赤と白①
とある船の上。
「なにやってんのぉー★
そんなんじゃ全然ダメぇ♪
ぜぇーんぜん、だめ♥️」
「分かってはいたけど、きっびしぃ~。
まさかここまでダメだとは思わなかったなぁ。」
「いやいやいやいや!
僕だって十分頑張ってるんですよ?
一生懸命やった結果がこれなんですけど!」
「ほう♣️一生懸命やって、これだと?♦️
それじゃあ、お前さん・・・・♠️」
「ほんとにダメだねぇー。
もっぺん修行してこぉーい!」
「なんでですか!?
僕は師匠に散々しごかれて、師匠の術にもそこそこ反応出来るまでには成長したんですよ!?」
「そこそこ、じゃあなぁ★」
「うーん。あの程度じゃ、エジルの仕込みも大したことないねぇー。あいつ、自分はすごくても人を教えるのダメなタイプなんだねぇ。」
「ちょっと!
僕はともかく、師匠をバカにするのは許しませんよ!」
「あー、ごめんごめーん。
言い直すねぇ。
エジルに仕込まれたクセにどーしょーもないねぇ、君ぃ~」
「結局それ!?」
「仕方ねぇな♥️
そこまでしつこく言うなら、データで見せてやろう♣️」
そう言うと、ロシツキーは懐から取り出した紙を広げた。
「なんだ。皆大したことないんですね!
大体が100mを12秒台じゃないですか!けっこう普通ですよ!
で、僕はどうですか!?10秒台の自信ありますよ!」
「見たいか?♦️」
「そりゃー、見たいですよ。」
「じゃあ見せてやろう♠️ルイーダ、頼む☆」
「はぁーい。
リオ君のデータはこれだよぉ~。」
「予想の遥か上、14秒台だ♥️」
リオ。
そう呼ばれたのは、まだほんの少年だ。
黒髪を綺麗に眉の上で切り揃えた前髪の下には、中央大陸南東部特有の童顔を備えていた。
体もそこまで大きくはなく、いわゆる中肉中背。
一言で言えば、あまり特徴のない少年だった。
「嘘だ!」
「嘘だ!って、
データは嘘はつきませぇーん。」
「じゃあ捏造だ!」
「おいおいおい♣️まさかの疑惑だな!♦️
いい加減認めろって♠️」
「こんなはずないんだ!
僕は、僕はもっともっと出来るんだ!
こんなもんじゃないんだ!
そうだ!
きっとスターターが悪いんだ!」
「俺か?★スターターの号令って関係あるか?♪よいーどんっ!♥️って言うだけだろうが♣️
全く関係ないだろう♦️お前さん、まさかふざけてるのか?♠️」
「ふざけてません!
僕は、このレースでてっぺんを取って、世界一の大海賊になりたいんです!」
「じゃあもっとちゃんとやれ★」
「いやだから!
スターターの号令とか、マネージャーのデータ捏造とか、そんなんで足を引っ張られてたら、やれるもんも出来ませんからね!」
「・・・・・。
ねぇ船長。
私ね、なんか今、とっても顔が熱いんだけどぉ。
それでね、お腹の辺りがザワザワするんだけどぉ。」
「ルイーダ、そりゃーお前、怒りってやつだな♥️
お前が怒るなんて相当久し振りなんじゃないか?♣️
おいリオ。ルイーダをあんまり怒らせるなよ♦️
こいつは世界最強の精心術師なんだからな♠️」
「え?そーなんですか?
なんか、どっからどーみても普通のオバハンにしか見えませ・・っ!」
ルイーダの体からどす黒いオーラが沸き上がったかと思った瞬間だった。
どこからともなく、もうひとりのルイーダが現れた。
コウモリかドラゴンみたいな羽根を生やし、しかしその表情だけは女神像のごとく穏やかだ。
その穏やかな顔のまま、リオの顔面を思い切り殴り付けた。
何度も、何度も、何度も、何度も。
「いってぇ~。」
「あんだけラッシュ食らってだなぁ★
いってぇ~、だけで済んでるのは奇跡だぞ♪」
「まったくもう!
エジルのやつぅ!こぉんなお荷物を送り付けてきてぇ!
次に会ったら靴に画ビョウ入れてやるんだからぁ!」
「おいおい、めちゃめちゃ陰湿だな♥️
まぁエジルのことだから、何かしら理由があって俺達に預けてるんだろう♣️
長い目で見て育てていくとするか♦️」
ここは剣と魔法の世界。
勇者エジルと共に冒険をした赤き海賊団は、今日も7つの海を股にかけ、風の向くまま気の向くままの旅を送っていた。
そんなある日、ある貼り紙が世界中の港に貼り出された。
賞金はなし!
