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水晶で連絡

「宰相様はどうしてここに?」


 身体の辛さが引いてようやく気付いた疑問に、宰相は苦笑いで答えてくれた。


「明日の予定を確認しようとチェイニー殿に何度も連絡したのだが、全く応答が無くてね。皇太子殿下が心配してこちらに乗り込もうとするのを阻止して私が来たのだ」

「成る程」


 働き者のチェイニーが宰相の連絡を無視するわけないし、うちはそれ程ブラックじゃないから連絡くらい出来る筈。もしかしなくても私のせいだろうか。

 そういえば、最後にチェイニーを見た時、口元に赤いハンカチを当ててたけど、チェイニー赤いハンカチなんて持ってたっけ。


「チェ、チェイニー…死んじゃったんじゃ…」

「可能性はあるな」


 真顔で怖い事言わないでほしい。もしホントに死んじゃってたら、犯人は誰になるの。言葉のナイフで滅多刺しした私?


「大丈夫だ。何人かは駄目かもしれんが、心配はいらない。皇太子殿下が暴れて殺めた事にしよう」


 やはり養父達よりは常識人でも、この人もかなりヤバい人だと改めて実感した。


「と、兎に角皆の安否を確認しないと!」

「待ちなさい。皇帝陛下に連絡をする方が先だ。陛下も君の事を心配していたぞ。皇太子殿下もまた暴れ出す頃だ。無事な姿を見せてやってくれ」


 宰相は懐から綺麗な水晶を取り出し、短く呪文を唱えた。

 この世界にスマホは無いけど、代わりに水晶や魔石なんかで遠く離れた人と連絡出来たりする。水晶はビデオ通話の様に相手の顔を見ながら会話が出来、魔石は声を届けるだけの物だ。この世界に転生したばかりの頃は、そのファンタジーさにわくわくドキドキしたものだ。

 じっと水晶を見ていると、水晶の上に水面のような物が浮かび上がり、ドアップの皇太子殿下の顔がくっきりと映し出された。


『無事か!?何故レイズに抱かれているんだ!?声を聞かせろ!何があった!?』


 開口一番質問攻めしてくる皇太子に戸惑っていると、画面いっぱいにあった皇太子の顔が、ドカッ!!という音と共に消え、皇帝が姿を現した。


『顔色が良くないぞ』

「皇帝陛下、ご心配をおかけしてしまい申し訳」

『謝るな。必要ない。顔色が良くない。大神官を呼べ』

「あ、えっと…」


 謝罪の言葉を遮り、私の顔色を心配してくれるし皇帝に、なんて言えばいいか口籠る。


「陛下、奴等どうやら虫の息のようです。殿下を寄越してください。今の内に全て片付けてしまいましょう」

『アレがか?大神官は』

「恐らくもう直事切れます」

『姫の治療が先だ。今は生かせ』

「かしこまりました」


 今とても不穏な会話が聞こえている気がする。虫の息って誰が?大神官事切れそうなの?会心の一撃が一撃必殺過ぎたようだ。どうしよう。

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