第6話:元魔王少女と大罪人
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あれから、魔王軍撃退に成功した俺たちは、しばらくの間宿で休息をとっていた。
ちなみにクエストの方は順調。俺とルキアが前衛で、シュガーとミナミが後衛。
薬草探しなどの採集クエストもこなし、少し資金に余裕が出てきた。
そんなある日…。
「ねぇ、ユウマ。ちょっとお願いがある」
「ん、なんだ?」
本日は、ルキアは鍛冶屋に防具を治してもらいに、ミナミはその付き添いに行っている。正直、今まで俺のことしか興味ないと思っていたミナミが、意外なものに興味を示していて、多少驚いた。
と、言うわけで本日はシュガーと俺の二人。こいつは普段は基本大人しくしているので、ゆっくりできると思ったのだが…。
「個人的に気になる店がある。ちょっと付いてきてくれない?」
「お前がちゃんと道案内できるならな」
過去、こいつは俺とミナミをギルドに連れて行く際、「適当に歩いていればつく」的なことを言って、結局真反対の方向に歩いていたことがあったのだ。
「大丈夫、今回はちゃんと場所はわかってる」
「ならその時に入れば良かったんじゃないか」
すると、シュガーは上目遣いでこちらを見つめ、「だめ…?」と言ってきた。不覚にも、俺の童貞の心は、こんなロリにもときめいてしまった。
「わ、わかった、わかったよ。付いていけばいいんだろう、付いていけば」
「うん、ありがとう」
その時に、俺は一瞬シュガーの顔が少しいつもより暗く思えた。
2
どうやらその店は商店街にあるらしく、俺たちは、そこを目指し歩いていた。
「結構歩くのか?」
「うーん、そんなに?」
曖昧な言い方なのが引っかかるが、今はあえて聞かないでおこう。
「そういえばさ、お前に聞きたいことがあるんだけど」
「いいよ、なんでも聞いて」
「いやさ、お前この前からちょっと魔王時代の時の技使ってるじゃん?」
俺の質問に対し、シュガーは、「うん、使ってる」と答えた。
「あの中にさ、テレポートってないのか?座標移動みたいな奴」
「この世界は、一度そこにマーキングしとかないと、座標移動できないの。それに、あの部屋には、死神以外は座標移動できないようになってるから」
「なんで?」
「外から他の者が干渉できるようにしちゃうと、地獄からも干渉できるようになって、逆恨みして来た人が、その死神を殺してしまうかも知れないから」
「そういや、お前は今は人間扱いだったな」
俺がそういうと、シュガーが訂正した。
「人間じゃなくて、魔族」
「あぁ、元魔王だから魔族なのは当然か」
そんな会話をしていると、シュガーが足を止めた。
「ここだよ」
俺とシュガーは、宿から少し離れたところにある商店街の一角の小さな店にやってきた。
しかし、周りと比べると少し真新しく思えた。かけ看板には、『アリス魔具店』と、書いてある。
「見たところ、ここらでよく見かける店と変わらないけど?」
「いや、ここの店の名前が昔の知り合いの名前なんだよね」
えっと、つまり…。
「それだけのことで、俺をここまで来させたのか…?」
「うん、そうだけど?」
「帰っていい?」
そんなにどうでもいい理由なら、もう帰りたい。
「だめ、ここまで来たんだから早く入ろう?」
「ま、いいけどさ…」
俺は半ば強引に魔具店に入らされた。
3
からんからんと、ドアに付けられたベルが鳴った。異世界にもあるのか、このシステム。
奥に、十五歳くらいだろうか?少女の姿が見える。シュガーの知り合いというと五百歳以上は確定なので、少なくとももう少し容姿が大人っぽいとイメージしていたのだが…。
てか、この世界では、あのような少女でも店が経営できるのか。
「いらっしゃいませ。アリス魔具店にようこ…シュバリエル様!?」
「お、おい、シュガー!まずいんじゃないか!?」
やばい、相当やばい!ついにシュガーの正体に気づく者が現れた!このままでは、こいつも愚か、俺やミナミ、ルキアまでも牢獄送りだぞ!?
だが、当のご本人は、かなり落ち着いた様子だった。
「うん、アリス。久しぶり」
久しぶり?何を言ってるんだ?もしかして…。
「マジで昔の知り合いだったのか?」
「シュバリエル様、そちらの方は?」
「この人は、ユウマ。今、私のパーティの一人」
すると、アリスと呼ばれた少女は、驚きの声を上げた。
「パーティ!?シュバリエル様のですか!?そちらの方は、紛れもなく人間ですよ!?あれほど人間を毛嫌いしていたシュバリエル様が、人間と同じパーティなんて…」
あれ?俺、ひょっとしてかなり酷いこと言われてる?
