眩い程の光に
眩い程の光に包まれ喜びのままに駆けた。精霊がふわふわとオレの周りを飛ぶ。
今ならどこまでも走り続けられるんじゃないかと思うくらい体が軽い。
直ぐにオレとヒダッカさん達を遮る場所までたどり着いた。
そっと手を伸ばし木に触れる。
「もう大丈夫。通してくれる?」
ギッチリと壁を造っていた木々がするすると分れオレが通れる様に隙間を開けてくれた。同時に精霊が外へ飛び出していく。
精霊の光を受け驚いた表情の皆が見えた。
「ただいま!」
「待ってたぞ。」
ヒダッカさんが頬を緩め頷いてくれた。やり遂げたんだって思いが込み上げてくる。
「心配させやがって!」
ヒボラさんがいたずらっぽく、にやっとしながらバンバン肩を叩いてくる。
「無事で良かった~」
ノアタさんは笑いながら目に涙を溜めて怪我はない?って気遣ってくれる。
「峰司、お疲れ様でした。」
クダナさんが神官服を着ている時の様な穏やかな笑顔で微笑んでくれる。
皆も無事で本当にほんとうに良かった。
「三頭獅子は倒せました。闇の王を助ける事も出来ました。ヒダッカさんと皆の協力が無ければこんなこと出来ませんでした。本当にありがとうございます。」
身体中に怪我を負いながらも笑顔で迎えてくれた皆に感謝の気持ちを込めて一人づつと握手した。こんなんじゃ伝えきれないかも知れないけど。
「ああ。」
「おう!」
「峰司君が一番頑張ったよ。」
「貴重な経験をさせて頂きました。」
側に控えてくれていたんだと思う。近衛隊長のノミナさんが進み出て来た。
「峰司様、無事にご帰還されて何よりです。脅威は去ったと言う事で宜しいでしょうか?」
「はい。」
「それでは本部に連絡をさせて頂きます。」
「はい。あのオレ達を守ってくれてありがとうございました。」
「過分なお言葉です。リベルト様がお戻りにならねばお守り通す事も出来ませんでしたから。」
「あれ?そう言えばリベルト様は?」
ノアタさんの指摘にオレ達は周囲を見回す。
精霊が雪原を舞い幻想的に照らしている。どこまでも広がっていくようなその美しさに圧倒されてしまう。
だけどリベルト様の姿は何処にも見つからなかった。
……………………………
ロブド国の王は泰然と座っているのだがその両手はきつく握り締められている。
雪原の部隊からの情報が突然途切れて戦況を知る術がなくなった。確認のため兵を向かわせたが待つことしか出来無い。一分が一時間にも感じられるような重苦しい沈黙がその場を支配していた。
「こ、近衛部隊から通信が届きました!三頭獅子は討ち滅ぼされたと!」
通信兵のうわずった声があがった。
「……そうか。」
素っ気ないくらいの返答をぽつりと呟き王は一瞬顔を手で覆った。
覆った手を降ろした時、その目にはうっすらと涙が浮かんでいるように見えた。
「第五連隊から通信が届きました!プログレヤ様の薬の効果が高く重傷者も順調に回復しているそうです!」
「第一連隊からも通信が届きました!現在戦闘は起こっておらず、獣達は森へ帰っているそうです!」
おおっとどよめきが起き張り詰めていた空気が一気に弛んだ。
「陛下、皆へお言葉を。」
プロフ国の女王が立ちあがりフォス国の王も立った。それに合わせその場の臣下は席を離れ片膝を着き言葉を待つ。
その者達の表情は安堵と達成感で輝く様だった。
「堅苦しい言葉は無しだ。皆良くやってくれた。我らの大陸は守られた!」
ロブド国の王は喜びに沸く室内を見回して普段は見せない満面の笑みを浮かべる。そして未曾有の脅威に立ち向かった者達へ労いの言葉を一人づつ掛けていく。
これからの戦後処理を思えば手放しで喜べるのも今だけだ。
ロブレシア様がこの場にいれば誰よりも豪快に笑うのだろうなと考えて、ふと三大精霊はいつ帰ってくるのだろうと思った。
…………………………………
パーシュル村では三頭獅子を退けた後も楽団員は念のために待機していた。
フォムンという大精霊の求めに応じて再度朝焼けの歌を奏でた。不思議な魔法で戦場へ音楽を届けるとの事だった。パッヴァに合わせて曲を奏でる事はとても楽しく何時まででも出来そうだった。
しばらく前にもう終わって良いと言われた時には残念そうな表情を浮かべる者も多かった。
今はマノ達楽団員が魚人の三人を質問攻めにしていた。
神官が失礼の無いようにと諌めたが魚人は人族の話を聞ける良い機会だと気さくに応じてくれている。
「ありゃぁなんだね!?」
突然の驚きの声を上げたナジンの指し示す方角へ振り返れば遥か遠く光の粒が闇夜に浮かんでいた。
それはまるで星が地上から空に還って行くような幻想的な光景だった。
感嘆の声を洩らす人々の心に平穏が戻ったのだと言う確信が芽生えた。
その場からフォムンの姿が消えている事に人々はまだ気付いていない。




