第4話 ギルド設立
ユキト「かなりビショビショになったな。」
ライキ「ホントだな…まぁ、こうなるのは分かってたことだけどな。」
アスト「ご、ごめんね…作戦とはいえそこまで頭が回らなくて…。」
僕たち4人は寮の大浴場にいた。試験中に放った水の魔法の勢いが強すぎたせいで、僕を除く3人にも水がかかってしまい、服や髪、尻尾がビショビショになってしまっていた。ギルド協会はというと、僕たちが試験に合格したため、ギルド設立のために準備をしてくれているそうだ。その準備に時間がかかるとのことなので、風邪をひかないように着替えたりすることにしたのだ。
ユキト「気にするなよ、それのおかげで勝てたんだ。それよりアストの魔法はやっぱりすごいな!黒いオークと戦ってた時より威力上がってなかったか?」
シュート「ですね、アストさんがいなかったらきっと勝てなかったですよ。」
アスト「ううん、僕1人だけだったら絶対に勝てなかったよ。それどころか、この4人のうち誰か1人でも欠けてたら、ファリルさんには絶対に勝てなかったと思う。これは、僕たち4人全員の勝利だよ。」
ライキ「アストの言う通りだな。個々の力じゃ無理でも、力を合わせれば強大な力をもつやつにも勝てる。これは、俺たちがギルドを設立してからも1番大切なことだと思うぞ。」
きっと最後の試験は、僕たちに協力しあうことの大切さを教えるための試験だったのではないかと思う。確かに最初はファリルさんに勝てないと思っていたのに、4人で協力すれば、あのファリルさんにも勝ててしまったのだ。
アスト「それにしても…ホントに僕たちギルド作っちゃったんだね。」
ユキト「だな…。まさかこんな早くできるとはなぁ。」
ライキ「だけど、忙しくなるのはここからだぞ。依頼とかも来るだろうし、もっと実力をつけないといけないからな。」
ユキト「俺ももっと筋肉つけたいな。ファリルさん…すげぇ筋肉だったよな。」
そう言ってユキトは力こぶを作る。確かにファリルさんの肉体は鍛え上げられているのがよく分かる肉付きをしている。
アスト(それに比べて僕は…)
全く運動ができない僕は、3人と比べてもあまり筋肉がついていない。ギルドの設立が決まった今、旅やら依頼をこなすなら、それ相応の体力と筋力をつけないといけない。
ユキト(せめて僕もユキトくらい筋肉つけてみたいな…)
僕はこっそり横にいるユキトの体を見る。初めて会った時と比べると、身長も少し伸びていて、筋肉も格段についている。少しずつ大人の竜人のような体格に変わっていっているような気がする。
ユキト「どうした?俺の体に何かついてるか?」
アスト「えっ!?い、いや何でも…」
こっそりのつもりが、僕が見ているのがバレバレだったようだ。恥ずかしくなり、つい視線をそらした。
ユキト「もしかして…俺の筋肉に惚れたとかか〜?」
アスト「うっ…え、えっと〜…その…」
そう言ってユキトはニヤニヤしながら僕の方を見る。そのイタズラっぽい顔にさらに恥ずかしくなる。湯船より体が熱くなりそうだ。
ユキト「…え?冗談のつもりだったのに本当だったのか?」
アスト「い、いや…!確かにかっこいいとかは思ってたけど…!ほ、惚れたわけじゃないよ…!」
ユキト「なんだ、アストって意外と可愛いところあるんだな!」
アスト「だ、だから違うよ…!!」
シュート「でもアストさん意外と大浴場にいる時、周りの人の筋肉見たりして良いな〜とか呟いたりしてますよね?」
アスト「えっ!?な、なんで…それを…!?」
確かに、この学園に来てからは周りの人の筋肉をちょこちょこ見てしまう時がある。筋肉がある人はかっこいいと思うし、その分強そうでたくましそうに見える。どんな鍛え方してるんだろうな〜とかいろいろ考えているが、あまりジロジロ見ると変に思われそうなので、気をつけてはいたのだが、あっさりバレていたようだ。
シュート「実を言うと…コソコソ俺の筋肉見てるのも俺気づいてましたよ〜?」
アスト「な……う、うそ…!?」
ユキト「おいおい、アストいろんなやつ見過ぎだろ?見るなら俺だけにしとけよ!他のやつより全体的に筋肉つけてるんだからな!」
ライキ「…確かに全体的にみたらユキトには負けるか。でも俺は素早く動くために常に走ったりしてるし、足の方の筋肉は自信があるぞ?」
シュート「む…俺だって魔法を放つためにバランスを保とうと腹筋を頑張って鍛えてるよ!」
そう言って3人は筋肉自慢をしだす。筋肉のない僕には入れない話だ。
ユキト「いやいや、シュートはまだ俺の腹筋には敵わないな!」
シュート「ただ筋肉をつけてるんじゃなくて、動きやすくてバランスのある腹筋を目指してるので!後、俺は見栄えとかも気にしてるんですよ!」
ライキ「まぁ、動きの効率も考えるのも大事だな。シュートは魔法も近接もバランスよくできるような戦闘スタイルだし。」
確かに戦闘スタイルによってどこの筋肉を鍛えるかは大切になる。大きな剣を振って戦うユキトなら腕や手、素早く動くライキなら足、みたいな感じだ。
ユキト「見栄えか…じゃあ今この場で誰の筋肉がかっこいいか、アストに査定してもらおうぜ!」
アスト「…へ!?な、何言ってるの!?」
ユキト「だってアストからしたら筋肉を見れるし、俺たちは誰が1番かっこよく鍛えられてるか分かるし、良いことだらけだろ?筋肉を間近で見れるチャンスだぜ?」
そう言ってユキトはまたあのニヤニヤ顔で笑い出す。
アスト(何でいきなり…は!?ま、まさか…!?)
