第5話 初めての依頼 前編
数十分ほど歩いてナルファ村へ辿り着いた。
ライキ「ここがナルファ村か、依頼主の人はどこにいるんだ?」
シュート「村の人に聞いてみた方が良いかもよライキ」
ライキ「だな、行くか」
僕たちはさっそく村へと踏み入れる。国と村では違う雰囲気に興味を持ち、辺りをキョロキョロ見渡す。あまり見たことのない畑や、馬がいるのが見え、少しテンションが上がった。
アスト(すごい…!ムースタン国では馬とかいなかったし…初めて見た…!!)
??「おや?君たちは?」
すると、1人の猫族の老人が話しかけてきた。
アスト「あっ、えっと…初めまして。アスト・スターライと申します。今回こちらの村から依頼を受けさせてもらったんですけど、依頼主の方を探してて…」
??「ほぉー!君たちのことか!ギルド協会の方から聞いているぞ。若いのにすごく強いらしいのぉ、うちの村の若いもんたちも噂してたわい」
アスト(す、すごい!僕たちそんなに有名になってるんだ…!)
村長「おっと、自己紹介が遅れたな。ワシはドーフ、この村の村長をしておる。そして、今回依頼したのはこのワシじゃ」
シュート「村長さんだったんですね!では改めてよろしくお願いします!」
村長「うむ、では立ち話も疲れるし、ワシの家に案内しよう。そこで依頼について話させてもらうわい」
村長の後をついて行き、やがて村の中でも一際目立つ大きな家に辿り着いた。
村長「さて、何もない家じゃが、好きなところに座ってくれ」
ライキ「はい、ありがとうございます。さっそくですが依頼について聞いても良いですか?」
村長「うむ、少し前にこの村の近くにある湖に、うちの若いもんがゴブリンに襲われる事件があってな。村のもんに調査をしてもらったら、ゴブリンが巣を作っているのが分かったんじゃ。しかも巣が2つも見つかってな」
ユキト「2つか…なら早めに手を打たないと、他のゴブリンも引き連れて巣を増やされる可能性もあるな」
村長「その通りじゃ、その湖はこの近くの山から流れてくる綺麗な水でな。よくワシらの村もその水を使ったりしているんじゃ。その水が使えなくなると、ワシらの生活も困ったことになる。じゃから2つの巣を破壊して、湖の安全を確保して欲しいというのが依頼じゃ」
アスト「分かりました、僕たちに任せてください!」
ユキト「今更ゴブリンなんて敵じゃないしな!」
初めての依頼に、僕たちはやる気がいつも以上にでていた。
村長「ほっほっほ!最近の若いもんは元気で羨ましいのぉ。では、任せたぞ」
僕たちは村長の家を後にし、さっそくゴブリンの巣がある湖へと向かった。
———
村から歩いて数分、僕たちは湖へと辿り着いた。木々が生い茂っていて、自然に囲まれている湖はとても絶景だ。
アスト「すごい綺麗な色をしてるね」
僕は湖の水を手ですくってみた。キラキラ輝いていて、とても澄んでいる色だ。
シュート「ここで水浴びとかしたら気持ち良さそうですね!」
ライキ「おい2人共、俺たちは一応依頼で来てるんだからな?」
アスト「あっ…そうだった、ごめんね」
シュート「すっかり気を抜いてました…」
ユキト「依頼完了したらここで遊ぶのも良いんじゃないか?実はライキだって水浴びしたいんだろ?」
ユキトはライキの尻尾を見る。ライキの尻尾は初めて見るほどブンブン振っている。ライキは水浴びが好きらしく、水を見るとつい尻尾が振ってしまうらしい。
ライキ「うっ…そ、そうだ…けど……依頼終わってからだからな…!!」
ユキト「そうこないとな!ひとまず巣を探そうぜ。2つあるらしいし、ここは二手に分かれよう」
アスト「分かった、ペアはどうする?」
ライキ「近接ができる俺とユキトは分けて、魔法が得意なアストとシュートを分ける。これで近接と遠距離ができるペアで組めば良いんじゃないか?」
アスト「なるほど、じゃあそうしよう」
話し合った結果、ペアを組むなら戦ったことのないペアで行こうという話になり、僕とライキ、ユキトとシュートのペアで右周りと左周りに別れてそれぞれ巣を壊すことになった。
———
