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輝星のグランギルド  作者: yuuberu
3章 学園生活編
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第6話 魔法の真の天才

アスト(はぁ…はぁ…やばい…!もうあんな遠くに!)


必死に荷車を追いかけて走ってきたが、全く追いつけそうにもない。体力もそろそろ限界を迎えそうだ。


アスト「うわっ!?」


なれない坂道を走り続けたせいか、大きく転んでしまった。


アスト「い…痛い…」


足を見ると、落ちていた枝で足が切れてしまっていた。不幸中の幸いか、とがっていた部分が刺さらなくてよかった。


アスト(うぅ…ついてないな…とりあえず怪我を治さないと…)


がさっ…


「ギャァッ!!」


突如、草むらから1体のゴブリンが飛び出してきた。どうやら血の匂いを嗅ぎつけてやってきたようだ。


アスト「うわっ!?」


まだ体を起こせていない僕は反応が遅れてしまった。とっさに魔法を放つ準備をする。


アスト「水魔法…!」


「ギ…」


その時だった。


シュッ!


風を切り裂いたような音がする…と思った時だった。目の前にいたゴブリンが、突然首が吹っ飛んだ。


アスト「…えっ?」


何が起きたか分からなかった。突然の出来事に頭が追い付かず、ただゴブリンの死体をみていた。


??「…何ボーっとしてんだ」


アスト「!?」


前を見ると、いつの間にか人が立っていた。白髪で、背中には大きなマントをつけている白い猫獣人だ。


??「ちっ…なんでガキがいるんだ…おい立てるか?」


そう言う彼は大きな斧を持っている。どうやら彼がゴブリンを倒してくれたようだ。


アスト「あ…は…はい…いてっ…」


??「…なんだお前、ケガしてるのかよ、はぁ…ちょっと大人しくしとけ」


そう言うと、彼は僕の怪我をしたところにそっと指を置き、何かを呟いた。小さくてよく聞こえなかったけど、1つ聞き取れた単語があった。


??「回復魔法…………」


アスト(えっ!)


僕は驚いてしまった。彼が詠唱をした瞬間、みるみるうちに怪我が治っていく。僕も回復魔法は扱えるのだが、治療速度や精度が明らかに違った。


??「もう立てるだろ」


そう言われて、僕はゆっくり立ち上がった。先ほどまでの痛みが全くない。ほとんど完璧とも言える治療だ。


アスト「あ…ありがとうございます…あの…あなたは…?」


??「…ジルだ、ジルファード・ファンリエル。長いからジルでいい」


アスト「えっ!あなたがジルさん!?」


ジル「そうだが…俺のことを知ってるのか?」


アスト「えっと…アトラくんから話を聞いてて…」


ジル「はぁ…お前余計なこと言ってないだろうな?」


アスト「…えっ?よ、余計なことって?」


ジル「お前じゃない、お前の後ろにいるやつだ」


アスト「後ろ?」


ふにっ


振り向こうとした瞬間、頬に何かが当たった。よく見てみると、それは誰かの指だった。


アトラ「へへっ!アストさん隙だらけっすよ?」


アスト「ア、アトラくん!?」


気配も足音も聞こえなかったのに、気がつけばアトラくんがすぐ後ろにいた。


アスト「い、いつから後ろに…!?」


アトラ「傷を治したあたりからは近くにいたっすよ。アストさんが心配で追いかけてきてたんすけど、ジルが近くにいてくれてよかったっす」


ジル「こいつはお前の知り合いなのか?」


アトラ「そうっすよ!ジルもこの人が誰か聞いたら驚くと思うっす!」


ジル「…このガキが?」


アトラ「ちょっとちょっと、ジルだってガキじゃないっすか!失礼っすよ!」


そんな会話をしている2人に僕はつい気になったことを聞いてみた。


アスト「えっと…ジルさんって何歳なの?」


ジル「俺は13だ」


アスト「えっ…!僕と同い年!?」


ジルさんは確かに若く見えてはいたのだが、少し大人びた表情をしている彼は全く同い年には見えない。身長も高いし、大人…とまではいかなくても、3、4歳は年上だと思っていた。


アトラ「ちなみに俺は12っす!」


アスト「ぼ…僕より年下なんだ…」


ジル「…で、こいつは結局誰なんだ?」


アトラ「あ、説明してなかったっすね。この人は…」


アトラくんはジルさんにこれまでの経緯を説明した。


ジル「ふーん…こいつが今噂になってるやつか」


アトラ「そうっす、だから協力してもらってたんすよ」


アスト「よろしくお願いします。ジルさん」


僕は改めて頭を下げた。


ジル「呼び捨てでいいし、俺にそんな気を使う必要はない。手伝ってくれるのはありがたいが…戦闘の時はあまり邪魔するなよ」


アスト「う、うん!わかったよジル」


アトラ「そう言えば村で噂になってたモンスターは倒せたんすか?」


ジル「いや…全くだ。ゴブリンとかスライムとか…Fランクでよくいるモンスターしかいねぇ。さすがに村の大人たちもFランクには負けねぇはずだから、別で強いモンスターがいるはずだ」