すると、シュガーが口を開いた。
「それはもう昔の話。それと、さっきの言葉はユウマにちょっと失礼」
「そ、それは失礼しました…でも、なぜそこまで変わられたのです?それに先程、ユウマさん?でしたっけ。シュバリエル様のことを『シュガー』と呼んでおりましたが、あれは、先代様がシュバリエル様を呼ぶ時の愛称ではなかったのですか?」
マジかよ、今までただの偽名としか思っていなかったのだが…。
「あれから変わったの。五百年くらいも人間と関わっていたから」
すると、シュガーの話を聞いていたアリスが目を丸くした。
「え、ご、五百年!?何を言っているのですか?私たちがバラバラになったあの日から、まだ一年くらいしか経ってませんよ!?」
どういうことだ?時間のズレが生じているのか?この世界での一年が、あの部屋での五百年って、もう意味がわからない。
「暇だったから?」
「いや、そんなわけないだろ。暇だと時間が長く感じるけど、一年と五百年間違えるくらいじゃなくないか?」
「それもそう」
俺たちの会話を聞いていたアリスは、クスリと笑った。
「ほんと、仲がよろしいんですね、お二人は。そういえば、私の自己紹介がまだでしたね。私は、アリス・クレイヴレル。アリスとお呼びください」
「俺の名は、イリヤ・ユウマ。ユウマって呼んでくれ。ところで、アリスとシュガーの関係ってどんななんだ?様って付けてるんだし、部下だったり?」
俺がそう質問すると、アリスの口からとんでもない言葉が飛び出した。
「ただの部下じゃありませんよ?まぁ、部下って言えば部下ですが。私は元魔王軍幹部『七つの大罪』の一人、『暴食の罪・マリア』ですよ。それより…イリヤ、ですか…」
「へ?」
俺は、あまりにも突飛な発言に、思わず間抜けな声を上げた。
いや、こんな少女が?この前やってきた魔王軍のルーンだって、魔王軍幹部の使い魔だったんだぞ?それ以上の強さがあるなんて、申し訳ないかもしれないが正直信じられない。あと何か、俺の名前を聞いた瞬間に少し複雑そうな顔をしていたが…。
俺のそんな心中を察したのか、シュガーが語り出した。
「その子の言ってることは本当だよ。『七つの大罪』は七人居て、その一人が彼女、アリス。信じられないなら、その力見せてもらったら?少しくらいなら大丈夫」
「え、いいんですか?ただの人に、私の能力が、どれだけ耐えられるか…」
そんなことを言いながら、アリスは俺の手を掴んできた。そして、「なるべく手加減しますから…」というと、いきなり手が焼けるように熱くなった!
「う、うわぁ!?」
「す、すみません!手加減はしたのですが…」
「あ、いや、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだ」
すると、シュガーがまたもや語り出した。
「彼女みたいに、『七つの大罪』には、一人ずつ固有魔法っていうのがあってね、彼女の固有魔法は、『暴食なる吸収』っていうの。魔力を吸い取る魔法だよ」
「まぁ、触れるか自分の放った魔法に当たってから十秒以内じゃないと発動しないんですけどね」
元魔王軍幹部の力を、身をもって体感した。地味だがとても強力な魔術だ。
固有魔法っていうくらいだから、アリス限定の技なのだろう。てか、元魔王軍幹部がよく店営業できるな。
「でもさ、今思ったけどこの店、客が来ないな。商店街なのに」
「周りの店にみんな持ってかれてるんですよ。おかげで閑古鳥が鳴いてます…」
そういうと、アリスは「あはは…」と苦笑いを浮かべた。正直、苦笑いも浮かべられる状況ではないと思われる。
「た、大変なんだな…まあ、今度適当になんか買いに来るよ」
すると、アリスの目はキラキラと輝き出した。
「本当ですか?ありがとうございます!」
「お、おう、また来るから」
気がつくと、辺りが薄暗くなり始めていた。そろそろ、二人も帰って来るからだろうか。
「おい、シュガー。そろそろ帰るぞ。宿で二人が待ってる」
「そうだね、今日はもう帰る。また来る」
「はい、シュバリエル様と再会できて、本当に光栄です!またのご来店、お待ちしています」
4
宿に帰る道中、シュガーに話しかけてみた。
「よかったな、魔王時代の幹部と出会えて」
「でも、まさか本当にアリスだとは思ってなかった。正直、驚いた」
あの店にいる間、全く無表情だったような気がするのだが…。
「そりゃそうだよな。俺たちが、ここに来たのもたまたまだったんだろ?」
「うん、ランダムテレポートだったから」
そう考えると、二人が出会えるその確率はかなり低いと思われる。
「運命、だな」
「ユウマ、中二病」
「う、うるさいな!」
それから宿に帰ると、案の定二人が帰っていた。宿では飯は提供されないので、またもや俺たちは、酒場まで歩くことになった。すると、やはりシュガーの表情が、いつもより暗い気がした。
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「ねぇ、アリス。彼から何か感じた?」
「特に感じませんでしたが、いつもより、マナの吸いが悪かったくらいですかね?あのくらいのレベルの魔力量、半分くらいならすぐに吸い尽くすのに、少々時間がかかりました」
「やっぱり…」
「心当たりがあるんですか?」
「あの事件で、最後まで残ってたでしょ?あの子」
「え?ま、まさか…確かに、あれだけの軍をたった四人で相手をするのは無理がありますが、死亡は確定したわけじゃないですよね…?」
「でも、安否が確認できてない以上、生きてるとも言い難い。それに、普通あのレベルで、あの魔力量はありえない。本人は気づいてないみたいだけど…」
「あの人が?それを確かめるために、あの人を先日ここに連れて来たのですか?」
「うん、そう。それにユウマは、地球出身」
「確かに、条件は満たしてますが…」
「ユウマに継承されてるかもしれない。あの力が…」