与えられるのは世界一の大海賊という名誉のみ!
海賊団対抗、徒競走大会、開催す!
一体誰が貼り出したのか、大会の主催が誰なのか、いつどこで開催されるのかも書いていないその貼り紙は、誰が見てもただのイタズラだとしか思えなかった。
海賊以外の誰が見ても。
赤き海賊団のロシツキー船長はその大会で名誉を手にするため、まずは旅人の酒場を訪れ、ルイーダと、ルイーダの紹介により俊足で鳴らした海賊たちを仲間に引き入れたのだった。
そんな時、ロシツキー船長の元に、
勇者エジルの弟子と名乗るひとりの若者が現れた。
その若者を合わせ16人の俊足海賊を率い、赤き海賊団は再び海へと漕ぎ出した。
目指すは海賊の頂きのみ。
「せんちょぉー?せんちょぉぉぉー?」
「その呼び方なんかムカつくわぁ★」
「せんちょぉぉぉー!ところで、僕達は今どこに向かっているんですかね?
なんか僕、師匠から
『おいリオ。お前、ちょっとロシツキー船長のとこ行って、海賊オリンピックの手伝いをしてこい。お前がいると精神衛生上良くねぇから、出来ればそのまま帰ってくるな』
って、船長を手助けするよう言われたんですよね。」
「お前それ、完全に厄介払いされてるだけだろ♥️」
「お頭ぁ。あっしら、この面倒なの押し付けられただけっす。」
コッシーの意見はほぼほぼ図星と言って間違いないだろう。
「エジルの奴、次に会ったら説教なんだどぉ!」
メルテザッカーもお冠だった。
「で、海賊オリンピックって何なんですか?」
「エジルめ♣️
なんで海賊でもねぇのに海賊オリンピックのことを知ってやがるんだ♦️そしてお前はそんなことも知らずに速く走るだなんだと言ってやがったのか♠️
まぁいい、ルイーダ説明してくれ★」
「めんどくさいからやだぁ。」
「えぇ!?♥️」
「お頭ぁ。姐さんはそこら辺の酒場の女と違って、そんな素直に人の言うこと聞くタマじゃないでさぁ。」
「じゃあ仕方ねぇな♣️ここはあれだ、うちの新たなる副船長に説明してもらうしかねぇな♦️」
「あっ!そー言えばアルシャビンいないねぇ?どこ行ったの?」
「おう♠️あいつは一人前の海賊になったからなぁ★自分の船を持って、新しい海賊団を旗揚げしたんだ♥️」
「そっかぁー。船長、見捨てられたんだねぇ。」
「そういうこと言っちゃダメだよお前♣️
思っても言っちゃダメだよお前♦️
まぁいい♠️新副船長を紹介するぞー★
おーい、ラムジー!♪」
「正義の味方!スーパーヒロイン!皆のアイドル!親愛なる隣人!
海賊団の新副船長!!
ラムジー!!!でぇーっす!!!!」
「おっ。ミュラーだぁ。」
「さらっと元ネタ言ったなぁ♣️
つーわけで、このラムジーがうちの副船長だ!♦️よろしくやってくれよ♠️
じゃ、説明頼んだぞ!ラムジー!★」
「かぁしこまったぁー!!
すぉれではぁー、くぉのぅおれがぁー、海賊ゥオーリンピックゥー!についてぇー、すぇつむぇいしぃてぇやぁるうぅぅぅぅー!!!」
「ねぇねぇ、せんちょー。聞き取りにくいんだけどぉ。」
「おい!ラムジー!♥️
ルイーダにツッコませるなんて、お前はなんてすげぇ奴なんだ!!♣️」
「お頭ぁ。姐さんの顔見るっす。
本気でイライラしてるっす。」
「ホントねぇ、グーでいくよ。グーで。」
「す、すまん♦️
おいラムジー、普通に喋れ♠️
俺はリオじゃねーから、あの怒りの化身のパンチ食らったら本気で死んじまう★」
「あ、分かりました!
じゃあ普通に喋ります。
ええーっと、まず、海賊オリンピックとは、我々海賊業を営む者達の中では恒例となっている、4年に1度行われるスポーツの祭典だ。」
「へぇー。結構頻繁にやってるんですね!」
「そうだ。遥か東の海。
開拓者の街の沖に、多数の無人島が点在する列島があるのは知っているか?
