第2話 4人の実力
学園長「皆さん、お疲れ様です。」
学園長がギルド協会の扉をくぐると、受付にいたウサギの獣人の女性が立ち上がって丁寧に頭を下げた。
受付嬢「いらっしゃいませ、女王様。本日は生徒の皆さんのギルド設立試験の日だと伺っております。」
学園長「ええ、その通りです。本日はどうぞよろしくお願いします。」
受付嬢「お任せください。すでに準備は整っています。生徒の皆さんはこちらへどうぞ。」
アスト「は、はい!」
学園長は僕たちの方に振り向き、にこやかに声をかける。
学園長「皆さん、頑張ってくださいね。私も応援していますよ。」
シュート「はい!」
ライキ「全力で臨みます。」
僕たちは学園長に見送られながら、試験会場の扉をくぐった。
中に入ると、早速周囲のざわめきが耳に入ってきた。
「おい聞いたか?今から子供がギルド設立の試験を受けるらしいぞ。」
「何だって?子供が?いやー…無理だろ…。」
「でもあのヘルミール女王様が推薦した生徒らしいぞ。」
「あの女王様が…?しかも生徒を…?」
そんな話が周りから聞こえてきた。僕はなるべく聞かないようにして集中しようとするが、どうしても緊張が勝ってしまいそうだった。
ユキト「大丈夫だって、そんな険しい顔すんなよ。」
そう言ってユキトは僕の肩を叩いてくる。
ユキト「そんな思い詰めてたら上手く行かないぜ?」
アスト「そ、そうだね…!」
昔の僕じゃ、きっとここまで来れなかった。でも今ならきっとやれる。気合を入れ直したその時、どこか安心感のある声が僕たちにかけられた。
???「初めまして。君たちが今回の審査を受ける生徒さんたちだね?」
現れたのは、体格のいいクマの獣人の男性だった。がっしりとした体に、優しげな笑顔が印象的だ。
???「僕はファリル。審査員を務めさせてもらうよ。よろしくね。」
アスト「よ、よろしくお願いします!」
ユキトは小声で僕に囁いた。
ユキト「……すげぇガタイいいな。」
アスト「ホントだね…。」
確かにファリルさんの体格はひときわ大きく、周囲の冒険者たちと比べても圧倒的だった。間違いなく、かなりの実力者だろう。
ファリル「それじゃあ、試験の内容を説明するね。今から君たちには、訓練用の魔導人形を1人ずつ攻撃してもらう。攻撃手段は自由。君たちの一番得意な技をだしてね。ちなみに、破壊力と制度で評価するよ。ただし、攻撃は一回きり、全力を出してね。」
アスト(1回だけ…か。)
ライキ「試験の内容はそれだけですか?」
ファリル「もう1つあるけど…それはこれをクリアしてから説明するね。」
ライキ「分かりました。」
ファリル「他に質問がなければ早速試験を始めるけど…大丈夫かな?」
僕たちは目を見合わせて頷きあう。
アスト「はい、大丈夫です。」
ファリル「それじゃあ早速始めよう。誰からやりたい?」
ユキト「俺が先にやっていいか?」
そう言ってユキトは一歩前へと進み出る。僕とライキ、シュートも無言で頷いた。
ファリル「分かった。じゃあ君はここに立って。」
ユキトは指定された場所に立つ。
ファリル「はじめという合図をだしたら好きな攻撃をしてね。それでは…始め!」
ユキト「…ふぅ。」
掛け声と共に、ユキトは剣を構えて目を閉じ、深呼吸をした。
ユキト「凍刃一閃!」
目を開いた瞬間、地面を蹴り一瞬で人形に近づくと、剣を思いっきり横に振った。人形は瞬く間に真っ二つになり、切った場所には凍りついていた。観客たちの間から、驚きと感嘆の声が漏れる。
「な、何だあの技…」
「氷……? 一瞬であそこまで……」
「子どもって言ってたけど、今の動き…完全に一流じゃないか……!」
ざわめきの中、ファリルさんは目を細めて微笑み、小さく頷いた。
ファリル「次の子、準備はいいかな?」
シュート「次は俺が行きます。」
そう言ってシュートはユキトと入れ替わりで指定された場所に立った。
ファリル「それでは……始め!」
その声を合図に、シュートが息を吸い込む。
シュート「炎魔法 ブラストフレイムエッジ!」
シュートの掌から一気に炎が噴き出す。轟々と燃え上がった火炎は、形を変えて刃に変わる。その刃を人形に向かって放ち、当たった瞬間に刃が爆発した。
アスト(すごい…ドクトルの時より威力が上がってる…!)
