オレは飛行魔法
オレは飛行魔法で浮き上がり戦場を見渡した。もちろん目を引くのは三頭獅子の巨体。弾む様な素早さで梟様を追いかけ回している。
雪原に築かれた櫓や土壁を破壊しているのに全く気にもしていないみたい。
それをやや離れた場所から追いかける部隊。中にはオレと同じように空中へ浮かび攻撃魔法を放つ兵士もいた。
素早く動いているとは言ってもその巨体は攻撃を当てやすい大きな的になっている。
氷の矢、火の矢が背中に突き刺さる。
更に土の槍、風の刃次々と繰り出される魔法。足に顔に命中していく。
思わず見ているこちらにも力がはいる。
全ての攻撃を受けたはずの三頭獅子の動きが止まった。
直後に身体から一瞬吹き出した黒い影。
次の瞬間には何事も無かった様にまた梟様を喰らおうと牙を剥き出し追いかけ始めた。
その後方にはウルフや空を覆うような鳥達が兵士を襲っている。数が違いすぎる。どこからこんなに集まったのか雪原を埋め尽くす獣の群れ。
濁流に飲み込まれ浅瀬に避難しているかの様に見える兵士達。
それぞれ十数人の部隊で固まり周りを殲滅しているみたいだけどオレには劣勢に見えた。
まずい急がなくちゃ。足元には近衛兵に囲まれながら進むヒダッカさん達。
一直線に三頭獅子へ向かおうとしてるけどあの巨体に飛び込まれたら近衛兵もろとも潰されてしまう。
まだ距離は有るけど、ヒダッカさんの指示でノアタさんが弓を射る。そしてヒボラさんの詠唱がそれに続く。黒い泉の側で見せた二人の息の合った攻撃。
シューティングブレイズと竜巻の合わせ技。炎の竜巻が三頭獅子を襲う。
精霊の力を借りたんだと思う巨大な炎の竜巻が三頭獅子の巨体を全て飲み込んだ。
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ノアタのシューティングブレイズから降り注ぐ焔を絡めとるようにしてヒボラの竜巻が炎のとぐろを巻く。
動き回る三頭獅子へぶつけるのは難しいかと思われたが吸い寄せられる様にその巨体を包み込んだ。
多少は削れるか?
炎の竜巻の中の温度はどれ程だろうか。通常の生物であれば肺を焼かれ即座に命を落とすだろう。
しかし竜巻を切り裂く様に三頭獅子が再び姿を表した。
「傷すら無しか。」
ヒボラの声には無念そうな色が混じる。
あれだけの炎をぶつけたと言うのに怪我を負った様子はない。
少しの足止めにはなっただろうか。
いやそれだけではなさそうだ。少し三頭獅子が縮んでいるように見える。
「ノアタ矢が尽きるまで射ち続けろ。ヒボラはサポートだ。」
「「了解!!」」
縦横無尽に走り回る三頭獅子は戦場を混沌とさせていた。
暴風にも倒されなかった櫓や土壁を破壊しながら兵士を倒している。
倒された兵士は獣に飲み込まれる。
獣の唸り声、怒号や詠唱の声に混ざって悲痛な叫び声も届いてくる。
梟も兵士のいない方へ三頭獅子を誘導しているようだが巨体が素早く動き回る衝撃は凄まじい。
獣の波に飲み込まれたら俺達も三頭獅子を追うことは難しいだろう。兵士が持ちこたえている間に三頭獅子を何とかしなければ。
クダナの補助魔法がありがたい。筋力増強の魔法をかけて貰い重い装備を身に付けて居ても普段より早く走れる。
握りしめた剣を振るうべく三頭獅子へ近付いていく。
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オレは三頭獅子に降り注ぐ攻撃を眺めつつ近付くタイミングを見計らっていた。
精霊視を使いその状態で無属性の魔力を開放する。どこまでが自分なのか境界が無くなるような不思議な感覚。梟様との訓練で一番難しかった魔法。
オレが気持ちを奮い起たせると胸元が温かくなり精霊の守りの光が灯る。
その状態で三頭獅子を見つめ探る。核となる部分を見付けなければいけない。
走り回る黒い塊の様な三頭獅子に目を凝らす。
突然こちらをじっとりと見つめ返されたような悪寒が走る。
右目から痛みが走り空中姿勢を保てなくなる。
まずい、ヒダッカさん達の元へ戻ろうか?
そう考えた所で目の前から色が消え世界が灰色になった。
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上空を飛ぶ峰司の姿勢が揺らいだ気がした。
だが見間違いだったのだろう三頭獅子の動きに合わせ距離を一定に保っている。
そろそろ俺も攻撃を仕掛けたい。
この氷聖剣なら斬撃を飛ばせるのではないかとヒボラとクダナが考察してくれた。
三頭獅子から目を離さず一旦足を止め俺は剣へ魔力を注ぐ。
「リン手伝ってくれるか?」
俺はそっと声を出した。戦場では他の者に届かないだろう音。
それに応えて胸元の革袋から光る珠が飛び出してくる。
俺の肩にかしっと爪を食い込ませる様にリンが乗る。ほわほわとした羽が頬をくすぐる。
「キュイッ!」
任せろって事か?
近衛兵は俺が剣を振りかぶると前を空けてくれた。
三頭獅子を正面に捕らへ氷聖剣を振り下ろす。
「行け!」
空中を薙いだだけなのに斬った様な重さが腕にかかる。その重さ分魔力が飛んだのか?
刀身と同じように白く発光する斬撃が見えた。
ひらりと三頭獅子が避けた。
「あー!!なんで?」
ノアタが俺の斬撃から三頭獅子が避けたことに驚いて声をあげた。
俺だって同じ気持ちだ。今までノアタやヒボラ、兵士達の攻撃は全て受け止めていたのに。
「逃げるなら近付いて当てれば良い。次だ次!」
ノアタに返事をして再び走り出す。




