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残念世界の残念勇者   作者: XT
28/96

魔王編 ㉘

中は暗くて、足場も悪い。

「これじゃ進むのに、時間がかかるぞ」

「そうだね~暗いから先が見えないよね~」

「私が誘導しても良いけど、こうも障害物が多いと・・無理ね」

ピーが言うように、思っていたより中の状態が悪い。

「ヘルプを呼ぶぞ、アルテミスだぞ」

また女神を、提灯の代わりにするのか?


「なに?アリス?あら、ここって」

すぐ来るアルテミスも、アルテミスだ。

「今回も頼むぞ。暗くて困ってるぞ」

「北の大国よね」

「そうです。ここは王宮跡です」

「そう・・やはり、ここに来ちゃったのね・・・」

「???」

「この世界の戦争に、女神が関与していたことは、聞いてるわよね?」

「はい。天界の堕天使と聞いてます」

「そう。でも犯人は分らず仕舞い。天界とか堕天使、女神、天使、神。色々な言い方はあるけどね」

「まだ解決してないかだぞ?」

「ええ。目的も、何も分かっていないわ」

アルテミスは、只照らしてくれているだけではない。

先行して、神の加護で瓦礫や、通行の妨げになる物を、どかしながら進んでくれていた。


「800年前以前、ここは東の大国と戦っていたの。長く互角の戦いをしていたんだけど、ある時から、東の国が優勢になったの。

普通なら、女神は戦争の結果なんか気にしないわ。でも、ティナは原因を探ったのよ。あの子は真面目だから。そうしたら、東の国に神の加護があることに、気が付いたの」

「ケイン、ちょっと待つぞ」

アリスが部屋の中で、何か見つけたようだ。

俺とマオ、アルテミスは、いったん立ち止まる。


「この部屋、礼拝堂だぞ」

ティナの像。椅子に腰かけている像のようだが、椅子は壊れ、ティナの像も横たわっていた。

「この国も、ティナの庇護下だったんだな」

「そうよ。ティナは、この国に神の加護で援助したの。東の大国の使う加護に、対抗できる力を授けていたわ」

「だから~宮殿に女神像があるんだよね~」

アリスは横たわるティナの像を、壁に立てかける。

「像とは言え、横たわってたら可哀そうだぞ」

なんだかんだで、こいつもティナには、感謝してるんだ。

「このままでは座りが悪いぞ。空気椅子だぞ」

腰かけていた椅子が、本体と一体化ではないため、ティナ像の壁に立てかけられた姿が、空気椅子の状態だった。

「これで良いぞ。尻の下に棒でつっかえ棒したぞ」

「・・・・それ、痛々しいわね。あの子の痛い所に刺さってるようだわ」

敢えてそこに、つっかえ棒かよ。地味な悪意も感じた。


「玉座の間は、この先よ。ここからは、崩れていないから通れるわ」

アルテミスは、俺たちに神の加護を使う。

目が良く見えるようになる。

「神の加護『夜目』よ。明るい所に出るまで有効」

「サンキューだぞアルテミス」

俺とマオも礼を言う。

「ケイン、これから彼方が見るもの、感じる事。すべてが真実よ。でもね、真実も見方や捉え方で、見える色が変わるの」

「見える色?」

「そう。白であっても、黒く見えることもある。この空間のようにね」

確かに、暗い部屋では、見えるもの全てが黒だ。白いモノでも黒く見える。

「それは、全が見えた訳では無いからなのよ。結論を出す前に、アリスと…アリッサの意見も聞きなさい」

「???アリッサ?の」

「あなたの、最も信頼する2人。良いわね、約束よ」

「ああ、重要なことを決める時は、必ず相談するよ」

「必ずね」

アルテミスは言い残すと消えた。



「広いぞ、ここは崩れていないぞ」

玉座の間か、ここに昔の王が居たのか。

「ケイン~椅子の所~何か動いてない~」

!?中央の王の椅子、その後ろから、虎?

「誰だ?800年の眠りから、我を起こしたのは?」

喋った?虎が?・・まぁ、鳥やワニが喋る世界だ。今更、驚きはしない。

「我は玉座を守る者。王の間を汚すことは、我が許さん。この宝の箱は、誰にも渡さん」

玉座の横には、いかにもな宝箱もあった。

「そうか、起こしちまって、済まなかったな。俺達は、書庫に用があるだけだ。目が覚め切らない内に、また寝てくれ」

「そうだぞ、ここの宝には、用は無いぞ。お休みだぞ」

俺達は、玉座の間から出た。


「アルテミス様の言うように~ココから先は崩れてないね~」

ああ、あの女神、此処を知っていたな。中の状況も把握していたという事か?

