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残念世界の残念勇者   作者: XT
31/96

魔王編 ㉛

俺達は、魔都へ行くことにした。

「メンバーの人選は、俺とアリス、マオ、ターナ、アズサ、ナナだ。アリッサとレナ、獄中3姉妹は、アイリスの護衛に残す」

敵はいないだろうが、万が一のためだ。

「ケイン、ハウルが迎えに来ている」

ハウルが?ならターナは参加できないか?

「ハウルも連れて行くぞ。3国会議が出来るぞ。この世界の未来に向けた会議をするぞ。ついでにケインを殴った恨みも晴らすぞ」

「と、プリンセスが申しているが、ターナから話してもらえるか?恨みの所は伏せてな」

「分かった。連れて行く」

本人の承諾なしに、妻が決めた。


「私が、魔都へ?私はそんなに暇では…いて」

ターナの蹴りが決まる。

「勿論、お供させていただこう」

完全に尻に引かれていた。

「決まりだぞ。では、船のドックへ向かうぞ。マオ、転送だぞ」

「ほいきたよ~ぽちっとなぁ~だよね~」

転送だと!?

「女神の力を、科学で再現だぞ」

!?一瞬でセイレーンのドックだ。まさに女神の使うゲートだ。

「でも気を付けるぞ。ハエ1匹入っただけで、映画が2~3本作れるストーリーに成るぞ」

安全対策が出来るまで、使用禁止な。



「なんだココは!?」

「魔道兵器セイレーンと、魔道客船アリス号のドックだぞ」

「私たちの秘密基地」

ハウルは初めて、真近でセイレーンを見る。

「この程度で驚くな。底が知れる」

ターナが蹴っ飛ばすが、驚きで痛みを感じていない。

「ルカに依頼して、アリス号の改造をしたぞ」

大型の機器が立ち並ぶ。セイレーン本体、その横に白く輝くプリンセスアリス号、圧倒的な存在感を出してる。

「私たちの技術は、800年前の賢者を超えているぞ」

さすがのハウルも後ずさりする。


「よく聞くだぞハウル。これが勇者の力だぞ。私たちの持つ、すべての力は、勇者であるケインの力だぞ」

「ハウル、これ見ろ」

ターナが、空間から絵を取り出した。

これも例の科学力か?

