魔王編 ㉞
「俺達の3勝だ。2勝分の要求を言う」
「まさか私たちが、ぼろ負けとは・・・」
「だな…初めてか?チーム結成以来だな」
「2が・・2が・・・」
「相手が悪かっただけだ。俺は運は無いが、勝ち方は知ってる」
「まず一つ目の質問だぞ。お前たちが来た目的を言うぞ」
「・・・・まぁ、仕方ないわね。敬意を表して、本当のことを言うわ」
「発掘調査だ」
嘘つけ、こら!!!!
「依頼主は、この星の歴史を調べろと言ってきた。特に、この星で最古のものを探せとな」
「なんでだぞ?」
「最古って~古いものだよね~」
「なんで、彼方達なのですか?そんな事なら、学術団に依頼したほうが・・」
「分からん。俺たちも不思議だったが事実だ」
「で、聖剣を探したと・・言う事か?」
「聖剣?そんなものは探してはいない。元から知ってるからな」
「なに?」
「この世界には3本の聖剣があるわ。4本目は伝説のようだけどね」
「なら、あの穴は、お前達ではないのか?」
「私たちよ、古いものは穴の底から出て来るでしょ、だから掘りまくったの」
「なにも出てこないから、お前たちに聞こうと思ってな・・」
パルムは、嘘は言っていない気がした。
「私達に?何をだぞ?」
「女神と繋がるお前たちに、この星の歴史を聞こうと思ったんだ」
「私?ですか?私は1200年前に、この星の担当に成って、それ以前の事は存じません」
「なんだ‥無駄足だったか?負け損か」
「でも不思議な世界ね。1200年前以前のものが出てこないのよ」
「どういう事だ?」
「ここまでだ。俺達への質問の答えはしたぞ」
3つ目は・・どうするべきかな?更に情報を聞くか、追い出すかだな。
「3つ目は私です。パルム、この地から立ち去りなさい。そして2度とこの地へ足を踏み入れてはなりません」
ティナ・・まぁ、それがいいか。
3つ目はティナが決めた。
ティナはゲートを開き、パルムたちを追放する。
「1200年前以前のものが無いって、どういう事だぞ?」
俺にも分からん。ティナ?分かるか?
「はい。私が来た時には文明がありました。前の担当が引き継ぎで、何も残してくださらないので、手元には資料はありません。ですが、この星の担当に成る話は、母が持って来たものです。母に尋ねれば、何かわかるかもしれません」
そっちは任せたよ。俺たちは1200年前に構ってる暇は無いからな。
「でも、ケイン凄いぞ。ケインの不運汁の効果、呪いの域だぞ」
な、訳あるかよ。
「え?だぞ?」
イカサマだ。2枚とも都合よく「2」のはずないさ。
俺は箱に手を入れると、掻きまわす振りをして、袖に隠してあったカード52枚を、元からあったカードの上に広げた。
広げたカードから、汗で2枚一組にしたやつを何組か作る。
2枚1組のカードは、上に乗せて置いた。
後は、奴が掻きまわすことなく、上からカードを取る様に仕向けてやれば、完成だ。
袖に隠してあったカードは、アリッサが俺のために作ってくれた、52枚の「2」のデッキだ。同じ天界公認カードだから、バレはしない。
いろいろ注文を付けたのは、箱の中に気が行かなようにするためだ。
「パパ!あれまだ持っていたの?」
「当たり前だ。アリッサが俺のために作った52枚だ。肌身離さず持っていた」
「流石だぞ・・イカサマさせたら天才だぞ」
「姑息勇者だよね~」
「うん。ケイン好き」
「あれだけ敵のイカサマを警戒してて、自分でやっていたんですか?」
アズサ、騙すというのは、見えるところを、見えなくするのが一番だからな。
「驚いた勇者様ですよ」
これが俺の戦い方なんだよ。
「魔獣王も驚きだ」
河童王だろ?今は。
だが何故だ?奴らからは、余り敵意と言うのが感じられなかった。
遊ばれている感もあるが、何か違う気が・・・。
「マリー、聖剣だが・・もう一度、場所を教えてもらえないか?」
「ええ、いいですよ。同じ窓からが良いですね」
マリーは前回と同じ窓から、同じように杉林を指さした。
「ナナ、望遠機能はあるか?」
「有りますデス。ミトコンドリアから、銀河の果てまで見えますデス」
「マリーの指さす先を、拡大して見てくれ」
マリーは微笑む。正解のようだ。
「杉林がありますデス」
「その先は?」
「スーーームINデス。おお、大分先ですが、杉の木がありますデス」
「どうしてお分かりになりました?」
「『あの山の杉林、わかりますか?』なら普通だが
『あの山に有る、杉の木。見えますか?』だった。
すぐ先に見える杉林を『見えますか?』は、おかしくないか?それに林なのに『杉の木』とも言ってた」
「ティナ様が、期待されるわけですね。正解ですよ。聖剣は、先に有る杉の木の下です。私が掘りだしてきますよ」
「私も、行くデス。穴掘りは任せてくださいデス」
よし、今日は3連勝だ。
「ケイン、ティナが来たから正式な、3国間会議をするぞ」
マリーとナナは、穴掘りだが良いのか?
