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輝星のグランギルド  作者: yuuberu
1章 友達編
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第8話 悪魔の目

シュート「どこから話したら良いか難しいんですけど…まず、ライキもユニーカーで<属性の目>という能力を持ってるんです」


アスト「属性の目…!?」


ユキト「能力…ライキもユニーカーだったんだな」


属性の目とは、生まれた時に目に魔力を宿す非常に稀な現象だ。


人には誰しも「魔力袋」と呼ばれる器官があり、通常はそこに魔力が蓄えられる。しかし、まれに生まれる前の身体が遺伝子で形成されている時に、自身で生み出された魔力量が魔力袋の限界を超えてしまう者がいる。そうなった場合、収まりきらなかった魔力は体の他の部位に影響を及ぼした状態で産まれる場合がある。そのうちの1つが属性の目だ。生まれたばかりの時に生み出された魔力は魔力袋に何とか収まろうとする。そこから、遺伝子を読み取って適性の魔力の性質へと変わっていく。しかし、その魔力袋が小さいと、身体に何とか収まろうとして魔力が変異してしまう。そして変異した魔力が目に宿る、それが属性の目だ。


この現象は、扱う人の適正魔力の属性に応じて目の性質が変わる。たとえば、炎の魔力なら「炎の目」、水なら「水の目」といった具合に、その属性が目に色や光として現れる。ただの見た目の変化だと思うかもしれないが、実際にはとんでもない力を秘めている。


属性の目を持つ者は、その属性に関する魔法を使ったとき、常人とは比較にならないほどの出力を発揮する。たとえば、普通の魔法使いが指から小さな炎を出す程度の魔力でも、属性の目を持つ者が同じ感覚で炎を出せば、1つの家を丸ごと焼き尽くすほどの威力になってしまう。それほどまでに、自分の能力魔法を大幅に強化する力が、この目にはある。


だが、その反面、大きなデメリットもある。一度、属性の目が宿ってしまえば、それは一生戻ることはない。魔力袋は鍛えることで容量を増やすこともできる。だから、溢れた魔力なら容量を増やせばいいのではないかと思うだろうが、変異した魔力は魔力袋には収まらない。変異しているから同じ性質の魔力ではないため、魔力袋が受け付けようとしないのだ。元には戻らず、常に目に溢れ続ける。なら全て放出したらいつかは治るのではないか、とも思うだろう。しかし、この現象は甘くなく、この目にはとある大きな特徴がある。この特徴こそが、大きな出力をだす理由と言っても良いだろう。その特徴とは、目に無限の魔力を宿してしまうということだ。


詳しく説明すると、この世界には自然や環境から生み出されるエネルギーを「マナ」という。マナは魔力とおなじような力を持っていて、マナを使うことで魔法を使ったりすることができる。魔力と違う点は、マナはいろんな場所にあり、自然があればいろんなところで生成される。ほぼ空気とおなじと言ってもいいだろう。それくらい無限とも思える総量がある。しかし、マナは使える人が限られている。まず普通の人には扱えることができない。マナを扱えるのは、同じ自然エネルギーがから作られた存在だ。例としては妖精や精霊などがあげられる。他にも、精霊の力を借りて戦う精霊術士も扱うことができる。


そんなマナだが、属性の目はこれを吸収してしまうという性質があるのだ。ちなみに周囲のマナを吸収して魔力に変えるという技術もある。この場合本来なら、吸収したら魔力袋に収まる。しかし、属性の目を使って吸収した魔力やマナは、変異した魔力が菌のように同じ変異の魔力にしてしまう。そのため、結果的に無限ともいえる魔力を手に入れてしまうのだ。


そして、もっとも厄介なのが、この目は非常に暴走しやすいということだ。


吸収量の範囲は目に見えている範囲すべてで、とてつもない吸引力がある。そのため、ごくわずかに魔力を解放しようと思っただけでも、目の力が勝手に発動してしまい、自分の意志とは関係なく魔法が暴走してしまう危険性がある。そのため、属性の目を持つ者は、自身の魔力と常に向き合い、細心の注意を払いながら生きなければならない。


アスト「そっか…だからライキは左眼に眼帯をつけてたんだね」


ユキト「なるほどな、あれには属性の目の力を抑える効果があったってことか」


シュート「はい…。ライキは…昔からあの力に苦しめられてきました。ライキの属性魔力は雷なんですけど…昔、あの力が暴走して、森に雷を落として大火事にしてしまったことがあるんです」


ユキト「ま、まじか…!?そんなに強いのか…」


シュート「最初は…眼帯をつけて、目を怪我してるってことで誤魔化してはいたんですけど…その一件でライキが属性の目を持っていることがバレてしまって…。ライキは…いろんな人から怖がられるようになりました」


