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竜眼でゴブリンゲーム  作者: 空也真朋
第4章 ダンジョンに潜む 悪しきゴブリン
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29話 ヒロト帰還する

 乗り合い馬車に乗って一日。

 アルバノ地区の【はねる双魚】の拠点にしている宿。

 そこへ俺とマユ、そして新メンバー有翼族のノリミは帰還した。

 そして互いに驚いた。


 「なんだこの大金は」

 「金貨ですね。本当に光ってますね」


 テーブルの上に、この世界に来て初めて見る金貨が積まれていた。

 金貨なんて日本円で一枚10万円くらいだぞ。


 「なんじゃ、その娘っこは」

 「コーンすごく可愛い()ですぅ」


 カルマーリアの驚愕は特にひどく、口を大きく開けてノリミを指さしながらプルプル震えている。


 「はっ! はぁぁぁぁ! そ……その子はまさかぁ!?」


 ああヤバイな。一馬の病気発症5秒前だ。

 カルマーリアバージョンは初めてだから新鮮だな。


 「せ、セイントキッズのノリミちゃんんんんん!? やばいやばいやばいやばい! 天使になって降臨したぁぁぁぁぁぁ!?」


 ああ、どことなくノリミを知っているような気がしたのはそれか。

 セイントキッズのノリミちゃんだったのか。

 中学生くらいの低年齢アイドルは興味が薄かったんで、思い出せなかったぜ。


 「てか、カルマーリア。いまはお前もアイドルだろう。イメージ的にそれはやめてくれ」


 「はううううっ! 私のこと知っている!? てか、この人どうしちゃったんです? なんか怖いですぅ!」


 とにかく(ひで)え取り乱し方をしたカルマーリアを隣の部屋に引っ込ませ、彼女以外の【はねる双魚】全員が揃ったところでノリミの紹介をした。


 「彼女のパーティー【溢れる宝瓶】が壊滅したので引き取ることにした。名前はノリミだ。勝手に決めて悪いが、面倒見てやってくれ」


 「コーン仲良くします! ノリミちゃん、リッカです。よろしくね。ところでアイドルさんだったらしいけど、この世界に来る前のこととか覚えている?」


 「楽屋にいた所までは覚えています。いつの間にか変な場所にいて、なんだか夢だと思って、戦闘するようなスキルとか取らないで来ちゃいました。シオリさんとミュンも同じ感じでしたね」


 「ノリミのことはとりあえずいいな? じゃ、今度はそっちのことを聞かせてくれ。この大金はどうしたんだ?」


 俺はテーブルの上に積まれた金貨を指して言った。


 「うむ。カルマーリアに執着しとったボンボンがおったじゃろう? あの坊やとカルマーリアを賭けて決闘したんじゃよ」


 決闘のことを詳しく聞くと、ライデンが相手にしたのは何と百人もの兵隊だったらしい。あきれたことに、それを全員半殺しにして勝利してしまったそうだ。

 カルマーリアが奪われなかったことはよかったが………


 「いきなり心臓の悪い話になりましたね。あのボンボン、多分正面から相手にするのは分の悪い相手ですよ」


 参謀役のマユと常識人の俺がいない間に、ヤバイ方向へ向かってしまったな。


 「で、そのアレク坊ちゃんはどうした」


 「賭金を払ったらおとなしく帰っていきおった。どうもあの兵士たち、親に内緒で動かしたらしく、随分青い顔をしておったぞ」


 多分、どこかの正規兵だろう。そんなものを百人も大ケガさせたり装備壊したりしてどうなるか。


 「大丈夫か、ヒロト。お(まん)も顔色悪いぞ」


 「ああ、少しめまいがしただけだ。この件、カルマーリアにも話を聞きたい。ちょっと行ってくる。りっちゃん、マユ。うちのパーティーとこの街のことを、ノリミちゃんに説明しといてくれ」


 俺はそこから中座し、カルマーリアを閉じ込めている部屋に行った。

 アレク坊ちゃんの実家がどう動くか動かないのか。

 カルマーリアから彼のことを詳しく聞いて、一応の予想と対策をたてておこう。




 「フヒ……フヒヒヒ………」


 カルマーリアのいる部屋に来てみると、彼女は何やら幸せそうな顔をして不気味に笑っていた。

 (ひで)え。あまりに酷え。

 『自分に憧れている野郎共の夢は壊さない』って誓いはどうした。


 「あ~カルマーリア? ………一馬よ、アレクのボンボンについて聞きたいんだが。お前、決闘騒ぎなんておこしたそうだが、アレクの実家は動きそうか?」


 「あんな奴どうでもいいんだよ! それよりいまはノリミちゃんが来たことが重要だ! なぁヒロト、オレとダブルでステージを張ったらすごいと思わないか!? きっと彼女も歌とか演技の才能とっただろうし!」


 「いや、俺はノリミよりアレクの方を気にかけたい。それについて何か………」


 「ノリミちゃんを見た瞬間、すべて忘れたね! いっしょにステージをやろう! すぐ交渉しよう! セイントなシスターズを結成しよう!」


 こりゃ話を聞くのは無理だな。

 美人ヒロインとドスケベ三枚目キャラを両立とは、なんと欲張りな奴なんだ。


 「わかったわかった、好きにしろ。だがノリミちゃんは、自分以外のメンバーが消滅(デリート)してひどく気落ちしている。そこをくんで慎重に接しろ」


 「わかった! いよっし、ノリミちゃんとダブルキャストだ!」


 カルマーリアはドピューッといった感じで部屋から飛び出していった。

 やれやれ。結局ドルオタ野獣(ビースト)を解き放っただけか。

 アレク坊ちゃんのことは、後でギルマスにでも相談しよう。





 さて、カルマーリアがノリミちゃんにいっしょにステージをやろうと口説いた結果だが。


 「あ、私、将来はアイドルやめて服飾の仕事したいと思っているのでやりません。スキルも芸能の才能は取らないで、裁縫の才能と器用さUPをとりました」


 「がーーーーん!」


 まぁ良かったか。これからあのアヘ顔で歌われちゃ、エルフアイドルのイメージが崩壊だ。


 ちなみにノリミちゃんが取ったスキルを聞いたところ、次の通りだった。


 種族:有翼族(15)

 魅力UPⅠ~Ⅲ(計30) 器用さUPⅠ~Ⅳ(計50) 裁縫才能(5)


 マユはノリミちゃんのスキルを聞くと深く考えこんだ。


 「ふむ、器用さを4段階までとったのですか。なら、以外と期待できるのかもしれませんね。丁度いいし、このままアレの会議をやってしまいましょう」


 そう。第二ゲームは迷宮(ダンジョン)攻略だそうだが、場所や時間などは連絡待ち。連絡がくるまでは待機しながら準備だが、どうしてもやっておくことがある。


 第一ゲームの終了に伴い、タブレットのキャラメイク画面が復活。

 そしてゲームクリアによってポイントが加算されたので、それを振り分けることだ。

 以前からこれは各々が勝手にやるのではなく、みんなで会議をしてやることに決めていたのだ。

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