その島のひとつに俺達海賊の聖地と言われる港町、海賊の楽園と呼ばれる町がある。」
「その列島に町なんてありましたっけ?
地図には載ってないみたいですけど。」
言いながら、リオが壁にかけられた世界地図を覗き込んだ。
「当たり前だ。
海賊の楽園は俺達海賊にしか知られていない、名前通りの海賊の楽園だ。
どこぞの政府が作り上げた形だけの世界地図などには載るはずもあるまい。」
「すっげぇー!それじゃあ秘境ってわけですねぇ!!すっげぇー!!」
「秘境ってのは未開の土地の事を言うわけで、海賊によって拓かれた町は秘境とは言わないんだど。」
「すっげぇー!!!まだ誰も足を踏み入れたことのない、地図にも載ってない場所に僕達は行くんですねぇー!!!
これぞ海賊の大冒険って感じですねぇー!!!」
「いや、だから、違うって言ってるだろ?」
「すっげぇー!!!」
「いや、だから!」
「おいラムジー、相手するな♥️」
「すっげぇー!!!すっげぇー!!!
未開の土地に僕が一番乗りだぁー!!」
「どぅあからぁ!!
ちがぁうって、言ってるだろぉがぁーー!!!!」
と言うわけで、しょーもない問題児をふたりも抱え、片腕のアルシャビンすらも失ったロシツキーは途方に暮れるのであった。
「いやちょっと待て!♣️そんなんでさらっと終わらせてるんじゃないぞ!♦️」
ナレーションはロシツキーに遮られた。
「このままじゃ俺達は海賊オリンピックに出るどころか、普通の海賊として航海することもままならない!♠️
まずはこいつらを更正させねぇとならん!★」
「更正?するってーと、あそこですかぁい?せんちょー。」
「ちょっと、アルシャビンの真似すんのやめてくれないかな?♪真剣に寂しくなっちまうからさ♥️」
「どぅえっへっへー。」
ルイーダが言ったのは、中央大陸のど真ん中。
世界で最も高い山々の集まる、別名【世界の屋根】と呼ばれる山脈にある、とある宗教団体の寺院のことだった。
その寺院は、今までの人生を捨て、生まれ変わったつもりで一からやり直すための精神修行をさせてくれるという、様々な背景を持つ人々の集まる場所だった。
「何をするに当たっても、精神集中は重要だ♣️とかく、ほぼ同等の実力を持つ人間同士が競い合う時は、より精神的に強い者が勝つのが人の常♦️
まずはあそこでこいつらの根性を叩き直してもらうんだ!♠️」
というわけで、ロシツキー船長率いる海賊団は、一路、中央大陸へと向かうことになったのだ。
幸いにも船は中央大陸の南部を航行しており、さして時間を要することもなく、寺院に到達することとなった。
「へい。ロシツキーよ。」
高僧がロシツキーを呼び寄せた。
「なんだい?★」
「あいつら、連れて帰ってくれんかのぉ。他の修験者の迷惑なんだけどのぉ。」
「迷惑?♪」
「とぼけるでない。聞こえとるじゃろが。」
高僧の言ったことは図星だった。
「いってぇー!いってぇー!足、いってぇー!」
「どぅわぁー!!ぅあしぐぁー!!ずぃんずぃんするずぅえー!!!」
「痺れる、めっちゃ痺れるぅー!!」
「ずわわわわ!ぅあしぐぁー!!」
座禅を組むロシツキーのま隣で、リオとラムジーは足を押さえながら転げ回っていた。
更に説明すれば、転げ回りすぎてリオはロシツキーの腰の辺りにガンガンとぶつかっていた。
全員で座禅を組む海賊達の間を、ピンボールのようにぶつかってゴロゴロと転がっていた。
「いや、俺には何も聞こえないが?♥️」
「よぉ言った!それでこそ大海賊ロシツキーじゃ!お主の精神はもう成熟しきっており、もう悟ってる!よし卒業!帰れ!」
「いやいやいやいやいや♣️ちょっと待ってくれってば♦️こんなんで卒業させられたら俺も困るよー、すっごい困るよー、だって全然精神修行できてないじゃーん、困るよー、なんとかしてくれよー♠️」
「アホか!修行っちゅーのはなぁ、やらされても何の役にも立たんのじゃ!自分からやろうと思わなければ意味がないんじゃ!分かったら連れて帰れ!」
ロシツキー達は高僧に泣きながら懇願していた。
一方そのころ、寺院内の別の部屋では・・・
「くんくん。
なんか、100G金貨の匂いがするぅ。」
ひとり、タンスや壺を物色して回るルイーダの姿があった。
「どこかなぁ?金貨ちゃん。おねーさんのところへおいでよぉー。
あっ!あったぁ!」
部屋から出た通路に100G金貨が光っているのを見付けたルイーダは、まるで蜘蛛のような動きの四つん這いで部屋から飛び出した。
「ルイーダさんは ひゃくごーるどを てにいれたぁ。」
ルイーダが金貨に飛び掛からんとしたその時だった。
「あら。金貨発見ですわ♪」
ダンっ!