「!!これは!」

ハウルを驚かせた絵、俺の前世が描かれた、魔王と戦うサラ族の絵だ。

「なぜ!?ケイン!貴様が・・・いて」

「ケインじゃない。勇者様と言え」

「何故!?勇者様が、魔王なのだ!」

ケインでいいよ。


「聞くぞハウル!800年前、ケインの前世は、魔王と戦ったぞ」

「な!なんだと!」

だからそれは、俺専用のセリフだから使うな。

「800年前だぞ。魔王は、この世界を滅ぼそうとしたぞ。

北と南の国を滅ぼした魔王は、ティナが召喚した勇者、ケインの前世と戦うぞ。

強大な力を持つ勇者に、流石の魔王も大苦戦するぞ。戦いは7日7晩続くぞ。でも、惜しくも勇者は、敗れてしまうぞ・・・」

大分脚色された史実だ。確か一瞬で食い殺されたはずだ。

「余りの勇者の強さに、勝った魔王は、その姿を模すことにしたぞ。これがその絵だぞ!河童を襲う魔王の絵だぞ」

もはや、その歴史は、ラノベレベルだ。


「ケインは転生を繰り返し、力を付けるぞ。再び戦う魔王との決戦に備えていたぞ!」

「ケインは知っていた。魔王軍と魔王、同時に倒せない」

「そうです!魔王を倒すと、一時的に魔法が使えなくなります。魔王軍の科学力に対し、我々は戦う術を失います」

「だからケインは~先に魔王軍を~倒したんだよね~」

「全てを知る、勇者だからこそデス」

「分かったかだぞ!ケインは、この世界を救う為に800年の時をかけていたんだぞ。人生8回分だぞ!わかったら、土下座して謝るぞ」

「・・・そうだったのか…私は知らなかった・・・」

俺も知らなかった。

「ハウルお座り」

奥さんも鬼だな。


ハウルは両膝を地に付ける。

「待て待て。そこまでだ。詫びなど必要ない。魔獣たちは、これから協力して、この世界を守る仲間だ」

「ケイン・・いや、勇者様」

ケインでいいよ。

「ケイン、私は間違っていた。私たちを、魔獣を、この世界を守る同士として、受け入れてもらえるだろうか?」

「勿論だ。共に戦おう」

「ケインが認めるなら、ハウルは仲間だぞ。仲間に入れてやるぞ」

「ハウル感謝しろ」

「ありがとうケイン。この命、お前たちに預けた」

全くこいつ等には、敵わないな。

魔獣王すら、口車で手玉に取るとは。



「魔道客船プリンセスアリス号だぞ」

「良くいらっしゃいました。マスター、皆さん」

セイレーンとルピ、ルカがアリス号に繋がるタラップの前に居た。

「改造担当は、ルカだぞ」

「いい感じに、仕上がりました」

「魔道改造しました」

「魔改造です」

「早速、魔都に向けて発進だぞ。各自持ち場に付くぞ」

敬礼をした3人・・だが。

「マスターお待ちください。この船は、動物持ち込み禁止です」

「動物は毛が飛びます」

「精密機器は誤作動です」

ハウルは乗ることが出来ないだと?


「ハウル、覚悟するぞ」

「ハウル、覚悟」

「覚悟だね~」

3人は、バリカンを手にしていた。

「動くなだぞ。怪我するぞ」

「ここは妻が念入りに狩る」

「広い背中だね~刈甲斐があるよね~」

毛が刈られていく・・流石に少し哀れに見えて来た。


毛は動物の服であると同時に、愛くるしさの象徴でもある。

毛を狩られた動物の姿は・・・哀れだ。

魔獣王ハウルとて例外ではない。

今のハウルには、魔獣王としての威厳も、迫力もない。

「流石に裸では寒いぞ。これを着ると良いぞ」

アリスは、着ぐるみを持ち出してきた。

「ああ、すまない。この格好では、心もとなくていけない」

たかが毛だが、されど毛だ。

「ハウル似合う」

「いい感じだね~緑の体が似合うね~」

河童の着ぐるみだ。顔の部分が開いていて、ハウルの顔が収まってる。

「よし、記念撮影だぞ。アリス号初搭乗の記念撮影をするぞ」

セイレーンがカメラを取り出した。

レフ版を持ったルピ。三脚を持ったルカ。

・・・準備が良いな?

そもそもハウルが着れるサイズの着ぐるみなんか、よくあったよな。

「復讐完了だぞ。ケインを殴った罪を償わせたぞ」

「だよね~まだ生ぬるいけどね~」

「うちの旦那。これで許せ」

やはり、この3人の企みか・・・。



アリス号の制御は、ルカが担当する。

「アリス号発進だぞ!」

ドック内が海水で満たされる。

「システム安定です。魔道エンジン始動です」

やはり魔道エンジン搭載か?

「第1ゲートオープンです」

アリス号の前のゲートが開き、アリス号はゲートの中へ進む。

「船なのに、海中を進むんだな?」

「アリス号は、海の中も進めます。潜水機能をつけました。完全生活防水です」

セイレーンの説明だが、なんか怖い単語が聞こえた気がした。

「第2ゲートオープンです」

第2ゲートを抜けると、海だ。

「エンジン出力+20です」

「アリス号浮上だぞ!姿勢角アップ20だぞ」

「海上まで~障害物ないよね~」

レーダ担当のマオだ。

「魔道エンジン絶好調です」

機関師は、セイレーンだ。

「艦長!通信だ」

ハウルは通信担当だが、河童の着ぐるみで振り向くな。笑いが込み上げてきた。

「通信だぞ?誰からだぞ?」

「SOS信号だ。これは救難信号だ」

なんだと!

