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青き竜とレモン色の小鳥  作者: しんた☆
11/20

11 レイモンの想い

「そんなおかしなこと言ったかな?レイモンにだって、いただろ、親友?」

「親友、か…。」


 明希に習って岩に背を預けたレイモンは、満天の星に悲し気な視線を送る。


「どうしたの? もしかして、親友と喧嘩別れとかしたのか?」

「いや、そうじゃないんだ。」


 言葉を濁す姿を見ていると、これ以上追及してはいけないような気がして、明希は黙り込んだ。


「あっ!流れ星!!」


 明希は思わず手を合わせて、伊織の回復を祈った。


「なにやってんだ? 流れ星なんて珍しくもないのに。」

「いや、すごくレアだろ?! 俺らのところでは、流れ星に願いを託したら、叶えてくれるって言われているんだ。伊織が元気になるんなら、何度だって祈るよ。」

「ふふ、恋人同士みたいだな。」

「何言ってるんだ。恋人以上だ!」


 鼻息荒く答える明希だが、恋人がいたことはないだろうという事は、レイモンには手に取るように分かった。それでも、その純粋な想いがまぶしくて、とても羨ましかった。


 翌朝、二人は再び頂上を目指して歩き出したが、高度が上がるほど、天候は刻々と変化する。レイモンの誘導で、岩のくぼみに雨宿りしながら、雨の上がった隙間に少しずつ登る。


「今日はここで泊まろう。ムリをしたら雨で滑って滑落するかもしれない。」


 実際、洞穴を少し登ったあたりから、岩と砂利ばかりになって、足元もおぼつかない。明希はレイモンが示した小さな洞穴に腰を下ろすと、ふうっと大きなため息をついた。洞穴から見下ろすと、随分高いところまで登ってきたのが分かる。すでに足はパンパンで、ここで休憩が取れるのはラッキーだと思われた。

 体を横たえると、すぅっと睡魔が襲ってくる。明希はそのまま眠ってしまった。


 誰かの鼻歌で目が覚めた時、明希は懐かしい気分になった。この歌、聞いたことがある。テレビの懐メロ番組で聞いた曲だった。そういえば、最近どこかでこの曲を聞いた気がする。体を起こしてみると、歌っているのはレイモンだった。


「その歌…。」

「ああ、これは、俺の親友が好きだった歌だ。」

「ねえ、レイモンの親友の事、聞いてもいい?」


 レイモンは、明希に背中を向けたまま少し考えてから答えた。


「まあ、いいか。もう、親友って言っていいのかも分からないけど、アイツは、テオっていうんだ。すごい魔力を持っていて、俺なんか足元にも及ばない。だけど、子どものころからずっと一緒に戦ってきた。不器用なほど真面目で、優しい。帝国の王が代替わりして、すっかり実力主義になった時でも、あいつは、魔力が少ない俺の事をバカにしなかった。お前にしかできないことが絶対あるからって。だから、いつだって俺は、アイツの活躍のアシストをしていたんだ。あいつが皆に認められると、それだけで俺は嬉しかった。周りは俺の事なんて評価しないけど、アイツはいつも俺とタッグを組もうと誘ってくれた。それなのに俺は…。」


 気が付くと、レイモンの肩が揺れていた。明希はどう声を掛けたらいいのか分からず、ただじっとその背中を見つめていた。


「気持ち悪いって言われるかもしれないけど、俺、テオの事が好きになってしまったんだ。アキが伊織のことを好きだって言うのとは違う、抱きしめたい、キスしたいと思う方の好きだ。」

「え…。」

「おかしいだろ?自分でもどうしてそうなったのか分からないんだ。だけど、どうしてもテオを抱き締めたい、自分だけのものにしたいって気持ちが心を支配するんだ。」

「それで、テオにはそのことを伝えたの?」


 レイモンは力なく頭を下げて、首を横に振った。


「告白する前に、拒絶された。戦いが激しくなって、テオが大けがして戻ってきたとき、思わず抱きしめて『死なないでくれ!』って叫んだんだ。そしたら、『気持ちの悪いことをするなよ』って、振り払われたんだ。それで、ハッとして、その時初めて自分の気持ちに気が付いたんだが、即座に失恋だ。それからは、なんとなくテオに近づけなくなって、会ったらまた余計なことをしそうな気がして…。」

「レイモン…。」

「だから、お前たちの話を聞いていると、すごく羨ましくてな。俺たちにもそんな頃があったのに…。」

「だけど、それじゃあテオの本当の気持ちは聞けていないままじゃないの?」

「ん、まぁ、そうだけど。 あ、雨が上がったな。あと少しだから、行こう!」

「え?あ~、分かった。」


 レイモンは、気持ちを切り替えるようにサッと立ち上がって外の様子を確かめた。先ほどの雨がウソみたいに真っ青な空が広がっている。山の天気は変わりやすいとは聞いていたが、それにしても澄み切った青空だ。明希はふと、先ほどの話が伊織だったらと考えてみたが、自分みたいな人間を、かっこよくて頭もよくて、性格までいいアイツが好きになるとは思えないと、微かに苦笑して歩き出した。


 1時間も歩くと、ついに頂上に辿り着いた。さすがに風が強く、薄い雲も通り過ぎていく。それでも、何もない砂利ばかりの場所に大きな平たい大岩があるのを見つけると、レイモンがそれを指さした。


「きっと、あれだ。行ってみよう!」


 いよいよか!明希が一歩踏み出すと、スルッと踏み外した。


「あっ!」


 平たい大岩の手前には2メートル幅ほどの深い亀裂があったのだ。5メートルほどあちらこちらの岩肌に擦りむき切り裂かれながら、なんとか岩に片手を掛けてひっかかった明希は、満身創痍だ。運悪く、雲が二人を遮りレイモンは明希を見失っていた。


「アキ? どこに行った? どういうことだよ? おい、返事しろよ!」


 レイモンの声は届いているが、明希は返事すらできなかった。岩の突起に引っかけている左手の指3本に意識を集中しないと、落ちてしまいそうなのだ。右手はさっき岩を掴もうとしてグサリと掌を切っている。心臓がドクドクと音を立てて嫌な汗が背中を流れる。

―いやだ。誰か、助けて。―


「どうして? ウソだろ? アキ、どこに行ったんだよ。親友を助けるんじゃなかったのかよ?」


 嘆く声にジワリと悲壮感が漂い始めた時、明希はハッとした。

―そうだ!絶対に竜に会って伊織の事を頼まなくちゃ!―


「これ以上、親友を失いたくないんだ!アキ、出てきてくれよ。もうひとりぼっちはいやなんだ。」


 膝をついて泣き崩れるレイモンの背後に、人の気配があった。


読んでくださってありがとうございます。

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