僕はユキトの考えがなんとなく分かった。初めてだったから気付かなかったけど、おそらくユキトは僕のさっきの反応を見て楽しそうにしてたから、これは僕をからかっているんだ。
シュート「良いですね!その勝負乗ります!良かったですねアストさん!今日はこっそり見る必要なさそうですよ!」
ライキ「だな、俺もアストのために参加する。存分に俺たちの筋肉をみろよ。」
シュートとライキもユキトの考えが分かったようで、イタズラっぽく笑いながらこっちを見てくる。まさかこんなにいじられるとは思わなかった。
アスト「…な。」
ユキト「え?」
アスト「みんなで僕をからかうなぁー!!!」
顔が真っ赤になっているのを感じながら、僕は初めて思いっきり叫んだ。自分でもこんな大声出せるんだとビックリした。大浴場のせいで声がすごい響いたけど、3人は僕の様子を見て思いっきり笑っていた。
———
そして、1週間後。ついにギルド設立の準備ができたようなので、僕たちはギルド協会に集まっていた。
受付嬢「お待たせしました。こちら、皆さんのギルド会員証になります。」
受付嬢から小さなカードを受け取る。カードには僕たちの名前と、冒険者ランクが書かれている。最初はもちろん1番下のFランクだ。
ユキト「おぉー!!こ、これが…本物のギルド会員証…!」
ユキトはかなりテンションが上がっているようだ。だけどその気持ちは僕も同じだ。この会員証は、本当に僕らでギルドを設立したという証拠品だから、テンションも上がるに決まってる。
受付嬢「これから皆さんのギルドには依頼を受けてもらうようになります。ただし、皆さんのギルドが受けれる依頼はFランクにあたる依頼のみです。Eランク以上の依頼を受ける際は、それぞれ皆さんに昇格試験を受けてもらう必要があります。」
アスト「昇格試験…?」
受付嬢「昇格試験とは、現段階のランクのモンスターよりも、ワンランク上のモンスターを討伐してもらう試験です。この試験を受けるには、現段階のランクの依頼を一定数こなし、解決することで、その試験をうける資格を得ることができます。試験に合格した方は冒険者ランクがワンランクあがります。」
シュート「全員が試験を合格しないと、ワンランク上の依頼は受けることができないんですか?」
受付嬢「いえ、ギルドメンバーの半数以上の方が試験に合格すれば、そのギルドはワンランク上の依頼を受けることができます。皆さんの場合はメンバーが4人なので2人以上合格すれば受けることができるということですね。ただし、昇格試験に合格していない方も依頼に向かうことはできますが、実力に見合わない強敵と戦う可能性もありますので、その辺りは自己責任でお願いします。」
ユキト「なるほどな、試験のモンスターを倒せないのに、それ以上のモンスターと戦うのは危険だ。ランクの高い依頼はなるべく合格しているメンバーで行きたいな。」
ユキトの言う通り、もし冒険者ランクが低い人がランクの高い依頼に向かえば、その分危険を伴うし、命を落とす危険性がある。なるべくそうならないように、同等のランクの人が向かうようにしたいところだ。
受付嬢「さて、さっそくなのですが、皆さんはもう依頼を受けることができますよ。どれかやってみますか?」
アスト「えっ!良いんですか!」
受付嬢「もちろんです、こちらに書かれている依頼書がFランクの依頼ですね。どの依頼を受けるかしっかり考えてください。」
そう言って、受付嬢は数枚の依頼書を広げた。内容は薬草採取、巨大スライム討伐、農業の手伝いなど、いろんな種類がある。Fランクの依頼のため、危険性のあるものは少ない。
ライキ「うーん…どれを受ける?」
ユキト「そうだなぁ…。おっ、これとか良いんじゃないか?」
ユキトは1枚の依頼書を手に取る。内容は小さなゴブリンの巣の破壊。ネイチャリー国の近くにある小さな村のナルファ村の近くに、数匹のゴブリンが巣を作ろうとしているようだ。それを破壊してほしいという依頼だった。
シュート「良いですね!最初の依頼にちょうど良い難易度じゃないですか?」
アスト「だね、これにしよう!」
受付嬢「分かりました、ではさっそく依頼の方をよろしくお願いします。依頼者はナルファ村にいますので、詳しい話は依頼者に聞いてください。」
ユキト「よし!出発だ!!」
僕たちはギルド協会を後にし、初の依頼場所であるナルファ村へと向かった。




