってこなかった」

突然の拉致だ。仕方ないさ。普通の剣で戦ってくれ。

「ケイン、ごめんだぞ。私も聖剣を持ってないぞ」

なんでだ?

「よく切れるから、台所で使ってるぞ」

持ち主に外れたな。まさか、菜っ切り包丁にされるとは思わなかったろう。


「良し、討伐隊を結成するぞ」

「俺と、アリス、アリッサ、アイリス、ナナ、アズサ、マオ、ターナ、ハウルだ」

「軍艦を用意します。3隻に分乗しましょう」

アズサは部下に指示を出す。

俺達は、魔都の港に向かった。


転覆丸。水没丸。浸水丸。どう見ても漁船だ。ネーミングも悪い。

「私とナナは、浸水丸に乗船します」

「私と~ターナとハウルは~水没丸だよね~」

「私たちは転覆丸だぞ」

未来が見えた気がした。…そういえばパルスってやつがいたな?

「パルスなら、予想を外した後、実家に帰ったぞ」

「・・・ティナに『サラ族の生き残りが?』って聞いた時か?」

「相当~自信を無くしたようだよね~」

「ガラスのメンタル」

「まぁ、あまり役に立たないから、放置でいいか」

「待ってください!私も行きます!」

ティナだ。


ティナは純白のドレスをに身を包み、手には槍を持っていた。

戦女神スタイルだ。

「ほぉ。ティナも参戦するのか?」

「やはりそう見えますか?」

「槍を持っているぞ。戦うスタイルだぞ。純白のドレスが決意を表してるぞ」

「私を女神と知っている、ケインさん達にも、そう見えますよね。女神の私が戦う事はありません。この槍は、落雁で出来たお菓子です」

「???」

「例え戦う意思がなく、槍はお菓子でも、この槍は武器に見えてしまいますよね。どれだけ、慈愛の心で槍を手にしても、やはり武器は武器です」

「じゃなんで、その恰好で来たぞ?」

「他の世界を、ひと廻りして来ました。この姿で降臨すると、信者が増えるんです」

「掛け持ちだと言っていたな」

「はい。皆さん大喜びで、営業成績が跳ね上がります。ですが、ケインさん達と行くには、槍は邪魔ですね。食べてしまいます」

ティナは槍の先を折ると、口にした。

「ここで喰うのかだぞ?」

落雁かな?・・・俺の大好物だ。

中には黒い餡子が入ってる。旨いんだよな。

「俺にも一口」

俺も先端部分を折ると口にした。

「だめです!!!!」

「ん?・・・・グハぁぁぁぁぁぁぁ」

「黒いのは、餡子ではありません。天界激辛黒トウガラシの餡です」

「ケインのHPが減ってるぞ!なんて食い物だぞ!」

ひぃぃぃ・・・声が出ない。喉が焼ける!意識が遠のく・・・


「大丈夫かだぞ?蘇生したぞ。息をするだぞ」

・・・・あ・・アリス・・・

「強烈だよね~回復かけても~まだ意識朦朧だね~」

「これ化学兵器」

「NO!分析結果出ました。殺人レベルの辛さデス」

「ああ・・大丈夫だ。たぶん・・」

「!!ケイン!大変だぞ!ケインのレベルが下がってるぞ!」

「!なんだと!…いや待て。そもそも俺はレベル1だ。下がっても0だ。大した問題ではない」

「違うぞ、マイナス360だぞ」

「あんだとぉ!マイナス360!?マイナスってあるのか!?ティナ、レベルがマイナスってあるのか?」

「はい。聞いたことがありません。初めてレベルの赤表示を見ました」

くそ!なんて食い物だ。


「マイナスでも、特に変わりは無いが・・・」

「はい。レベル0以下は、0状態維持だと思います。スキルや技には影響が出るはずです」

「ケインはスキルも技もないぞ。マイナスでも全然OKだぞ」

酷いな・・勇者のレベルがマイナス360だぞ。あり得ないだろ。

「まぁ~ケインならいいかもね~」

「マイナス勇者。カッコいい」

「流石は勇者。マイナスとは中々のものだ」

「なんか新鮮です!いいかもしれません」

「何故高評価だ?」

「はい。ケインさんは、力で戦うタイプではありません。知で戦うタイプです。レベルの高低は、気にしなくていいです」

とは言え‥マイナスはな・・・


「ケインのレベルは仕方ないぞ。とにかく海王退治だぞ。みんな!いくぞ!」

「おお!だよね~」

「腕が鳴る」

「GOGO!デス」

俺たち3隻は出港した。


「こんなこともあろうかと、魔道銛を持って来たぞ」

最近なんでも魔道を付けるな?

「魔道銛は、普通の銛に比べて、1.1倍精度が上がるぞ」

地味な魔道だ。

「ケインさん!大変です!アズサさんの浸水丸が、浸水して流されていきます」

・・・予想通りだ。

「パパ!大変だよ!ターナの水没丸が、沈んでいくよ!」

・・・完璧だ。

「ケイン、私嫌な予感がしてきたぞ。なんか海が盛り上がってるぞ。船が転覆するぞ」

・・・パーフェクトだ。


転覆丸の周りが盛り上がり、船は転覆した。

海中からウサギが首を出す。

ウサギだと!海王は巨大なウサギだと!?


「ブクブクだぞ」


アリス!アリスが沈んでいく。

泳げ!泳ぐんだ!

「婿殿!アリスは1㎜たりとも泳げませんわ」

「パパ!ママは1㎜たりとも浮かないのよ」

何で出来てやがる!?

「任せてください!神の加護!アリスさん浮上です!」

ダメだ!神の加護でも浮いてこない!筋金入りの金槌だ!

「私に任せろ!」

ハウルが潜った。流石は河童王!早い。

マオとターナは、俺の横まで泳いできた。

「もう一度!神の加護!上昇海流です!」

ティナが神の加護2連発で援護する。ハウルがアリスを持ち上げ浮上した。

「ぶはぁ~だぞ。海水は塩辛いぞ」

当たり前だ。が、助かってよかった。


「私の、縄張りで何をする?」

頭の中に声がした。これはピーのテレパシーと同じだ。

「お前が海王?なのか」

「そう。私が南の海を統べる、海王ドワーフ」

「なんでウサギだぞ?ウサギは濡れるのが嫌いだぞ」

「私ほどに成ると、濡れる事すら気にならない。ドワーフ泳ぎもマスターした」

なんだその?ドワーフ泳ぎってのは?


海王ドワーフ。まさかの巨大兎だった。

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