「大丈夫です。私が参加すれば問題ありません」
両手両足が無い状態の王様だ。大丈夫か?
「では、ここにカモミール初の、3国間会議の開催を宣言します。各国の代表の方は、宣誓をしてください」
「宣誓だぞ。王都を代表して、3国間会議に参加するぞ」
「宣誓だ。魔獣王として、会議に参加する」
「宣誓です。魔王として、3国間会議に参加します」
「結構です。これで皆さんは各国の代表です。ここでの発言は記録されます。後は皆さんにお任せします。私は少し用事があるので、これで失礼します」
また、切れたか?
初の3国間会議が開かれた。
「では私から提案だぞ。王都と魔都を結ぶ、大陸間横断鉄道を作りたいぞ」
なるほど、物資の移動が楽になるし、行き来も出来るな。
いいアイディアだ。
「魔獣からは、人手と食い物を提供しよう」
「なんと!ありがたい。魔都の人々も、これで暮らしが楽になります」
「では、これが大陸横断鉄道の計画書でござる」
「資金は~任せるよね~いくらでも出すよ~」
流石はアリスだ。もうそこまで計画を進めているとは。
「ルピ、ルカ、計画が通ったぞ」
アリスが、セイレーンに通信機で伝えた。
おい。またルピ、ルカか?魔道か?
「最高時速6000Kの、魔道リニアモーターカーだぞ。王都と魔都を、最短45分で結ぶぞ。通勤圏内だぞ」
音速の5倍だと!?マッハ5だぞ?
「どこかの国が開発した、空対艦ミサイル並みだぞ」
それって人が乗れるのか?
「今セイレーンが試験走行で乗ってるぞ」
試験走行って、もう出来てるのか?
「GOサインが出るの待ちだぞ。アリス号の改造と同時に作っていたぞ」
科学力がぶっ飛んできた。末恐ろしい・・・
「マスター、マスター応答願います。こちらルピ。今、ねぇ様を乗せた超高速ミサイル『プリアリ1号』を発射しました」
おい。ミサイルとか言ってるぞ。
「発射?発車?」
「マスター、マスター応答願います。こちらルカ。ねぇ様を乗せたミサイル、赤道付近で爆散を確認です」
「・・・・実験は失敗だぞ。鉄道計画は見直しだぞ」
普通ので考え直せ。
「婿殿、今アズサ様から聞いたのですが、魔都の海には、海王成る狂暴生物がいて、海での漁ができないらしいですわ」
前に、チラッとティナが言っていたな。
「海王のおかげで、私たちは魚が食べられません。ケインさん!海王の退治をお願いします」
アズサのお願いだ。断れない。
「よし、鉄道計画は保留で、海王退治だぞ」
「やっと実践か。私の出番のようだな」
ハウルは指を鳴らすが、その着ぐるみを着ているうちは、どんなに凄んでも迫力は無い。
「船で出れば、海王は必ず現れます」
「今セイレーン本体は、使えないか?」
「ルピとルカは、セイレーンの回収に行ってるぞ」
お前が爆散するミサイルに搭載するからだ。
「なので戦力は、私とママ、アリッサとマオ、ターナ、ハウルだぞ」
充分だな。
「パパごめん。私、聖剣を持ってこなかった」
突然の拉致だ。仕方ないさ。普通の剣で戦ってくれ。
「ケイン、ごめんだぞ。私も聖剣を持ってないぞ」
なんでだ?
「よく切れるから、台所で使ってるぞ」
持ち主に外れたな。まさか、菜っ切り包丁にされるとは思わなかったろう。
「良し、討伐隊を結成するぞ」
「俺と、アリス、アリッサ、アイリス、ナナ、アズサ、マオ、ターナ、ハウルだ」
「軍艦を用意します。3隻に分乗しましょう」
アズサは部下に指示を出す。
俺達は、魔都の港に向かった。
転覆丸。水没丸。浸水丸。どう見ても漁船だ。ネーミングも悪い。
「私とナナは、浸水丸に乗船します」
「私と~ターナとハウルは~水没丸だよね~」
「私たちは転覆丸だぞ」
未来が見えた気がした。…そういえばパルスってやつがいたな?