「繋ぐぞ。誰からだぞ?」

「メーデーメーデー。こちら制御室。各所から浸水を確認です」

生活防水じゃ無理だったんだ!

「制御室水没・・・ブクブクです」

エンジンが止まった!船が沈みだした。


船内に警報が鳴り響く。電気が消えて真っ暗だ。

「みんな!落ち着くだぞ。大丈夫だぞ。この船には脱出装置が付いてるぞ」

流石はアリスだ。こんなこともあろうかと、だな。

「脱出装置作動だぞ!」

全員何かに捕まれ!

「・・・ごめんだぞ。脱出装置と脱臭装置間違えたぞ」

なんだと!?

「私は泳げないぞ!」

魔獣王カミングアウトか?

「安心しろだぞ。私も泳げないぞ」

お前もか?

「大丈夫です。ここは水深700mです。泳げる人は居ません」

なにが大丈夫なんだ?


「勇者!私はこんな所で死ぬのは嫌だ!美しすぎる嫁をもらったばかりだ。なんとかしてくれ!してください」

意外と脆いな?魔獣王。

「アリス、と言う事だ。何とかしてやってくれ」

「仕方ないぞ。なんとかするぞ」

って、これもお前の仕込みか?

「セイレーン、ルピに牽引を頼むぞ」

「了解です。ルピ、私たちをけん引して、魔都まで引っ張って行ってください」

「かしこまり。ねぇ様、任せてください」

「ハウル、私に感謝するぞ。もしもを考えて、セイレーンの本体を連れてきてたぞ」

「お、おう。流石はプリンセスだ。感謝する。この恩は生涯忘れない」

グリス同様に、今後の事を考えて主導権を握ろうとしたのか?

「会議の主導権は取れたぞ」

ぼそっと言うアリス。やはり恐るべき嫁だった。



3日後、俺たちは魔都へ着く。

魔都の住人たちは、大勢で出向かえてくれた。


「皆さん!私は帰ってきました!王都の女王アイリス様と友好条約を結び、魔王軍を倒し!そして今、王都プリンセス、魔獣王と共に、生還を果たしました!」

アズサに、惜しみない拍手が送られている。

「確かに漂流して来たとは言え、これだけの実績だぞ。凱旋だぞ」

こうして並べると、確かに凄い実績だ。


「皆さん、王都の勇者チームの方々です!紹介します!勇者ケイン様です!」

「よろしくだ」

「プリンセスアリス様です」

「アリスだぞ、よろしくだぞ」

「妖精族族長、魔獣王ハウル様の妻、ターナ様です」

「よろ」

「闇魔法術師マオ様です」

「はいよ~」

「そして、魔獣王ハウル様です」

「お、おう」

流石だアズサ。ここで勇者チームと紹介すれば、既成事実も完璧だ。

ハウルはチームの一員で、そのチームのリーダーは俺だ。


「ようこそ魔都へ」

!?軍服の女性。この世界の女性は皆綺麗だ。が、この子からは、知的オーラが出ている。知的な感じが滲み出ていた。

「マリー!久しぶりです」

「久しぶりではありませんよ。どれだけ心配したことか?」

「ごめんね。迎えに出たつもりが流されて、王都まで行ってしまいました」

はぁ‥と深いため息をついたものの「まぁ、貴女ならやりかねないわね」的な顔でアズサを見つめていた。

「彼女はマリー。私の両腕です」

「私は両足デス」

アズサが両腕と言う程、できる子か?

「王都の皆さん、魔王様がご迷惑をおかけしなかったでしょうか?」

「大丈夫だぞ、いい関係が築けたぞ」

アリスの言葉に、ほっとした表情を見せた。


「皆様の仲間の方がいらっしゃいます。神殿にご案内いたします」

トーレフだな?死んでんだと?死んだのか?

