六十一話 (視点ナサン)
舌打ちしたいのを飲み込みながらちゃんとしたボルトを探しながら締めていく。
「……はぁ、またかよ。」これで5本目のハズレのボルトだ。
辺りを見回しても、見習い騎士たちは黙々と作業をしている。
――いや、違う。
やはり、目があってもすぐに逸らされる。
よく見ると妙に手元ばかり見ている奴もいるし、逆にこちらを気にし過ぎている奴もいる。
ボルトを握る手に力がこもる。
噛み合っているようで、どこか浮いているこの感覚……。
想像できたことだ、でも考えようとしなかった、俺みたいなやつが、同じ場所に立ってること自体――本当は、許されてねぇのかもしれない。
……違う。
――間違いない。これは細工されてる。
クィムの方をふと見てみる。目が合うと一瞬だけ、間があって――クィムとマルケスが、わずかに頷いた。
それだけで、十分だった。
見習い騎士たちに勘付かれないように、ゆっくりとクィムとマルケスに近寄って「……気付いてるよな。」と囁いた。
握っていたボルトを見せ「……細工されてる。俺の腕が悪いわけでも、偶然ってわけでもねぇ。」と続ければ、マルケスは頷いた。
「ピッチがずれているんです、だから上手くはまらないんですよ。」マルケスは2本のボルトを並べて俺に見せた。
「不自然にずらされているので、道具を使って削ったと考えたほうがいいかもしれません。これは、非常に悪質といえる……。」
マルケスに続いてクィムも俯いて「……気のせいと言われればそれまでですが。」と小声で言った。
「見てください。」と振り返ったクィムの視線の先のボルトの山を見る。
「異様に多いんですよ、錆びたり曲がったりしたボルトが……。」
クィムが見習い騎士たちの様子を窺いながら「……偶然にしては、出来過ぎていると思いませんか?」と声を低くした。
俺も二人も黙ったまま、見習い騎士たちの様子を窺った。
金属と川の水の音しか聞こえない、長い時間が流れた気がした。
――見逃すわけにはいかない。じいさんに顔向けできない。