アスト「…そう言えばモンスターの特徴とかって聞いてないの?」


アトラ「あっ、言われてみれば聞きそびれてたっすね。まぁこの辺りにいるモンスターはひと通り把握しているんで、とりあえず見たことのないモンスターを探せばいいんすよ!」


ジル「そんな簡単にはいくわけないだろ…とりあえずお前たちは果実を集めてる最中なんだ。そっちを優先しろ」


アトラ「それもそうっすね、早く回収しちゃいましょうアストさん!」


アスト「うん…あっ、そう言えば結局荷車を見失っちゃって…」


アトラ「それなら心配ないっすよ、地面に荷車の通った跡があるじゃないっすか」


そう言ってアトラくんは地面を指さした。確かに奥を見ていくと、荷車の跡が続いている。


アスト「ホントだ!全く気付かなかった…!」


アトラ「そういうことでそんなに慌てなくても大丈夫っすよ。一応この森は危ない場所でもあるし…慎重になるべきっすよ。特に自分から1人になるなんて危険っす!」


アスト「う、うん…そうだね…次は気を付けるよ」


アトラ「分かってくれたならいいんすよ!大丈夫っす、俺たちも一緒に行きますから!」


アスト「うん…!ありがとうアトラくん」


アトラ「礼には及ばないっすよ。アストさんたちは手伝ってくれてるっすからね。これくらい当然っす。ということで…荷車捜索再開っす!ほらジルもいくっすよ!」


ジル「はぁ?なんで俺が…」


アトラ「護衛っすよ!これ以上奥に行くのは危険性があるし、アストさん1人に行かせるわけにはいかないじゃないっすか」


ジル「いや、お前がついてるだろ。それにそいつ…いや、アストだって弱いわけじゃない。お前ら2人で十分じゃないか」


アトラ「えぇ…そんなこと言わずにジルも行きましょうよ!アストさんだってジルと一緒なら安心するっすよね?」


アスト「うん、来てくれたら僕も嬉しいかな」


ジル「ちっ…早くいくぞ」


アスト「ご、ごめん…迷惑かけちゃって…」


ジル「謝罪はいいから…ほら行くぞ」


アスト「う…うん!」


アトラ「素直じゃないっすねぇ…頼ってくれて嬉しいくせに…」


ジル「ばっ…へ、変なことを言うなアトラ!!」


そう言うジルの顔を見ると少し赤くなっているようにも見えた。この反応…確か…ユキトから聞いたことがある気がする。こんな反応をする人を確か…。


アスト「…ツンデレ?」


ジル「ツ…ツン…!?」


アトラ「ぷっ…!」


僕はボソッとつぶやいたが、それがどうやら聞こえていたようだ。


ジル「お、俺はツンデレじゃねぇ!変なことを言うな!アトラも笑ってんじゃねぇよ!」


アトラ「だ、だって…あのジルにツンデレっていう人は初めてで…」


アスト「ご、ごめん…!?ついパッと思い浮かんだことを言っちゃって…」


ジル「あぁくそ…いいから早く行くぞ…!」


ジルは顔を赤くしたまま、駆け足で先に行ってしまった。


アスト「い、行っちゃった…」


アトラ「ふぅ~…久しぶりに大笑いしたっす。最高だったっすよアストさん!」


アスト「だ、大丈夫かな…」


アトラ「大丈夫っすよ!あれは怒ってるんじゃなくて恥ずかしがってるだけなんで!ほら俺たちも早くいくっすよ!」


少し不安はありつつも、アトラの言葉を信じることにする。ジルさんには少し申し訳ないことをした…。こうして僕たち3人は地面に残った跡を頼りにさらに奥へ進んでいった。



_____




アトラ「アストさん体は大丈夫っすか?」


アスト「うん、大丈夫だよ。ジルさんに回復魔法もかけてもらったから」


アトラ「ジルの回復魔法はすごく精度が高いっすからね!」


アスト「僕も回復魔法は使えるけど…精度が全然違いすぎてビックリしたよ」


回復魔法……怪我や状態異常、呪いなどを治せる至高の魔法だ。だけど、傷を治せるという大きな効果がある分、扱い方も非常に難しい上級魔法だ。大きな怪我ほど治すために必要な魔力量が多くなる。やろうと思えば骨折なども治せるが、回復魔法が使える程度の人は時間もかかるし、消費量がとてつもなく多くなる。そのためしっかり制度を高めないといけないのだ。おそらく僕でも宝石魔法以上に魔力を消費するはずだ。


アトラ「ジルは回復魔法に真正があるんすよ。だから誰よりも得意なんす!」


アスト「えっ!?回復魔法が適正じゃなくて真正!?」


上級魔法が真正とは…かなりの才能だ。

魔法には様々な種類の魔法がある。炎魔法、氷魔法、雷魔法、幻惑魔法、宝石魔法…他にも色んな現象を扱う魔法が存在する。その中で、自身に最も合う魔法がある。それは属性魔力…というわけではなく、魂…というのだろうか、その人のみに適合する魔法があるのだ。誰よりも扱い方が上手く、その魔法の理解力が高い才能…その才能を「適正」という。この才能は属性魔力とは別の力だ。