「ケイン、神殿だぞ」

だよな。

「あの方は、自らを神と名乗りました。そして従者の方もまた、神だと。なので神殿に祭りましたよ」

マリーは、小悪魔的な笑いを見せる。

「トーレフが~神~ないよね~」

「ワニ神・・ない」

俺達は神殿に来た。


「ケイン殿!」

久々だな。元気そうで何よりだ。

「拙者、神にされたでござるよ」

ああ、祭られてるな。

「拙者は竜人族で、トーレフと名乗っただけでござる」

「はい。竜神だと伺いましたよ」

「ポセイドンは、カメだと言ったでござる」

「はい。ポセイドン様は、神だと伺いましたよ」

なるほど、「人・・じん」を「神・・じん」に、

「カメ」を「神・・かみ」にか。上手く利用されたわけだ。

「魔王様は不在。ティナ様は音信不通。神が降臨されていて良かったですよ」

シンボルが無いと、纏まりにくいからな。

「ティナ様も、そうしなさいって、仰ってましたよ。トーレフ様の『アズサさんは無事でござるよ』の言葉で、魔都の民は、どれほど安心したか」

やはりできる子だ。行方知れずのアズサの事を、神と祭られたトーレフに、無事であると言わせれば、民衆は収まる。


「ではマリー、皆さんの歓迎の準備を。私は聖剣の記録を、皆さんにお見せしています」

「・・・・聖剣ですか?・・・分かりました。歓迎の準備に掛かります」

マリーは部下数人に指示を出すと、敬礼をして下がって行った。

「出来る子だぞ。あの子は出来るぞ」

アリスも分かっていたようだ。

「ええ、マリーは代々魔王家に仕えてくれています。私の大事な両腕です」

「私が来た時から、マリーは居ましたデス」

おい。

「!!ナナが来たのは400年前だぞ」

見た目は20才前後だ。機械族じゃないのか?

「NOです。マリーは機械族ではないデス」

なら、説明がつかない。

「確かに・・・言われてみれば・・考えたことがありませんでした。若つくりでしょうか?」

いやいや、普通におかしいだろ。

「Oh!言われてみれば、おかしいです」

アズサ、よく聞け。あの見た目で400歳は無い。

マリーは人ではない。

「では?マリーは?一体何者なのでしょうか?」

「敵じゃないよね~」

「謎の味方キャラ。ピンチになると現れる」

「聞いてみればいいぞ。普通に気が付くところだぞ。隠す気は無いぞ」

ああ、そうだな。本人に聞くのが一番だ。


アズサがマリーの所に来た。

マリーは、花瓶をテーブルに運んでいる最中だった。

「マリー!」

「魔王様、お早いですね」

顔には笑みを浮かべている。どうやら、気が付いたことを悟ったようだ。

「ようやくですね。代々気が付かないから、特にこちらから言う事はありませんでしたよ」

「と言う事は!やはりマリーは!?」

花瓶の向きを確認しながら、マリーは微笑んだままだ。

「私は人間ではありませんよ。800歳の人間なんか居ませんよ」

「拙者1200歳でござる」

竜神は、いいんだ。

「800年前サラ族は、この地に僅かな女、子供と、数名の護衛の兵士を結界で守りましたよ。結界の外は、美しい心を持たなければ、生きていけない世界。私は、結界の中の人たちを、導くための思念体ですよ」

良く生き残れたとは思っていたが、やはり導く者が居たのか。

「私はサラ族の想いから生まれましたよ。サラ族の記憶を受け継ぐ、正のエネルギーの集合体ですよ」

正の?魔王とは逆なのか?

「はい。私はサラ族の持つ、正のエネルギーに、魂を埋め込まれた思念体ですよ」

「知りませんでした。でもマリーが何でも関係ありません。マリーはマリーです」

アズサならノータームで、そう言うだろうな。

「思念体って、Hが出来るかだぞ?」

おい。

「大事なことだぞ。マリーが出来るなら、魔王も出来るぞ」

「おっきな~ケインだよね~」

「魔王ケインのデカそう」

「お答えが欲しいですか?では次回に」

引っ張るところか?


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