アスト、ライキペア
視点 アスト
アスト「じゃあ僕たちは右周りで回ってみよう」
ライキ「分かった、簡単な依頼だが、何があるか分からない。俺から離れないようにしてくれ」
アスト「うん、頼りにしてるよライキ」
ライキ「任せろ、そっちも俺のフォローを頼むぞ」
アスト「了解!」
ライキはしっかりしているし、ユキトと同じくらい匂いに敏感だ。危険察知能力も高いし、ユキトとは違う安心感がある。
ライキ「ゴブリンの気配がするな…この近くに巣があるぞ」
アスト「ホント?じゃあちょっと警戒しないとね」
ライキ「あぁ、匂いは…こっちだな。ついてきてくれ」
ライキの後ろをついていき、茂みの中を進んで行った。少し歩くと、ライキが歩くのをやめた。
ライキ「見てみろ、あれが依頼のゴブリンの巣みたいだな」
ライキの指差した方向を見ると、6匹ほどのゴブリンが集まっていて、肉を食べているのが見えた。よく見ると見張り台のようなものも作ってあるし、知恵はありそうだ。と言っても今は食事で夢中のようだし、せん滅するには絶好のチャンスだ。
アスト(意外と村から近いところに巣があるな…この距離じゃまた被害がでそう…)
アスト「今攻めるチャンスだよね?」
ライキ「だな、あいつらを倒して巣を破壊するぞ」
アスト「うん、作戦はどうする?」
ライキ「せん滅なら俺1人で十分だ。だからアストはあいつらを逃がさないように魔法で援護してくれ」
アスト「分かった、任せてよ」
ライキ「よし…行くぞ…!」
そう言うとライキは茂みから飛び出し、ゴブリンたちに向かって走り出した。
「ギャアッ!!」
「ギュアッ!」
ライキの走る音で、ゴブリンたちも存在に気付いたようだ。命の危険を感じたからか、ゴブリンたちは近くに落ちている棍棒を拾おうとする。
ライキ「おらっ!」
「ギャッ!?」
しかし、棍棒を拾う速さより、ライキが剣を振るのが早く、1番前にいたゴブリンをあっさり切り倒してしまった。
「ギャギャアッ!?」
それを見たゴブリンたちは焦り出し、一斉に逃げ出そうと走り出した。
アスト「悪いけど逃がさないよ!」
僕は手に魔力を込める。そして、水色の綺麗な宝石を作り出した。
アスト「宝石魔法 クリオライト・バレット!!」
水色の宝石は小さく細かい球のようになり、それぞれゴブリンの足に当たっていく。
「ギャアッ!?」
足に当たった宝石は氷へと変わり、ゴブリンたちは身動きが取れなくなった。この魔法は、ユキトがこの前使っていた<氷魔法 アイスロック>を参考にあみだした魔法だ。ユキトの魔法は対象1人の身動きを確実に封じれるが、僕の魔法は複数人を同時に身動きを封じれるのが特徴だ。その代わり、宝石が小さいので、避けられたら氷漬けにできないのがデメリットだが、そこは小さい宝石の数を増やしてカバーしている。
ザシュッ!
ライキ「…ふぅ、これでゴブリンの方は終わりだな」
ライキはすぐさま動けなくなったゴブリンを、一度で全員切り倒してしまった。
アスト「見張り台は任せて、宝石魔法 デトネーション・ラッシュ」
散りばめられた宝石を操り、見張り台へと飛ばす。そのまま爆発を引き起こし、見張り台を跡形もなく破壊した。
ライキ「さすが…ずいぶん使えるようになってるじゃないか。周りの自然は一切壊さず、見張り台だけを壊すなんて…俺の知ってる宝石魔法はそんな簡単に制御できるものじゃないと思うんだけどな…」
アスト「これでも魔法は毎日研究してるんだよ?近接技術ではみんなに勝てないだけじゃなくて役に立てないし…だからせめて魔法の分野では役に立てるようにってね」
ライキ「そのおかげで俺はかなり助かってるからな。これからも頼りにしてるぜアスト」
アスト「あはは…そう言われると緊張しちゃうけど…」
とりあえず、これでこちら側の巣は終わりだ。後は反対側から巣を探しに行ったユキトたちだけど…
アスト「あっちは…大丈夫かな?」
ライキ「ユキトもいるし、シュートも十分強いから大丈夫だ。俺たちはひと足先に戻ろう」
ライキの言葉に頷き、僕たちは一足先に村へと戻った。




