14話 アビスレイン現る
公爵使いの名前、イメージに合わないんで変えることにしました。
それから数日後の宿屋の裏手の空き地。
ヒュンヒュンと風を切らせてカルマーリアとりっちゃんは小剣と短剣を振っている。
それを見ながらライデンが指導している。
「けっこう力がいりますね。威力に体が持っていかれそうですコーン」
「でも、この威力ならゴブリンを倒せるわ。さすが魔法武具ね」
「振ったらすぐ次の行動のことを考えい。練習からその習慣を身につけるんじゃ」
カルマーリアの歌で数日稼いで魔法武具をようやく買えた。
カルマーリアのレイピアとりっちゃんのショートソードだ。
今は二人とも一生懸命自分の得物を振って、馴染もうとしている。
ついでに全員に簡単な皮鎧も買って、とりあえずクエストに行く条件は満たすことができた。
「二人の魔法武具はどうにか揃いましたね。しかしヒロトさんと私はどうするんです?」
剣を振る二人を見ながら、俺の肩にいるマユが聞いてきた。
「俺は竜眼で何とかなるから後でいい。マユ。君は魔法使い用の術具で何とかなりそうだ。何でも魔法使い用の術具店には、魔法を発動させる術式を組み込んである杖や魔石があるそうだ」
「それを使えば、私もちゃんとした魔法を使えると?」
「ああそうだ。というより、冒険者の魔法使いで自前で術式まで組むのは上級者のごく一部だけらしい。大半は修行で魔力を練れるようになったら、術具に刻まれた術式で魔法を使うのだそうだ」
つまり術具というのは魔法使いのOS。出力にあたる魔力さえ安定して出すことができれば、術具がそれを魔法にしてくれる。
「よかった。では、私が魔力中心にキャラメイしたのは間違っていなかったんですね」
「ああ。君の魔力なら術具を買えば強力な戦力になるだろう。今回は二人の魔法武具を買えた所で試しの実戦といこう。二人が課題をクリアできるようになるまではまだまだかかるだろうしな。
それじゃ、そろそろギルドへ行こうか」
まだまだ先は長いとはいえ、リーダーとして方針を示すことができてホッとする。
俺たちはゴブリン討伐の依頼を受けるべくギルドに来た。
中に入ると受け付けにはブランナさんが座っており、ギルドマスターのオバちゃんは、ギルド片隅のテーブルで誰かと話していた。
「こんにちは。今日はブランナさんが受け付けなんですね。ギルドマスターと話している人は?」
別にギルマスの客に興味があったわけではない。挨拶代わりの質問だった。
だが………
「いらっしゃい。あなた達の推薦人じゃない? ナジス公爵使いの【アビスレイン】って人ですよ」
――――?!!!
俺たちの推薦人?
ということは、俺たちをゴブリンゲームに引き込んだ疑いのある野郎か!?
「ヒロト、依頼は後じゃ。奴を見張るぞ」
ライデンの言葉で俺たちはブランナさんから離れ、不信にならない程度にギルマスとその男の近くに近づいた。
それは身なりの正しい見事な禿頭の小男であった。
俺たちは彼とギルマスの会話に聞き耳をたててみる。
「それでは、ゴブリン出現の報があったらすぐに依頼票を出してください。最近の我が領のゴブリン被害は目に余りますからなぁ」
「金だけじゃなく騎士団も出してくれないかねぇ。ゴブリン退治は初心者しかやりたがらないし、とても手が回らないよ」
「騎士団出動は財政的に難しいのですよ。最近は優秀なゴブリンハンターもいるようだし、どうかギルドの方でお願いします」
ギルマスのオバちゃんは俺たちを見つけると顔をしかめた。
「優秀なゴブリンハンターってなアレかい? 使えるのもいるが、まったくのド素人まで混ぜるのはやめて欲しいね。アンタらが寄越してくれるんならね」
「彼らは公爵家と何の関係もありませんよ。推薦は慈善活動の一環です。では、私はこれで失礼させていただきますよ」
小男は立ち上がり、入り口へと向かった。
それを待ちかねたようにライデンは動いた。
「おい、待て!………ヒロト?」
俺は小男に詰め寄ろうとしたライデンの裾を掴んで止めた。
「あれは………どういうことだ? 奴の話している間、奴を竜眼で見てみたんだ。そしたら驚くべきことがわかった。あれはいったい………」
俺はなおも今見た奴の正体が信じられず黙り込んだ。
「どうしたヒロト。さっさと言ってみぃ」
「ヒロトさん、何が見えたんです?」
俺は意を決して語った。
「あのアビスレインという男。奴はゴブリンだ。ゴブリンが人間に化けている」
「ええ!? あの生き物に人間に化けるなんて術が使えたんですか? それに普通に人と会話してましたよ。ゴブリンには知性なんてなかったんじゃ?」
「…………ふん、ゴブリンがゴブリン退治の依頼に来るとはのう。ともかく奴が何者であろうと、問いたださにゃ始まらん!」
ライデンはあの男を追いかけてギルドを出た。
仕方なく俺たちもそれを追った。
外へ出ると、小男は馬車に乗ろうとしている所だった。
「おい、待たんかい! 貴様に話があるんじゃ!」
ライデンが呼び止めるも、彼はかまわずに馬車に乗り出発してしまった。
「ちぃっ。ヒロト、ワシは奴を追う。宿で待っとれ!」
そう言うと、ライデンは猛スピードで走って馬車を追いかけていった。
馬と同じ速度で走れるのだから、ライデンの身体能力にはあきれるしかない。
「アレについていくことはできないな。だが竜眼で追うことはできる。さて、どうする?」
「追うべきでしょう。ヒロトさんの竜眼が必要な場面があるでしょうし」
「………だな。この機会、ライデンだけにまかせるわけにはいかないな」
目の覆いを取って竜眼を全開にする。
そして俺たちは馬車を追うべく走り出した。
謎のナジス公爵の使いアビスレイン。
彼はゴブリンゲームの黒幕か?




