第四話 聖樹教
今回は話進みません。
ソフィアが産まれる約300年前。
世界樹と呼ばれるマナを生み出す大樹をめぐり、世界規模の戦争が始まった。
のちに「聖樹戦争」と記されたこの戦争のきっかけは、とある冒険者が、 「世界の中心」と呼ばれる孤島の中心にたどり着き、世界樹を発見したことから始まる。
それまで「世界の中心」には、マナの影響を強く受けすぎ、その体を変質させ異常なまでの攻撃性を示す、いわゆる魔物と呼ばれる生物が多量に存在していたため、誰一人として近づく者はいなかった。
古より伝えられていた「世界の中心」についての逸話。
曰く、「かの地を治めしもの、世界を創造する」
曰く、「かの地を奪いしもの、世界を破壊する」
当時の王たちはその言葉に酔いしれ、冒険者たちに多大な報酬を用意した。
そのあまりの報酬に、我先にと世界の中心に殺到する冒険者だったが、あまりの魔物の強さに、誰ひとりとして世界の中心から帰ってくる者はいなかった。
王たちがあきらめはじめ、冒険者の家族の悲しみと怒りが限界に近づいてきたとある日、港町から広まったある噂が世界を激震させた。
一人の少女が「世界の中心」の中心部にまでたどり着いた、と。
もちろん誰もがその話を信用しなかった。王国一と言われた剣士でさえ、魔物一匹が限度なのである。
それを若干15歳の少女がいともたやすく魔物を殺すというのだ。信じるほうがおかしい。
だが、世界の人々はそれを認めざるを得なくなった。
少女は人外の力を操っていた。
魔物たちが使っていたものよりはるかに強力な「魔法」を。
冒険者たちが魔物にもっとも恐れていたこと。それは今まで見たことのなかった「魔法」である。
あるはずのないところから出てくる火、氷、竜巻。
対処の方法などあるはずもなく、魔法の餌食となっていた冒険者は数知れない。
そんな魔法を使う少女は言った。
「世界の中心を目指した父の夢を私も見てみたかった。孤島についた時、魔物に喰い殺される人たちをみて、怖くてがむしゃらに逃げた。泣きながら逃げていたら、いつの間にかすごく大きな木が目の前にあった。恐る恐るその木に触れると、頭のなかに声が響いた。あなたに力を与えましょう。世界を導くもよし、終わらせるもよし。好きにお使いなさい、世界樹の巫女よ。という声が。そうしたら急に力がわいてきて、頭で思ったことが実現して、魔物たちを簡単に倒してしまった」
少女の言葉を聞いた各国の王たちは、その巨大な木を求め、またその少女の力を求めて、戦争が始まった。
その小さな体には過ぎた力は、少女を苦しめた。
人と人とが殺しあうことに心を痛めた少女は、自分と世界樹を封印することを決意する。
もちろん王たちはそれを拒んだ。しかし少女の力にかなうものはいるはずもなく、少女は「世界の中心」へとむかう。
だが、本能的に察したのか、魔物たちは少女に襲いかかる。なんとか世界樹の封印はできたものの、魔物たちの手によって少女は命を落とした。
そのときに砕けて飛び散った世界樹の種は世界中に広まり、世界にマナが産まれた。
マナは世界に浸透し、やがてすべてのものにマナが宿る。
目的を失った戦争は終結。各国は同盟を結び、世界に平穏がおとずれた。
だが、失ったものも大きい。
少女の死に人々は嘆き、彼女をたたえ、「聖樹の巫女」と名付け、「聖樹教」を作り上げた。
「んで、それのどこが俺に関係あるんだよ」
「その聖樹教の中でロセスが高い地位にいるんですよ!だからいまソフィア様にこんなつらい思いを……、ううっ」
「泣くなっていってんだろ!」
あー、つまりその聖樹教ってのがあまりにでかすぎて、国王でも逆らえないってことか。
全世界この宗教らしいし。ほかに宗教ないってのがこれまたなんとも凄まじいね。聞いたことねーよ、そんなん。
今俺は、牢の中で判決待ちだ。王女が牢だぜ?どんだけ聖樹教ってのはでかいんだ。RPGの魔王とかよりも強いんじゃねーの?
面会できるのはアイメンだけ。理由は知らない。こんなおっさんじゃなくてアリシアをだせアリシアを。
でも、死刑、になるのかな。あの威厳たっぷりの親父さん、厳しそうだもんなー。
やっぱり、逃げるしかないか。
死刑にされるより、きっと生きてるほうがましだよな、うん。
「おし……」
「ぐすっ、どうなさいました、ソフィア様?」
不思議そうな顔をするアイメン。おっと、声にでてたか。
「なんでもない」
問題はどうやってここから出るか、だな……
ネット復旧!
ずいぶん時間がかかってしまいました……
てか後書きに書いてることがずれてる!
うん、自重しよう。