真っ黒いブーツが金貨を踏みつけた。
「#〒§□△△△‡※■&▲△■§■っ!!!」
ルイーダの手ごと。
「なに?文字化け?」
「手!手!私の手、踏んでるからぁ!!」
「あら?失礼。」
笑いながら、女はルイーダの手から足を持ち上げた。
「あなた、いつの間に私の足の下に手をお入れなさったの?」
「ちがうでしょぉー!あなたが私の手を踏んだんでしょぉー!」
「あら?そうなの?それはごめんなさいね。」
しゃがみ込み、手に息を吹き掛けながら抗議の声をあげるルイーダを尻目に、女はゆったりとした物腰で金貨を拾い上げた。
直毛の銀髪を背中まで伸ばしている。
美人ではあるが、ルイーダのようにすました感じではなく、愛嬌のある顔つきをしている。
草原の国でよく見る凹凸の少ない造形。
鼻の上にはちょこんとした小さい丸眼鏡を乗せている。
薄紅色のロングワンピースの上にラベンダーのカーディガンを羽織り、胸元には首から伸びるワンピースと同じ色の細身のストールを垂らしていた。
とても背の高い女性で、一般的にはかなりの長身であるルイーダよりも更に頭半分ほども大きいのが見てとれた。
「ラッキー。100G拾っちゃいましたわ♪」
「あぁー!それ!私が見付けた100Gだよ!」
「にゃは。でも、先に拾ったのは私ですわ。ですからこの金貨は私のものよ。」
「ズルい!あなたが私の手を踏まなければ、私のものだったのにぃ!」
「そんな事行ってもダメよ。先に拾った者勝ちですわ。」
「ぐぬぬぅ!」
「ふふふ。私が足を上げた時に、金貨を拾ってしまえば良かったのに。
手だけ引き抜いたあなたの負けですわね。」
「分かっててやったなぁ。なんて卑劣なぁ。」
「恨むならご自分のお間抜け加減を恨むのね。
では、ごきげんよう♪」
「ちょぉっと待てぇーい!」
「まだ何かご用かしら?」
「まだも何も、話しは終わってないからぁ!」
「しつこい人ねぇ。
これ、差し上げるから、もう諦めなさい。
それで何か美味しいものでも召し上がるといいわ。」
そう言って、女はルイーダの手に何かを握らせた。
「お、美味しいもの?」
って、
「スプーン・・・・。」
「にゃははぁ!
それじゃ、ごきげんよう!おバカさん!」
「だから、待てぇって言って・・・
うげっ!!」
ドサリ。
ルイーダはその場に膝から崩れ落ちた。
「久しぶりだな!おバカなロシツキー!」
「その声!?★て、てめぇは!?♪
ロリス!!♥️」
ロシツキー達が未だに高僧を拝み倒している時だった。
突如として大きな声が修行場に響き渡った。
「こんなとこで何してるんだ?
海賊に向いてないから人生をやり直しにでも来たのか?」
「そんなわけあるか!♣️
たまたま用があって寄っただけだ!♦️」
「用?どうせ大方、どーしよーもないバカで間抜けな奴を手下にしちまったから、そいつを改心させにでも来たんだろ?
お前、バカだからなぁ!」
「ち、ち、違わい!!違わい!違わい。
いや違くないけど・・・・。」
「やっぱり図星なぁ!
どーせそんなこったろうと思ったぜ!」
「ロリス船長ぅー。なんだべ?この田舎もん達は?」
いかにも田舎もんと言った喋り方をする、ひょろっとした海賊がその名を呼んでいた。
ロシツキーとは違い、とても大きな海賊だった。褐色の肌を持ち、顔つきも体つきも全てがゴツゴツとした印象だ。
中でもその顎の大きさには目を引かれるものがある。
それが、ロリスと言う名を持つ海賊だった。
「お頭ぁ!何かいかにも田舎もんって喋り方する野郎に田舎もん呼ばわりされてまっせぇ!
