1人、悲しむ者あり。
なぜ、俺の好きなものは何処かへいってしまうのか。
イアルは机に伏せ考えていた。
昔から、好きなものは何処かへ失くしてしまう。
好きな本、好きな服、好きな動物、好きな食べ物…それらは、皆俺が気付くと消えてしまったかのように何処かへいってしまう。
今回だってそうだ。俺は今度は最愛な人を失った。
「上手くやっていたはずなのに…。」
つい先ほど、婚約破棄をされたため悲しみが深く部屋に篭って悩んでいた。
「もう少しで、ユアンが望む俺で迎えに行けたはずなのに、なぜ。」
物静かな人がタイプだと、素の自分とは真逆なタイプを言われた時はとてもショックを受けた。
なにより、彼女が幼い頃から彼女の近くにいる護衛、サリテルがそのタイプだったから焦りと嫉妬で気が狂いそうだった。
彼女と、20歳になるまで会わないと、突然約束をしてここまで耐えていたのに。
あと1ヶ月だったのに。
部屋の明かりは付けず、食事もまともに、取らずにずっと机に伏せている彼は今までにない悲しみで苦しませられている。
「ユアンに会いたい…。」
ユアンは婚約破棄をした後すぐに旅行へと出かけた事を耳にした。
今は彼女の近くにはサリテルがいて、しかも2人で1ヵ月毎日共に過ごすのだと思うとサリテルが羨ましくて仕方が無いのだ。
ユアン、ユアン、俺のユアン…
彼女はもう婚約者でない。
その事実は消えず、ただただイアルを悲しみの沼へと落としていった。




