第3話 甘味と休み
久しぶりの投稿です。
失踪はしないようにしたい…
フレーノ村にはたくさんの露店があるが、すでに大勢の人が並んでいてどこも行列になっている。フレーノ村で食べられる甘味は大陸全体で有名らしく、いろんな人が甘味をたべるために訪れるそうだ。特に有名なのが、フレーノ村でしか採れない果実を使った焼き菓子らしい。サクサクした食感と、サッパリした甘さで1度食べたら手が止まらなくなるらしい。僕とユキトも最初にそこの露店に並んでいた。
ユキト「見てみろよアスト、あの店で働いてるやつの髪すごい綺麗だぜ」
露店の方を見ると、僕たちと同じくらいの猫獣人の少年が働いているのが見えた。ユキトの言う通り、その少年は綺麗な金色の髪をしていて、つい見惚れてしまいそうだ。
アスト(というか…普通の金髪の人と比べると光って見えるような…?)
金色の髪をしている人は何人か見たことがあるが、彼の髪はなんというか輝いて見えていて、本当に金の宝石のようだった。
ユキト「俺たちと同じくらいに見えるのに頑張ってるな」
そういいながらユキトは感心して一生懸命働いている彼を見ている。
アスト「僕たちもギルドの活動を頑張らないとね」
ユキト「また倒れられたら困るけどな?」
アスト「す、すみません…」
ユキト「わかってるならいいんだ」
そう言ってユキトは笑いながら肩を組んできた。確かにこれ以上みんなに迷惑をかけるわけにはいかないし、ギルドの依頼にも支障を出てしまう。
アスト(僕はリーダーだし、次は体調管理も気を付けないと…)
ユキト「おっ、すごい良い匂いがするな!」
そう言うユキトの目は輝いている。
アスト「ホントだ、だいぶ近づいてきたね」
少しずつ順番が近づいてきて、2人で待ちながら匂いを堪能する。シュートとライキは4人全員が同じ場所に並ぶ必要がないということで、他の露店に並びに向かった。前の方を見ると、ざっと見ただけでも50人ほどは並んでいて、後ろもすでに長い列ができている。だけど、店で働いている人たちの手際がいいのか、すぐに僕たちに順番が回ってきた。
猫族の獣人「ありがとうございましたっす!」
先ほど話していた彼から焼き菓子を受け取る。出来立てなのもあって、袋の中からおいしそうなにおいが漂っている。
ユキト「す、すげぇうまそう…!」
アスト「ホントだ、長い間待ったかいがあったね」
ユキト「だな、早く戻ってあの2人と一緒に…」
ぐうぅ~…
その瞬間、ユキトのほうから大きな音が鳴った。僕はついユキトの方を見てしまった。
ユキト「お…美味しそうなんだからしょうがないだろ!!」
アスト「はははは…」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうにするユキト。我慢はしていたようだが、お腹は正直だったようだ。
アスト「うーん…しょうがないな、あの2人には内緒で先に食べていいよ。僕も内緒にしておくから」
ユキト「えっ!?いいのか!?」
アスト「まぁ…列に並んだのは僕たちだし?」
そういいながら僕はニヤッと笑った。事実そうだし、誰よりも楽しみにしてたユキトには出来立てを食べさせてあげたかった。
ユキト「へへっ、それもそうだな。じゃあ…はい、これアストの分な」
アスト「えっ…いや僕は…」
ユキト「並んだのはアストも一緒だろ?それに俺1人で食べるのは流石に罪悪感あるんだよな」
そう言いながらユキトもニヤッと笑いながら焼き菓子を近づけてきた。
アスト(あぁ…なるほどね)
アスト「僕も同じ罪を背負って欲しいってことね…」
僕が意味を理解すると、ユキトは嬉しそうにしていた。
ユキト「そういうことだ!どうせなら一緒に同じ罪背負おうぜ!」
アスト「…仕方ないなぁ」
そう言って、僕はユキトから焼き菓子を受け取った。それを見たユキトは焼き菓子をもう1つ取り出す。そして勢い良くかじりついた。
ユキト「うまっ!アスト食ってみろよサクサクしてて美味いぜ!」
僕もユキトと同じとはいかないがかじりついてみる。一口かじると口全体に果実の甘い味が広がる。だけど、サッパリした風味のおかげですごく食べやすい。有名になった理由も分かる。
アスト「ホントだ!すごく美味しい!」
ユキト「だろ!買って正解だな!」
アスト「でも、もう食べたから逃げられないからね?」
ユキト「分かってるって、怒られるときは一緒だな」
アスト「だったらバレないように隠し通さないとね」
ユキト「アストでも悪いこと考えるんだな」
アスト「どこかの食べることが大好きな狼竜さんほどじゃないよ?」
ユキト「へへっ、そこまで言われたら俺も徹底的に隠し通さないとな、口滑らせるなよ?」
アスト「そんなドジ踏まないよ」
そんな冗談を言いながら僕たちは笑いあった。最近はギルドの依頼や勉学でいろいろと忙しくて、心に余裕がなかったからなのか、久しぶりにこんなに笑った気がする。名物の焼き菓子を手に入れてウキウキなユキトと一緒に、待ち合わせ場所へ向かった。
