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竜眼でゴブリンゲーム  作者: 空也真朋
第4章 ダンジョンに潜む 悪しきゴブリン
32/39

31話 第二ゲームのお知らせ

 ――――それから一週間。

 俺達は時間を、自身の武器を使いこなすための特訓に使った。

 前々から、ライデンから効率よく体を動かすための肉体操作法を習っていたが、それを各々の武器を生かす方向へとの動きへと進化させる。

 さらに実戦で使えるように、討伐クエストを受けた。

 近場にゴブリンはいなくなったので魔物の狼退治だったが、上々の結果を残すことができた。



 その二度目の狼退治の帰り。


 「みんな強くなったわね。ほとんどケガをしなかったせいで、回復の出番がなかったわ」


 「コーン! ライデンさんの特訓が生きてきた感じですぅ」


 「弓とか最初は不安でしたけど、当たるものですね。これなら次のゲームも生き残れますね」


 「第一ゲームじゃったら楽勝じゃったろう。問題は、次はボスがいることじゃな」


 「いいえ。迷宮(ダンジョン)だということです。聞いたところによると、迷宮(ダンジョン)探索はかなり熟練の冒険者に振られるクエストだとか。私達にやれるかどうか」


 「だが、やらなきゃならんだろう。先輩冒険者からダンジョン探索に必要なものを聞いて、明日から準備をしよう」


 というわけで冒険者ギルドに戻ると、早速酒場でダンジョン探索の情報収集を始めた。

 こういったことに役に立つのはカルマーリア。

 その美貌と営業トップだった話術の巧みさで、たちまちダンジョン探索の経験者から、準備するものや探索の注意点などを聞き出した。

 夕食のために酒場のテーブルに集まった頃には、かなりの情報が手に入った。


 「よくやったカルマーリア。けっこうディープな情報も聞けたし、入念に準備ができる」


 「ふふん。この姿で元の世界に帰ったら、絶大な営業成績を出せるわね。そしたらボーナスで、推しの海外ツアーにも…………」


 楽しそうに笑うカルマーリアを見て、やれやれと思う。

 女になってもドルオタはやめられないのか。

 女になった分、使う金も倍増しそうだ。

 

 「お前だけは、このままこの異世界に残った方がいいんじゃないか? 元の世界に帰っても、またアイドルに貢ぐ日々に戻るだけだろうし」


 「再び推しのみんなのステージを見るためだけに頑張っているのよ! 何が何でも帰るわ!」  


 …………まぁ、いいか。その情熱は利用させてもらおう。

 強くなろうと、イケメンや美女になろうと、厨二の妄想が叶おうと、俺達誰も、こんなデスゲームをやらされる異世界にいつまでもいたいとは思わないのだから。


 そのとき、俺達のテーブルに顔を出した者がいた。

 酒場の方にはあまり顔を出さないはずのギルマスだ。

 特にカルマーリアを睨みつけて、彼女は一転、冷や水をかけられたような顔になった。


 「ぎ、ギルマス、なにか御用でしょうか? 今夜は歌の方の仕事はなかったはずですが」


 「カルマーリア。あちこち迷宮(ダンジョン)について聞き回っているそうだねぇ。まさかあんたら、木っ端パーティーの分際でダンジョン攻略を狙っているわけじゃないだろうね?」


 ギ、ギクゥゥーーー!!?


 「い、いえ、ワタクシはただ、先輩パーティーの武勇伝を聞きたかっただけで、そんな大それたことは………」


 「え、ええ。いつか迷宮(ダンジョン)を挑んでみたいという話になりましてね。ただ、話を聞いただけですよ」


 「本当かい? あんたらの様子、事前情報をさぐっているように見えたけどねぇ。討伐(クエスト)に成功したからって、調子にのるんじゃないよ」


 ギルマスの眼力ハンパねぇーーー!!!

 なんて油断ならないオバちゃんだ!


 「本当にやめとくれよ。あんたらが迷宮(ダンジョン)なんて死にに行くようなもんだからね。特にカルマーリアを連れてかれたら大打撃だ。売り上げに響いちまう」



 そんな会話をしていた時だ。

 ギルドの表通りにずいぶん高級な馬車が止まった。

 あの馬車には覚えがある。あれは…………


 やがて酒場のドアが開き、貴族の家宰のような正しい身なりをした人物が入ってきた。


 「ぬぅぅっ? 貴様!」


 その人物を見た瞬間、ライデンは立ち上がった。

 俺達も身がまえる。

 それは人間に変化したアビスレイン。


 「お前…………何しに来た?」


 「ああ、丁度良かった。【はねる双魚】の皆さん、いましたね。あなた方に指名で仕事の依頼に来たのですよ。依頼内容は迷宮(ダンジョン)攻略です」


 来たな。『後日通達』とあったが、これか。

 だが、さっきそれを俺達に釘を刺していたギルマスはくってかかる。


 「ちょっと? ほとんど実績もないヒヨッコに迷宮(ダンジョン)ってなどういうことだい。あれはもっと上級者向けの仕事だろう?」


 「その実績を積ませようとの閣下のご配慮です。なに、他に相当の腕を持つパーティーにも頼んであります。【はねる双魚】にはそのサポートでけっこうですので、是非参加して下さい」


 参加しなけりゃ消滅(デリート)ってか?

 糞っ。コイツの本性を知っているだけに、この礼儀正しい態度には腹がたつな。


 「サポートだろうと危険には変わりないよ。いいかい、いくら領主様とはいえ、冒険者の命を弄ぶような真似は………」


 「了解しました。期日と場所を教えてください」


 「あんた? 正気かい!」


 「領主様のご指名でしょう。なら、断わるわけにはいきませんよ」


 ギルマスのオバちゃんには悪いが、参加しなけりゃ俺らは消える。

 ごねるのは無駄話に過ぎない。


 「いや、やる気満々で頼もしいですなぁ。さすが私の見込んだ未来の勇者パーティー。詳細はこの紙に書いておきました。他に参加するパーティーは【眠る白羊】と【鉄壁の巨蟹】。どうか奮ってご参加下さい」


 そう言ってアビスレインは去っていった。

 無論、後をつけるような迂闊なマネはもうしない。

 それよりは、ダンジョン攻略への会議だ。

 アビスレインの残した場所指定の紙を囲みながら意見を出し合った。


 「他の転移者のパーティーとダンジョンに潜るのか。趣旨としては、誰がダンジョン(コア)を先に破壊するかの競争にしたいのだろうが、生き残ることが目的の俺達は無理する必要はないな」 


 「はい。私達はダンジョンを突破して最下層に行くだけにしましょう。ボスを斃したり(コア)を壊したりは、他の優秀なパーティーにまかせましょう」


 「コーン。自力で何とかしなくて良いのは実に素晴らしいです!」


 「ヒロトが【眠る白羊】と縁もつないだから、協力もできるしね。協力という名の寄生だがな!」


 いかにも弱パーティーの会話だね。

 わざわざ能力を選べる親切仕様な異世界転移だったのに、転移前より弱体化した奴までいるし。

 だが、第二ゲーム。これなら思ったより楽そうだ。

 みんなで生き残ることも楽勝だ!





 …………と迷宮(ダンジョン)に潜る前までは思っていた。

 だが、アビスレインはそんな楽をさせてくれる奴じゃなかった。

 それを理解したのは、もう少し後のことだ。

 

いよいよはじまる第二ゲーム

ダンジョンの奥深く、ヒロトはなにを見る?

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