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竜眼でゴブリンゲーム  作者: 空也真朋
第2章 俺たちはゴブリンが たおせない
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15話  イービルゴブリン

 「…………カルマーリアだけは帰らせるべきだったか」


 「わ……悪い。自分が足手まといだって忘れた。ゼイゼイ………」


 体力のない彼女はすぐにへばってしまい、現在俺たちは追跡のスピードを緩めて歩かざるをえなくなってしまった。


 「まぁ、まだライデンはとらえている。とりあえず奴に合流するとしよう」


 仕方なく俺たちはカルマーリアに合わせて歩いた。

 だが、しばらくすると天気が変わり、日が陰ってきた。

 そして霧が出てきたと思ったら、たちまち濃霧となり、視界を奪った。


 「コーン霧がひどいですね。今日はかなり天気が良かったのに?」


 「そうだな。くそっ、本当に霧がひどいな。見えにくくってしょうがない」


 「…………ヒロトさん、どうしたんです? 竜眼なら霧ぐらい見通せるんじゃ?」


 マユの言葉にハッとした。

 竜眼持ちの俺に視界の悪さなんてあるはずがないのに!


 「あっ! ライデンさん!」


 りっちゃんが霧の向こうで佇んでいるライデンを発見した。

 あいつも霧の中で馬車を見失ったらしく、キョロキョロと見回している。


 「お前ら、来たのか。残念じゃが見失ったわい。ヒロト、竜眼で馬車がどこに行ったかわからんか?」


 「残念だが、どうもこの霧は見通しにくい………うっ?」


 霧の向こうから何者かの人影が見えた。


 「どうした? 何が見えたんじゃ?」


 「誰かがいる。霧の向こうからこっちに歩いて来るんだ。………あれは!?」


 俺はその正体がわかって驚愕した。


 それはライデンの追っていたあの小男――――


 ――――名はアビスレイン。


 そいつがいつの間にか馬車を降り、歩いてこちらへとやって来たのだ。


 「まったく、竜眼持ちとはやっかいなものだ。ヒヨッコ相手にこんな大がかりな術を使わねばならんとはな」


 ――――ゴブリン!?


 そのアビスレインという男、人間の変化をといてゴブリンの姿になって俺たちの前に現れた。


 「この霧はあんたの術か。俺の竜眼を曇らせるための」


 「ククク…そんなことは聞くまでもなかろう。

 そんなことより自己紹介しよう。私は【イービルゴブリン】のアビスレイン。ゴブリンゲームの進行役である」


 「【イービルゴブリン】? 何だそれは」


 「ゴブリンの神といったところかな。その神の力で楽しい楽しいゴブリンゲームを開催しているというわけだよ」


 すると、ライデンがずんずんアビスレインに近づいていった。

 

 「おう、ゴブリンのおっさん。いい加減こんな異世界へワシらを寄越した理由を教えんかい。そしてワシらを元の世界へ帰すんじゃ!」


 「ヒャハハハ帰る? どこへだ? 貴様らの帰る場所はこの【ゴブリンゲーム】しかないのになぁ」


 「…………そいつが返事か。そういや、おっさんもゴブリンじゃったのう。ならここでゲーム開始といこうかい!」


 ライデンは火のような正拳突きを放つ!

 だが、それはアビスレインとは別方向の、あさっての方角だった。

 おそらく瞬時の幻影かなにかで攻撃をそらしたのだろう。

 俺は竜眼の力で実体を見失わなかったが。


 アビスレインはそのままスタスタと俺たちに近づいてきた。

 そして俺の前に来ると、ジッと俺の竜眼を見た。


 「まさか貴様ごとき雑魚が竜眼を使いこなしていようとはな。本来はそれを得た身の程知らずが、衰弱して死ぬのを見て楽しむために、入れるよう進言したというのに」


 ――――?!!


 何だと? これはそんな意図で?

 それに進言したとは誰にだ?


 「それに後ろの女たち。その貧弱なナリでは、お遊びの第一ゲームすら苦労しているようだな。つまらん欲にかられた結果がそれだ! 半分でも戦闘力にポイントを使っていれば、こんなゲームは楽勝だったのになぁ。ヒャハハハ!」


 くそっ。背後にまだ誰かいるようだが、やはりコイツが黒幕であることは間違いないようだ。

 こんな悪意ある野郎が背後にいるとは考えたくなかったぜ。


 「ちぃっ、貴様の相手はワシじゃろがい! 無視してそっちに行くなや!」


 ライデンが猛スピードで戻ってきて拳を振り下ろすも、またもやアビスレインはひらりと躱し、距離をとった。


 「ハハハハ。残念だが進行役は直接プレイヤーと戦えないのだよ。さて、勇者の紋章を得た者に私はある程度の介入が許されることになっている。それでゲームを面白くしようというわけだ」


 まただ。誰に許されている?


 「………なにをする気じゃ?」


 「クククそう警戒するな。私も悪魔ではない。今日は第一ゲームに苦労している貧弱パーティーにプレゼントを持ってきた。それで第一ゲームのクリアは、今日あっという間だぞ」


 「えっ、そうなんですか?…………って、ヒロトさん?」


 りっちゃんは俺の顔を見て少し怖がった声を出した。


 俺は数分先の未来を竜眼で見た。


 だからこそ、青い顔になって汗をかいている。震えが止まらない!


 「野郎…………何てことをしやがる。やめろ! やめるんだ!!」


 「ハハハハハハ、悲しいナァ。未来は見えても、それを防ぐことは出来ない! 己の非力さを呪うがいい!」


 アビスレインの立っている場所から影が辺り一面に広がった。


 そしてそこから次々とゴブリンが這い出して来た!


 俺たちはその無数のゴブリンに囲まれてしまった。


 「貴様らのため、特別にゴブリン千匹を召喚してやった。よかったな。これ全てを狩れば、めでたく全員第一ゲームクリアだ。ハハハハハ!」


 「せ……千匹!? そんなの無理です!」


 「私たちまで勇者の試練に巻き込むつもり!?」


 そのゴブリンは数だけではなく、かつて見たものより体が一回り大きく、面構えもひどく凶暴そうだった。

 アビスレインはそいつらを従え、王のように君臨している。


 「ククク……この第一ゲームは、貴様らのようにポイントをアホなことに使った愚か者共を淘汰するためにあるのだよ。

 つまらん欲に踊った者たちよ。最期は私を楽しませるのだな。かかれ!」


 千匹のゴブリンは一斉に俺たちに向かって襲ってきた。




ゴブリンゲームに潜む謎のイービルゴブリン。

名はアビスレイン。

冷酷、残忍な恐るべき宿敵との最初の戦いが今、はじまった!

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