「ケイン~ココに張り紙があるよ~」

なんだこれは?

 「この先、左に曲がって、突き当りの右のお部屋が書物古です。後、足素注意です」

明らかに、800年前の物ではない。

この漢字の間違え・・、ティナの仕業だな。

「これって~ティナ様ぽいよね~」

「サイコメトリーしてみるわ。・・・やっぱりティナ様ね。貼ったのは10年前よ」

まぁ、サイコしなくても分かるがな。


「ケイン、こいつ可愛いぞ」

おい。なについて来てるんだ?お前の担当部署は、玉座の間だろう?

「持ち場を離れると、宝を取られるぞ」

「貴様たちが悪さをせんように、見張るためだ」

アリスに撫でられて、嬉しそうにしてやがる。

「そこ左。書庫とはいえ、この国の大事な本だからな。荒らされては堪らん」

「お仕事熱心な虎だぞ。賢いぞ」

顎を突き出して、ナデナデ要求かよ。見張りと言うより甘えてるだけだ。


アリス、ちょっと暑くないか?

「そう言えばだぞ。造形氷魔法、凍り合羽だぞ」

それは寒すぎ。こう、アイスノン的なほうがいいな。

「合羽はポイだぞ。造形氷魔法アイスノンだぞ」

そうそう。それがいい。首筋が冷えると気持ちがいい。

「旨い!なんと鮮麗された氷魔法だ」

こいつ!凍り合羽を食ったのか?

「我は氷属性故に、氷魔法は大好物だ」

「なら、もっと食べるかだぞ?」

おいおい、餌をやるな。変に懐くと困るぞ。

「主殿、このバカ面な男を、食い殺してもよいか?」

「ダメだぞ。それは私の御主人さまだぞ。旦那様だぞ」

「・・・この利発そうな方が、主のご主人様。主の旦那殿、私めは『ヒョウガ』と申します。末永く宜しくお願いします」

突っ込み処、多いな。

「ケイン、ちゃんとお仕事するぞ」

ああ、わかってる。

「誰が主だ?何が末永くだ。虎なのに、なんでヒョウだ?」


「彼女どこから来たの?今暇?彼氏いるの?主の旦那殿、質問の多い男は、モテませんぞ」

なに声色変えて迄、人にモテない指摘だ。

って言うか、こいつを叩き斬って、レベル上げでもするか?

「ケイン~落ち着こうよ~たかが虎の発言だよ~」

「そうだぞケイン。動物を虐めるのは良くないぞ」

くそ!こいつら、甘えてくる動物に弱いな。猛禽類と扱いが違いすぎる。

だが、ここで引いたら、勇者チームのメンバー入りだ。チームが、動物だらけになる。

「ダメだアリス!俺のチームの動物枠は2枠だ。既に埋まってる」

「あら?何時からルール?私と・・後は?」

「ワニが1匹だ」

「トーレフは竜人族だぞ。私と同じ人族だぞ」

「なら、ポセイドンだ。カメは動物だ」

「ダメだよ~ケイン~」

「そうだぞ、ポセイドンをチームに入れたら、勇者が二人に成るぞ。おっきな勇者と、無戦力勇者だぞ。敢えてポセイドンは、チームにカウントしないぞ」

「ヒョウガちゃん~良かったね~動物枠に空きがあるよ~」

くそぉ~俺としたことが、墓穴を掘っちまった。


「ここが書物庫だ。何を調べる?」

「この国の歴史だぞ。800年前以前の歴史が見たいぞ」

「王の日記がある。こっちだ」

意外と役に立ってやがる。

「ケイン、まぁいいじゃない。彼、いい戦力なるわ」

ピーが言うなら間違いないか。

「ケイン!見るぞ!王様の絵日記だぞ」

絵・・なのか?

「王は絵が好きだったからな」

夏休みの宿題か?



北都歴2199年 ティナと言う女神が来た。東の国に対抗する術をくれるという。

なんだ、この前衛的な絵は?

ティナの絵なのか?丸と棒しか書いてないぞ

「王は、絵が好きだった・・だけだからな」

上手くは無かったわけだな。

北都歴2205年 また、サラ族が和平交渉の話を持ってくる。

北都歴2206年 この国は、もうだめだ。魔王には勝てない。

日記は3Pで終わっていた。

・・これだけか?