ユキト「属性の目は…もう一つ名称があるからな…」


アスト「もう一つの名称?」


ユキト「あぁ…、属性の目は別名<悪魔の目>って言われてる」


アスト「悪魔の…目…」


ユキト「これで分かったな…何でライキが攫われることになったのか…」


アスト「ど、どうして悪魔の目って呼ばれてるの?」


ユキト「それは、悪魔と契約して手に入れれる能力のうちの1つが、属性の目だからだ」


アスト「えっ…!?悪魔と…契約…!?」


シュート「そうです…だから国の中では、すぐに噂が広まりました。悪魔と契約した少年だって…。ホントは…違うんです。ライキは契約なんてしてないんです…!ホントに生まれつきで…!でも…誰も信じてくれなくて…」


能力を手に入れる人事態かなり少ないし、さらにそこから属性の目を手に入れることはかなり低い確率だ。だからこそ、周りの人は悪魔と契約したと勘違いしてしまったんだろう。


シュート「そんな時でした。ある日…ライキと遊ぶ約束をしてた時、いつまで経ってもライキが来なかったので探しに行った時がありました。そしたら、ライキが誰かに担がれて運ばれているところを見たんです。それが…オルドフェクスの人でした」


ユキト「なるほどな…オルドフェクスも、その噂を聞きつけて属性の目を持つライキを調べようとしたのか」


アスト「悪魔と契約したと勘違いしたから…」


ユキト「悪魔魔法を研究しているやつらだ。もしかしたら狙いは悪魔の持つ力…なのかもな…」


もしそうだとしたら、世界はきっと恐怖に包まれてしまう可能性がある。悪魔の持つ力はどれもとてつもないほどの力があり、それこそ禁断魔法と同等の危険性を持ち合わせている。


シュート「俺は…すぐに追いかけました。でも…途中で捕まってしまって…。目が覚めたら、どこかの地下室のような場所にいました。そして…その後は…ずっと拷問を受けてました…」


アスト「…拷問」


先ほども聞いた単語だが、改めて聞くと恐ろしい。まだ小さい子供だった2人にどうしてそんな惨いことができるのだろうか。僕には全く理解ができない。


シュート「悪魔と契約した方法を教えろって…俺はライキと仲が良かったから知ってると思ってたんです。でも…契約なんてしてないから俺が知るわけないし…。ずっと知らないって言ってもいうことを聞いてくれませんでした。そ、そしたら…吐くまで殴ったり、蹴られたり、電気を浴びせたり…って…」


シュートは体が静かに震えてた。おそらくその時の恐怖が頭によぎってしまったのだろう。僕はそっとシュートの背中を優しく撫でた。


アスト「大丈夫…大丈夫だよ」


シュート「す、すみません…」


ユキト「…許せねぇな」


ユキトが呟いた声はいつもの明るいトーンではなく、ただ怒りがこもった低いトーンだった。


シュート「で、でも…ライキは俺より辛い思いをしてて…拷問を受ける時に、炎の魔法で焼かれてたり…剣でたくさん切られてたり…俺は…途中から見れなくて…。助けたくても…その時の俺は魔法もあまり使えなくて…」


その時、僕はライキさんの首の裏にあった傷跡を思い出した。あの傷は拷問によってできてしまった跡だったのだ。だからあの時ライキさんは知らないフリをしようとしたのだろう。知らなかったとは言え、僕は静かに怒りを覚えているのを感じた。


アスト(いや…ホントは見てないだけで、実は身体中はボロボロになってたんじゃ…)


シュート「その時…突然大きな爆発が起きたんです。俺は最初は何が起きたのか分かりませんでした。でも…目を開けると、ライキが眼帯を外してたんです。そして…周りの研究員はみんな倒れていました。ライキは逃げだすためにわざと属性の目を暴発させたんです。それが…さっきの言った森の火事の話です。地下室は森の研究所にあって、雷を落として地面に穴を空けるほどの威力だったので、すぐ火が回りました」


アスト(それって…かなり大きい雷ってことだよね…?穴をあけたりするほどの威力って…僕の宝石魔法でも多分だせないほどの威力だ…)


シュートは簡単に説明してくれているが、ライキの雷の魔法の威力は、僕の宝石魔法をも簡単に超えてしまうほどの力を持っているということだ。さすがは属性の目…すごい能力だ。


シュート「俺は部屋の1番遠くに離れてたので、雷の爆発をあまり喰らわずに済みました。その後、ライキは魔力の使いすぎで倒れてしまって…俺はなんとかライキを担いでその場から急いで逃げ出しました」


アスト「…その後は無事に逃げ出せたの?」


シュート「はい…。何とか…でも俺たちはあいつらに追われるようになりました。オルドフェクスは諦めが悪く、ずっと俺たちを追ってきてたんです。エリューレア国にいても、またすぐに捕まってしまう…。そう考えた俺たちは、数ヶ月後に別の国に逃げることにしました」


ユキト「それが…ネイファル国ってことか」


シュート「はい…俺たちの両親はすぐに了承してくれたので…でも最初は苦労しました。その日以降、俺はトラウマを抱えるようになってしまって…外に出るのが怖くなってしまったんです…しばらくは…ずっと引きこもる生活が続きました」


