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第20話

第20話


ホタルは、夢の中に閉じ込められていた。


そこは——果てしなく続く漆黒の闇。

視界は完全に閉ざされ、どこまでも沈むような恐怖の中、ただ耳に届くのは、ぞっとするような音ばかりだった。


「……たすけて……ホタル……キャアアアアアッ!」


正体不明の悲鳴が、四方八方から響き渡る。

ホタルは身を縮め、肩を抱え、ぶるぶると震えていた。


「……いや……もうやめて……」


次々と、彼女の目の前に現れたのは——惨たらしく殺された家族や、大切な人たちの姿だった。


頭のない遺体、血まみれの友人たち。

その中には、さっき別れたばかりのヒマリや仲間たちも含まれていた。


全身が凍りつき、何もできない。

声も出ない。ただ、心がひたすら悲鳴を上げていた。


「いやだ……!」


ホタルは、絶望の中で叫び続けた。

そのとき——


やわらかく、なつかしい声が、闇の中から静かに響いた。


「……ひとりじゃないよ……」


「これからも、よろしくね〜ホタル……」


「ホタル〜、いっしょにあそぼ〜」


次々と、かつて彼女が愛した人々の声が、耳元に囁かれる。

その中に、ひとつだけ、聞き覚えのない、しかしどこか神聖な響きを持つ声が重なった。


「——進みなさい、ホタル」


その声と同時に、視界を覆っていた闇が、静かに晴れていった。

眩いばかりの光が、ホタルの前方を照らし始める。


彼女はその光に向かって、ゆっくりと、しかし確かに歩き出した。


「進むのです、ホタル。あなたには、果たすべき役目がある。

——その目標の先へと、越えて行きなさい。時は、すでに満ちている」


突如、目の前に、炎のように神聖な道が現れる。

美しく輝く月と星が、夜空に映えて、幻想的な世界を描き出していた。


だがその直後——


声は、ひび割れたように変質し、不吉で冷たい音色に変わる。


「行くな……ホタル……」


「止まれ……進むと死ぬぞ……」


「私たちを置いていかないで……!」


見えない冷たい手が、彼女の腕を、肩を、足を、後ろから引きずり戻そうとした。


ホタルの表情に、再び恐怖が戻りかけたその瞬間——


轟くような荘厳な声が、空間全体を震わせた。


「黙れ、この者ども! この子が誰の娘か、知らぬのか?

——彼女は“あの御方”とともに、重大な使命を担う者ぞ」


声は怒りに満ちていたが、すぐに静まり、深く澄んだ音に変わる。


「……お前は、あの方に似ているようで、どこかまったく異なる存在だ。

かつて見た姿とは、まるで別人のようだ。いったい、何があった?

この異質な気配は、いったい……何だ……?」


その言葉に、ホタルの胸の奥から、熱く脈打つ何かが込み上げてきた。


「この正体不明の気配から……温かさと高鳴りを感じるとはな。

ふむ……まるで、大人びた恋慕のような、やや淫靡な感情まで混ざっておる。

ふふふ……これは意外だな?」


その瞬間、ホタルの頭に、あるひとりの顔が鮮明に浮かんだ。

頬が赤く染まり、羞恥と混乱の感情が一瞬で渦巻く。


だがその混乱が、むしろ彼女の意識を鋭く、明瞭に研ぎ澄ませた。

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