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バツイチ男✗異世界で都合良くコキ使われる  作者: からす
序章 異世界転移

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01_女だけの世界

バツイチ男、鏑木司の第2の人生、ここからスタートです!

――2026年4月1日――

朝6時30分、いつも通りスマホの目覚ましで目を覚ます。

顔を洗い、歯を磨き、適当に朝食を済ませて会社に行くために身支度を始める。


(今日は年度初めか。電車激込みだろうな、まったくげんなりだぜ。)


内心うんざりしながらいつものカーゴパンツとロンTに着替える。

仕事用のリュックを肩に背負い、ローカットブーツを履いてアパートの玄関を出た。


朝の日光が眼を射る。思わず瞬きをし、再び開いた眼前には―――


(―――え…?)


目に映るのは木、木、木…。

左手に握っているはずのドアノブは…無い。


振り返る。


「え…?」


振り返った先に、住んでいた部屋は無い。というか、アパートそのもの、というより何も無く、

あるのは木、木、木。と、鬱蒼と茂る森に落ちる木漏れ日のみ。


(ぇぇえええーーーーー!?!?)


(何ここ! どうなってんの!?)


きょろきょろと辺りを見渡すものの、やはりここは森の中のようだ。


(こんなに焦るのは、中1のときに先輩に呼び出されて取り巻き連中に囲まれたとき以来だぜ…俺、43だけど。。)


(…参った。ここはどこだ?

 取り敢えずカーゴパンツとタクティカルブーツを履いてるのは、森の中での装いとしては満点だが、問題はそこじゃねぇ。落ち着け、落ち着け俺。それなりに人生の酸い甘いを経験してきてるんだ。この程度でビビるな、俺。)


深呼吸し、状況を整理する。


(今は、なんとなくの感覚だが朝だ。持ち物はリュックと、リュックに入れた1Lの水筒と水。それから家の鍵やら会社の入館証やらの小物。それから財布。)


(だめだな、森の中で行動するには心許なさすぎる。とはいえ、人のいる所にいかないとな。。

 それにしても、テレポーテーションか超常現象の類か、まさか異世界転移などではないだろう。)


努めてそんなことを考えて気持を落ち着かせていると、パっと、目の前にホログラムのディスプレイが浮かび上がった。


*******************************************************

■日時:基盤歴639年4月1日

■名前:つかさ

■年齢:43歳

■基盤通貨:(所持無し)

■所持金:4,366,542円

■ステータス

 ・防御力:10(一般人相当)

 ・攻撃力:10(一般人相当)

■特殊スキル

 ・亜空間道具箱

  ※生物は収納不可

 ・物品召喚

  元世界で一般人が購入可能な物のみを召喚可能(ただし召喚には日本円を消費)

  ※日本円はこの世界の貨幣をホログラムに投入することで換金可能

  ※生物は召喚不可

 ・ステータス向上

  この世界の通貨をホログラムに投入することでステータスを上昇可能

*******************************************************


(あぁ、異世界転移だったか。…マジかよ。。)


(なになに? 亜空間道具箱に日本円を消費する物品召喚。それにステータス向上、か。

 日本円残高は約440万。これ、たぶん日本での俺の貯金残高だな。

 ただ、ステータスは紙装甲だから、暴漢にでも襲われたら一発アウトだ。

 てか、この世界には魔物とかいるんだろうか…?

 まぁ、考えても仕方がない。とにかく防刃チョッキと護身用のコンパウンドボウと狩猟用ナイフくらいは装備しておこう。)


防刃チョッキと護身用のコンパウンドボウと狩猟用ナイフを254,560円を消費して召喚する。


「すげぇ! マジで召喚できたぜ!!」


興奮で年甲斐もなく絶叫する44のおっさん。端から見たら完全に変質者だ。


早速防刃チョッキをTシャツの上に着る。狩猟用ナイフをベルトに掛け、コンパウンドボウを持って準備は完了。もしここが日本なら軽犯罪法違反、のみならず銃刀法違反で一発アウトだ。


さて。じっとしていても埒が明かないので動き始める。


暫く森を移動すると森が開け、河川に出た。

(川があるということは、人がいる村落もあるかもな。問題は、下流か上流か、どっちに向かうかだけど。。)


上流の方を眺めると、その遥か先には鬱蒼と茂った森が見える。だとすれば、下流に行った方が確実だと判断し下流に足を進める。


30分ほど河川に沿って進むと、川のほとりに小さな村見えてきた。

粗末な木柵に囲われており、警護の守衛なども見当たらない。

向こうから、籠を背負った若い女性が歩いてくる。


(おぉ、村だ。第一村人発見ってか。)