「パルスなら、予想を外した後、実家に帰ったぞ」
「・・・ティナに『サラ族の生き残りが?』って聞いた時か?」
「相当~自信を無くしたようだよね~」
「ガラスのメンタル」
「まぁ、あまり役に立たないから、放置でいいか」
「待ってください!私も行きます!」
ティナだ。
ティナは純白のドレスをに身を包み、手には槍を持っていた。
戦女神スタイルだ。
「ほぉ。ティナも参戦するのか?」
「やはりそう見えますか?」
「槍を持っているぞ。戦うスタイルだぞ。純白のドレスが決意を表してるぞ」
「私を女神と知っている、ケインさん達にも、そう見えますよね。女神の私が戦う事はありません。この槍は、落雁で出来たお菓子です」
「???」
「例え戦う意思がなく、槍はお菓子でも、この槍は武器に見えてしまいますよね。どれだけ、慈愛の心で槍を手にしても、やはり武器は武器です」
「じゃなんで、その恰好で来たぞ?」
「他の世界を、ひと廻りして来ました。この姿で降臨すると、信者が増えるんです」
「掛け持ちだと言っていたな」
「はい。皆さん大喜びで、営業成績が跳ね上がります。ですが、ケインさん達と行くには、槍は邪魔ですね。食べてしまいます」
ティナは槍の先を折ると、口にした。
「ここで喰うのかだぞ?」
落雁かな?・・・俺の大好物だ。
中には黒い餡子が入ってる。旨いんだよな。
「俺にも一口」
俺も先端部分を折ると口にした。
「だめです!!!!」
「ん?・・・・グハぁぁぁぁぁぁぁ」
「黒いのは、餡子ではありません。天界激辛黒トウガラシの餡です」
「ケインのHPが減ってるぞ!なんて食い物だぞ!」
ひぃぃぃ・・・声が出ない。喉が焼ける!意識が遠のく・・・
「大丈夫かだぞ?蘇生したぞ。息をするだぞ」
・・・・あ・・アリス・・・
「強烈だよね~回復かけても~まだ意識朦朧だね~」
「これ化学兵器」
「NO!分析結果出ました。殺人レベルの辛さデス」
「ああ・・大丈夫だ。たぶん・・」
「!!ケイン!大変だぞ!ケインのレベルが下がってるぞ!」
「!なんだと!…いや待て。そもそも俺はレベル1だ。下がっても0だ。大した問題ではない」
「違うぞ、マイナス360だぞ」
「あんだとぉ!マイナス360!?マイナスってあるのか!?ティナ、レベルがマイナスってあるのか?」
「はい。聞いたことがありません。初めてレベルの赤表示を見ました」
くそ!なんて食い物だ。
「マイナスでも、特に変わりは無いが・・・」
「はい。レベル0以下は、0状態維持だと思います。スキルや技には影響が出るはずです」
「ケインはスキルも技もないぞ。マイナスでも全然OKだぞ」
酷いな・・勇者のレベルがマイナス360だぞ。あり得ないだろ。
「まぁ~ケインならいいかもね~」
「マイナス勇者。カッコいい」
「流石は勇者。マイナスとは中々のものだ」
「なんか新鮮です!いいかもしれません」
「何故高評価だ?」
「はい。ケインさんは、力で戦うタイプではありません。知で戦うタイプです。レベルの高低は、気にしなくていいです」
とは言え‥マイナスはな・・・
「ケインのレベルは仕方ないぞ。とにかく海王退治だぞ。みんな!いくぞ!」
「おお!だよね~」
「腕が鳴る」
「GOGO!デス」
俺たち3隻は出港した。
「こんなこともあろうかと、魔道銛を持って来たぞ」
最近なんでも魔道を付けるな?
「魔道銛は、普通の銛に比べて、1.1倍精度が上がるぞ」
地味な魔道だ。
「ケインさん!大変です!アズサさんの浸水丸が、浸水して流されていきます」
・・・予想通りだ。
「パパ!大変だよ!ターナの水没丸が、沈んでいくよ!」
・・・完璧だ。
「ケイン、私嫌な予感がしてきたぞ。なんか海が盛り上がってるぞ。船が転覆するぞ」
・・・パーフェクトだ。
転覆丸の周りが盛り上がり、船は転覆した。
海中からウサギが首を出す。
ウサギだと!海王は巨大なウサギだと!?
「ブクブクだぞ」
アリス!アリスが沈んでいく。
泳げ!泳ぐんだ!
「婿殿!アリスは1㎜たりとも泳げませんわ」
「パパ!ママは1㎜たりとも浮かないのよ」
何で出来てやがる!?
「任せてください!神の加護!アリスさん浮上です!」
ダメだ!神の加護でも浮いてこない!筋金入りの金槌だ!
「私に任せろ!」
ハウルが潜った。流石は河童王!早い。
マオとターナは、俺の横まで泳いできた。
「もう一度!神の加護!上昇海流です!」
ティナが神の加護2連発で援護する。ハウルがアリスを持ち上げ浮上した。
「ぶはぁ~だぞ。海水は塩辛いぞ」
当たり前だ。が、助かってよかった。
「私の、縄張りで何をする?」
頭の中に声がした。これはピーのテレパシーと同じだ。
「お前が海王?なのか」
「そう。私が南の海を統べる、海王ドワーフ」
「なんでウサギだぞ?ウサギは濡れるのが嫌いだぞ」
「私ほどに成ると、濡れる事すら気にならない。ドワーフ泳ぎもマスターした」
なんだその?ドワーフ泳ぎってのは?
海王ドワーフ。まさかの巨大兎だった。