「王は、3日坊主だからな」

他には無いのか?自分の国の歴史だぞ?

「王は、記録より記憶、と言う人物だったからなぁ」

「糞ダメ王だぞ。こんな奴が王だから、国が亡ぶぞ」

完全に無駄足だ。こんな物しかないなら、来る必要は無かった。

「サラ族が置いて行った、手紙の記録が残っているはず。確か・・そうそう、宝物庫のA-12の棚だ」

よく覚えてるな?

「800年暇だったからな。一人が寂しくて、本を読んでは、気を紛らわせていたのだ」

「ケイン、連れ帰っても良いかだぞ?」

このタイミングで言われたら、ノーとは言えない。

「ピーの推薦もあるし、OKだ」

「宝物庫は、町の北側の崖をくりぬいて作ってある。いったん外に出よう」

俺達は、表に出た。



「ケイン!遅いから心配したぞ」

「なんです!そのケダモノは?」

ケダモノが言うな。虎だ。アリスのペットだ。

「表に出てわかったぞ。ヒョウガは、真っ白だぞ」

ああ、夜目を使っても、色までわからなかったからな。

・・・アルテミスが言いたかったのは、ヒョウガの色の事か?

「で?何かわかりましたか?」

いや、何も分からないと同じだ。だが、宝物庫に、サラ族の記録があるらしい。

「oh!なら宝物庫に行くデスね」

「よし、案内するぞ。ヒョウガに任せるぞ」

俺達は後を追った。



北に向かう。崖で行き止まりだが、ヒョウガは、崖をくり抜いた、と言っていた。

「ここです。ここに隠し扉があります」

なにもないように見える。

「あるわ。相当大きな扉ね。開ける方法はあるの?」

ピーには見えるようだ。

「ない。鍵は王が持っていた。・・今は魔王の腹の中だ」

喰われたのか・・ティナなら祈りを捧げる所だな。

「私が開けるわ。ちょっと強引にだけど、仕方ないわよね」

ピーがそう判断したなら、他に手は無いのだろう。任せた。


ピーの顔が力む。相当な力を使っているようだ。

崖が大きく揺れ、俺達の前の崖が縦に割れる。

石を擦り合わす音。扉は左右に動いた。

「もうダメ・・・お休みマオ」

ピーが力を使い果たした。が、扉は人が横に成れば、通れる程度は開く。


「気を付けて中へ。宝物庫を守る、龍を呼び出すボタンがあります。決して押さないように」

アリス聞いたか?ボタンは押すなよ。

「みんな聞いたかだぞ?ボタンは押すなだぞ。ケイン、みんなに念を押したから、もう大丈夫だぞ」

お前が一番危ない。

「私が~見張ってるよね~」

マオもよく知っている。


中は暗い。夜目の効果は切れてしまった。

「蛍光灯、点けよう」

あるんだ?

ヒョウガが蛍光灯を付ける。中はそう広くないが、金銀財宝、価値の在りそうな像。剣や盾が山に積まれていた。

「管理が悪いぞ。これでは、何があるか目録とか作れないぞ」

政権運営のプリンセスらしい意見だ。

「書類は、奥にある棚だ」

「A-12だったな?みんな、Aの棚を探すんだ」

「棚は1個だけだ。棚はAしかない。おかれている本は12冊。左から12番目の本だ」

分かりやすい。

「ケイン、これか?サラ族訪問記録とあるぞ」

レナ、ソレだ!結構分厚いし、文字もいっぱいだ。

「私が速読しよう」

機械族の速読機能だ。機械族は、こういう時に便利だ。


レナは速読を始めると、読みながら、内容を話してくれた。

「サラ族は他の星からの移民者だ。平和的な種族で、争いは望まなかった。

 西の小国から、勇者の使いとして、この国に何度も来ていたらしい。

 殆どが訪問記録だ。これと言った情報は・・・・・なるほど。そうだったのか」

「なにか分かったかだぞ?」

「ああ、なぜ西の小国が、大国の脅威に晒されなかったがな」

 記録には、こう書かれている。

 

 「『西の女王は、あの聖剣は使いたく無い、と言っています。使えば、世界を滅ぼす可能性のある剣です。南の国の聖剣と、北の国の聖剣、そして、西の国の『炎の剣』を使えば、東の国を抑えられるはずです。3国で力を合わせましょう』と書かれている。