僕は想像した。また同じことをされるかもしれない恐怖。いつどこでまたさらわれるか分からない恐怖…。もし、自分が同じ思いをしたら…きっと誰も信じることができなくなりそうだ。いったいシュートはどんな思いだったのだろうか…。僕も城で引きこもるような生活をしていた。でもそれは僕が虚弱体質という体質的な理由だ。結果的には何とか身体を鍛えようとすることで克服しようとして、外に出れるようになったが、シュートは違う。シュートは精神的に病んでしまい、出れなくなってしまった。僕とは立場が大きく違う。シュートは今、こうして外に出ているが、それを乗り越えるには僕とはまた違う比べものにならないほどの壁があったはずだ。


シュート「ライキともすっかり会わなくなりました。聞いた話によると…ライキも俺と同じで精神的に病んでしまったらしいです。それはそうですよね…ライキは俺以上につらい思いをしたんですから…」


アスト「まだ立ち直れたわけじゃ…ないんだよね…?」


シュート「はい…今でもトラウマなので…でも何か月も引きこもってたある日、窓を見てたら走っているライキを見つけたんです。どこかに向かってたみたいで、気づいたら俺は外に出てました。急いでライキを追いかけて…とにかくライキのことが気になって…そしたら、一般人用の訓練所の中に入るライキを見つけました。俺も中に入ると、そこでライキが特訓をしているのを見たんです。一生懸命に剣を振って、何度も何度も練習をしてました。ライキは…俺より先にトラウマを乗り越えようとしてたんです」


ユキト「…すごいな、あいつ」


シュート「その様子を見て、俺は決意しました。このままじゃ、また何もできない弱い自分のままになる。足手まといになってしまう。だから、頑張って変わろう。次は俺が、守れる力を手に入れようって…その日からまた生活が変わりました。少しずつ外にでれるようにして、得意だった炎の魔法も毎日練習して、外に出て他の人とも喋れるようにもなりました」


人はあるきっかけで変わることができる。シュートはとても強い。ライキのことを見て、変わろうと決意したのだ。きっと、簡単なことではなかったはずだ。肉体は強くできても、心はなかなか強くすることができない。体についた傷は魔法で治療できても、心を魔法で治療することができない。それが…心というものだ。


シュート「そんな生活をしてた時、学園に入学することを両親に提案されました。両親は学園内にいれば強い人も多いし、安全だと思っていたそうです。ライキも入学すると聞いて…俺は学園に入学することを決めました。俺自身も、この学園なら強くなれると思っていたので…そしたらそんなある日、珍しくライキが訪ねてきたんです。あの訓練以降全く見てなかったので…久しぶりに会えてすごく喜びました。お互いいろんなことを話してたんですけど…そこで学園内ではお互いになるべく距離をとろうという話になりました」


アスト「えっ…?どうして?」


シュート「…結局学園に来ても、ライキの噂が広まっていたからなんです。俺たちと同じエリューレア国から来ていた生徒もいたので…一部の生徒の間なのでそこまで広がってるわけではないんですけど…」


アスト「そうなんだ…でも距離まではとらなくても良かったと思うけど…」


シュート「それはライキから関係性がバレないように、噂が落ち着くまでは関わらないようにしようと提案されたんです。そこまで噂は長くは続かなかったので、あまり話す人は少なくなったのが不幸中の幸いでした。だから今では様子を見ようという話になって普通に話すようになりました」


僕は頭の中に、ライキさんについて話した時、シュートがあれほどまでに熱くなって話してたことを思い出した。きっと、シュートは自分だけ友達ができて、ライキさんにはできなかったことを悩んでいたんだろう。だからあれほどまでに僕たちにいろいろライキさんのことを教えてくれていたのだ。


ユキト「そうか…辛かったのに話してくれてありがとな」


シュート「あ、あの…!ら、ライキの属性の目のことは…」


ユキト「誰にも言うわけないだろ?なっ!アスト」


そう言ってユキトは僕に視線を向ける。もちろん大きく頷いた。悪魔の目なんて、結局関係ないのだ。そんなことを信じるよりも、ライキさんという人を僕は信じたい。


シュート「ユ、ユキトさん…!」


ユキト「言っただろ?どんなことがあっても気にしないってさ。どんなことがあっても友達だって」


アスト「そうだね、ライキは悪魔なんかと契約するような人じゃないのは分かってるよ。だから…まずは助けに行かないと」


シュート「あ、ありがとうございます…!」


ユキト「だな!それに、今の話を聞いてかなりムカついてるんだ。1発ぶん殴らないと気がすまないぜ!!」


アスト「そうと決まれば…早く行かないとね。行こうシュート、ライキを助けるために」


シュート「は、はい…!」


シュートが安心したように微笑んだとき、どこか重く淀んでいた空気が、少しだけ晴れたような気がした。だけど、僕の拳は無意識に握りしめていた。そんなひどいことをしたやつが許せない。今、人生で初めて強い怒りを覚えているのを感じる。怖い気持ちはもちろんある。だけど、それ以上にライキを取り戻したいという、ただそれだけの想いの方が何倍も強かった。

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