属性魔力はあくまでも、地水火風といった自然に存在している元素エネルギーの性質が近いことで得意不得意の魔法が決まる。そう、あくまでも元素エネルギーに関係する魔法までだ。ただ「適正」という才能は世界に存在する全ての魔法が対象になる。元素エネルギーの魔法はもちろんだが、属性魔力とは違い、対象となる魔法がとてつもなく多いのだ。例をあげるなら、僕だったら宝石魔法、シュートなら幻惑魔法といったところだろう。僕は無属性なのに宝石魔法を扱える、「適正」は属性魔力に関係なく才能を発揮できるのだ。


だけど誰もがこの才能を持っているわけではない。属性魔力は誰しもが持っている。一応無属性も属性魔力だ。しかし、「適正」は完全な才能だ。どの魔法が適正なのか、それは誰にもわからない。自分の力で見つける必要がある。もちろん適正がないかもしれないし、魔法の種類はたくさんあるから可能性は0ということもできない。


僕だって、能力の魔力結晶化があるとはいえ、宝石魔法が適正とは思わなかった。だけど、ここ1年で多くの宝石魔法を習得し、熟練度をあげた。宝石魔法は上級魔法なのにここまで扱えるようになったのは僕に適正があったからだろう。


さらに、自身に適正があったとしても、気づかない時が多いというのが厄介なところだ。


シュートは幻惑魔法に適正があったが、最初はそれを発揮できていなかった。魔導書で読んでも理解ができなかったし、扱うこともできなかった。それは、シュートはあくまでも他人が理解した幻惑魔法を知ろうとしていたからだ。適正を発揮するには、その魔法を自分の解釈で理解しないと意味がない。自分なりに学んで力を理解する。そこに気づくのはとても難しい。僕だってシュートに教えたのは扱い方だけだ。そこから解釈を広げ、適正を発揮できるかはシュート次第だった。


しかし「適正」という才能は先ほども言ったように可能性は0ではない。あることに気づく難易度はかなり高いが、発揮できる可能性はあるのだ。


しかし…ジルの持つ「真正」、これは「適正」とは話が変わる才能だ。


「真正」は、内容は「適正」と似ている。魔法の理解力が高く、扱い方や熟練度も上がりやすい。しかし、「適正」と違うのは、「真正」は生まれた時からその魔法を完全に理解した状態で扱うことができるのだ。普通、僕たちは基礎から学んで勉強し、何もない状態から少しずつ理解していく。もともと僕たちは何も知らない状態から始まるのだから当然だ。


しかし「真正」は何も知らないはずなのに最初から知っている…という状態になる。学んできたことを当たり前のように知っていて、当たり前のようにその魔法を使いこなす才能…それが「真正」だ。「適正」は誰もが持っているわけではないが、それは発揮できない人、気づいていない人が多いからそういう結論になった。しかし、真正は本当に一部の人にしかない才能だ。生まれた時からすべてを知って扱える…簡単に言うが、とんでもない才能なのだ。しかもそれが回復魔法だとなおさらだ。傷が大きいほど回復魔法の難易度は上がるが…ジルさんは例え致命傷を負ったとしても治せてしまう、そんなポテンシャルがある。正真正銘の天才だ。


アトラ「しかも戦闘能力も高いんすよ!アストさんも見たっすよね?」


アスト「うん、回復魔法も相まってとても強いのはよくわかるよ」


そう言われて僕はジルの戦闘を思い出した。…といっても一瞬すぎて全く理解できていないのだが、少なくとも僕の目では見えないほど、斧を素早くふっていた。だけどジルの持っている斧はかなり大きい。刃の部分は僕の顔よりも2,3倍は大きそうだし、柄の部分を合わせると僕の体よりも大きいのだ。それを軽々とふる辺り、かなり力があるのは明らかだった。


ジル「おいアトラ、あまりほかの人に俺のことを話すなよ。俺はあまり自分のことを話されるのは好きじゃないんだ」


アトラ「いいじゃないっすか、もっとたくさんの人にジルのことを知って欲しいんすよ」


ジルは小さくため息をついて、背中を向けてしまった。


ジル「どうせ…知られたところで…俺は…」


アスト(…うん?)


ジル「はぁ…お前の好きにしろよ」


そう言ってジルは歩き出してしまった。


アトラ「あっ!?待ってよ!?いくっすよアストさん!」


アスト「う、うん!」


変な感じがした。ジルが言った言葉とは違う何かが聞こえたようなそんな感じ。それはとてもすごくか細い声のようにも聞こえた。だけど、ジルの全く変わってない態度や、アトラくんが気にしていないことから、空耳で気のせいだったのだろうと思うことにした。


そう、僕は気にしなかったのだ。ホントに小さい声で、集中しなければ聞こえないほどの小さい声。ジルの言葉とも重なっていたから、なおさら空耳だと思い、聞き逃してしまった。もっと気にしておけば、疑問をもっておけば、あんなことにはならなかったのかも知れないのに…。

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