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竜眼でゴブリンゲーム  作者: 空也真朋
第2章 俺たちはゴブリンが たおせない
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13話 エルフアイドル無双

 「どうもありがとう。公爵閣下と俺たちがどういう関係かだったね」


 ちなみにこれをしゃべっているのは俺ではない。

 俺のフリをしたマユだ。

 俺は彼女の声に合わせて口パクをしているだけだ。


 「俺たちは閣下に命じられててね。しばらくここで冒険者として活動しなければならないんだ。理由までは言えないので聞かないでくれ」


 げっ! なんだその大胆な嘘は!


 「そうだったんですか。ぼくに出来ることがあるなら言ってください。ギルド職員としてできる限りのことはします」


 「それはありがたい。では、ゴブリン退治の仕事があったらできるだけ俺たちに回してくれ」


 「ゴブリン退治ならいつでもあると思いますよ。最近ゴブリン被害が増えてきたんですが、収入は討伐料だけなんで誰も行きたがらないんです」


 聞いたところによると、冒険者にとって、モンスター討伐は討伐料の他にモンスターの素材も重要な収入源だそうだ。毛皮や角、牙、肉などが高価なものほど、獲物として人気がある。

 ゴブリンの死骸はまったく価値のあるものはないため、討伐料がそれなりでないと討伐に行く冒険者はいないそうだ。


 「でも気をつけてください。昨日のゴブリンはおとなしい方でしたが、最近は相当凶暴な個体も現れはじめたそうですから」


 「ありがとう。俺たちも慣れない冒険者などをやらされて迷惑をかけると思うが、よろしく頼む。それじゃ、カルマーリアの歌を聴きにいこうか」


 「はい! 急いで聴きにいきましょう!」


 上手いな。その会ったこともない公爵とやらの権威で俺たちの安全を確保してしまった。レイオン君を通じてギルドマスターが促せば、カルマーリアにからむ男も減るだろう。

 そしてカルマーリアの歌にからませて、ボロが出る前に会話を切り上げさせた。

 マユちゃんって、本当にただの女子高生だったのか?


 「ヒロト。そのカルマーリアのことじゃがのう。なんだか凄いことになっとるぞ」


 「ふへ?………なんだありゃ!?」


 これは俺の自身の声だ。

 ライデンの言う『凄いこと』に意味がわかってマヌケな声が出てしまった。


 カルマーリアの歌っている場所を中心にもの凄い人の輪ができており、無数のコインが飛び交っている。それをりっちゃんが必死に拾い集めている。

 カルマーリアはスキル【歌唱力】と【音楽才能】を持っている。

 それだけにその歌声はよく響き、心地よいメロディーになって俺の心に届いてくる。


 『♪君にあ~いたい。いつも夢見ているの。君と一緒につながる夢~』


 凄い! カルマーリアの奴、本物のアイドルみたいだ!

 なにしろ歌詞で「君が好き~♪」とか「君とつながりたい♪」的な部分では客を指さして歌うのだ。

 アイドルステージじゃ定番のこのパーフォーマンスも、この異世界じゃ大盛り上がり。

 カルマーリアが指さすたびに歓声があがり、そこから大量のコインが投げられる。


 「あっ! どっかで聞いたことがある歌だと思ったら、『メイルめいむ71(セヴンワン)』の『会いたい会いたい会いたい×100』じゃねぇか!」


 色々な意味でインフレ凄いアイドルグループだったな。

 女の子たちがステージ埋め尽くす驚愕の舞台も、今はなつかしい。


 思えばカルマーリアの元である一馬は数々のアイドルステージを見てきた生粋のドルオタ。

 トークもパーフォーマンスも知りすぎるほどに知っている。

 あの壮大な金と時間の無駄と思われた日々が、こんな異世界の片隅で役にたとうとは!


 「うっひょーーーう! カルマーリアさん可愛いぃぃぃぃぃ! うはぁ女神さまぁぁぁぁぁ!」


 隣にやけにうるさいオタクがいると思ったら、レイオン君だった。

 ぴょぴょん飛び跳ねて、全身でアイドルエルフに愛情表現をしている。

 そしていつの間にかみんな似たような謎の踊りを猛り狂いながら踊っている。

 そいつらのカオスな動きで、歌っているカルマーリアがより神々しく見えるから不思議だ。


 「凄ぇな。アイドルライヴではよく見た光景だが、何の仕込みもなしにこれだけの人間を魅了するとは」


 ふと、俺は近くに一馬がいないか探してしまった。

 妙な話だ。一馬は向こうでカルマーリアとなって歌っているのに。



 「ところでヒロトさん。これ、どうやってお開きにするんです?」


 「えっ?」


 ふいに俺の肩にいるマユが質問してきた。

 冷静になってまわりを見てみると、最後尾だった俺たちの後ろにもどんどん人が集まってきて、もの凄い人数になってきている。

 このだだっ広い広場がカルマーリアの歌を聴く人間で溢れかえってきている。

 いくらなんでもこれは異常だ。

 ハッ! そうか。りっちゃんの固有スキル【幸運力】!

 あれとカルマーリアの相乗効果か!


 「どうって………どうしよう?」


 「今はみんなカルマーリアさんの歌に聴き惚れて踊っているからいいです。ですが興奮が臨海に達したら、カルマーリアさんとりっちゃんは一斉に襲われませんか?」


 「…………確かに」


 大量のお金といい女。それがあるだけで理性をなくす人間はいるだろう。

 そしてその中心にカルマーリアとりっちゃんはいるのだ。

 その状況のヤバさに、今さら気がついてしまった!


 「どどどどどどどどうしよう!? ライデンを助けに突入させても、あそこにいくまでに時間がかかる! それまでに二人とも大惨事だ!」


 「ライデンさんが人を押しのけてもケガ人が出るでしょうしね。今のうちに治安維持の騎士の方でも呼んでおきましょう。ギルドのツテを使いたいから、レイオンさんも使って」


 マユは本当にいい参謀だな。

 俺はマユの言う通り、レイオン君と一緒に巡邏騎士を数名呼ばせて無事二人を助け出すことに成功した。

 ついでにギルマスのおばちゃんに頼まれて、カルマーリアは酒場のほうで歌わせてもらえることになった。


 そして今日貰ったお捻りだが、それだけで昨日のゴブリン討伐の討伐料よりはるかに多額の資金を稼いでしまった。

 これから魔法武具を買うための金をどうするか考えようとしていたのに、考える前に達成してしまうとは。恐るべしエルフアイドル!




 

無能と思われたカルマーリアが初めて役に立つ!

魔法武具を買える資金を手に入れたヒロトたちは、再びゴブリンクエストへ!

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