ってか、めんどくせぇのに出くわしちまいやしたっすねぇ!」
コッシーが腰を落とした。
いきなりの臨戦体勢。
それもそのはずだ。
「あの時以来だな♠️」
「そうだな。あの時は世話になったなぁ。お陰でこっちは帝国から大目玉だぜ。なんとか言いくるめたが、危うく私掠船の資格も剥奪よ。お前には返しても返しきれない借りがあるなぁ?ええ?おい!」
「よく言うぜ★おめーらのせいでこっちゃ、大事なハイバリー号がお釈迦だぜ♪」
それは勇者エジルとルイーダとの旅の最後だった。
無許可で私掠船を辞めた赤き海賊団は、追ってきた海賊団と激しい海戦を繰り広げた。
赤き海賊団の母船ハイバリーは大破したものの、その高い戦闘能力と持ち前のしぶとさで、ひとりの犠牲者も出すことなく、逃げおおせたのだった。
「あんなこ汚ねぇボロ船、壊れて逆に助かったろう?どうせ勝手に穴でも空いて沈没してたろうからな!」
「なんだと!?この野郎!決着つけるんだど!?」
「こ、こりゃ!お前達!ここは神聖なる寺院だぞ!喧嘩なぞ許されんぞい!」
「え?なに?なに?喧嘩?って言うか、知り合い?」
高僧とリオが二組の海賊団に挟まれて狼狽していたが、そんなのはお構いなしだ。
両者が一触即発に陥った時だった。
どっこぉぉん!!!
寺院の堅牢な石壁が突如として弾け飛んだ。
「な、なんだ!?♥️」
ロシツキー達の知らない女が、ぶち破られた壁の中から飛び出して来たのだ。
女?
いや、少し様子がおかしい。
その女の背中からは翼が生えている。
とても大きな白鳥のような翼が。
天使のようにすら見えるその姿とは裏腹に、その顔には悲しみが溢れているように見えた。
凄まじいスピードでラッシュを繰り出すその女に吹っ飛ばされた何かが、ロシツキー達の足元に転がってきた。
ゴロゴロゴロ・・・・シュタッ!
華麗に受け身を取って立ち上がったのは、
「ぐぬぬぅ!!やったなぁ!!」
「る、ルイーダ!?♣️」
「私に本気、出させたなぁ!やっちゃうぞぉ!私、やっちゃうからねぇ!」
「何してるんだ?!お前!♦️」
ぶち抜かれた壁の穴を潜り抜けるような姿勢で、翼の生えた女とそっくりの女が現れた。
「にゃっはっはぁ。
ご託は結構よ。やるなら掛かってらっしゃい。」
どこからともなくもうひとりのルイーダが現れると、とてつもない速さで乱打を繰り出す。
しかし、白い翼の生えたもうひとりの女も、同じ程の速さで拳を突き出している。
「マジかよ!?♠️
ルイーダの精心術と本気で打ち合ってるぞ!?あれも精心術か!?★」
「とんでもねー戦いっす!
まるで魔物と魔物の戦いみたいっす!」
「それどころじゃねぇぞ♥️
魔王対魔王だ!あんなもん!♣️」
目にも止まらぬ速度で打ち合う精心術を前に唖然とするロシツキー一行。
あまりの打ち合いの強さに互いの体が浮き上がる程の戦いは、かなり長い時間続いた。
「あー、あー、まぁーたやってんのか。うちのお姫様はよぉー。」
「む!?お前の知り合いなのか!?♦️
あの女!♠️」
「知り合いも何も。」
激しい打ち合いの末、自分達の発した衝撃の強さにふたりの分身は互いに弾き飛ばされた。
分身と同時に術師であるふたりも弾き飛ばされる。
互いに空中で体勢を整えると、俊敏な動きで床に着地をした。
ルイーダはロシツキー達の目の前に。
女はロリス達の目の前に。
「にゃははぁ!
あなた、お間抜けさんの割にはやりますわね♪」
「まだ言うか!このぉ!」
「おっとっと。ゲルダよ。
これ以上やると弱いもの苛めだぜ。その辺で許してやんなって。」
言いながら、ロリスは女の肩に手を置いた。
「あら、船長。それ、セクハラよ?訴えられたくなかったら、示談金10000G用意なさい。」
「全く冗談きついぜぇ!とんでもねぇ守銭奴だ。」
「なんか良く分からねぇだが、あいつら仲間みたいなんだど?」
「ねぇ!船長!あいつら一体何者なんですか?」
「名前を言うのも忌々しいぜ★
奴らは白き海賊団♪俺達の宿敵だ♥️」
こうして、二組の海賊団の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。
つづく。