「すみませーん!!」

若い女性の村人がはっとこちらを見る。数秒こちらを凝視したのち、困惑とも驚愕とも取れない表情を浮かべる。


「すみません、怪しい者じゃないんです。」

(果たして、言葉が通じるか)


「あ、あ、あ、あなたは…」


(おぉ、言葉が通じる。こりゃ便利。とにもかくにも、まずは情報収集だな。)


「呼び止めちゃってすみません。俺はつかさっていいます。

 旅の行商人なんですが、道に迷ってしまって。。

 ここはどこなのでしょうか。あと、出来れば大きな街などあれば教えて貰いたいんですが。」


「…旅の行商さん…?」


「えーと、何か…?」


「い、いえすみません! えーと、私はミラっていいます。

 えーと、ここは王都ヴェレンタンから北に半刻ほどの場所にあるヴェルデ村です。一番近くの街ですと、王都ヴェレンタンです。」


(王都。ここは王国なのか?このミラって女、ブロンドヘアでグラマー、結構な美人だが、装いは質素、というか、何か所も補修されて使い込まれているっぽい。素材は綿か麻か。。

 そういえばここまでの道中にも、申し訳程度の木柵はちらほらあったけど、コンクリートや樹脂、ペットボトルやスナック菓子の包装袋のゴミなども無かった。どう考えても、元世界程度の文明があるとは思えないな。)


「そうなんですね。ありがとうございます!

 ちなみに変なことを聞くようですが、この国はなんという国なのでしょうか。王都というと、王様などいらっしゃるのでしょうか。ちょっと、道中で頭を打ったらしく、記憶がなくて。」


(苦しい言い訳だぜまったく…)


「大丈夫ですか!? 今すぐ横になられた方が…私の家がすぐそこなので、よければ少し休まれた方が…」


「いえいえ、大丈夫です。それよりも路銀が無く、早く商いをする必要がありましてね。」


「あ、そうですよね。すみません私ったら。。」

ミラが自分の額を掌でポンポンと叩く。その仕草が可愛らしい。


「えーと、この国はヴェレンタ王国っていいます。王都は先ほど申し上げたヴェレンタンで、クララ・ウィンダー国王が治めています。」


「クララ・ウィンダー国王? この国は女王の国なのですか?」


(大英帝国のヴィクトリア女王みたいなもんか?)


「女王の国? いえ、れっきとした国王陛下ですが。。あ、記憶を無くされているのでしたね!

 常識中の常識ですが、この世界には人間は女性しかいません。」


(―――ん? んん?? 何言ってんのこの人…。)


「…俺の聞き間違いでなければ、今、『女性しかいない』ときこえたのですが…?」


「はい、そう申し上げたつもりですが…?」


「ちょ、ちょっと待ってください、女性しかいないのですか!? 男は、男性はどうなったのですか!?」


必死な俺に、ミラが困惑したような表情を浮かべる。


「やはり、ご記憶を無くされているのですね。。この世界には人間は女しかいません。そして男性とは神話上にしか存在しない架空の存在ですね。」


(…ダメだ。頭が追いつかねぇ…。)


「でも私、つかささんを先ほど初めて見た時びっくりしちゃいました! 人間の男性って、いたとしたらこんな感じなのかなって。まさか、神話上の存在がこんな辺鄙な村にいるわけないですのにね。」

と、恥じらいを含んだ目で見てくる。


(やめろ、43のおっさんをそんな目でみるな。変な気起こしちまうだろうが。。というか、そうか、だから声を掛けた時、あんなに驚いてたのか…。)


動かない頭を必死に回転させる。

よく分からないが、俺は2026年、令和8年の日本から異世界転移した。それはいい。いや、良くはないが取り敢えずそれは置いておこう。

そして転移した先がこの『王国』。恐らく文明は中世レベルの、しかも男性不在の世界だということ。


だめだ、無茶苦茶過ぎる…。


「男です。」


「へ?」


「いやだから、俺、男です。あの、すみません、先ほどはお断りしましたが、やはり少し休んだ方がいいかもしれません。お邪魔じゃなければ、家に案内いただいてもよいでしょうか。」


(危ねぇ、いきなり都会の街に辿り着かなくてよかった。取り敢えず、出来る限りこの世界の情報を集めないと。それしても男が神話上の生物なんて、とんだとんでも世界に飛ばされたもんだぜ。とにかく、あまり顔を晒すのはまずい。)


綿麻のフード付きポンチョを5,000円で召喚し、目深に着用する。


「なんですかそれ!?」


「何って、綿麻のローブです。綿や麻は一般的なのでは?」


「いえそうではなくて、今、それどこから出しました!?」


「えーと、魔法の道具箱のようなものですが。。これ、誰でもできるのではないのですか?」


「そんな魔法、見たこともありませんよ!」


「…え?」


(やっちまった…。この力は所謂『チート能力』ってやつか? 

