表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元暴走族の50歳海将、異世界で非正規農夫に。最強スキル『酒保』の酒と煙草で、伝説の暗殺者やバケモノ達と一服する無双スローライフ  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/32

EP 3

非正規農夫たちの買い出し旅行

ルナミス帝国とレオンハート獣人王国の国境付近に位置する、中継都市『ベルク』。

多様な種族と物資が行き交う活気ある街だが、その裏路地には、どこの世界にもあるような薄暗いスラムや闇市が広がっていた。

「……なるほど。ウチの村に比べると、ずいぶんと『治安の悪い』匂いがするな」

ベルクの裏路地を歩きながら、真一は胸ポケットのハイライトを取り出し、マッチブックで火を点けた。

本日の出で立ちは、お馴染みとなった『タローマン』製のネイビーブルーの作業着イージス・ディフェンダー・プロに、安全半長靴。腰に名刀『正宗』を差してはいるものの、パッと見は完全に「買い出しに来たしがない中年労働者」である。

その真一の左右には、二人の護衛(お供)が付き従っていた。

「クンクン……! 坂上さん、あっちから屋台のお肉を焼く匂いがしますぅ!」

紅蓮のアーマーをガチャガチャと鳴らしながら、巨大な魔導ハンマーを背負うS級賞金稼ぎ・ダイヤ。

「……おいポンコツ。俺たちは行商人の足取りを追いに来たんだ。買い食いはお預けだぜ」

黒のレザージャケットにワインレッドのタートルネックを着込み、周囲への警戒を怠らない伝説の暗殺者・龍魔呂。

『ただのオッサン』を中心に、『腹ペコの戦乙女』と『凄腕の暗殺者』が連れ立って歩く姿は、風情を醸し出していた。

「ニャングルの情報によれば、行商人たちが最後に目撃されたのはこの先の『裏ギルド』周辺だ。……だが、わざわざ探す手間は省けそうだな」

真一が紫煙を吐き出しながら立ち止まると、前後の路地から、柄の悪い男たちが十数人、武器を構えてぬっと姿を現した。

ベルクの裏社会を牛耳る、三流の傭兵くずれやチンピラたちだ。

「おいおい、見慣れねえツラだな。ここを通りたけりゃあ、通行料(ショバ代)を払ってもらおうか」

チンピラのリーダー格が、下劣な笑みを浮かべて真一の前に立ち塞がった。

彼は真一の『タローマン作業着』をジロジロと見て、小馬鹿にしたように鼻で笑う。

「なんだその安っぽい服は? どこの田舎の農夫か知らねえが、オッサンが来るような場所じゃねえぜ。……命が惜しけりゃ、身ぐるみ全部と、その後ろの『上玉のねーちゃん』を置いていきな!」

絵に描いたような三流のセリフ。

真一は全く動じることなく、ただ呆れたように短く息を吐いた。

「……やれやれ。どこの世界にも、人を見る目のないガキはいるものだな」

「あぁん!? なんだとコラ!」

チンピラたちが一斉に殺気を放ち、武器を振り上げる。

普通なら絶体絶命のピンチだ。しかし、真一は腰の正宗に手をかけることすらなく、咥えていたタバコの灰をトントンと落とした。

「ダイヤ、龍魔呂。……十秒だ」

「「了解おう」」

真一の短い号令と同時だった。

ダイヤが背中の魔導ハンマーを軽々と引き抜き、満面の笑みで一歩前に出る。

「アタシのご飯を作ってくれる坂上さんに、なんて口の利き方してるのかなぁッ!!」

――ドゴォォォォォォンッ!!!

ダイヤがハンマーを地面に叩きつけただけで、路地の石畳が爆発したかのように粉砕され、強烈な衝撃波がチンピラたちの半数をまとめて吹き飛ばした。

「なっ……!? ぐわぁぁぁぁっ!」

「こ、この女、バケモノか!?」

パニックに陥った残りのチンピラたちが逃げ出そうと背を向けた、その瞬間。

「……おっと。背中がお留守だぜ」

――パシュッ! パシュパシュッ!

龍魔呂の姿が影のようにブレたかと思うと、逃げようとしたチンピラたちの首筋に、寸分の狂いもなく暗殺用の投げナイフ(峰打ち・麻痺毒付き)が突き刺さった。

「あばばばばばっ……!」

白目を剥いて次々と倒れ込むチンピラたち。

開始からわずか五秒。真一が指示した十秒すら使い切ることなく、裏路地のゴロツキたちは完全に無力化されていた。

「ひっ……! ひぃぃぃっ!」

唯一無傷で残されたリーダー格の男は、腰を抜かして地面にへたり込んだ。

目の前の「ただの農夫」の背後に、血も凍るような『覇気』を纏った見えない仁王像がそびえ立っていることに、今更ながら気づいたのだ。

真一はゆっくりと歩み寄り、リーダー格の男を見下ろした。

「さて……痛い目を見たくなければ、正直に答えろ。ポポロ村の行商人たちをどこへやった?」

「ひっ! わ、俺たちは知らない! ただ、あいつらを『天魔窟』の連中に引き渡しただけだ!」

「天魔窟……?」

真一が眉をひそめると、男はガタガタと震えながら懐から『一枚の銅貨』を取り出して差し出した。

それには、不気味な一つ目の紋章――『天魔窟の刻印』が刻まれていた。

「天魔窟の『ディレクター』って名乗るヤバい連中が、迷宮の『出演者キャスト』を探してるって言って、あいつらを高値で買っていったんだよ! 本当だ! 殺さないでくれぇ!」

「……なるほど。行商人(シマの衆)を攫って、悪趣味な見世物にするつもりか」

真一は銅貨を受け取り、忌々しそうに舌打ちをした。

横では、龍魔呂がナイフを手の中で弄びながらニヤリと笑う。

「どうする、オッサン? 相手は大陸でも札付きの危険地帯『天魔窟』だぜ」

「坂上さん! アタシ、そのディレクターって奴、ハンマーでぶん殴りに行きたいです!」

二人の頼もしい(そして血の気の多い)仲間を見て、真一はフッと口角を上げた。

「……決まっているだろう」

真一は短くなったハイライトを携帯灰皿にしまい、天魔窟があるという西の空を見据えた。

「買い出しの予定変更だ。……少しばかり遠出になるが、迷宮の奥底まで、ウチのシマの衆を迎えに行くぞ」

出雲の海将と、歩く災害ヒロイン、そして伝説の暗殺者。

最強の『三匹』による、天魔窟への容赦なきカチ込みの旅が、今ここに幕を開けた。

そして、その様子をどこかの『安全なモニタールーム』から監視しているであろう悪党に、真一たちは無言のプレッシャーを放っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