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選ばれざる言霊使い   作者: シロライオン
第1章 名もなき島 編
30/75

過去の転生者

前回のあらすじ

スピークが絶命し、リントは黒馬と戦って気を失っていた。

(・・・・・・・ここは?どこだ?)

リントは目を開く。

辺りを見渡すと薄暗いが割れたステンドグラスと大きな十字架が見えた。どうやら何処かの教会の中のようだった。

しかし、リントはここに来た事があるような気がしていた。


「やぁ。気が付いたかい?」


急に聞こえた男の声にリントは後ろを振り向く。


「誰だ!?」


振り向くとそこには黒いローブを纏った小柄な男が立っていた。顔は薄暗くてよく見えなかったが、声からするとリントと同年代ぐらいだった。


「僕の名前はハーデ。初めまして。リント君。」

「何故俺の名前を?」

「君が僕の教会に来たことがあるからさ。僕の可愛いトロールを亡き者にしただろう?」

「トロール!?・・・・まさか、あの時の廃墟にいたトロールか?」

「そうだよ。思い出したかい?」

「思い出したよ。その恨みで俺の前に現れたって訳か?」

「アハハ。違うよ。あれは失敗作だったしね。それに僕にはもう必要ない物だ。」


まるで自分が作り出したかのような物言いだった。


「それより、何で俺はここにいるんだ?」

「ここは君の意識の中さ。僕は魂だけの存在だから教会に来た君の魂に干渉出来るんだ。君は僕の情報が入ったギルド証も持っているしね。」

「・・・・もうお前は死んでいるのか?」

「う~ん。肉体はね。。。ちょっと表現が難しいな。」

「まぁいい。それよりもみんなはどうなったんだ?」

「君の仲間は弱った黒馬を討伐し、鉱山跡地から君と魔人狼ウェアヴォルフを背負って、町に帰っている途中だ。」

「みんな無事なのか!?」

「うん。あの魔人狼ウェアヴォルフ以外はね。」

「クッ。。。スピーク。。。。。うぅ。。」


リントはもしかしたら生きているかもしれない。と思っていたスピークがやはり死んでいた事を、改めて思い知り涙した。


「アハハ。情けない奴だなぁ。たかが飼い犬が1匹死んだぐらいで。」

「なんだと!?」


リントは温情のかけらもないその言葉に激情し、ハーデの胸倉を掴んだ。


「だってそうだろ?冒険には死が付き物だ。それを分かっておきながら君はあの魔人狼ウェアヴォルフを危険な冒険に連れていった。そして死んだんだ。君が殺したと言っていい。何を悔やんでいる?」

「クッ!!」

「仲間を守れる力があるならまだ良い。しかし君は弱い。それにもかかわらず、どんなボスが出て来るかも分からずに挑んだ。そして仲間を見殺しにした。違うかい?」

「・・・・・・・・。」


リントは何も言い返せず、掴んでいた手を離した。ハーデの言ってる事は正論だ。あの時、自分がもっと強ければこんな事にはならなかった。もっと強ければ。。。。


「転生者リント。力が欲しいかい?」


ハーデは笑っていた表情を変え、リントに問うた。


「欲しいに決まってる。。。何故俺が転生したことを知っているんだ?」

「・・・・・簡単に言うと、僕も君と一緒の転生者だからだ。」

「なんだと!?お前は勇者だったのか!?」

「違う。。。君と同じ転生を邪魔された者だ。」

「邪魔された?何を言ってるんだ?俺は神の手違いで勇者になれなかったんだぞ。」

「・・・・そう思うのも仕方がない。僕も初めはそう思っていた。オーディンからそう聞かされていただけだからね。でも本当は僕も君も魔族側に召喚され、いずれは魔王になるハズだったんだ。」

「どういう事だ?」

「・・・・その質問に答えても良いけど、時間があまりないぞ?その質問に答えるのと、魔人狼ウェアヴォルフを助けるのとどっちがいい?」

「助けれるのか?」

「もちろん。但し、君にはそれなりの対価を払ってもらう。」

「何をすればいい?」

「僕の願いを叶えてくれればいい。」

「・・・・具体的には何をすればいいんだ?」

「・・・・それはまた教える。今の君ではどちらにしろ無理だからね。でも、生き返らせた後に僕の言う事を聞かないようであれば魔人狼ウェアヴォルフは死ぬからね。」

「・・・・分かった。スピークを助けられるなら何でもしよう。だから頼む。。。。」

「アハハ。君は本当にあの魔人狼ウェアヴォルフが好きなんだね。そうだな。。。本当は君の腕の一本でも触媒にして魔人狼ウェアヴォルフのと交換しようと思ってたけど、今回は特別に片目でしてあげるよ。」


リントはハーデが何を言っているか理解出来なかった。しかしスピークが生き返るなら何でも良かった。


リントが何も言わないでいると、ハーデは静かに詠唱を始めた。

詠唱が始まって10秒ぐらい経つと、リントの左目が徐々に痛みだした。

痛みは段々と強くなり、リントの左目を激痛が襲う。


「ぐ、ぐがぁぁぁぁぁ!!!」


リントはあまりの激痛に左目を抑えながらのたうち回る。この世界が自分の意識の中だったとしても何故か激痛が走るのだ。

現実世界ではきっと左目に異変が起こっているに違いない。しかし、そんな事を考える暇がないほどの激痛が走る。


「があぁぁぁ!!」


リントは自分の意識の中で更に気を失った。



リントが目を開けると宿屋のベッドの上にいた。


「いててて。」


左目がまだ疼く。右目だけ閉じてみると左目もちゃんと見える。

むしろ左目だけの方がハッキリ視界が見える気がする。

黒馬の角に刺された右胸の辺りはすっかり完治しているようで、痛みもなかった。


ゆっくりベッドから起き上がると、ベッドに寄りかかって寝ている少女がいた。


(ん?誰だこの子?)


少女もリントが起きたのに気づいたようだった。


「ぁ。」


声にならない声を出し、リントを見つめる。

年齢は15歳ぐらいだろうか。身長は150cm前後。銀色の綺麗な髪を腰まで伸ばし、ピンクの唇。その瞳は右目が赤で左目が黒い。整った顔つきは犬顔で可愛らしい。スタイルも良く、胸も程よく実っている。お尻にフサフサの尻尾が生えていて、誰が見ても認める美少女だった。首には金色の首輪をしている。


「あ、あの~どちらさんで?」


リントがそう言うと、銀髪の美少女は瞳に涙を浮かばせながらリントに飛びついてきた!


「うわっ。」


リントはまたベッドに倒れ込んだ。

銀髪の美少女はリントの顔をペロペロ舐めまわした。

★サーシャ先生の補足授業★

ギルド証の情報に残っている職業の闇司教は、深淵の僧侶・ハーデの情報よ。

各国が総力を挙げて、彼のギルド証の情報を消そうとしても消せなかったの。

でも、闇司教に転職出来る人が1人もいなかったから各国は放っておくことにしたの。

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