____
シュート「…いい感じじゃない?あの2人」
ライキ「だな、ユキトのおかげでアストも笑顔になった」
一足先に買い物を終えていたシュートとライキは、ユキトのことが気になって遠くから様子を見ていた。2人はユキトの秘密を知っている。だから大切な仲間であるユキトのことを思い、2人はあえてアストとユキトを2人きりにした。
シュート「というか…いつもの2人と変わらないか…」
2人が仲良くしているのはいつも通りの光景だ。だけど、それがどこか微笑ましく感じていた。
ライキ「いいじゃないか、まだ出会って1年しか経ってない。ゆっくり信頼関係を築いてからでも遅くないさ」
シュート「そうだね、じゃあ俺たちも頃合いを見てもどろっか」
ライキ「あぁ…今回は先に食ったことは見逃してやるか」
シュート「ホントだよ、内緒で食べるなんて…あの2人の仲の良さに免じて見逃すけど!はぁ…まさかアストさんもあんなことするようになるなんて…と言っても会話も小さく聞こえてたんだけどね…」
ライキ「俺たちは耳が良いが、さすがの2人も会話を聞かれてるとは思わないだろ」
シュート「そうだろうね、はぁ…俺も出来立て食いたかった…」
そう言って苦笑しあった2人は、いつか同じことをして仕返ししてやろうと心に決めた。
____
集合場所に向かうとシュートとライキはすでに来ていた。2人もお目当てのものを買えたようで、たくさんの袋をもっている。ユキトはすごくテンションが上がっていて、促されるように早速買ったものを分け合った。
アスト(うん?)
僕たちが買った焼き菓子を出したとき、シュートが何やら一瞬むすっとしたように見えた。
アスト「シュートどうかした?」
シュート「えっ!?い、いやぁ…ナンデモナイデスヨ…」
アスト(???)
ライキ「…ごほん、それより早く食わないか?」
ユキト「だな!じゃあ俺はこれからもらうな」
そう言ってユキトはシュートたちが買ってきた小さいカップケーキを手に取った。
シュート「あっ!?ユキトさん早いですよ!?俺ももらいます!」
シュートも僕たちが買ってきた焼き菓子を取る。…とライキもさらっと取っていった。僕もカップケーキを1つ手にとり、かぶりついてみた。
アスト「このカップケーキすごいスポンジがふわふわしてる…!」
ユキト「すごいよな、どうしてこんなにふわふわするんだ?」
シュート「こっちもすごいですよ!すっごくサクサクして美味しいです!」
ライキ「…う、上手い」
ほかの3人も一口かじりつき、称賛を始めた。みんな甘いものが好きだし、好物も似ている。ユキトとシュートは相変わらずのくらいつきだけど、あのクールの雰囲気をだしているライキも目を輝かせて食べていた。
ライキ「…なんでそんなに俺を見てるんだ?」
気がつくと、ライキが不思議そうに僕の顔を見ていた。
アスト「あっ…えっと、ライキがそんなに感情出しているのがつい珍しいと思っちゃって…」
ユキト「あぁー…たしかにライキってあまり表情にださないもんな」
その横でシュートもうんうんとうなずいている。
ライキ「そ…そうか?」
シュート「昔と比べたらかなり表情が豊かになったほうだと思うよ」
ライキ「まぁ…俺は昔から表情を出すのが苦手だからさ…」
そう言うと、ライキは肩をすくめて苦笑した。
シュート「あっ!そういうところ!」
ライキ「え…?」
シュート「昔のライキなら絶対そんな態度とか表情とか…絶対しなかったよ!」
ライキ「…言われてみればそうかもな」
そう言ってライキは口に2つ目の焼き菓子を運ぶ。
ライキ「…お前たちといると安心するから…かもな」
3人「…え?」
ライキ「…!?」
僕たちは驚いてライキを見た。ライキも自分もこぼしたセリフに驚いている。ボソッと呟いた言葉だったが、どうやら本音が漏れてしまったらしい。
ライキ「い、今のは聞かなかったことにしてくれ…!!」
アスト「ぷっ…あはははは!」
顔を真っ赤にして慌てだしたライキに、僕はつい吹き出してしまった。ライキがここまで慌てるとは思わなかった。
ライキ「わ、笑うなよ!」
アスト「ご、ごめんつい…で、でもおかしくって…」
ユキト「ははっ!そう思ってくれたなら俺もうれしいな!」
シュート「まさか…っぷ…俺もそんな言葉聞けるとは思いませんでしたよ」
ライキ「ぐぅ…た、頼むから忘れてくれ…」
ライキがそう言うと、僕たちは3人は顔を見合わせた。
アスト「うん…無理だね」
ユキト「無理だな!」
シュート「無理ですね!」
ライキ「…っ…!お、お前ら…!お…覚えてろよぉ…!!!」
僕たちはついライキがおかしくって笑ってしまった。ここまで感情が安定していないライキを見るのは初めてだ。
その後、笑いすぎたせいでライキが少し拗ねてしまったのはここだけの話…。