てかそうか、誰もが亜空間道具箱を使えるなら、ミラのように大きな籠を背負う必要も無い、か。本当にいきなり都市部に辿り着かなくて良かったぜ。。)


「…と、とにかく、家はこちらです。ついてきて下さい。」


「あ、ありがとうございます。」


そんなこんなで、取り敢えずミラに付いていくことにした。


―――


ミラに着いてヴェルデ村に入る。周りを見ると長閑な風景が広がっていた。点々と建つ家々もオール木造。クルマなんて無いどころか、荷車の車輪にタイヤすら付いていない。どころか、車輪のポークすら金属ではなく木材だ。


(こりゃ、元世界のモノを不用意に晒すべきじゃねぇな…。)


ミラの後ろ姿を追う。さっきから気になっていたがこのデカい籠はなんだろうか。


「ところで、その籠の中身はなんですか?」


「これですか? これは春が旬の食用草を摘んできたんですよ。本当は冒険者ギルドに依頼を出して護衛をつけたかったんですが、少しでも節約したくて。」


(やっぱ冒険者ギルトとかあるんだな…。)


「護衛ですか。それほど治安が悪いのですか?」


「治安、というか魔物ですね。森の浅いところでも、魔化猫や魔化狗程度はたまに出ますから。魔猛熊や魔突猪に出くわす可能性だって無いことは無いので。。」


(魔物か。まさに王道ファンタジーの世界そのままだな。俺も一般人相当の紙装甲だから、気をつけないとな。。)


「さ、着きましたよ。ここが私の家です。ボロくて何もないですが、どうぞお上がり下さい。」


そう言ってミラが一棟の平屋を指さす。


年季の入った木造の平屋だった。

似たような平屋がこの村にはいくつもある。


―◇―◇―◇―


ミラの家で、ミラから聞いた話をまとめるとこうだ。

・この世界には人間は女性しかいない。

・人間の男性は神話上にしか存在しない。

・人間の繁殖は女性同士で行う。女性同士で交わり、気分が最高潮のときに一方がもう一方に魔法で種を授ける儀式を行うことによって妊娠する。らしい。

・各種魔物がおり、人間の脅威である。

・このヴェレンタ王国はセプテン大陸という大陸の南部に位置する王政国家で、

 クララ・ウィンダー国王が治めている。第一子にララス・ウィンダーという娘がいるとのこと。

 他に大陸西部にビーアル帝国、大陸北部にスピタス連邦、大陸東部にコニック法国という3つの国があるらしい。

 また、セプテン大陸の海を挟んだ南方にメリディ大陸なる大陸があり、ウィネ共和国とテキラ公国という2つの国があるらしいが、ミラは良く知らないらしい。

・王都に入るには、商業ギルド証か冒険者ギルド証が必要。どちらもない場合は検問にて銀貨5枚を支払う必要があるとこのと。


(まじで最初に王都に辿り着かなくてよかった。男ってだけで、恐らく軍に捕縛されるだろう。しかも普通有り得ない亜空間道具箱が使える。いいように利用されるのがオチだな。)


「ミラ、色々とありがとう。俺は王都に向かうが、路銀が無い。押し売りのようで申し訳ないが、銀貨10枚程度の商いをさせてもらえないだろうか。もちろん、破格の値段で提供したいと思う。」


「銀貨10枚、ですか…。そうですね、昨年は不作でしたので麦が不足気味です。もしパンの原料となる麦粉などいただけるとありがたいのですが。」


(パンか。では小麦粉だな。)


試しに小麦粉1kgを380円で召喚し、ミラに見せる。


「例えば、これはパンを作るのに適した小麦粉なのだが、どうだ? もちろんこれは試供品で、銀貨10枚に見合うだけの量をお渡ししよう。」


「これは…!?」

小麦粉を見たミラが目を見張る。どうしたのだろうか、決して気持ちよくなっちゃう白い粉ではないのだが…。


「これは小麦粉ではないですか!? こんな上質な粉、受け取ることなんて…!」


(え? ただの小麦粉じゃん。…あ、そうか、平民はライ麦や大麦や雑穀などで作る黒パンが主流だったっけか…。元世界でも近代までは純粋な小麦粉で作った白パンは上流階級でしか食されなかった、とかなんとか。)