西の国は、炎の剣以外にも、凄い聖剣を持っていたようだ。だが他には、有力な情報は無いな」

なるほど、世界を滅ぼすレベルの聖剣が、西の小国には有った。

だから東の大国は攻められなかった訳か。


「と。言う事は、他の聖剣は、今でもあるのかだぞ?西の国の炎の剣はあったぞ」

炎の剣は、アリッサが使っている奴だ。

「そうだよね~あるかもね~」

「南の大国、わが国にも聖剣があるかもですね?」

「それは凄いデス!聖剣が手に入れば、攻撃力倍増デス」

「なら、北の大国、ここにも聖剣はあるのだな?」

そうだ!ここにも有るはずだ。

「・・・有った・・と言うべきだな」

くそ!誰かに取られた後か!?

「ケイン、今は無い物の事より、とんでもない聖剣と南の国の聖剣だ」

ああ、すぐ戻ろう。聖剣探しだ。


俺達は一人ずつ、宝物庫から出た。

「no!胸が引っかかって、出られませんデス!」

「私が叩き斬ってやろうか?」

「大丈夫だぞ。私が中から押すぞ」

胸がでかくて、入るときも苦労したナナだ。アリスが中から押してくれる。

「ケイン、ごめんだぞ」

???

「押すとこ間違えたぞ。なんかボタンを押しちゃったぞ」

お約束か!

「油断したね~まさか帰りに押すとはね~」


!!地響きと共に、炎の龍が現れた。

「主、この龍は、王がここを守るために、丹念に魔法で強化したファイヤードラゴンですぞ」

「強いのかだぞ?」

「それはもう。魔王には及ばぬ程度ですな」

「今外に出るぞ。ナナ邪魔だぞ!」

アリスは、挟まったナナを足蹴りにすると、外に飛び出してきた。


マオとナナが攻撃を始めた。

「闇魔法!毒霧だよ!」

「膝ロケットでデス!」

炎の前では、毒もミサイルも効果は無い。

「時間停止魔法!炎の龍よ止まれ!」

「駄目デス!、アズサの時間停止魔法は、質量のあるものにだけ、効果が出ますデス!魔法の産物は質量が無いです!」

「あの炎では、疾風を使っても、私が溶かされてしまう」

マオ、ナナ、アズサ、レナ打つ手なしだ。

猛禽類!ここが見せ場だ!って、なに頭抱えて震えてる?

「獣は、本能で炎を怖がります」

まるでダメな奴だ!

「ふふふ・・私の出番だぞ。私の氷魔法なら、炎の相手が出来るぞ」

呼び出したやつが、どや顔で出て来た。


アリスが前に出る。

「さぁ、ファイヤードラゴン、氷の魔法使いの私と勝負だぞ。氷魔法‼ブリザードだぞ!」

アリスが魔法を放つ!

「ごめんだぞ。全然及ばないぞ。レベルが違うぞ」

くそ!ブリザードは、炎でかき消された。


攻撃が来る!みんな防御だ!避けろ!

ファイヤードラゴンの口から、火球が吐き出され、俺たちに襲い掛かる。

「ほい~ほいほいほい~」

マオは、すばしっこく躱す。

「ナナ!私を盾に隠れるな!」

「レナの体は、前も後ろも真っ平デス、盾かと思ったデス」

ナナとアズサは、レナを盾にした。

俺とアリスは、ヒョウガが、守ってくれた。

猛禽類は、その場でしゃがみ込み、震えている。当たらないものなだなぁ、と思った。


「主殿、我を手に持つがいい」

「悪いけど、今は、かまってやれないぞ」

「なぜ、この国に、聖剣が無いか?」

「後にしてくれ、今は、それどころではない」

「持ち主が変わったからだ。王から主殿にな」

「なに?」

「さぁ、我を手に。我は氷の聖剣、雹牙なり!!」

虎の姿のヒョウガは、光に包まれると、剣の形に姿を変える。


聖剣を手にしたアリス。

「これ、すごいぞ。力が漲るぞ」

「主殿のレベルでも、使えるスキルはある。放つがいい!心に浮かびし、我が力を!」

「行くぞ、雹牙!シベリア寒気団だぞ!」

ブリザードより、遥かに強力なスキルが発動した。

剣から放たれる吹雪が、ファイヤードラゴンを包み込む。

「私の勝ちだぞ」

ファイヤードラゴン沈黙。

俺達は、王都への帰路に就いた。

 

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