救世主
暫くは反省する為大人しく仰向けに転がっていたが、段々身体を動かしたくなってきた。同じ体制は身体に良くない。
「誰かー!誰か居ませんかー!!」
我が家は大公家だが、メイドさんは少ない。神様の最高傑作な私とタメ張る程容姿に恵まれた養父達に、メイドさん達が恋しちゃうから。
私専属のメイドさんが居ないのは、養父達のただの我儘だが。例え女性でも、私と親しくする人間は極力減らしたいらしい。
暫く叫ぶも誰も来てくれない。もう数時間同じ体制のせいで本当に辛い。反省していた自分がバカらしくなる。もっと言ってやればよかった。『聖女様はあんたらなんて一生好きにならない!ザマァみろ!!』くらいは言っても許される程の苦痛だ。
あれから何時間経ったのだろう。辛過ぎて涙がちょちょ切れる。
全部私が悪かった。反省してるし後悔してる。今ならどんなお願いでも聞き入れられそう。
シクシク一人涙を流していると、コンコンと部屋の扉がノックされる音が聞こえた。
「たっ、助けてーっっ!!」
幻聴じゃない事を祈りつつ全力で叫ぶ。
「失礼」
そっと扉を開け部屋に入ってきたのは我が国の宰相様だった。何でここに宰相が、と思う余裕は今の私には無い。
「助けてください宰相様!!身体動かして!!死んじゃいますーっっ!!」
必死の懇願に宰相は慌てて私の身体を起き上がらせてくれ、手足を動かし血行を良くしてくれた。
「宰相様、ありがとうございます…本当に…うぅ、死ぬかと思った…」
「もう大丈夫だ。可哀想に、大公達は一体何をしている?」
「そ、それが…」
私は事の経緯を掻い摘んで話した。
私が皆に言った言葉を聞いた宰相は顔を引き攣らせたが、深い溜め息を吐いた後徐に口を開いた。
「それは、流石に…言葉が過ぎたな…」
宰相に言った言葉ではないのに、宰相は滅入った様に目を伏せ額を抱えた。
彼の名前はレイズ。皇帝陛下が信頼している有能な宰相だ。こう言ってはなんだが、養父達と比べると大分常識人である。但し、養父達と比べて、である。一般人と比べたら大分ヤバイ人ではある。つまり私の10番目の男さんだと言う事だ。