小麦粉30kgを8,940円で召喚し、ミラに差し出す。


「いえいえお気になさらず。こちら合わせて30㎏の純粋な小麦粉を銀貨10枚でどうだ?」


「いいんですか? 30㎏の小麦粉なんて、私たちの稼ぎでは到底買えませんのに…。分かりました。そこまで仰るのなら、こちらで。。」


ミラから15枚の銀貨を手渡された。


「いいのか?」

(まぁ、銀貨15枚が赤字なのか黒字なのか分からんけどな…。)


「はい、勿論です。白パンなんて食べることなんてないだろうと思ってましたから。…あの、またこの村に来ていただけますか?」


「あぁ、また縁があれば来ることもあるだろう。それにしても、ミラはここを寒村というが、若い人ばかりじゃないか。」


「えーと…そうですか?」


「ここに来る途中、何人かとすれ違ったが、皆若かったからそう思ったのだが、違うのか?」


(あれ? みんな30代前半、一番年嵩で40歳程度に見えたんだけどな…。)


「うちのお隣のおばあちゃんともすれ違いましたが、若くみえましたか? 茶髪のオールバックを後ろでポニーテールにしているお婆さんとすれ違ったと思うのですが…。」


(40歳程度の見た目でお婆さんとは、なんと失礼な…いや、この世界の常識なのかね…。)


「あ、はい。あの方が一番年嵩だと思うのですが、40歳程度では?」


「ぇえ?」

ミラが困惑の表情を浮かべる。


「あのお婆ちゃん、確か70歳ですよ。」


「ぇえ!?」


(どういうこと!?)


「70歳くらいの見た目の人って、だいたいあんな感じなのか?」


「そう…だと思いますが。。」


「では失礼だが、ミラはいくつなんだ?」


「私は…19ですけども。。」


「…見た目通りで安心したよ。」


「あ、ですが見た目だけだと年齢が分かりづらいので、挨拶のときに年齢を告げることもありますね。

 あ、だけど私言ってなかったですね。」


てへへ、とお茶目に笑うミラが可愛らしい。


「挨拶の時に年齢も告げる、か。」


(この世界の人間は老けにくい…のか? いや、そもそも「1年」という長さが異なる可能性も…)


「なぁミラ、人間のだいたいの寿命はいくつくらいだ?」


「そうですね…。だいたい60~70歳かと思いますが。。」


「では不謹慎だが、隣の人はいつ亡くなられてもおかしくない年齢である、と?」


「はい…年齢的には。。」


(「1年」という長さが異なるわけではなさそうだな。。)


「なぁミラ、俺は何歳に見える?」


「そうですね…27歳くらいですか? 少なくとも30歳には見えないですが。。」


「またまた、見かけによらずミラはお世辞上手だな。」


「いえ、本当に…。」


「うーん?」


念のため手鏡を110円で召喚し、自分の顔を映す。


「…」


「うわぁ、なんですかそれ! 貴族様が持つ「鏡」というやつですか??」


「ちょ、すまないミラ。今はちょっと静かにしててくれ。」


「あ、ゴメンナサイ。。」


「い、いや、いいんだ、済まないな。」


再度鏡に映る自分を眺める。


(あれ? 確かに俺は俺だが、なんだろう、この違和感。んー、うん? うーんと…。

 ……!!??)


目の下の隈が薄い。目じりや頬の皺が無い。肌に張りがあり、血色が全体的に良い。これは―――


(―――これは、社会人になってまだ数年の頃の俺、のように見える…。この世界の理に従って、見た目や身体機能が若返ったってことか!? …どおりで―――)


ミラの姿を見て無性にムラつく自分を認める。


(性欲も戻るんかい!!)


「つかささん、どうしました?」


「い、いや、何でもない。とにかくありがとう。俺はもう王都に発つが、俺のことやこの小麦のことなどは他言無用で願いたい。」


「勿論です! まぁ、言っても誰も信じてくれないでしょうがね。また、この村に来ていただけますか?」


「え? あ、うん。また縁あればここに来ることもあるだろう。」


「絶対来てくださいね!」

そう言ってミラは微笑んだ。43のおっさんには眩しすぎるぜ。


―◇―◇―◇―


ミラの家を出て、急いでポンチョを被る。

コスプレ用の金髪ロングのカツラを召喚し、被る。


(普通に歩くのはまずそうだ。取り敢えず女装は必須だな。。)



第1話をお読みいただき誠にありがとうございました!


これにて序章『異世界転移』編は完了です。

次回からはこの世界での生活を成り立たせるべく第1章『生活基盤』編スタートです!

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