炎の刃が当たった人形は跡形もなくなっていた。
「あ、あの子供…俺の炎魔法より強いぞ…?」
「上級魔法と同じくらいじゃないか…?」
ファリルさんもシュートを見て頷いていた。
ライキ「次は俺が行くぞ。」
僕は頷いた。それを見てライキはまっすぐに前へ進み、シュートと入れ替わる。
ファリル「準備はいいかな?始め!」
ライキは合図と同時に2つの剣を構えながら目を閉じて、小さく深呼吸をした。その様子を見ながら、僕はユキトに小声で囁いた。
アスト「……剣を使う人って、技を出す前に必ず目を閉じて、深呼吸するんだね。」
ユキト「そうだな、心と体を揃えるみたいなもんだ。剣技は集中力を使うから、心に乱れがあるとうまく出来ないんだ。」
アスト「そ、そうなんだ。」
ユキトとライキは剣技にかなりのこだわりがあるらしい。それは今まで2人が練習していたところをみて理解したことだ。
ライキは目を閉じたまま、ゆっくりと構えを低くした。両手に握られた双剣の刃先が床を擦るほどに下がる。次の瞬間…
バチッ…!
空気が裂けるような音と共に、彼の周囲に淡い雷光が走った。
ライキ「剣技…エレクティル・ドライブ!」
交差する双剣が人形の中心部を容赦なく切り裂いた。その瞬間、稲妻のような衝撃波が広がり、斬撃の軌跡に沿って人形が爆ぜるように破壊された。その技を見た観客たちからどよめきが起こった。
「雷属性の剣技……あんな技、見たことない!?」
「ほ、ホントに子供なのか…?」
ファリルさんも腕を組んだまま、感心したように微笑んでいた。ライキは無言で双剣を収め、静かに僕たちの方へ戻ってきた。
ファリル「最後は君だね。準備は良いかい?」
アスト「は、はい!」
ユキトが背後から軽く背中を叩いてくる。
ユキト「頑張れよ!」
アスト「…うん!」
僕は大きく息を吸って、指定された位置に立った。
ファリル「それでは…始め!」
アスト(よし…。)
僕は手を魔導人形に向けた。
アスト(みんな強くなってる…僕も…負けられない…!)
この審査のために、僕たち4人は何度も特訓を重ねてきた。新しい技も磨いてきた。昔の僕じゃ、きっとここまで来れなかった。でも今なら、やれる。
アスト(魔法は……イメージが全て。)
心身を落ち着かせ、手に魔力を込める。
アスト「宝石魔法 デトネーション・ラッシュ!」
手から放たれた魔力は、瞬く間に手のひらサイズのダイヤモンドの結晶へと変わった。それは空中でさらに細かく分裂し、複数の小さな宝石となって魔導人形に向かって飛んでいく。最初の一発が命中すると同時に、大きな爆発が起こった。続けざまに、次々と連鎖するように爆発が起こり、あたり一面が輝くようなダイヤモンド色の煙に包まれる。やがて煙が晴れると、そこには何も残っていなかった。人形は跡形もなく消え、床には黒く焦げた大きな穴が空いていた。
「な、なんだ今の……?」
「ほ、宝石魔法って言ったか!?あれを子供が使えるのか…!?」
「派手すぎるだろ……いや、すごすぎる……!」
観客たちがざわつく中、ファリルさんは驚いた様子を見せながらも、ゆっくりと深く頷いた。
ファリル「……うん、見事だね。よくここまで力を磨いたよ。」
僕は息を吐いて、静かに仲間たちのもとへと戻った。ユキトがにやりと笑い、軽く拳を差し出してくる。
ユキト「やったな、アスト!」
僕もその拳に軽く拳を合わせて、笑顔で頷いた。




